ラスプーチンにまつわる5つの逸話!ロシアの怪僧と呼ばれた男を知る本も紹介

更新:2021.11.9

皆さんは、20世紀のロシアで活躍した、ラスプーチンという男を知っているでしょうか。不気味な風貌で、不思議な力を持ち、さまざまな逸話を残した彼は、後に怪僧とまで呼ばれました。今回は、そんな彼にまつわる逸話と本をご紹介します。

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20世紀に実在した、ラスプーチンとは

祈祷僧を名乗っていたラスプーチンは、本名をグリゴリー・エフィモヴィチ・ラスプーチンといいます。1869年にシベリアのポクロフスコエ村に生まれ、学校に通わなかったため、大人になるまで読み書きができなかったそうです。その代わり、広大なシベリアの森で育った彼は、短期間で熊を殺す方法やトナカイを乗りまわす方法を学びました。

1877年にプラスコヴィア・フョードロヴナ・ドゥブロヴィナと結婚しますが、幼いころから聖人たちの話を聞くことに夢中になっていた彼は、1892年に唐突に父親や妻に「巡礼に出る」と言い残し、村を出てヴェルコチュヤの修道院で数ヶ月を過ごします。

そこで出会った、ミハイル・ポリカロポフに強い影響を受けた彼は、禁酒をしたり肉食を控えたりして、再び村に戻ってきたときにはすっかり熱心な修行僧になっていました。

その後、1903年に再び村を離れて巡礼の旅に出た彼は、キエフにある大修道院やカザンという都市を巡り、司教や上流階級の人々の注目を集めるようになります。

ロシア正教会の司祭であるイオアンとともに、協会の寄付金を集めるためにサンクトペテルブルクを訪れた際には、人々の病気の治療をおこなうことによって信者を増やし、「神の人」と称えられるまでになりました。

それから神秘主義に傾倒するミリツァ大公妃ら姉妹から寵愛され、1906年には爆弾テロにより負傷したピョートル・ストルイピンの娘の治療を、1907年には血友病患者であったアレクセイ皇太子の治療にあたります。

20世紀のロシアでは、血友病は不治の病と考えられていたため、アレクセイ皇太子の容体が翌日になり改善されると、彼は皇帝夫妻から絶大な信頼を勝ち取ることに成功したのです。

しかし、彼が皇帝夫妻から信頼され、容易に謁見できるようになったことは、他の貴族たちの反発をかってしまいます。

嫉妬や反感を持った貴族たちは、彼に対するデマを流したり暗殺を企てたりし、1916年、ついに彼は、貴族のひとり、フェリックス・ユスポフの一派によって暗殺されました。

ロシアの怪僧ラスプーチンについて知っておくべき5つの逸話

1:冬の冷たい川で溺れ、肺炎に罹ったのに助かった

ラスプーチンは、幼い頃に兄とともに川へ魚釣りに行って、溺れたことがありました。当時はまだ雪が溶けたばかりの冷たい4月の川だったため、兄も彼も肺炎にかかって意識不明になってしまいます。

兄は亡くなりますが、彼だけは一命を取り留め、意識を取り戻した際に、「ありがとうございます、奥様、やっとお会いできました」(『怪僧ラスプーチン』から引用)と起きあがって叫んだそうです。

奥様という人は、空色と白色の服を着た、たいそう美しい婦人だったそうで、村では聖母マリアだったのではないかという話も出たほどでした。

2:どんな暴れ馬でも調教できた  

彼は百姓の家で育ったため、幼い頃に馬の調教を教わっていました。その能力は並外れたもので、彼の声や彼の愛撫に触れた馬は、どんな荒馬であったとしても魔法にかけられたように大人しくなって言うことを聞くようになったといいます。

3:催眠能力でものを持ちあげることができた

彼は、長身のニコライ大公が横になったテーブルを、ニコライ大公が上に乗ったまま、一切手を使うことなく催眠能力だけで持ちあげたそうです。

また村で起こった馬泥棒事件の犯人を、現場を見ずに言い当てるなど、予知能力もありました。

4:青酸カリを飲んでも2時間以上生きていた

青酸カリを服用すると、普通の人なら数分もたたぬ間に死んでしまうはずです。しかし彼は暗殺される際、青酸カリ入りのお菓子をほとんど平らげ、青酸カリ入りのワインを飲み干しても2時間以上生きていたそうです。これには暗殺を実行した張本人の貴族、ユスポフも驚いたのだとか。

5:自分の死とロマノフ朝の崩壊を予言していた

彼は暗殺される前に皇帝夫妻へあてた手紙を残していました。そこでは、

「私は、正月までに死ぬに違いないと感じている」
「もしわしを殺すものがただの人殺しか、わしと同じ百姓なら、汝、全ロシヤの皇帝よ、何一つ汝の恐れねばならぬことはない。汝は帝位に残り、汝の子らは永くロシヤを治めるであろう」
「しかし、もしもわしを殺害するものが貴族であるなら、彼らの手は永遠にわしの血に塗れ、彼らは祖国を追われることになろう。彼らは兄弟どうし殺し合い、ロシヤにはもはや、貴族も皇帝も、また皇帝の末裔もいなくなるであろう」(『怪僧ラスプーチン』から引用)

と述べられていました。この予言のとおり、1917年にレーニンを中心としたロシア革命が起き、たび重なる革命によって300年続いたロマノフ王朝は崩壊しました。

ラスプーチンの生涯に迫った一冊

怪しげな風貌と奇妙な死に方、不思議なほど当たっている予言の数々から、怪僧と呼ばれたラスプーチン。シベリアの百姓の5男として生まれ、ロシアの貴族に暗殺されるまでの彼の人生とはいったいどのようなものだったのでしょうか。

著者
マッシモ・グリッランディ
出版日
2003-05-23

この本には、シベリアの百姓の息子として生まれた彼が、どのようにして怪僧となったのかについて、史実に基づいた内容が詳細に書かれています。一般的には、淫らで嘘つきで強欲な悪者のような見方をされているラスプーチンですが、読んでみるとそうではなかったことに気づかされるでしょう。

日常生活において、大勢の人が言っていることが必ずしも正しくないことはままあります。悪い噂や評判が、本当にその人のおこなったことなのかどうかというものは、実際にその人の生き方を見てみないとわからないはずです。

本書では、彼がしてきたことや彼を取り巻く人々がしてきたことが、史実に基づいて詳細に述べられています。

その内容には、今まで私たちが彼について想像もしていなかった事実がふんだんに盛り込まれています。本書を読めば、少しはこの悲しき怪僧を理解できるかもしれません。

ロシアという国の精神

本書は、ラスプーチンの味方だった人々がロシア革命後に語った証言がもとになっていて、彼がどのような人物だったのか記してあります。

著者は、歴史上の人物を題材としたノンフィクションを手掛けている、エドワード・ラジンスキー。ソ連時代は、人気のある劇作家でした。

著者
エドワード・ラジンスキー
出版日
2004-03-27

ラスプーチンや彼を取り巻く貴族や皇帝などの人物を通して、ロシア社会の姿が見えてきます。ピョートル大帝の時代から現代にまで続くロシアの精神を感じることができるでしょう。

学術的知見に基づく、新しいラスプーチン伝

彼の逸話のなかでもっとも有名なものであり、もっとも嘘だと思われている自然治癒能力。

彼には本当にそのような力があったのでしょうか。

著者
コリン ウィルソン
出版日

本書は、自然治癒能力というものについて、学術的知見から紐解いています。

彼をそういった能力のある人物だとみなしたうえで伝記を書いているので、ほかの作品とはひと味違った観点でラスプーチンという人物に迫ることができます。

暗殺者の独白。加害者から見たラスプーチンとは。

暗殺者本人が書いたという衝撃の一冊です。彼から見たラスプーチンは、いったいどのような人物だったのでしょうか。

著者
フェリクス・ユスポフ
出版日

 

本書は、多くのラスプーチン伝の暗殺シーンの元ネタとなっている作品です。ユスポフはなぜラスプーチンを暗殺しようと考えたのか、彼の目から見たラスプーチンとはどのような人物だったのか、ということが分かる一冊になっています。

なぜ、人は人を殺すのか、ということを考えさせられる作品です。

 

いかがでしたでしょうか。数多くの謎が残っている彼の人生は、多くの映画作品にもなっています。皆さんは、本当の彼の姿を知った時、噂話や風評を鵜呑みにすることがどれほど危険なのかについて考えることでしょう。

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