石川九楊のおすすめ作品5選!代表作『一日一書』など、書の専門家

更新:2021.11.9

石川九楊は日本を代表する近代書家であり、書に関する評論家でもあります。日本語や文字、書に関するあらゆる新しい価値観を与えてくれる、オススメの5冊をご紹介します。

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石川九楊とは

石川九楊は日本の書家であり、同時に書に関する多くの評論を残している、まさに書に関するプロフェッショナルです。

書道塾を自ら立ちあげるなど、書を世に広める活動を続けてきました。「筆蝕」と本人が定義した筆の触感やリズムなどを表す言葉を基軸とした、独自の論法が魅力的です。

書に対する新たな価値観を与えてくれる石川の著書5冊をご紹介します。

1日1ページ読みたい石川九楊の書集

『選りぬき一日一書』は、石川九楊が365日分、毎日ひとつずつ書を選りすぐり、それを紹介するエッセイ集です。

パソコンやスマートフォンが普及したことで、文字を手で書く機会が少なくなりました。もともと文字には、それの持つ意味が強く反映されています。その形は、書く人の心情や個性によって大きく形を変え、印象を変えます。

本書はそんな文字の魅力を、文字の由来とともに紹介してくれる一冊です。

著者
石川 九楊
出版日
2009-12-24

石川は、自身が著名な書家であるとともに、書に対する評論家でもあります。本書では評論をしているわけではありませんが、書の由来をわかりやすく解説してくれているとともに、その魅力が伝わるよう意識して簡潔に読者へ語りかけてくれている姿勢が伺えます。

いかにも忙しい印象を受ける勢い余った「忙」という字や、雲のうえに日が昇る様子を漢字にした元旦の「旦」の字など、いつもは何気なく見ている文字に新しいイメージを与えてくれる、画集のような一冊です。

あまりに崩しすぎて元の姿をまったく感じない文字などもありますので、「何の字だろう?」と立ち止まることで、改めて文字にむきあう時間になります。

書の歴史を壮大なスケールで描いた一冊

『書に通ず』は石川九楊が振り返る、壮大な書に関する歴史への、新たなアプローチです。中国で始まり、日本へとつながり、「書」という形の文化として発展していった文字の歴史を振り返ります。

味を内包しながら形を変え、人々の伝承により緩やかに時代を渡り歩いてきた文字に対する、石川の愛情がにじみ出る論筆が印象的な一冊です。

書道というものがいかなる根幹を持っているのか、それに向き合うということはどういうことかがわかる、経験のない人でも興味を持てる入門書になります。

デザイン的な美しさを極めた唐の時代の文字や、表現の極みを目指して変化していった文字など、それぞれの魅力を感じながら、時間の流れを追うことができるでしょう。

著者
石川 九楊
出版日
1999-08-01

書道というものがいかなる根幹を持っているのか、それに向き合うというのはどういうことかがわかる、経験のない人でも興味を持てる入門書になります。

デザイン的な美しさを極めた唐の時代の文字や、表現の極みを目指して変化していったそれ以降の文字など、それぞれの魅力を感じながら、時間の流れを追うことができるでしょう。

また石川は、書というものの外郭を掴むとともに、そこに現れる問題点についても触れています。美術なのか、文化なのか、はたまたツールなのか……文字という存在について、プロフェッショナルである彼の考えが惜しみなく描かれています。

書に対する哲学的な語りが印象的な一冊だといえるでしょう。

石川九楊が解き明かす日本の書の歴史

『説き語り日本書史』は、石川が日本の書家について論じた評論集です。時代を問わず、多くの読者が知りたい日本書についてのさまざまな疑問符が、鮮やかに解決される一冊になります。

空海の書に見受けられる書の不思議な表現についてや、藤原行成の「白氏詩巻」など、描かれているエピソードはさまざま。古代から近代の書家まで網羅しています。

書に対する新しい価値観を与えてくれるとともに、日本独自の書という文化の魅力を改めて感じられるきっかけとなるような本でしょう。まったく知らない初心者でもわかるよう、丁寧な解説が添えられているのも嬉しいところです。

著者
石川 九楊
出版日
2011-12-22

石川は、中国から始まった書の歴史を知っているからこそ、日本独自の書の魅力や独自性を描き出すことができます。

彼の書に関するエピソードは、どれもワクワク感をそそられるもので、ある種のフィクションを眺めているような高揚感すらあります。専門書と括ってしまうにはもったいない、読み物としても楽しむことができるのです。

石川自身が書に対してどんな心持ちで挑んでいるのか、という部分についても折々触れられており、彼の人柄を感じることができるでしょう。

日本の歴史と重ねてみる書のいでたちについて

『「二重言語国家・日本」の歴史』は、中国から入ってきた言葉と、日本が従来持っていた言葉の双方を混ぜながら進化していった、日本語の歴史とその背景を書いた評論集です。

冒頭で例に挙げられているのは、「雨」について。ひと口に雨といっても「豪雨」や「霧雨」など中国に由来している言葉と、「春雨」や「大雨」など和語をもとにしている言葉の2種類があるのです。

このように日本語の奥深さを、言葉そのものにスポットを当てたり、時代を変えたり、と手法を変えながら解説してくれる一冊となっています。

著者
石川 九楊
出版日
2005-08-15

本書は歴史という側面が強い評論集ですので、日本史が好きな方でも楽しめるでしょう。

文字をめぐる歴史については、アイヌなど民族を超えたエピソードにまで及び、声や触覚などの感覚器官にまで話を広げながら進みます。

たとえば文法は、言葉によって作られるものです。そのため国の文化を築く礎ともいえる言葉から派生しているものだと考えることができるのだそう。

文字に対するまったく新しい価値観を読者に与えてくれる一冊だといえるでしょう。

文字の成り立ちに注目した石川九楊の評論

『日本の文字―「無声の思考」の封印を解く』は、日本の文字の構造や問題に特化して石川九楊が語った一冊です。

ひらがな、カタカナ、漢字と3種類の文字を使い分ける必要のある言語は、実は世界中で見ても稀です。日本の文化は、この3種類の文字を使い分ける言語を用いるところからスタートしています。

また、スマートフォンやパソコンの普及によって書から離れている現代日本人への警告も、本書には含まれています。本来の文字が持つ意味を知ることなく、自らの手で書く機会も少なくなるなか、本当の意味で文字は生き残れるのでしょうか?

著者
石川 九楊
出版日
2013-02-01

本書を読んだ方は、日本人として日本語を正しく使うことの必要性について、改めて考える機会を得られたのではないでしょうか。多様性を持つ日本語という文字の特性や問題点は、日本の社会自体が持つものを透かして見ることもできるかもしれません。

石川は文化としての日本語を受け継ぐこと、その意思を伝えることが重要であると考えているようです。彼の情熱がじわりと感じられる一冊だといえます。

石川九楊の本を読むと、日本語の美しさや日本語の持つ独自性について改めて感じることができます。文化とともに変化する言葉ですが、これからも大切にしていきたいですね。日本語や書が好きな方は、ぜひ彼の本を読んでみてください。

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