『テラフォーマーズ』をネタバレ考察!人間はゴキブリに勝てるのか

更新:2021.12.1

2013年版『このマンガがすごい!』オトコ編で1位、『全国書店員が選んだおすすめコミック2013』で2位を獲得。さらに累計発行部数は1600万部を突破している人気作品『テラフォーマーズ』 2014年にテレビアニメ化、OVA化。2016年に実写映画化までされました。 『テラフォーマーズ』は、火星を舞台に、人型のゴキブリとの戦いを描いたSF漫画。斬新な設定とデザインで注目を浴び、大ブームを巻き起こしました。人間vsゴキブリの戦いのあらすじを詳しく紹介します。

ブックカルテ リンク

漫画『テラフォーマーズ』の魅力をネタバレ紹介!

本作の魅力はなんといっても、どの登場人物も主役級のキャラクターであることです。第1部の主人公である小町小吉(こまちしょうきち)、第2部以降の主人公である膝丸燈(ひざまるあかり)はもちろん、他にもたくさんの登場人物の信念や生きざまが描かれています。

それぞれのキャラクターたちは、家族や友を思う心や、利益を優先しようと謀る思惑、己の欲望への忠実さなどを秘めています。その人間らしさから読者は、彼らのうちの誰かの生きざまに共感を抱くこととなるでしょう。

さらに、彼らが特殊な能力を生かして敵と戦うシーンは圧巻です!白熱したバトルと、純粋な格好良さに、応援したくなること間違いありません。

著者
橘 賢一
出版日
2012-04-19

魅力溢れるキャラクターたちですが、その多くは作中で死を迎えてしまいます。1番好きになったキャラクターの死に、読者がショックを受けることも大いにあり得るのです。しかし、最期の時を描くことで、彼らの輝きを鮮明に印象付けられます。

そして、彼らを輝かせるための敵というのがなんと「人型のゴキブリ」。詳しくは後述しますが、無慈悲なゴキブリたちがいてこそ本作の世界観は成り立ちます。

人間VSゴキブリの一風変わった戦いが描かれる『テラフォーマーズ』、今回はネタバレを含んだ本作の紹介をしていきます。

漫画『テラフォーマーズ』あらすじ

著者
貴家 悠
出版日
2012-08-17

西暦2599年、人類は「火星のテラフォーミング計画」の大詰めを迎えます。これは火星を人の住める環境にする計画で、500年前の科学者たちは、火星の地中で凍る二酸化炭素を溶かすために大量の「苔」と「黒い生き物」を放っていました。

その黒い生き物の駆除の任務を請け負い、15人の男女が火星へと赴きます。火星に着陸後、乗組員たちは見たこともない生物に遭遇しました。「それ」は真黒な肌に、強靭な肉体、そして尾葉と触覚を持ちながら二足歩行をしているのです。

正体はなんと、500年前に火星に放たれた「ゴキブリ」。500年という長い時を経て、ゴキブリはまるで人間のように進化を果たしていたのでした。

乗組員たちは火星での長時間任務に適するためという名目で施された「バグズ手術」で得た力を使い、ゴキブリたちと戦います。

火星のゴキブリ(じょうじ)のやばさ紹介……

ストーリーの前にゴキブリ(じょうじ)のやばさ紹介……
出典:『テラフォーマーズ』1巻

まず「じょうじ」とは、ゴキブリの「話し声」を指します。ゴキブリたちは「じょう」や「じょうじ」という言葉を使って意思疎通をはかっているのです。彼らが何を話しているのかは、登場人物にも読者にもわかりません。

しかし、言語を習得したということは、ゴキブリが「知力」を得たということを示します。その知力が彼らに何をさせたかというと、なんと「ゴキブリの社会」を構築させてしまったのです。彼らの社会には上下関係もあれば、それぞれの役割もある、人間の社会と変わりありません。

ゴキブリの社会における役割のひとつに、他の生命体と戦う「戦闘員」があります。億を超える戦闘員たちはきちんと訓練されていて、隊列を組んだり、罠に嵌めてきたりと、人間の知能に匹敵する作戦を立ててくるのです。

驚くべきことに、彼らのなかには「研究員」を担うものまでいます。火星で任務にあたる人類は「バグズ手術」と、それを進化させた「M.O.手術(モザイクオーガン)」という人体改造的な手術を受け、人間以外の生物の力を体に宿し、その力でゴキブリに対抗するのですが、ゴキブリ側も手術を施された人間の死体を利用して同様の手術をゴキブリに施します。

彼らは通常の人間より大きい体躯と膨大なパワー、狂暴性まで持ちながら、人類の対抗手段である手術の力も使えてしまいます。すべてのゴキブリに手術が施されているわけではありませんが、それでも火星に渡った人間の数を上回る程度の力を持つまでになりました。

他にも子供のゴキブリや、ゴキブリの頂点に立つゴキブリなどがいます。物語が進めば進むほど彼らの恐ろしさは増していき、登場人物だけでなく、読者まで絶望の淵を味わうことになります。

第1部のあらすじをネタバレ紹介!

第1部をネタバレ紹介!
出典:『テラフォーマーズ』1巻

物語の舞台は、26世紀の地球と火星。人口増加と環境破壊に悩まされていた人類は、火星を人の住める環境へと変える「テラフォーミング計画」を立案します。

その計画とは、火星の地中で凍る二酸化炭素を放出するために「苔」と「ゴキブリ」を利用し、火星を黒く覆って太陽光を吸収しやすくして地表を温めるというものでした。2099年、人類はその計画を実施します。

そして2577年。「バグズ1号」と名付けられた宇宙船に乗った6名の宇宙飛行士が、放たれたゴキブリ駆除のため火星へと降り立ちます。しかし、なぜか宇宙飛行士は全滅。公には「事故」として発表されましたが、本当は「知的生命体」の襲撃を受けていたのです……。

出典:『テラフォーマーズ』1巻

そして22年後の2599年。「バグズ2号」に乗って再び人類が火星へと降り立ちました。この時火星のゴキブリ駆除に向かったのは、膨大な報酬を餌に各国から集められた若者たちです。

乗組員は、艦長のD.K.デイヴスを含む全15名。主人公である小町小吉と、幼馴染の秋田奈々緒(あきたななお)もそのひとりでした。乗組員の全員が火星の環境に適応するため、成功率約30%の「バグズ手術」という処置を施されており、その手術を受けて死ななかった人たちが今回の乗組員となったのです。

「バグズ手術」とは、昆虫のDNA細胞を移植し、昆虫の強靭な力を得ることができるというもの。それに加えて、移植した昆虫の特性まで扱えるようになります。

火星に降り立ったバグズ2号の乗組員は、まず大量のゴキブリ駆除薬を火星に撒きます。そして、4つのチームに分かれて死骸の回収へと向かいました。しかし各チームは、ゴキブリの死骸が見当たらないことに気づきます。不思議に思いながらも探索を続けると、二足歩行をしている見たこともない生物と遭遇しました。

それは火星の環境に適するために進化したゴキブリ、後に「テラフォーマー」と呼ばれるようになる生物でした。その姿に驚きながらも接触を図った小吉と秋田ですが、コミュニケーションを交わす間もなく、秋田の首が折られてしまいます。

出典:『テラフォーマーズ』1巻

突然のことに我を忘れてテラフォーマーに襲い掛かろうとする小吉でしたが、他の乗組員に抑えられ、ひとまずバグズ2号に帰艦しました。乗組員たちは、未知なる生命体との遭遇と、仲間の死亡というトラブルから地球への撤退を提案します。しかし、デイヴスはそれを承諾しません。

なぜなら、このまま撤退すれば報酬が手に入らないからです。さらに、今回の計画ではテラフォーマーの存在が予測されていました。つまり火星開発をおこなうU-NASA(国連宇宙局)は、15人の若者たちの命を買ったようなもの。そのため任務を完遂するまで帰還が許されませんでした。

乗組員はテラフォーマーとの戦闘を余儀なくされます。紛争地帯出身者や荒事に自信のある者たちが挑みますが、次々に殺されてしまいます。バグズ2号は完全にテラフォーマーに包囲されてしまいました。

デイヴスと、もうひとりの日本人・蛭間一郎(ひるまいちろう)は、自ら囮になって乗組員を助けることを試みます。2人を残してバグズ2号から脱出する乗組員でしたが、彼らもまた脱出先でテラフォーマーに囲まれてしまいました。

バグズ2号に残ったデイヴスと一郎はテラフォーマー相手に奮闘しましたが、数で圧倒されて力尽きてしまいます。しかし、実はこれは一郎の策略で、バグズ手術で得た力によって彼は仮死状態でテラフォーマーが引きあげるのを待っていたのです。

一郎の目的は、日本の研究員からの指令で、テラフォーマーの「卵」を持ち帰ること。彼は卵を確認すると、他の搭乗員を捨てて地球へ帰還しようとしますが、その計画はテラフォーマーの妨害によって失敗に終わりました。

一方、小吉たちもテラフォーマーとの戦いに苦戦していました。バグズ手術の力をもってしても、乗組員は次々に殺されてしまいます。こちらで生き残ったのは小吉を含むわずか3人でした。

3人は発射しようとするバグズ2号に気づき、すぐさま駆けつけます。発射に失敗したバグズ2号に入った小吉の前に、秋田の死体を持ち帰ろうとするテラフォーマーが現れます。そして小吉は、彼女の亡骸を取り戻すために、テラフォーマーへと挑むのでした。

一方、一郎も卵から孵化したばかりのテラフォーマーと戦い、なんとか退けます。

小吉と一郎がそれぞれの戦いに打ち勝った時、すでに艦内の生存者はこの2人しかいませんでした。そして彼らは艦内に備え付けてある小型ポッドで地球へと帰還します。

物語の冒頭から、ヒロインらしき少女が死んでしまうという急展開を迎えます。しかも彼女のみならず、多くの乗組員もその命を散らしてしまいました。しかし先述したとおり、『テラフォーマーズ』の登場人物の死に際はそのキャラクターがもっとも輝く瞬間でもあります。アキの死に際、デイヴスの死に際もそのキャラクターの内面が大いに表れていました。

さらに、はじめからテラフォーマーの強さを読者に見せつけることで、この生物に凄まじい印象を与えました。それは絶望でもあり、作品への期待でもあります。この強靭な生物の大群に、人類はどのように対抗するのか、それが楽しみでなりません。

そして、驚くことにこれでまだ1巻!たった1巻で読者を『テラフォーマーズ』の世界に引き込む作者の手腕はまさに素晴らしいのひと言で、次巻からはじまる第2部への期待感も高まります。

第2部のあらすじをネタバレ紹介!

第2部をネタバレ紹介!
出典:『テラフォーマーズ』2巻

バグズ1号、バグズ2号、どちらの乗組員も大勢死んでしまい、「テラフォーミング計画」は凍結を迎えました。しかし20年後に、人類は再び火星へ飛び立つこととなります。

バグズ2号が帰還した2599年以降、A.E.ウイルスと呼ばれる致死率100%のウイルスが地球に蔓延します。治療法も確立できず、ワクチンも作れません。このウイルスは、バグズ2号が火星から持ち込んだと推察されました。そのため、人類は再び火星に赴いて、ウイルスの起源を解明しなければならないのです。

その任務に立ち上がったのが「アネックス1号」の乗組員たち。各国を代表する幹部乗組員(オフィサー)と、その下につく乗組員の計100名から成り、総隊長はバグズ2号の生還者のひとりである小町小吉が務めます。

アネックス1号の乗組員には、バグズ手術を進化させた「M.O.手術(モザイク・オーガン・オペレーション)」が施されており、人類は昆虫以外の生物の力も手に入れました。このM.O.手術の技術は今後の国際情勢に大きく関わってくると考えられるため、U-NASA(国連宇宙局)主要国であるアメリカ・日本・ドイツ・ロシア・中国・ローマという各国のさまざまな思惑を交えながら、アネックス計画が進んでいきます。

しかし、以前のバグズ2号計画の失敗と、日本人の本多教授と蛭間一郎の裏切りによって、アメリカと日本は他4国より弱い立場となっていました。しかも、U-NASA主要会議に参加した日本の首相は、蛭間一郎自身。アメリカと日本が弱っているうちに、自国の利権を得るために他4国はさまざまな駆け引きをおこないます。

出典:『テラフォーマーズ』2巻

また、各国に注目される存在がアネックスの乗組員にいるのですが、それが第2部の主人公、日本人の膝丸燈(ひざまるあかり)でした。

燈は人工的に作られた存在で、デザイナーズチャイルドと呼ばれます。最大の特徴は、産まれた時から、バグズ手術で得るはずの昆虫の能力を所持していたという点。そしてその異質な体は、M.O.手術を高確率で成功させる効果も持っていました。

燈の体の秘密が解明できれば、M.O.手術の成功率を上げることができ、U-NASAでの立場もより強いものとなります。そのため、アネックス計画はA.E.ウイルスの原因究明という建前のもと、どの国が燈の身柄を手に入れるかという事態に陥っていました。

このような各国の思惑をつみ、アネックス1号は火星へと飛び立ちます。艦内は穏やかなもので、クルー同士は親睦を深めながら39日間の飛行を経て火星へと到着しました。しかし、着陸態勢に入ったアネックス1号の中で、非常事態が起こります。「テラフォーマー」が艦内に侵入していたのです。

この非常事態に必死に応戦する乗組員たちですが、数人殺されてしまい、さらにM.O.手術で授かった力を使うための薬を大量に破壊されてしまったのです。このテラフォーマーの行為は明らかに知的であり、どこかの国がテラフォーマーを艦内へ侵入させてこの状況を作り出したのは明らかでした。

小吉艦長はU-NASAへ連絡をとり、地球への帰還を要望しますが、答えはNO。艦内にいる6匹のテラフォーマーではサンプルが少なすぎると伝え、「プランδ」への移行を命じられました。

本来であればオフィサーと呼ばれる幹部を含む戦闘力の高い者が捜索をおこない、戦闘力の低い者はアネックス1号の警備にあたる「プランα」の予定でした。しかし何者かによってアネックス1号を爆撃され、プランδへの移行を余儀なくされます。

出典:『テラフォーマーズ』3巻

このプランδは緊急用のもので、100名の乗組員を6人のオフィサーの元に振り分け、6方向に脱出機を使って散開します。そして再びアネックス1号へと集合し、40日後にやってくる救助船を待つというプランです。

彼らは以下のように6つの班に分けられます。

 

  1. 日米合同第1斑・班長:小町小吉  
     
  2. 日米合同第2班・班長:ミッシェル・K・デイヴス  
     
  3. ロシア・北欧第3班・班長:シルヴェスター・アシモフ  
     
  4. 中国・アジア第4班・班長:劉翊武(リュウ・イーウ) 
     
  5. ドイツ・南米第5班・班長:アドルフ・ラインハルト  
     
  6. ヨーロッパ・アフリカ第6班・班長:ジョセフ・G・ニュートン  
     

 

各班はこれから悪夢のような出来事を経験していくのです……。

ここまでが第2部の冒頭で、いよいよここから物語が本格的に開始します。さすがに全キャラクター、すべての場面は紹介できませんので、ここからは主人公の膝丸燈と各国のオフィサーが活躍する場面を紹介していきます。多大なネタバレを含む可能性があるのでご注意ください。

出典:『テラフォーマーズ』3巻

まずは燈の紹介からはじめましょう。彼には血縁と呼べる存在がおらず、「膝丸神眼流」と書かれた道場のある施設の、軒の下に捨てられていた子供でした。その施設で育てられますが、生まれながらに昆虫の力と能力を持つ彼は、疎まれた存在となります。

しかしそこで、彼を気にかけてくれる少女と出会いました。彼女と燈は幼馴染と呼べるほど親しくなり、幼少期から少年時代をともに過ごしましたが、少女はA.E.ウイルスにより亡くなってしまいました。

この経験から燈は、A.E.ウイルスで苦しむ人を救いたいと願い、アネックス計画に参加します。

100人の乗組員の強さの序列を表す「マーズランキング」なるものの順位は6位。15位以上に与えられる特殊な武器と「オオミノガ」の力でテラフォーマーと戦います。しかし、彼にはもうひとつ隠された力があったのです。

それが生まれながらに授かった「カマキリ」の力です。第2部の終盤、裏切り者だった中国の乗組員に、燈は捕らえられそうになります。オオミノガの力だけでは対抗できないと悟った時、彼のなかに眠るカマキリの力が目覚めました。オオミノガ、カマキリ、そして仲間の力を借りて、彼は過酷な火星での戦いを生き抜いていきます。

小町艦長と同様に大好きな幼馴染を奪われてしまった燈ですが、彼は大好きな子が亡くなっても立ちあがり、読者に諦めない心と勇気を見せてくれます。物語のど真ん中にいる彼の勇姿に、テラフォーマーに囲まれた火星での絶望的な状況でも、乗組員と我々読者は希望を見出すことができます。

出典:『テラフォーマーズ』12巻

2人目に紹介するのは、第1部の主人公であり、第2部ではアネックス1号の艦長でもある小町小吉です。マーズランキングは3位で、M.O.手術は受けておらず、以前の火星捜索で受けていたバグズ手術の「大雀蜂」の力で戦います。

彼は地球に帰還してから、ずっと火星に戻りたいと願っていました。愛する人が死んだ火星で自らも死に、愛する人のもとへ逝きたいと考えていたのです。しかし、運命がそれを許してくれません。どれだけ戦おうと、どれだけの負傷をしようと、彼はいつまでたっても愛する人のもとへ逝くことは叶わずに再び生き残ってしまいます。

小吉艦長には、もしかしたら死よりも辛いであろうエンディングが待ち受けています。彼が最後の最後まで、他の乗組員や仲間に伝えたかったことは何なのか、読者もそれをしっかりと受け止めなければなりません。小吉艦長の動向については、第3部でも注目しましょう。

 

マーズランキングについては以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてごらんください!

漫画『テラフォーマーズ』マーズランキングベスト100!最新巻ネタバレ注意

漫画『テラフォーマーズ』マーズランキングベスト100!最新巻ネタバレ注意

火星を舞台に、斬新な敵の設定で人気を誇る『テラフォーマーズ』。膨大な量のゴキブリを相手に、人類の奮闘が描かれます。その勇姿は我々に多大なる勇気を与えてくれることでしょう。今回は作中の登場人物たちの強さに迫ります。

出典:『テラフォーマーズ』3巻

次に、第2班の班長、ミッシェル・K・デイヴスです。マーズランキングは5位で、燈と同じく生まれた時から、父の「パラポネラ」の特性を受け継いでおり、それに加えてM.O.手術で「爆弾アリ」の力を持ちます。彼女の父はバグズ2号艦長D.K.デイヴスで、父の無念を晴らすために今回の計画に参加しました。

彼女は火星で、父の能力であったパラポネラの特性をもつテラフォーマーと遭遇。復讐心でずっと生きてきた彼女でしたが、今回の作戦で出会った仲間との触れ合いを経て、復讐よりも今を生きる仲間のほうが大切なことに気づきます。

このような心境の変化のもと、父の特性を持つテラフォーマーを殴りあいのすえに撃破し、仲間とともに戦いを生き延びるのでした。

もし本作にヒロインという役割があるのなら、彼女が間違いなくヒロインでしょう。復讐のみを考えて生きてきたミッシェルは、巻が進むにつれて年相応の女の子へと変わっていきます。ある意味大人から子供への退化にも見えますが、彼女にとってこれは間違いなく成長。復讐よりも大切なものに気づいたミッシェルの笑顔は、絶望のなかでも美しいものでした。

出典:『テラフォーマーズ』4巻

4人目は、第3班班長シルヴェスター・アシモフのご紹介をします。マーズランキングは小吉と同率3位で「タスマニアン・キング・クラブ」の力を使います。

彼の所属するロシアは絶妙な立ち位置で今回の作戦に参加し、中国の裏切りに加担。その目的は「ラハブ」と呼ばれる文明の解明とA.E.ウイルスです。火星には地球のピラミッドと同じ形をした建造物があり、アシモフは火星に到着してすぐにそこへと向かいました。そこはたいして重要な拠点ではなかったものの、大量のA.E.ウイルスを発見します。

第3班はその事実を隠しながら火星の激闘を過ごします。しかし、アシモフの心はA.E.ウイルスに汚染された娘を助けたいという一心でした。彼はA.E.ウイルスの塊を部下に託し、たび重なる激闘のすえに火星でその命を散らしたのでした。

ある意味1番人間味のあるキャラクターで、裏切りへの加担はあれど、彼の心はずっと家族を思っています。その愛情は作品内でもっとも深いものかもしれません。大柄な見た目に似合わぬ深い愛情、これぞ理想の父の姿ではないでしょうか。

出典:『テラフォーマーズ』7巻

次は、第4班の班長リュウです。マーズランキングは44位ですが、その判定は不正によって得たもの。実際の実力は他のオフィサーと変わりません。「ヒョウモンダコ」の能力を使います。

リュウが所属する中国は初めから裏切りを画策しており、燈の捕獲に全力を注ぎます。中国に改心はなく、他国を裏切り続けました。そしてすべての責任を負わされたリュウは、火星で最期の時を迎えたのでした。

作中ではもっとも野心が強い男で、悲惨な幼少期を過ごしたからこそ、2度とそういった気持ちを味わうことがないように行動します。それは他者にも同じ境遇に合ってもらいたくない、という思いに繋がり、それが自国の民へと向いていたにすぎません。悪行を重ねながらも、意外と共感できるキャラクターでもありました。

出典:『テラフォーマーズ』4巻

そして、第5班の班長アドルフ・ラインハルト。彼のマーズランキングは2位で「デンキウナギ」の力を使います。

彼の率いる第5班は火星に到着して早々にテラフォーマーの大群に囲まれ、次々に班員が殺されてしまう窮地に陥ります。しかしこの惨状でもアドルフは最後まで諦めずに、仲間を救うべく命を賭して戦いました。そして文字どおり、自らの命をもって大量のテラフォーマーを殲滅しました。

そんな彼の意志を同班に在籍する「エヴァ・フロスト」が引き継ぎ、燈たちのいる第1班のもとへと向かうのでした。

アドルフは報われないことが多いのですが、それでも戦う彼の姿は第5班の面々の目に焼き付きました。きっとエヴァが、アドルフが見るはずだった景色を見てくれるのでしょう。彼の魂が報われることを願います。

出典:『テラフォーマーズ』12巻

最後は、第6班の班長ジョセフ・G・ニュートンです。マーズランキングは堂々の1位ですが、M.O.手術で得た力は不明。

しかし実際は不明なのではなく、彼は火星に向かうにあたってM.O.手術を受けていなかったのです。それは、エヴァの持つ「プラナリア」の力を奪取するためでした。

プラナリアは、細胞ひとつでも残れば再生できるという非常に希少価値の高いもので、テラフォーマー同様にジョセフは火星でエヴァに接触し、1度殺して、自身でM.O.手術をおこないます。

彼のニュートン一族は、人類の頂点と呼ばれる一族で、すべての能力が到達点にあります。さらなる高みに登るためプラナリアの力を欲して、今回の計画に参加しました。艦内へのテラフォーマーの侵入から中国の裏切りまで、実はすべてがこの男の掌の上でした。

間違いなく作中最強キャラクター、胡散臭い一族の次期当主であり、まさに完成された人間です。読者も最後の最後までこの男の人懐っこい笑顔に騙されてしまうことでしょう。いったい彼は何を見据えて、どこへ行こうというのか、第3部でも彼の動向から目が離せません。

他にもまだまだ多くの登場人物がおり、それぞれに見せ場があります。第1部のように輝かしい最期を迎えるキャラクターも多数いて、無駄死にをする者が少ないこともこの作品の凄いところでしょう。

それに加えて第2部では、多くのテラフォーマーと戦い、派手な戦闘シーンやかっこいい技などを拝むことができます。キャラクターの心情だけではなく、ひとつひとつのバトルからも目が離せません。

さて、今回の計画で生き残った者は20人。彼らは火星で起きたことを忘れることはないでしょう。怒りや悲しみがあれど、前に進むのみ。そして、舞台は地球へと移ります。

第3部(地球編)のあらすじをネタバレ紹介!

アネックス1号の乗組員の帰還から約1年、膝丸燈は「一警護」と呼ばれる、彼の育ての親であった草間紫暮の息子の草間朝太郎が所属する民間企業に就職していました。その業務内容は、地球に潜り込んだテラフォーマーの捕獲と討伐……テラフォーマーはついに地球に乗り込んできてしまいます。

一警護には燈の他にも火星から帰還した者が数名おり、その他にもM.O.手術を受けた者たちが在籍していました。彼らは潜んでいるテラフォーマーを捕獲しては、さまざまな情報を得ようとしています。そして、テラフォーマーが利用する研究施設の情報を手にしました。

燈を含む一警護の4人は、その施設があるという東シナ海に浮かぶ島へと向かいます。そこでは人間を使って、非人道的な研究がおこなわれていました。そしてそこは、テラフォーマーに加え、ニュートン一族と中国の息のかかった施設でした。

その事実は燈らの怒りを買い、研究施設で一警護とテラフォーマーとの全面衝突が起こります。しかしそれは多勢に無勢であり、一警護の面々は窮地に追い込まれてしまいました。さらに他のニュートン一族や中国の研究員、そして謎の仮面を被った者まで現れて、絶体絶命です。

しかしそこへ、ミッシェル率いるアメリカが援軍に来て……。

 

著者
["橘 賢一", "貴家 悠"]
出版日

 

第2部に比べ、新たな人物や能力も加わり、パワーアップしています。
 

C.B.技術(キマイラ・ブラッド・オペレーション)で施された新たな能力はなんと他の能力者と接触することで、その相手の能力をわずかな時間扱えるというもの。人の能力を使えるという熱い展開に、今後の戦闘シーンへの期待感が高まります。

そして、いよいよテラフォーマーが地球に侵入。しかもそこには、ニュートン一族と中国まで加担していました。第2部以上の絶望感を感じてしまいます。ただ、火星で諦めなかった者たちが、今回も諦めるはずがありません。「ラハブ」「ニュートン」「テラフォーマーの目的」など多くの謎が残っていますが、第3部ですべて解明されるのでしょうか。

我々読者は地球の行くすえと、人類の意地を見守りましょう。

 

テラフォーマー動く【20巻ネタバレ注意】

東シナ海でテラフォーマーの大群を退けた燈たちでしたが、それは同時にアメリカから中国への軍事介入を意味し、世界の情勢は混沌としたものとなります。さらに、中国の味方をしていた仮面を被った者が小吉艦長であったことが発覚。

火星で死んだと思われていた彼は、中国に回収されて生き延びていたのです。しかし彼は中国に操られている状態でした。

さらに、この混乱に乗じて、テラフォーマーの大群が南極から日本へと迫ります。彼らの目的は、日本という国を乗っ取ることだったのです。

著者
["橘 賢一", "貴家 悠"]
出版日

くしくも日本とテラフォーマーの戦争が勃発。突然の事態に混乱する日本の首脳部でしたが、蛭間一郎の指示のもと、機密兵器を用いてテラフォーマーに対峙します。

そしてこの機に草間朝太郎が、テラフォーマーの頭であろう「祈る者(インヴオーカー)」と名付けられた個体に接触して……。

休む間もなく急展開を迎えます。日本はどうなるのか、朝太郎とインヴオーカーはどうなるか。今後が気になる展開です。

 

ここまで読んでくださった『テラフォーマーズ』ファンのあなたにおすすめの漫画を紹介しています。どうぞご覧ください!

『テラフォーマーズ』好きにおすすめの漫画5選!

『テラフォーマーズ』好きにおすすめの漫画5選!

『テラフォーマーズ』と言えば、豪快な世界観と登場人物の多種多様な能力、そして忘れてはいけない黒いアイツとのバトルが魅力的ですよね。今回は迫力満点の戦いが楽しめるSF漫画を5作ご紹介していきます。

これだけでは語り切れないほどの魅力が『テラフォーマーズ』には詰まっております。それはぜひご自身の目で確認してください。

 

『テラフォーマーズ』を含むおすすめのサバイバル漫画を紹介した以下の記事もあわせてご覧ください。

おすすめサバイバル漫画厳選10冊!無人島、幽霊、謎の生物……

おすすめサバイバル漫画厳選10冊!無人島、幽霊、謎の生物……

私達は日々平穏な日常生活を送っていますが、生命とは本来、種を残すためにサバイバルをしているものです。実感することはなかなか難しいですが、そんな私達にサバイバルのなんたるかを教えてくれる、おすすめのサバイバル漫画を10作品ご紹介しましょう。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る