「日本に『憲法』は不要」「南京虐殺はなかった」など、世間の耳目をひく発言を続ける西村幸祐。メディアやアジア近隣諸国に対する厳しい言葉もとどまることを知りません。そんな彼の主張を詳しく知るための、おすすめ本を5冊紹介します。
西村幸祐(にしむら こうゆう)は1952年生まれの東京都出身です。レコーディング・ディレクター、コピーライターを経て、80年代末からはF1、90年代以降はサッカーと、おもにスポーツをテーマに作家・ジャーナリストとして執筆を続けていました。
そんな彼が、歴史問題、メディア批判といった政治評論へと軸を移していったのは、2002年のサッカー日韓ワールドカップ以降のこと。保守系論壇誌への執筆、言論誌「表現者」の編集委員、さらには「撃論ムック」「ジャパニズム」の創刊編集長を務めるなど、精力的に活動を開始します。
その舞台は紙メディアだけにとどまりません。2010年には、作曲家すぎやまこういち、櫻井よしこら保守系文化人とWebメディア「メディア・パトロール・ジャパン」を立ち上げました。現在はテレビ、ラジオも含め、あらゆるメディアで言論活動をおこなっています。
冷戦終結は遠い昔にもかかわらず、日本にはいまだ「ベルリンの壁」ならぬ「東京の壁」が残っていました。その壁とは「日本国憲法」。
壁によって分断された〈西・東京〉には、現行の日本国憲法の愚劣さを知る住民たちが、そして〈東・東京〉には、メディアによって正しい情報を遮断され、頑なに「護憲」を信じる住民たちが住んでいます。
これはSFではありません。本書で西村によって描かれた現在の日本の姿なのです。
- 著者
- 西村 幸祐
- 出版日
- 2016-08-09
「一日も早く『東京の壁』を崩壊させなくてはならない。(中略)そのために、情報が遮断された壁の向こう側にいる〈東・東京〉の住民に、幻想ではなく現実の情報を送らなければならない」(『日本人に「憲法」は要らない』より引用)
このように勇ましく語られています。その姿は彼が本書でふれている、音楽の力でベルリンの壁崩壊に貢献したデヴィット・ボウイを彷彿とさせるといえるかもしれません。
「日本では『憲法は権力者を縛るもの』という定義はナンセンス」、「『解釈憲法』によって、アクロバティックに立法することも立憲主義的行為」、「そもそも立憲主義的か否かは、違憲か合憲かの判断基準にならない」など、〈東・東京〉の住民にとってはあまりにショッキングな言葉が並ぶ本書。
そこには「現在のような緊急を要する状況下では、論理整合性など不要なのだ」とばかりの、憲法改正に対する西村幸祐の焦燥感と熱い想いを感じることができます。初めて西村の本を手に取る方は、コンパクトな新書サイズの本書で、その情熱に触れてみてはいかがでしょうか。
西村幸祐は、いまや大手メディアは政府やアメリカ、中国や韓国などの手先となり、偏向報道や情報操作で国民を騙していると明言しています。本書は、そんな劣化の止まらないメディアに向けて、彼が痛烈な批判をぶつけた一冊です。
おもな標的となっているのは、朝日新聞とNHK。その罵倒は峻烈をきわめています。
- 著者
- 西村幸祐
- 出版日
- 2010-09-22
「二千年の歴史と伝統と文化とそこから生まれた知的遺産や富を含めた総体としての日本を根絶やしにしようという意図がある」
「戦後的な情報統制システムの完成と日本人を圧殺する暴力装置としてNHKを代表とするオールドメディア」(『メディア症候群』より引用)
一方では朝日新聞を「扇動的」と称しつつ、自らも「恐ろしいことに」という言葉をしきりに使って読者を煽りたてるのです。読者はページをめくりながら、彼の抑えきれない怒りが、熱風のように吹きつけてくるのを感じることでしょう。
インターネットの普及によって、生活者のメディアに対する視点は変わりつつあるのです。西村は、「体制寄りか反体制か」といった視点から、現代では「事実を事実として客観的に伝えているか」という視点に変わってきていると主張しています。規模や種類にかかわらず、あらゆる情報発信者に刺激を与える一冊といえるでしょう。
アメリカで『ジャパン・アズ・ナンバーワン』というタイトルを冠した本が出版され、冷戦構造のもと、日本が経済・文化の中心となって世界をリードしていた1980年代。
しかし、一般に「黄金時代」と呼ばれる80年代の10年間にこそ、21世紀の日本を覆う恐るべき退廃の兆候が見出されるのではないか、と著者は本書でそう問いかけます。
- 著者
- 西村幸祐
- 出版日
- 2012-04-26
西村幸祐は本書で、日本に「失われた20年」を招いたプラザ合意、当時メディアで黙殺された北朝鮮による日本人拉致、その後頻発する凶悪事件の端緒となった金属バット殺人事件など、1980年代と現在を次々に線で結んでいきます。
読者は本書を読みながら、1980年代の、「バブル」「ひょうきん」「お立ち台」といった言葉で飾られたイケイケで底抜けに明るいイメージの下から、ほの暗い真実の姿が浮かび上がってくるのを感じずにはいられないでしょう。
村上春樹の『ノルウェイの森』、漫画『AKIRA』、またゲーム「ドラゴンクエスト」など当時の流行を鋭く分析した文化論でもあり、デビュー直後の村上春樹と交わした会話など、著者の個人的体験を綴ったノンフィクションともいえる本書。1980年代を知らない読者も、時代の空気を感じながら読み進めることができる作品です。
日中関係問題を中心とした活動で知られる中国生まれの評論家・石平との、白熱の対談が収められています。
現代の日本の政治状況から、日中関係、日米関係、さらに日本の歴史問題まで踏み込みつつ、タイトルの通り、日本政府そして日本国民に待ったなしの覚悟を迫る一冊です。
- 著者
- ["西村 幸祐", "石 平"]
- 出版日
西村が「巨大な悪の帝国同士が手を結んだ」と主張する2008年の米中戦略経済対話を背景に、日本はいま「倭国自治区」として中国の一部になりつつある、国家消滅の瀬戸際にあると2人は述べています。
何よりの問題は、日本人がその危機をまったく感受できていないことであり、その原因は戦後日本を左翼的言語空間で染め上げてきたメディア、そして平和憲法と呼ばれる日本国憲法にあるといいます。
特にメディアについては「国民を洗脳して自虐史観を植え付けている」、「偏向報道で政権交代を誘導している」など、全編その批判は容赦ありません。
タイトルの「米中を捨てる」とは、戦後レジーム(体制)からの脱却、憲法9条の改正を意味します。その主張の是非はともかく、祝日に日の丸をかかげる家が少なくなったことに絶望する2人の、国家に対する熱い愛が感じられる一冊です。
大方のメディアの予想に反して、第45代アメリカ大統領に選出されたドナルド・トランプ。彼の登場によって、これからの日米関係はどのように変化してゆくのでしょうか。
本書は、「トランプ後」の世界で日本はどのような道を進むべきか、西村幸祐がタレントのケント・ギルバードと語り合った一冊です。
- 著者
- ["西村幸祐", "ケント・ギルバート"]
- 出版日
- 2017-01-19
大統領就任後も変わらず、暴言・放言で世界中から反発を受けているトランプ。日本国憲法がアメリカ人によって書かれたことさえ知らず、「日本人はなぜ自分で自分の国を守ろうとしないのか?」と発言して波紋をよんだこともありました。
しかし西村とギルバートは、そんなトランプを一貫して擁護します。なぜなら2人は、大統領が在日米軍撤退を示唆するいまこそ、日本が憲法第9条を改正し、アメリカから独立するチャンスだと主張するからです。
中国、ロシアなどの動きも分析しつつ、今後日本がとるべき進路について議論を重ねていく2人。一方、この状況を理解せず、トランプを偏狭な人種差別主義者としてしか捉えられない左翼、護憲主義者に対しては、「第9条真理教信者」などと激しい罵倒が浴びせます。
「ケント 憲法はお経でもないし、聖書でもない。とくに第9条はむしろ『悪魔の書』です。ある意味ではポルノですね。
西村 道徳的に許せないという意味で、ですね。」(『トランプ革命で蘇る日本』より引用)
トランプの勝利は歴史的必然だった、とまで言う著者ら。作中では、東京オリンピックが開かれる2020年までに必ず憲法改正を実現しようと誓いあっています。
さまざまな考え方を知ることができるのも読書の魅力のひとつ。気になった本がありましたら、ぜひ手にとってみてください。