白洲正子は、自分の感性を羅針盤としての多くの著作を残しました。ユニークな視点からアプローチした文芸論や、自ら訪ね歩いてまとめた紀行文は、彼女の深い知識と教養にあふれています。
白洲正子は、吉田茂のブレーンとして知られた白洲次郎の妻です。文筆家として、また、美術収集家として広く知られています。
1910年に生まれ、幼いころから能を習った彼女は、女性ではじめて能楽堂の舞台にあがりました。アメリカの高校を卒業し、帰国後19歳で白洲次郎と結婚。そこからは古美術の世界にはまっていきます。
近代文芸界の評論家として活躍した小林秀雄、骨董界の著名人である青山次郎をはじめ、広範な文化人との交流を重ね、それを活動の糧としてきました。全国を訪ね歩き、優れた紀行文や美術論を著し、また、美術品の収集も熱心におこなっています。
1964年に『能面』で、1973年に『かくれ里』でそれぞれ読売文学賞を受賞しています。
幅広い知識と、優れた見識で書かれた作品は、高く評価され、多くの人に感銘を与え続けました。
白洲正子は幼いころ、「韋駄天おまさ」という異名をとるほどおてんばで、まるで男の子のようだったため、家人からは「まあ坊」と呼ばれていたそうです。本書では、そんな彼女が14才で女性として初めて能舞台に立ったいきさつを知ることができます。
文芸界や美術界で活躍する小林秀雄、青山二郎など錚々たる人々とのネットワークが、彼女の鋭い審美眼と感性の背景であることがわかるでしょう。
自由闊達な文体に思わず惹き込まれてしまいます。
白洲正子自伝
白洲正子といえば、能や美術界、文芸界ではその名を知らない人がいないくらいの存在です。日本全国を旅し、優れた紀行文を世に出し、文学賞も受賞しています。
この自伝では、小林や青山などとの交流をとおして、文芸界や美術界をめぐるエピソードも知ることができ、彼女の幅広い活動のバックボーンを知ることができます。
豊かな知識と深い教養に裏打ちされた、白洲正子の魅力を存分に味わえるでしょう。
西行は、諸国を放浪したその途上で多くの和歌を詠み、「願はくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」の歌でも知られています。その風雅な歌風は、宗祇や芭蕉にも大きな影響を与えました。
本作は、白洲正子が西行ゆかりの地を訪ね歩き、独自の感性による考察をした、一風変わった西行論です。
- 著者
- 白洲 正子
- 出版日
- 1996-05-29
西行は和歌の世界に大きな足跡を残し、後世の歌人たちにも大きな影響を与えたといわれていますが、若くして出家したこともあり、詳しいことは知られていない謎に包まれた存在でもあります。
正子が幼いころから親しんだ能の演目には、西行と観音をテーマとした「江口」というものがあり、彼女にとってその生き様や感性には、心惹かれるものがあったのかもしれません。
西行が放浪したその土地を訪ねながら、正子が感じ、考察した事柄が、能のような幽玄さで迫ってくる一冊です。
『かくれ里』は、白洲正子の著作のなかで金字塔的な作品です。鋭敏な感性で綴られ、読売文学賞を受賞したこともあり脚光を浴びました。
日本の山里の奥ゆかしく端正な佇まいの暮らしぶりに心惹かれた彼女が、現地に足繁く通いつめて書いた紀行文になっています。
- 著者
- 白洲 正子
- 出版日
- 1991-04-03
正子は、この著作で一躍脚光を浴びました。それにあわせて、これまであまり知られていなかった奥琵琶湖の菅浦などの魅力も知られるようになります。著作を読んだことをきっかけに、「かくれ里」へ旅をした人も発表当時は多かったそうです。
本作からは何より、自然を大切にしながら素朴な生活を慎ましやかに送っている、人々の暮らしぶりの魅力が伝わってきます。時間に追われ、効率ばかりを追ってしまう現代社会の我々にとって、癒しとなってくれる一冊でしょう。
本作は、工芸や伝統を大切に守り、受け継いでいくことの重要性を訴えたいという思いで綴られました。匠の技の担い手を訪ね歩き、考察しています。
真摯に仕事に向き合う職人たちの姿に、感銘を受ける彼女の姿が目に浮かんでくるようです。
- 著者
- 白洲 正子
- 出版日
- 1984-12-20
日本の伝統文化は、自然豊かな日本の風土の中で育まれてきました。絵画をはじめ、民芸品に至るまで、自然の豊かさがその土壌にはあるのです。
しかし、戦後の急速な経済成長は、伝統的手工芸に大きなダメージをあたえました。生活様式の変化は、多くの伝統工芸家を悩ませることになります。美の世界に関わる正子も、そのことは痛いほど感じていたことでしょう。そんな時代の流れを嘆きつつ、伝承の重要性を訴えます。
美しい風景と、本当の意味での豊かな暮らしは、切っても切り離せないものであることを改めて感じさせられます。
日本の文化を考えるうえで重要な百人一首については、入門書的なものから専門的なものまで、さまざまな書物がありますが、なかでも本作は、白洲正子の独特の視点から百人一首を読み解いたものです。
単なる入門的なものではなく、違った角度から親しむことができます。
- 著者
- 白洲 正子
- 出版日
- 2004-12-22
白洲正子は、幼い頃から伝統文化の世界に親しんできました。本書は、そのような環境で育まれた感性で書かれ、異彩を放つ百人一首論です。和歌や日本の伝統文化に造詣が深い彼女の手にかかると、百人一首が編まれたその背景には、貴族社会における人間模様が見えてきます。
これまで百人一首の世界に親しんできた人にとっても、彼女独自の世界観で読み解かれていてとても参考になるでしょう。
正子の世界観を取り入れることで、より深く、百人一首の世界に触れることができます。
かの有名な白洲次郎の伴侶である白洲正子もまた、後世に大きく名を残した人でした。
そうした正子の活動を知ることは、日本の伝統文化を知るうえで、大いに参考となるものです。彼女の著作は、私たちの文化や伝統をより深く知るための水先案内人的な存在となっています。