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『ふたがしら』が面白い!オノナツメの名作漫画について最終回までの5つの考察

更新:2017.9.20 作成:2017.9.20

オノナツメが描いた名作漫画『ふたがしら』。江戸時代を舞台にふたりで1つの盗賊の一味を作りあげた男たちの話です。一味は大きくなるまでに、ふたりは本来の性格とは違う、「鬼」と「仏」の役割を担わなければなりませんでした。切なさも感じる名作です。

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漫画『ふたがしら』が面白い!オノナツメの傑作漫画をネタバレ考察!

作者のオノナツメは、まるで映画を見ているかのような絶妙な「間」の描写に定評があり、時代劇、SF、海外マフィアまで幅広いジャンルの作品を手がけて来ました。そんなオノナツメによる『ふたがしら』は、江戸時代を舞台にした漫画です。

その魅力があるからか、松山ケンイチ、早乙女太一、成宮寛貴、菜々緒などでドラマ化もされており、その人気から第2シリーズまでが制作されました。


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著者
オノ ナツメ
出版日
2011-12-27

主人公は、弁蔵(べんぞう)と宗次(そうじ)という2人の盗賊。お世話になった頭領が亡くなったことをきっかけに一味を抜け、彼らは「でっかいことをやる」ために旅を続けます。

実は、オノナツメの過去の作品である『さらい屋五葉』では、すでに名を上げて老人となった弁蔵と宗次が登場しています。

作者は、それぞれがなぜ「鬼蜘蛛の弁蔵」「仏の宗次」と呼ばれるようになったのかを描きたかったそうです。この記事では、ストーリーの中で変わって行く2人と、過去作『さらい屋五葉』との繋がり、ストーリーを魅力的にする名言について考察していきます。ネタバレを含むので未読の方はご注意ください。


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漫画『ふたがしら』で正反対のふたりがでっかい夢を成し遂げる【あらすじ】

漫画『ふたがしら』で正反対のふたりがでっかい夢を成し遂げる【あらすじ】
出典:『ふたがしら』1巻

江戸時代、名を轟かせていた盗賊団「赤目」に属していた弁蔵と宗次。赤目の頭は死に際に、一味を2人に託しました。その言葉のとおり、彼らは一味を盛り立てようとしますが、頭の妻の策略で「甚三郎」という男を新たな頭にされてしまいます。

2人は赤目を抜け、「でかいことをしよう」と旅に出ます。しだいに2人を慕う者も増えたため「壱師」という一味を作り、2人とも頭になりました。

しかしそんななか、それぞれの考え方には徐々にずれが生じるようになっていくのでした……。

『ふたがしら』の魅力をネタバレ考察1:変わっていく男、鬼蜘蛛・弁蔵

『ふたがしら』の魅力をネタバレ考察1:変わっていく男、鬼蜘蛛・弁蔵
出典:『ふたがしら』1巻

騙されやすくお人好しなため、しばしば捕らえられることもあった弁蔵。宗次の助けが来ることを疑わず、「宗次がいなければ無理だ」と言うこともあるほど、彼のことを信頼していました。当時は酒を飲んで暴れたり、好き勝手に振る舞うような若さもありましたが、義理を大切にし、曲がったことは許さない性格でした。

悪党なのは俺らも変わらねえけど、悪さするのに殺生するのはぜってぇ無しにしようぜ
(『ふたがしら』2巻から引用)  

これは宗次と交わした約束で、弁蔵の人の良さが伝わるセリフです。

この言葉のように、殺しを嫌い、面倒見がよく慕われていた彼ですが、一味を大きくしていくにつれ「鬼蜘蛛」と呼ばれ、仲間からも恐れられるようになっていきます。

自分の場所を失い、盗賊になるしかなかった宗次たちとは違い、家族や帰る場所もあった弁蔵。盗賊でなくとも、たとえば商人としてでも大成したのかもしれません。宗次からは「盗賊には向いていない」と散々言われていました。

しかし、仕方なくではなく、自分の意思で盗賊をやり続け、一味からも慕われ続けた弁蔵のまっすぐさはとても魅力的です。

作品ではそのまっすぐさがストーリーを危ない方向へ進めたり、宗次の反感を買ったりします。そして彼とのいさかいを経て、彼は変わるのです。

それまでは明るくおちゃらけた性格だった男が、鬼とまで呼ばれる人物にまで変わっていく様子は、作品に凄みを与え、より裏社会の雰囲気、怖さを演出しています。

『ふたがしら』の魅力をネタバレ考察2:変わっていく男、仏の宗次

『ふたがしら』の魅力をネタバレ考察2:変わっていく男、仏の宗次
出典:『ふたがしら』1巻

弁蔵の相方である宗次は、自分勝手ですぐ熱くなる弁蔵とは真逆で、常に冷静に物事を見きわめています。

線の細い美しい見た目に加えて口も達者なため、裕福な家の女性に嘘の身の上話をして同情を引いては情報を集めたり、盗みを働くために利用したりすることもよくあります。それは時に冷酷なほどで、自分が慕っていた女すら利用し、そのせいで死んだと聞いても顔色ひとつ変えませんでした。

騙されやすい弁蔵と2人で罠にはまった際も、落ち着いてに状況を判断し、物事の本質を見極めます。しかし、壱師を結成した頃から彼との関係に違和感を覚え始めます。心のどこかで「もしかしたら弁蔵には自分はもう必要ないのではないか」と感じながらも、彼の側を離れませんでした。

冷徹で、どこか影もある宗次。キレ者ですが、弁蔵の真っ直ぐさが眩しく、叶わないと嫉妬することもある人間らしい様子も見せます。しかし、一味が大きくなるにつれて「鬼の弁蔵」を抑えるための「仏」の役割を背負うことになり、ますますその本心は語られなくなってしまうのでした。

宗次は当初から弁蔵をおさえるブレーキ的存在でしたが、彼の静止すらも効かぬようになっていった時から、その存在で寂しさを物語に演出する人物です。

冷静な分、自分たちの間でどうしようもなく溝が深まっていくことを感じ、無口な性格から存在自体でそのすれ違いの悲しさを読者に感じさせます。

『ふたがしら』の魅力をネタバレ考察3:変わっていくふたり。一味の絶頂期を省く物語の妙

『ふたがしら』の魅力をネタバレ考察3:変わっていくふたり。一味の絶頂期を省く物語の妙
出典:『ふたがしら』6巻

先代の頭から「白と黒の碁石のように違う」と言われていた弁蔵と宗次。そんな2人が亡き頭の思いを継ぎ、「赤目以上の一味をつくる」という決意の元で信頼し合い、尊敬できる男・芳(よし)を仲間に加え、新しい一味である「壱師」を結成しました。

しかし、壱師を大きくしようと勤めを焦った結果、芳は亡くなってしまいます。彼を殺したのは赤目でした。芳亡き後、壱師を2人だけでやっていくために、彼らは変わらなければなりませんでした。

芳が殺された際、赤目も皆殺しにされる事件が起こります。壱師の仲間は「鬼蜘蛛の弁蔵」が犯人と考えましたが、実際はそうではありませんでした。しかし、芳が亡くなったことで荒れる弁蔵は、もとの人情味溢れる彼には戻れなくなってしまったのです。

弁蔵は赤目を皆殺しにした犯人として恐れられる頭に、そして宗次は弁蔵を抑える仏の頭となり、お互いを補い合いながら一味を盛り立てていくのです。

しかし、壱師の絶頂期の様子は物語では描かれません。芳を亡くし、目指す場所を失った彼らにとって、空っぽのままどんどん大きくなる壱師は虚しいものだったからかもしれません。物語はそのまま壱師に触れず、数年後へと飛びます。

ここまで読んできた読者としては彼らの成功が自分のことのように嬉しく感じられます。正反対のふたりだからぶつかり合いながらひとりでは成し遂げられなかったことを成就させたのだと思えるのです。

しかしこのあとの展開は、ここでの喜びが大きい分、ショックも強力なものになります。ふたりがふたりであるがゆえのままならさが描かれていくのです……。

『ふたがしら』の魅力をネタバレ考察4:『さらいや五葉』と繋がるストーリー。最終回はすでに前作で明らかになっていた!

『ふたがしら』の魅力をネタバレ考察4:『さらいや五葉』と繋がるストーリー。最終回はすでに前作で明らかになっていた!
出典:『ふたがしら』7巻

壱師が頂上まで来たことを見届けた宗次は、とうとう壱師を抜けることに。てんでバラバラな方向を見据えながら、それでも並んで歩いて来た2人は、ついに別々の道に進むことになったのです。

宗次が抜けた後の弁蔵は、意地でさらに壱師を大きくしますが……。

最終回では、弁蔵について語る宗次の姿が見られます。実は前作の『さらい屋五葉』で、すでに別々の道を歩んでいる彼らの姿は描かれていました。

『さらい屋五葉』でも、「人には向き不向きはあるんだ」と語っている宗次。以前は「向き不向きじゃない」と逆のことを語っていた彼の心を変えたのは、弁蔵の存在です。二つの作品にまたがって広がるストーリーは、どちらの作品も読むことで、より理解の深まる素敵な作品となっています。

そして前日譚でありながら、『さらい屋五葉』ですでに結末の分かっている本作最大の魅力は、道が違えることが決まっていながらもその過程に引き込まれる切なさです。

ふたりは違うからこそ一味を大きくすることができましたが、それゆえに別れていきます。そのことは分かっているはずなのに、その過程でハラハラドキドキし、成功すればともに嬉しくなり、失敗すればともに落ちこみ、彼らの時間がずっと続けばいいのに、と思わされてしまうのです。

それぞれの性格、一味の一番輝いていた頃、そして別れ、すべてが作品のその切なさを演出する重要な要素になっています。ぜひ読者の方もその魅力をご自身の目でご覧になってみてはいかがでしょうか。

『ふたがしら』の魅力をネタバレ考察5:作品を彩る名言の数々

野望を果たすために旅に出た盗賊達を描いた、漫画『ふたがしら』。

人情に厚く思うがままに行動する弁蔵と、冷静沈着で頭のキレる宗次。正反対の性格を持つ2人ですが、目指すものは変わりません。そんな彼らの熱い気持ちから生まれる名言の数々を厳選してご紹介します。 

漫画『ふたがしら』の名言①「ひとりじゃ無理だって分かってる」

漫画『ふたがしら』の名言①「ひとりじゃ無理だって分かってる」
出典:『ふたがしら』1巻

団子屋でいちゃもんをつけられ、盗賊の一味と言い合いになった弁蔵。持ち前の腕っぷしで喧嘩には勝ったものの、報復として夜な夜な歩いている所を襲われ監禁されてしまいます。

知らせを聞いた宗次はやれやれと呆れながらも、弁蔵を救い出す計画を練り始めました。町人の噂から監禁されている場所を特定し、その牢の鍵を持っているおなごまでも一瞬で把握すると、すぐさま彼女をおとしにかかります。仲を深めたおなごとゆうゆう弁蔵の元へ向かう宗次。牢の鍵を開けてもらうや否や、彼女の腹に拳を食らわせ、意識を飛ばしてしましました。 

「分かってるよ。1人じゃ今は無理だってな!」
(『ふたがしら』1巻より引用) 

助けに来ることは分かってたと言わんばかりのこのセリフ。お互いのことを認め信じ合う2人の関係性が、とてもよく表れています。 

漫画『ふたがしら』の名言②「でっけえことやらねえとな」

漫画『ふたがしら』の名言②「でっけえことやらねえとな」
出典:『ふたがしら』1巻

世話になっていた頭領が亡くなる寸前に、手を強く握られ頭を任されていた弁蔵と宗次。しかし頭の妻の策により、遺言を捏造され、甚三郎に頭の座を奪われてしまいました。「てめえが頭になった赤目の名なんて名乗らねえよ」と言い残し、旅に出る2人。

「俺らはでっけえことやらねえとな!」(『ふたがしら』1巻より引用) 

一文無しに飛び出し路頭に迷っていましたが、赤目より大きい組をつくることを決意し大阪へと向かいます。情熱的な弁蔵はもちろんですが、普段はクールな宗次も何かを成し遂げたいという強い思いをもって旅に出ました。冒頭ではまだ同じ野望を掲げ、同じ道を歩んでいた2人ですが…… 

漫画『ふたがしら』の名言③「ここがてっぺんだとは思わないか?」

著者
オノ ナツメ
出版日
2016-09-12

前述の通り、最終的には違う道を歩むことになった弁蔵と宗次。きっかけは鍵外しの仙吉が抜けてしまうことで、盗賊としての限界を感じたことにあります。その思いを伝えるために弁蔵の元へと向かう宗次。

「八王子をお前と共に出たが、
 まさかここまでのことが成せるとは思ってなかった。
 ここが頂上(てっぺん)だとは思わないか?」
(『ふたがしら』7巻より引用)

まだまだ上を目指せると考えていた弁蔵とは逆に、限界を感じ満足感を覚えてしまった宗次。壱師が頂上まで来たことを見届けた彼は、とうとう壱師を抜けることになります。性格こそ真反対だったものの同じ野望を掲げていた彼らは、どこかで食い違ってしまったのでしょうか。2人の別れは悲しいものではありますが、宗次は晴れやかな顔をして新たな旅立ちを迎えました。

弁蔵と宗次が別れることは初めから決まっており、彼らがどういう過程を経てそれぞれの道を歩むことになったのかを描いた作品が『ふたがしら』だったのです。

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漫画『ふたがしら』を楽しもう!江戸を舞台に描かれる二人の男の生き様とは?

著者
オノ ナツメ
出版日
2011-12-27

マフィアが登場する裏社会を描いた漫画から、SFがテーマの作品など、さまざまな作風で描き続けているオノ・ナツメ。絵柄が独特で、デザイン性に富んだタッチが魅力で、ファンも多いです。

『ふたがしら』は、そんな人気作家が江戸時代を舞台に描いた物語。かっこいい時代劇、という一言がぴったりの作品です。

本作を彩るのが性格の異なる2人のイケメン。お人好しで明るい弁蔵と、男の色気漂う冷静沈着な宗次です。

淡々と、しかし根深い部分でたしかに燃えているような空気が醸し出されるなか、彼ら2人はそれぞれの思いを背負って旅を続けていきます。

日常とかけ離れた物語を味わいたい方に、特におすすめしたい作品です。ぜひ一度、独特の雰囲気を感じとってみてくださいね。

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今回は『ふたがしら』をご紹介しました。『さらい屋五葉』に登場したふたりが、なぜその道を歩むようになったのか。一言では語りきれない過去を描いた魅力的な作品です。ぜひ読んでみてください!