宮崎学のおすすめ本4選!アウトローな作者による自伝や新書など

更新:2021.11.9

特異な経歴を送るなかで磨かれた、鋭い視点が武器の宮崎学。彼の魅力が詰まったおすすめの本を紹介していきます。

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宮崎学とは

1945年、京都に生まれた宮崎学は、父がヤクザ寺村組の親分、母はスラム出身というヤクザの血を引く家庭で育ちました。浪人したのちに早稲田大学へと入学しますが、学生運動に明け暮れ授業にはほとんど出席せず、ついには中退してしまいます。

その後は京都で家業「寺村建産」を継ぐものの、企業恐喝容疑による逮捕、会社の倒産による多額の負債を抱え込むなど波乱な時代を過ごします。

1996年に自らの経験を描いた作品『突破者』でデビューすると、以降は独自の切り口から社会へ鋭い視線を向け、精力的に活動を展開。参議院議員選挙に出馬するなど、政治界にも一石を投じていきました。

ヤクザの家庭で育つという特殊な環境のもとで磨かれた観察眼で、本質に迫る作品を多く描いているのが特徴的です。激しい思想を持っていることからたびたび衝突も起こりますが、評価の高い作品も多く、一部のジャーナリストから熱烈な支持を受けています。

波乱万丈な人生を振り返る宮崎学の自伝

戦後元年に生まれ、ヤクザの組長を父に持ち、激動の時代を生きてきた宮崎の半生を描いた作品です。共産党の学生ゲバルト部隊を率いて活躍した大学時代、傍若無人に駆け回っていた週刊誌のフリー記者時代、そして倒産寸前の家業を継ぎ奔走した経営者時代と、いつの時代も破天荒な振る舞いで社会と対峙してきました。

幼いころから喧嘩は日常茶飯事、煙草や遊郭遊びで謹慎をくらうなど不良学生だった宮崎ですが、マルクス主義を独学で勉強し、次第に左翼で活動したいという気持ちが芽生えます。そして、学生運動へと参加し積極的に活動をしていくと、彼の進むべき道が定まり始め……。

著者
宮崎 学
出版日
2008-10-28

「事実は小説よりも奇なり」ということわざがありますが、彼の人生にはこの言葉がぴったりと当てはまります。現代では到底信じられないような荒々しい学生運動や、経営者として絶対にやってはいけない恐喝などの悪行の数々は、読者の脳天を打ち砕くような破壊力を持っており、これまでの自分の生き方や価値観を揺さぶられてしまうでしょう。

社会の目を気にすることなく、ぬるま湯に浸かった日本人を激しく非難する姿勢が強く感じられるこの作品。自らの生き方を引き合いに出し、私たちを鼓舞しているような感覚を味わうことができます。平凡な日常を、この一冊から打ち砕いてみるのはいかがでしょうか?

日本最大の暴力団「山口組」を追う

一時代を築いた日本最大の暴力団「山口組」。なぜ山口組は強大な力を持ち、多方面に影響を与えることになったのかを、そのルーツを追いながらまとめています。政界や芸能界といった巨大な業界をも翻弄した背景には、従来のヤクザとは違った倫理観や信条がありました。

ヤクザのなかでも古い歴史がある山口組、当初は一般的なヤクザ集団の性質と変わりがありませんでしたが、田岡一雄が3代目を襲名すると、大きな転換期を迎えます。田岡は、主に博打で生計をたててきた組員たちに対して、正業を持つように伝えたのです。

著者
宮崎 学
出版日
2010-10-08

高度経済成長期に突入していく日本ですが、山口組の組員たちもまっとうな労働をおこなうことで、社会のなかにその根を伸ばしていきました。その結果、徐々に勢力を広げて大きな影響力を持つようになるのです。腕っぷしの強さだけで力を獲得していっただけではなく、きちんとした狙いがあったことが分かります。

山口組が関係している事件についての詳細も描かれており、読み応え十分な内容となっています。山口組の栄光から衰退までのすべてが詰まった本作。昭和の時代の社会背景もわかり、現代日本の現状を理解するヒントが目白押しの一冊です。

ヤクザの歴史を紐解き、実態に迫る

ひと口に「ヤクザ」といっても一般市民には馴染みがなく、その実態を知らない人は大勢います。また、誤解をしている人も多いでしょう。本作は、そんな曖昧な認識を持たれている「ヤクザ」について、そのルーツと社会的背景を交えながら、どのような集団なのか迫っていきます。

ヤクザは本来、地域に根ざした集団であり、同一目的を持った結束力の強い集まりであることが協調されており、人々に恐怖を与える印象を持たれるようになった背景には、日本が歩んできた歴史が深く関係していることなど、近代日本の歩みと近代ヤクザの現状が詳細部まで明らかにされているのが特徴的です。
 

著者
宮崎 学
出版日
2008-01-01

社会のシステムがヤクザの形態に影響を与えてきたという論を中心に展開される本作。作中で宮崎は、近代ヤクザは生まれるべくして生まれたと述べています。高度経済成長期のなか、極めて地位の低い者たちは、自らの身体を資本として生き抜くこと以外に道がありませんでした。彼らの必死に生きようとする姿勢が、近代ヤクザの起源だと語る彼の言葉が印象的です。

我々の生活の脅威ともなりうるヤクザですが、その起源は私たちが歩んできた道と大差ないのかもしれません。またその集団の本質も、大それておかしなものではないことを本作から学ぶことができます。集団とは何なのか、私たちの日常生活を再考するきっかけとなる一冊です。

危険な世界の訪れに宮崎学が警鐘を鳴らす

日本を代表するジャーナリスト、田原総一朗の責任編集の元、鋭い分析で支持を集める作家・佐藤優と宮崎の鼎談をまとめた一冊です。それぞれが、今の社会に対して独自の視点から切り込む視点を持っており、非常に難解な内容にもなりかねませんが、田原の見事な司会のもと、軽快な語り口でまとめられています。

戦後70年が経過し、争いとはほど遠い世界で生きてきた日本人ですが、IS(イスラム国)の出現により状況は一変しました。いつ、何が起こるか分からない世の中で私たちが抱える問題と、これから進むべき道を探っていたとき、根底にあったのは「絶対的貧困」でした。
 

著者
["宮崎学", "佐藤優"]
出版日
2015-05-23

「朝まで生テレビ!」でおなじみの田原が司会を務めることもあり、対談本でありながらテレビの雰囲気を感じる作品です。佐藤と宮崎、2人の主張を邪魔することなく、うまく引き出してテンポの良い対談がなされています。

新たな時代に突入したいま、私たちに必要なことは、自分の目で世界を捉え今後についての展望を見据えることです。その手助けを、3人が確かな知識と論理で行ってくれます。激動の時代を迎える私たちに必要なエッセンスが詰まった本作、手元に置いておくのはいかがでしょうか?

「ヤクザ」という、縁遠い世界と思われる社会と私たちを繋いで鋭い視線を向ける宮崎学。新たな角度から日常を見つめるきっかけをくれる、そんな一冊に出会えること間違いなしです。

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