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荒俣宏のおすすめ本5選!代表作『帝都物語』など

更新:2017.9.16 作成:2017.9.16

荒俣宏(あらまたひろし)、その博識ぶりでテレビでも活躍しています。博物学者にして図像学研究家、神秘学者、妖怪評論家、翻訳家、収集家……と、挙げだしたらキリがないほど。まずは今回おすすめする著作を通して、広大な荒俣ワールドを体験してみてください。

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博覧強記、歩く辞典。謎多き男、荒俣宏の正体とは

1947年生まれの彼は、不思議なものが大好きな少年でした。慶應義塾大学在学中には、漫画を描いて同人誌を出したり、ヒロイック・ファンタジーの翻訳活動を開始します。翻訳活動では団精二というペンネームを使っていました。

卒業後はサラリーマンになりますが、その傍ら寝食を惜しんで専門誌『幻想と怪奇』の立ちあげと編集に携わったり、著書の初出版を果たします。32歳で退社後は、『世界大百科事典』改訂版の編集に参加しました。

それと同時期に執筆していた『帝都物語』が日本SF大賞を受賞しベストセラーになり、一躍話題となります。大量の貴重古書などの購入費で莫大な借金がありましたが、この印税で返すことができたそうです。その後多くの博物学研究書を出版し、博物学書自体のブームを巻き起こしました。

ファンタジーやゲームなどで有名な「魔道」「召喚」といった言葉を生み出したり、風水を日本に紹介した功績も有名ですね。

神秘学や民俗学にも造詣が深く、水木しげるに弟子入りを志願したこともあるそうです。荒俣自身は、別に妖怪や未確認生物たちが実在することを訴えたいわけではありません。実在・非実在問わず、ともかく不思議なことや知らないことに対する興味が尽きないのです。

小説家・荒俣宏の名を一躍知らしめたSF作品

時は明治40年、大きく移り変わろうとしている帝都・東京が舞台です。

ある肌寒い春の夜の深夜2時をまわった頃。帝都改造計画に携わる大蔵省の官吏である辰宮洋一郎は、局長の命令を受けて、わけも分からず平将門の首塚へ向かいました。すると突然、白手袋の人物に後ろから口をふさがれます。

その人物こそ、陸軍少尉の加藤保憲。実は加藤、2000年ものあいだ怨念を募らせてきた東京最大の祟り神、平将門の地霊が憑りついている、魔人です。

古来最も恐れられた「蟲術」や「陰陽道」、「奇門遁甲」を駆使し、さらには目には見えない「式神」をあやつって帝都の崩壊を目論んでいるのです……。

著者
荒俣 宏
出版日
1995-05-01

冒頭から手に汗握る、衝撃的な2人の出会いです。これから彼らに確実に大変な事態が起こると想像できます。軍人の加藤は、登場からすでに各種の霊能力に通じた切れ者という印象ですが、ストーリーが進むほどにサイコ度を増していきます。

そしてもうひとり重要な人物が、辰宮の妹、由佳理です。彼女は小さい頃から霊感がとても強く、加藤に目をつけられてしまいます。なぜならその種の感覚の強い人間は、降霊術の媒体として適任だからです。

作中に多く登場する、「陰陽道」や「風水」など不思議な術についての事前知識はなくても大丈夫。巻末にも用語解説がありますし、登場人物も知らない人の方が多いので「なんだ、その風水というのは?」というように、ストーリー中で説明されていきます。

史実や実在の人物を絡めつつ、科学とオカルトも入り乱れ、一体どこまでが本当なのか分からないま物語は進みます。味方かと思えば敵だったり、そもそも敵が何者なのか正体がよく分からなかったり……帝都・東京が一体どうなってしまうのか、1巻から夢中になってしまうはずです。

こういうの、子どものときに欲しかった!

古今東西の博物誌を収集・参照し編まれたこの図鑑。数百種類の生き物と、数百のカラー図版が収録されています。

「蟲類」のほかにも「魚類」「両生・爬虫類」「鳥類」「哺乳類」の計5巻があり、さらに別巻として「絶滅・希少鳥類」「水生無脊椎動物」もあります。

難しい専門用語で生態が書かれているのではなく、大量の緻密な図版とともに、その生物の特徴や進化の歴史、関連する民話やことわざ、文学での引用など、面白いエピソードが盛りだくさんです。

なかでも貴重なのは、やはりその美しい図版。視覚で把握できるので、子どもでも十分楽しめます。

著者
荒俣 宏
出版日

荒俣はこの図鑑のために、世界各国の博物誌を多額の私財を投じて収集しました。その無数の文献から厳選した緻密で美しい図版が掲載されており、それがこの本の大きな魅力です。生き物のどこがどうなっているのか、じっくり観察できますよ。著者の審美眼で選んだ珠玉のものばかりで、生き物の美しさも確認できます。

生物の生態については、特筆すべきことだけを絞って説明されており、随所に著者の主観が垣間見られ、図鑑にしてはなんだか暖かみのある文章です。また、「民話・伝承」「文学」の項目も、西欧に限らず世界中の昔話や寓話などが載せられており、さすが荒俣が選んだだけあって読み物として面白いものばかりで、読み飽きません。

インターネットを使うと知りたいことしか調べませんが、ページをめくって読んでいくと、関連した事柄が次々と目に飛びこんできて、紙の図鑑ならではの長所を体感できます。次の項目も、次のページも読みたくなってしまうでしょう。

あらゆるトリビアを荒俣宏がランダムに解説

なんの事典かというと、面白いことならなんでも載っている事典です。

その数、なんと303項目。

五十音順に並んだ「001」に、前書き代わりに書かれているのが「アラマタ・ヒロシ」の項目です。なぜ、どうして、という疑問を、なるほど!と驚くような事典にしたいという目的で編まれました。

そこから続くのが、浮世絵、カクレクマノミ、ガラパゴス諸島、スペースシャトル……このように脈略なく、何でもかんでもアラマタ目線で気になった事実を、カラー写真とイラストたっぷりで解説しています。

著者
荒俣 宏
出版日
2007-07-13

とりあげられている内容は、教科書に載っているような基本的なことよりも、意外な事実、面白いこと、ヘンなこと……。漢字には全部ルビがふられているので子どもでも読めますし、子どもこそ夢中になれる本です。

項目は五十音順でランダムに書かれていますが、カテゴリーごとの目次もあるので、魚、宇宙、日本、スポーツ、ファッションなどから、逆引きすることも可能です。

もちろん大人でも知らないことがたくさん載っているので、一冊読めばかなり雑学が増え、人との話題も豊かにしてくれるはず。客家土楼、スノーボールアース、四十八茶百鼠、神代文字など、いざ聞かれたらきちんと説明できないような新しい発見がありますよ。

すごくすごい。すごい人の話。

すごい人荒俣宏が、ジャンルを問わず「すごい人」15人と対談し、「すごい話」を聞きだしていきます。

渋滞学の教授、ウィルスの専門家、オランウータンの専門家、クジラの専門家……こんな研究がなされているのか、こんな専門家がいたのか、という驚きの連続です。私たちの普段の生活とは遠いようで、実はすべて密接に繋がっています。

何しろ聞き手が荒俣宏ですから、話は自由自在に広がります。

著者
荒俣宏
出版日
2013-04-17
まさにタイトルどおり、登場するのは全員すごい人。荒俣が実際に会って対談しています。

我々読者は知り得ない、専門機関にこもって研究を重ねているような専門家の話が聞けるのは、非常に貴重で、驚きがいくつもあります。聞き手が荒俣だからこそ書籍化し日の目を見た、という面もあるのではないでしょうか。

そしてこの「すごい人」たち、ひとつのことに没頭して専門性を極めてはいるのですが、それ以外の知識の幅が広いこともすごいのです。荒俣とともに会話の範囲をどんどん広げていきます。

常識をくつがえす、荒俣宏の逆転の発想

膨大な知識を支える荒俣式知的生産法には、いくつもの秘訣があります。

みんな、好きなことなら本気になれる。誰しも好きなことを仕事にしたいのに、好きではないことをしなくてはならないときもあります。著者は、それを好きなことにしてしまえる「心のマジック」を持っているのです。名付けて「0点主義」です。

まず大事なのは、ストライクを投げることだけを考えず、たとえば三振を取れるボール球など、自分なりの得意な「決め球」を持つこと。そして、その練習を面白くすること。そのためには、球を投げること自体のおもしろさを知ることが重要です。

著者
荒俣 宏
出版日
2012-05-16
好きなことを探求し続け、結果として人と違う知識が自然と身につき、それが個性となり、生活の糧にまでなった、と荒俣は語ります。

そもそも、勉強さえすれば誰もが勝ち組に入れる時代は終わっているにもかかわらず、勉強しろ、努力しろ、ということは言われ続けています。しかしただ勉強して勝ち組になれるのは、ごく一部。それに、ずっと辛い苦労をし続けなければならないのは大変です。

筆者は、そういう勉強法をしてこなかった人です。だからこそ勉強が嫌いにならずに済みました。

勉強は本来おもしろいもの。勉強自体を好きになれたら、彼のようにきっと生涯楽しく幸せに生きていけるのではないでしょうか。

そんな幸せな勉強法は、世のなかの常識とはまったく違います。環境、効率、悪くて結構。他の勉強術が合わなかった人におすすめです。

荒俣はこの他にも膨大な数の著作を刊行しています。そのどれも面白いのは、きっと著者自身が面白がっているからでしょう。物知りなうえに暖かさも感じるユーモラスなキャラクターが垣間見えることも、彼の著作の魅力のひとつです。