森本哲郎は、文明評論の第一人者として知られる評論家です。大学生のうちから風刺雑誌の編集長を務め、数々の活躍を果たしました。
東京大学文学部哲学科を卒業し、大学院に進学した森本哲郎は、大学院在籍中に東京新聞に入社し、社会部の記者を務めていました。他にも学生のうちに風刺雑誌『VAN』の編集長を任されるなど、才と実力を兼ね揃えていた人物です。
大学院の卒業後は、東京新聞や朝日新聞で記者を務めました。朝日新聞では学芸部次長、『週刊朝日』の副編集長、東京本社編集委員などを担います。1972年、グアムにて残留日本兵の横井庄一が発見された際、現地取材を担当したのも森本でした。1976年に朝日新聞を退社してからはフリーの評論家として活動をはじめます。
この頃すでに『神々の時代』から始まり、『文明の旅 歴史の光と影』や『サハラ幻想行 哲学の回廊』『人間へのはるかな旅』など数々の著書を出版しており、高い知名度を築き上げていました。その後はさらに活動の幅を広げ、1980年にはTBSの情報番組でキャスターを務め、1988年には東京女子大学で教鞭も取りました。
生涯を通じてさまざまな顔を持ち、自身の考えを世の中に送り出し続けて来た森本哲郎。その著作の中から、特におすすめしたい5冊を紹介します。
本作で森本哲郎は、古今東西の多様なジャンルにおける賢人たちの言葉を選定し、文化論・文明論的に解析しています。取り上げられているのは哲学者や文学者、詩人などをはじめとして、ビートルズの歌詞まであり、多くの読者の好奇心を刺激する一冊といえるでしょう。
夏目漱石や荘子、フランシス・ベーコンやオスワルト・シュペングラーなど、あらゆる時代の言葉を拾い上げながら本質に迫っています。読書の楽しみや、考えることの魅力を、あらためて感じてみませんか?
- 著者
- 森本 哲郎
- 出版日
本作では、人類の長い歴史において脈々と築かれてきた「ことばの森」を放浪します。「ことばの木」に出会い、その木から「本質」を発見していく方法を、シンプルで分かりやすい文体で教えてくれるのです。
取り上げている偉人や賢人のジャンルも多岐に渡っているため、たくさんの層が手に取りやすいでしょう。
また、本作は有名な言葉をピックアップしただけでなく、森本哲郎ならではの洞察力と思索により、それぞれの言葉の本質を論じています。自分の解釈と照らし合わせてみる、という読み方も楽しめるかもしれません。
日々何気なく使っている言葉について、あらためて考えるきっかけ得られるのが本作です。身近な言葉を通して「日本的性格」が何なのかを分かりやすく、かつ深く掘り下げています。
たとえば、「大半の人」という表現を用いたとき、全体のどの程度の割合を想像しますか?中国語では、「大半」は90パーセント、「多半」は70パーセント、「一半」は50パーセントというように、はっきりとした数が決まっています。
しかし、日本語にこういった厳密な規定はなく、曖昧さこそが正しい場合さえあるでしょう。そんな「日本語の性質」についてを取り上げているのです。
- 著者
- 森本 哲郎
- 出版日
- 1988-03-30
本作では、日本語を通して、それを使っている日本人の性格や成立を論じています。日本語がどのようにして成り立ってきたのか、その背景に日本の風土や国民性、社会性や、よしとされる生き方についても取り上げているため、言語を通して国民性まで見ることが出来るでしょう。
誰もが口にしたことがある、身近で何気ない日本語について語っているので、気軽に手に取りやすいのも特徴です。「よろしく」「やっぱり」「虫がいい」「お世話さま」「もったいない」「どうも」など、絶対に聞いたことのある言葉がお題目として取り上げられていますよ。
本作は、古今東西の先人たちの著書や言行を取り上げ、人生の根元的な価値について斬りこんだ作品です。また、現代の人々がどのような生き方をするのがよいのかを研究した随想集にもなっています。自らの人生や生き方そのものについて、悩んだり迷ったりしたことは、誰しもあるものでしょう。
人生の局面において、先人の遺した知識を指針にするための方法を、読者に教えてくれます。カントやセネカ、シュリーマンや兼好法師、小説の主人公なども含んだ39人がモチーフとなり、人生に迷った時に読めば、きっと誰かの知恵が力になってくれるでしょう。
- 著者
- 森本 哲郎
- 出版日
39人の人物は、思想家や詩人、芸術家、小説の登場人物などです。それぞれの生き方や手がけたものを紹介しながら、「生き方の研究」が分かりやすく展開されるため、すぐに作品の世界観にのめり込むことが出来るでしょう。
実在した人物から架空の人物まで、その生きざまを深く知り、人生の根元にあるものに触れられるチャンスです。混迷とも呼べる現代社会において、何かひとつでも悩みがある人にとっては、解決の糸口を見つけるきっかけになってくれるかもしれません。
タイトルにもある「カルタゴ」は、古代北アフリカで栄えた小さな通商国家です。国家としてはごく小規模ながら、類まれなる商才により、かつてないほど間の経済的な繁栄を果たしたことで知られています。
しかしその後、カルタゴは当時の軍事大国であったローマに殲滅されられてしまいました。どうしてカルタゴは滅んでしまったのか?その歴史的な背景を追いかけるとともに、カルタゴの描写によって経済大国である日本の行く末も考えていく1冊です。
- 著者
- 森本 哲郎
- 出版日
現在の北アフリカ・チュニジアに存在していた古代都市国家・カルタゴ。その反映の歴史や、独自の優れた商売方法を紹介しつつ、どうしてローマから殲滅されるに至ってしまったのかも詳しく解説しています。経済と歴史の見識を、一気に深められる本だといえるでしょう。
さらに、このカルタゴの歴史と背景を論じながら、経済大国と言われる現代の日本についても取り上げています。森本哲郎が現地取材を行った紀行文に触れながら、現在自身が生きる国についても、考えて読んでみてください。
与謝蕪村は江戸の文人で、夏目漱石は明治の文豪です。生きる時代も環境も大きく異なっていた2人でしたが、どちらも「大らかな人になりたい」という夢を持っていました。本作は、森本哲郎が少年時代に気づいたという2人の共通点について語られた、珠玉の日本人論です。
それぞれの人生や作品論が綴られつつ、メインで取り上げられているのは夏目漱石の著書『草枕』と、蕪村の俳諧の世界です。
- 著者
- 森本 哲郎
- 出版日
作中で森本哲郎は、「『草枕』は、蕪村が俳諧の世界で描き出した、ある種の理想郷に魅了された漱石が小説化したものだ」と語っています。また「主人公の画家は蕪村自身である」とも論じており、小説と俳諧の世界が強く結びついたものであると述べました。
蕪村と漱石、両者の作品を引用しながら繰り広げられる文芸論は、圧巻と言わざるを得ないでしょう。それぞれの作品に興味を持っている人はもちろん、これをきっかけに初めて蕪村の俳諧や、漱石の小説に関心を持つ人がいるはずです。新しい世界を広げたい方におすすめします。
いかがでしたか?気になった森本哲郎作品があれば、ぜひ手にとってみてくださいね。