ハゴロモ
窓ガラスが湯気で曇っていたこと、スプーンが皿にあたる音、そんな些細な事まで覚えているもので、そんな些細な記憶がきっかけで他の思い出まで引き出されることってある。失恋での落ち込みっぷりが半端じゃない「私」がふるさとに帰って、人と関わりながら癒されていくんですが、読んでる方も一緒に癒されます。そしてその道筋がとてもさり気なく、時間が流れていくのと同じ速さでものごとが進んでいく感じに、とてもホッとすることができました。赤いダウンの「大丈夫な人」みつるくんの存在がとても頼もしくて、あぁこんな人っているなぁと思いました。
とかげ
現実にもあり得るストーリーながらも、ファンタジーの雰囲気を纏って感じられるお話達の短編集。子供の頃の経験から、人は抜け出すことができるのかと考えることがあります。小さい頃、身近な人間の悲惨な死を、間近に見る経験をした「とかげ」と似た境遇のその恋人「私」の物語。終わるはずがないと思っていた暗くて閉塞した状態が、終わる。ガラスケースの中に入った植物たちが助け合うように伸びていく先のない気分も、新しいたった一言で変わったりもする。そんな希望に共感しました。
パイナップリン
作家さんのエッセイを読むのが好きです。素敵な物語を書く人の日常に触れることができる。そしてやっぱり、ぐっとくる話をしてくれています。「子供の頃、あるように思えた無限の可能性は失ってしまっても、ずっと毎日やってきたことが、ちゃんと心や頭に残るから、大人になるっていいことだなあと思う」確かにそうだよなあ、毎日を、頑張ろうと思う。S・キングを愛しているらしい。好きな人の好きな物はやっぱり気になる。私もS・キングを、読んでみようと思う。