「涼宮ハルヒ」シリーズや『灼眼のシャナ』シリーズを手掛ける絵師・いとうのいぢは、その絵柄の特徴から、「のいぢ絵」という呼称がつくほど有名なイラストレーターです。今回はいとうのいぢがイラストを手掛けた作品の中から特に人気の高い5作品をご紹介しましょう。
いとうのいぢは1977年生まれ、兵庫県出身の女性イラストレーター。このペンネームは、好きなバンドマンの名前を組み合わせてつけられたものです。
彼女は高校時代に触れた絵やゲームをきっかけに、キャラクターデザイナーを目指します。専門学校を経て、地元大阪のゲーム制作会社という条件で就職先を探していたところ、知らずにアダルトゲーム会社の面接を受けてしまいますが、そのまま就職。その会社でCGを学び、主力原画家として活躍しました。
「涼宮ハルヒ」シリーズのイラストを手がけることになったのは、原作者の担当編集者がネットサーフィン中、たまたまいとうのいぢのホームページを見て声をかけたことがきっかけであり、偶然の出世作となりました。これをきっかけに多数の有名ライトノベルで挿絵を担当。「このライトノベルがすごい!2008 」では、女性イラストレーター部門で1位を獲得しました。
このように、イラストレーターやキャラクターデザイナーとして名を馳せている一方、「富士壺機械」という同人サークルを主宰しています。以前はコスプレイヤーとして活動したこともありました。
著者・谷川流による、シリーズ累計1800万部を超えた大ヒット作品。シリーズ第1作目となる本書は「スニーカー大賞」の大賞を受賞しました。
ごく普通の男子高生「キョン」は、好奇心からクラスメイト・涼宮ハルヒに話しかけます。彼女は「ただの人間には興味がない」というちょっと不思議な人物で、クラスのなかで浮いていました。その後も2人は交流を重ねていきます。
「楽しい部活がない」というハルヒの思い付きで新しい部活「SOS団」を発足させますが、そこに集まった部員にはそれぞれ秘密があって……。
- 著者
- ["谷川 流", "いとう のいぢ"]
- 出版日
アニメ化をきっかけに、一大ブームを巻き起こした大ヒット作品。ちなみに、いとうのいぢは小説のイラストのみを担当しています。アニメ版は小説を忠実に映像化されていますので、アニメから「涼宮ハルヒ」シリーズのファンになったという方でも、既存の世界観を崩すことなくストーリーを楽しむことができるでしょう。
またアニメ版では、キャラクターデザインを他のイラストレーターが手がけていますが、双方の作画に違和感はほぼありません。
男子高校生・キョンの目線で物語が描かれているラノベ版「涼宮ハルヒ」シリーズ。ハルヒをはじめとする主要登場人物が大変個性的ななか、彼だけがごく普通です。しかし、彼が限りなく読者に近い感覚を持ってくれているおかげで、宇宙人や未来人、超能力者など多様な設定が登場しても、作品が読みやすさを失わないのです。
本書において、いとうのいぢの挿絵はとてもシンプルかつ的確なラフ画スタイルとなっていあす。一枚の絵として目を引きながらも、物語の世界観に幅を持たせるような仕上がりとなっていますので、ぜひストーリーと合わせて堪能してみてくださいね。
著者・ 高橋弥七郎による学園ファンタジー作品。小説をベースとして漫画、アニメ、ゲームなどのさまざまな媒体で親しまれています。
主人公はごく普通の生活を送っていた男子高校生・坂井悠二。ある日、ゲーム店や本屋をめぐって道を歩いていた彼は、奇妙な怪物に喰われてしまいます。再び気がついた彼の傍には、焼けた鉄のような灼熱の髪色と瞳を持つ不思議な少女がいました。
- 著者
- 高橋 弥七郎
- 出版日
「灼眼のシャナ」シリーズは短編も含めて全26巻、累計1000万部を超える大ヒット作品。いとうのいぢは小説のイラストのみを担当しています。
物語は、普通の主人公が送るありふれた生活が崩れていくところから始まります。「怪物が出てきて喰われてしまう」などというファンタジックなシチュエーションは、現実世界ではもちろんあり得ないことのはずですが、主人公が異世界へと引き込まれていく時の描写には臨場感があり、まるで時空を超える追体験しているような感覚を味わえるでしょう。
この作品におけるいとうのいぢの作画は、大人になりきれていないシャナの若くて清純な雰囲気と、悠二が彼女に対して抱く純粋な恋心、ちょっとだけ邪な心が見事に表現されたものとなっています。
「頂いたラフ画は、終盤の直しを体感速度3倍で進めてしまう威力でした。」(『灼眼のシャナ』あとがきより引用)
著者の高橋弥七郎も絶賛する、小説版でしか見られないいとうのいぢのイラストと『灼眼のシャナ』の世界を、ぜひ楽しんでみてください。
PC用18禁アドベンチャーゲームのストーリーを岡崎いずみが小説化した作品です。
主人公は、食べることが大好きなはらぺこ学生・葛木晶。ある日突然、晶の元に「私立鳳繚蘭学園」の転入書類が送られてきました。まったく身に覚えがない彼でしたが、その書類の中の「学園内食堂での学食食べ放題」の文字を見つけ、あっさりと転入を決定します。
しかし、転入初日に彼を待ち受けていたのは通学路での不幸なトラブルの数々。何とか学園にたどり着いた彼でしたが、更なるトラブルに見舞われて……。
- 著者
- 岡崎 いずみ
- 出版日
- 2009-06-29
いとうのいぢが勤務するアダルトゲーム会社「ユニゾンシフト」が制作したPC向け18禁アダルトゲーム『Flyable Heart』のノベライズ作品です。いとうのいぢはPCゲーム版の原画を担当。ライトノベルでは表紙絵を手掛けています。
お嬢様学校の女子寮に入れられた主人公・晶が、女子寮でさまざまな奮闘をするストーリーです。ゲームを一冊の小説としているため、とても時間の流れが早くテンポのよい小説となっています。また、すでにゲームをプレイされたファンの方にとっては、ゲームの世界観をあらためて堪能できる小説作品となっているため、非常におすすめです。
目で見たことだけでなく、行間を読み取る形でストーリーを再考してみると、さらに自分好みに登場人物が動いてくれるかもしれませんよ。
PS3用ゲーム『神様と運命革命のパラドクス』のストーリーが、はせがわみやびによってノベライズ化されたものです。
主人公は男子高校生・神楽坂レンヤ。日頃からくじ運のよくない彼が、町内の福引で珍しく一等を当ててしまいます。その景品とは「神様」になること。彼は天使と共に人々の願いを叶え始めようとしますが……。
- 著者
- はせがわみやび
- 出版日
- 2013-03-30
ソフトウェア会社の20周年を記念して製作された『神様と運命革命のパラドクス』。いとうのいぢはゲームのキャラクターデザインと、本書のイラストを担当しています。ゲームと変わらない、可愛らしい萌え系の挿絵が楽しめる作品です。
主人公のお供として登場する天使は、メイドのような姿をした愛らしい女の子。そのため、「涼宮ハルヒ」シリーズや「灼眼のシャナ」シリーズとはまったく違う可愛さが溢れるイラストを楽しむことができるでしょう。
ストーリーに関しては、ゲームの流れを忠実に再現してあるのでやや速足な部分があります。主人公が天使と悪魔の間で奮闘するというインパクトのある設定ながら、物語自体はあっさりとしていて気軽に読むことができますので、読書が苦手という方におすすめですよ。
ぜひ、いとうのいぢの愛らしい作画を楽しんでくださいね。
本書も『Flyable Heart』などに同じく、「ユニゾンシフト」が制作した同名の18禁PC用ゲームをノベライズ化したものです。
主人公は新任教師の村上久斗。女子の多い学校に勤務する久斗は人気者でありながらいまいち頼りなく、生徒からも先生扱いをされない毎日を送っていました。
ある日、彼は自らのクラスに転校してきた百瀬玉に突然拳銃で胸を撃ち抜かれてしまいます。実は百瀬玉は死神になるための実習を行いに来た「死神候補生」で……!?
- 著者
- 小林 正親
- 出版日
- 2005-08-29
主人公・久斗が勤務する「私立遊華総合学園」は、『Flyable Heart』に登場する「私立鳳繚蘭学園」の姉妹校です。
女子の多い学校に勤務する若い男性教師が、学園内で密かに行われている死神候補生の訓練・実習に巻き込まれていく恋愛系学園コメディです。原作となるゲームは18禁ですが、行間を読むことの出来るノベライズ版では、ゲームよりもアダルト要素が薄くなっています。
ただし主人公と死神候補生とのやり取りのテンポの良さは健在で、とても読みやすい小説です。ゲーム同様にいとうのいぢの萌えるイラストを楽しむこともできますよ。
ゲームはやったことないけれど、ファンタジックな設定が面白そうだと感じる方にもおすすめです。
アダルト作品から大ヒット作品まで、イラストやキャラクターデザインを手掛けるいとうのいぢの代表作5作をご紹介しました。彼女の作画は初期の頃から少しずつ作風が変化、成長していることも特徴の1つとなりますので、ぜひいろいろな作品を手に取って見比べ、自分好みの作品を探してみてくださいね。