東野圭吾『手紙』を5分で解説!あらすじ、5つの見所、結末などネタバレ紹介

更新:2018.11.1

本作は、2003年に毎日新聞社から単行本が出版され、129回の直木賞候補作として選ばれました。2006年に映画化、2018年にはテレビドラマ化されるほどの人気作です。その他にも、舞台やミュージカルにもなっています。 この記事では、そんな本作のあらすじ、5つの見所、結末などを、5分でわかるように紹介。ネタバレ注意です。

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東野圭吾『手紙』が泣ける!面白い!その見所をネタバレ紹介【あらすじ】

弟と2人暮らしをしている武島剛志。彼は弟の大学進学のための金欲しさに空き巣に入り、思いがけず強盗殺人を犯してしまいます。
 

それによって、弟で本作の主人公である武島直貴は、突然ひとりぼっちになってしまうのでした。

直貴は被害者の家を訪れて謝罪しようとしますが、遺族の姿を見ただけで逃げ出してしまいます。そして彼には、常に兄の存在が付いて回るようになるのです。

著者
東野 圭吾
出版日

 

進学・就職・恋愛・結婚と幸せをつかもうとするたびに、犯罪者である兄を恥じ、強盗殺人犯の弟というレッテルに苦しむことになります。そのレッテルを貼ったのは周りの人々であり、そして彼自身でもありました。
 

そんな状況のなか、彼を理解してくれる女性・由美子と出会い、彼は結婚します。ようやく幸せをつかんだかのように見えましたが、娘の実紀が仲間外れにされてしまいます。そこで彼は、自分はなぜ生きているのかを考えてしまうようになるのでした。

そして兄との縁を切るために、獄中にいる剛志に対して手紙を書くのです。

本作はこれまで、映画や舞台、さらにミュージカルとさまざまなメディアで作品化されてきました。2006年の映画版では山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカなどがメインキャストとして活躍。さらに2018年12月19日には、亀梨和也佐藤隆太、本田翼、広瀬アリスなどが出演でテレビドラマ化されます。

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登場人物を紹介!

 

ここでは簡単に登場人物たちを紹介します。

・武島直貴

主人公。高校3年生のときに兄が強盗殺人を犯し、独りで生きていくことを決意します。

・武島剛志

金を盗むつもりで家に侵入しますが、そこで殺人を起こしてしまいました。独りでいる弟を思い、獄中から月に1度、彼に対して手紙を書きます。

・白石由美子

関西弁の女性。直貴にアプローチしてきます。後に、彼と結婚。

・中条朝美

直貴の恋人。東都女子大の学生です。

・緒方忠夫

被害者の長男。

・倉田

直貴がリサイクル店に勤めているときに、大学の通信教育を受けるきっかけを作ります。直貴と同じ部屋に住む、季節労働者。

・平野

直貴が大学卒業後に勤めることになる就職先・新星電機の社長。

見所1:凶悪犯罪者の弟という立場から差別を描く!兄との手紙から見えてくるもの

 

強盗殺人という重い罪を犯した兄・剛志は、ほぼ手紙の中だけにしか登場しない人物です。

彼は弟だけではなく、被害者の家族にも手紙を送り続けています。1ヶ月に1度、毎月です。しかし、被害者の家族からは、その手紙を6年間ずっと無視し続けられていました。

『手紙』という本作のタイトルが示すとおり、この内容が、ストーリーにおいて重要な意味を持っています。弟である直貴は、兄からの手紙に対し、しだいに返事を返さなくなります。なぜなら彼の人生は、「殺人犯の弟」であることによって、暗いものとなっていたからです。

殺人犯の弟であることが明るみになって、生活も、恋愛も、就職もうまくいかなくなってしまい、彼は途方に暮れます。毎月送られてくる手紙を、まるで「殺人犯の弟であることを忘れるな」というメッセージであると感じるようになるのです。

やがて彼は、兄と絶縁することを決意します。社会から見れば、兄弟という関係は断ち切れません。しかし彼にとって、兄との繋がりは、もう手紙しか残っていませんでした。

だからこそ、最後に兄に手紙を書くことで、縁を切ろうとするのです。その内容とは……。

見所2:素直になれない恋愛展開にウズウズ!

 

直貴は大学に進学し、通学課程に転籍します。もともと彼は、通信課程の学生でした。

通学課程に転籍した彼は、気まぐれで参加した合コンで、中条朝美と出会います。お互いにただの数合わせ要因として参加しただけでしたが、ひょんなことから打ち解けて仲良くなるのです。その後2人はデートを重ね、何度めかの夜に結ばれることに。

しかし、彼は犯罪者の弟。対して彼女は、裕福な家に生まれたお嬢様です。彼女の両親が、彼を受け入れてくれるはずもありません。彼女の父は彼に手切れ金を握らせ、娘と別れてほしいと切り出します。

直貴はその金を受け取らず、朝美と別れることを決意するのでした。犯罪者の弟である自分が幸せになることなど、許されなかったと思ってしまうのです。彼は、朝美に対しての気持ちを殺して、身を引くことを選びました。

そんな彼の前に、由美子という女性が現れます。彼女は大学の頃からずっと、直貴にアプローチしてくれていた女性でした。彼はなぜ、彼女がこんなにもよくしてくれているのかがわかりません。実際、朝美と付き合うようになったときも、別れたときも、彼女は彼のそばにいました。

犯罪者の弟である自分に対して、なぜ優しくするのかが理解できない直貴と、一方的なアプローチをする由美子。それゆえに2人はすれ違ってしまいます。それでも彼女は、ずっと彼を支え続けました。

著者
東野 圭吾
出版日

 

やがて彼女が直貴の部屋に出入りするようになり、剛志からの手紙に気づきます。そしてその後、彼女は直貴のフリをして、剛志に手紙を書きました。それも直貴には黙って。2人の仲を心配し、何度も手紙を書きます。

そんな彼女の優しさに、直貴はこの段階では気づいていません。彼はこの時、自分の幸せのために、剛志との縁を切ろうと考えていたのです。兄を大切に思ってほしいと願う由美子と、兄と縁を切りたい直貴の思いは、ここでもすれ違ってしまいます。結果、やはり由美子の好意は、直貴に伝わりません。

しかし直貴は、ある時、由美子が剛志に対して、自分に変わって手紙を書いていることに気づいてしまいます。彼は彼女に、なぜそんなことをしたのかを問いただします。自分は縁を切ろうとしているのに、なぜそんなことをするのか、と。そんな彼に対し、彼女は、独りになってはいけないと言いました。

実は由美子は、父の借金が原因で家族がバラバラになってしまった苦い過去がありました。だから、彼ら兄弟には仲よくしてほしいと、強く願っていたのです。

この時、初めて直貴は由美子の気持ちに気づきます。そして、やっと2人の気持ちが通じ合い、由美子の気持ちに直貴が応えていくようになりました。

由美子はこの後も、彼のことを献身的に支えます。その優しさと気持ちにようやく気づいた直貴も、彼女と一緒に幸せになることを決意するのです。朝美の時は身を引くことを選んだ彼でしたが、自分の気持ちに素直になって、ようやく愛する人と歩むことになります。

独りになるなと言われた彼は、数年後に由美子と結婚。最終的に娘を授かることになりました。

見所3:初めて見つけた夢……足枷になるのは、やはり兄の存在

 

そんななか直貴は、初めて夢を見つけました。それは、音楽の道でプロになること。彼は通信課程の同級生・寺尾祐輔に誘われて、ある日カラオケに行きました。そこで寺尾は直貴の歌声に驚き、一緒にバンドをやらないかと誘うのです。

直貴は歌が好きだし、認められたことを嬉しく思いますが、兄が殺人犯であることを理由に、はじめは誘いを断ります。しかし寺尾は、兄のこととお前は関係ないといい、再び彼を誘うのです。直貴は心を打たれ、誘いを受けることに決めたのでした。

その日から、彼はバンド「スペシウム」のメンバーとなります。担当はボーカル。毎日のように練習し、ライブもおこなって、いつかはプロになることを夢見るようになるのです。

ある日、彼らは音楽レーベルから声をかけられ、メジャーデビューまであと少しというところまできます。メンバーは喜びを分かち合いました。

しかし、レーベルの人間から、直貴はメジャーデビューさせられないと告げられます。やはり兄が犯罪者であるというレッテルが、彼のメジャーデビューを許さなかったのです。

結局、彼はメジャーデビューを諦め、音楽そのものからも遠ざかってしまいます。

見所4:「差別は当然」厳しくも優しい、平野の言葉

 

直貴は、大学卒業後に新星電機という会社に就職しました。働き始めてから数ヶ月後、彼が務める店舗で商品が盗まれる事件が発生します。その際に警察による調査がおこなわれ、それをきっかけに直貴の兄が殺人事件の犯人であるということが周りに知れ渡ってしまったのでした。

直貴は従業員達から距離を置かれ、さらに売り場担当から物流部へと移動させられてしまいます。

倉庫で働き始めてからしばらくした、ある日。彼は、社長の平野から声をかけられました。彼は、どうして自分が差別されなければならないのかと思っているだろう、と言うのです。さらに続けて、こう言ったのでした。

「差別はね、当然なんだよ」
(『手紙』より引用)

かなり衝撃的な言葉です。驚く直貴に対し、面倒なこと、危険なことに巻き込まれないために、そういった人間を差別するのは自己防衛として当然だ、と言い放ちます。

さらに、会社で働くうえでは仕方ないという考えを述べるのです。働く以上、コミュニケーションは不可欠。従業員が直貴と関わりたくないと思っている状態では、仕事はうまく回りません。そういった理由から、彼の移動は致し方ないものだったというのが、平野の考えでした。そして彼に、このように言うのです。

「誤解してもらっては困るんだが、君という人間が信用できないといってるんじゃない。
ただね、会社にとって重要なのは、その人物の人間性ではなく社会性なんだ。
今の君は大きなものを失っている状態だ」
(『手紙』より引用)

そんな彼が現状を変えて、差別を減らしていくには、

「方法は1つしかない。こつこつと少しずつ社会性を取り戻していくんだ。
他の人間との繋がりの糸を、一本ずつ増やしていくしかない。
君を中心にした蜘蛛の巣のような繋がりができれば、誰も君を無視できなくなる。
その第一歩を刻む場所がここだ」
(『手紙』より引用)

綺麗事なしの、厳しくも優しい言葉です。差別をしてはダメだ、と言うだけなのは簡単なことですし、実際そのような教え方をされてきた方は多いでしょう。

しかし実際は自分自身、そして家族を守るために差別をしてしまうという場合が多いのではないでしょうか。娘と別れてくれと言った朝美の父親も、こうした思いからとった行動だったのでしょう。

誰の考え方が正しいといったようなことは、本作では書かれていません。立場が変われば、考え方も変わります。もし自分がこの立場だったら……そういったことを考えながら読んでみてはいかがでしょうか。

見所5:「手紙」が重くのしかかかる結末!東野圭吾の実力を感じさせるラストシーン!【ネタバレ注意】

 

剛志の存在が、直貴の人生の邪魔をします。兄の存在を疎ましく思うようになった直貴は、人生を変えるため、兄との絶縁を決意。刑務所にいる兄に向けて、手紙を書くのです。

少し長くなりますが、大切な部分なので引用しましょう。

『前略 武島剛志様

この手紙は私から貴方に送る最後の書簡です。
また今後は、貴方からの郵便物は一切受け取りを拒否いたします。
理由は、家族を守るため、ということになるのでしょうか。
私はこれまで強盗殺人犯の弟というレッテルを背負って生きてきました。
そのせいで私は、音楽という夢を捨てねばなりませんでした。
また、愛した女性との結婚も諦めることになりました。
就職後も、そのことが発覚するや否や、異動させられることになりました。
由美子は近所から白い目で見られ、
娘の実紀も仲のよかった友達と接する機会を奪われました。
あの子が将来大人になって、たとえば好きな男性ができたときにはどうでしょうか。
伯父が罪人だったことが発覚しても、
相手の両親は彼女たちの結婚を祝福してくれるでしょうか。
今思えば、これらのことを、もっと早く貴方に伝えておくべきでした。
なぜなら、私たちのこれらの苦しみを知ることも、貴方が受けるべき罰だと思うからです。
この手紙をポストに投函した瞬間から、私は貴方の弟であることを捨てます。
ですから、貴方の方も、仮に何年後かに出所が叶った場合でも、
私たちと関わろうとはしないでもらいたいのです。
兄に送る最後の手紙がこんなものになってしまい、大変残念に思います。
どうか身体に気をつけて、立派に更生してください。
これは弟としての、最後の願いです。

武島直貴』

(『手紙』より引用)

 

著者
東野 圭吾
出版日

 

この手紙を剛志に送って絶縁した後、直貴は会社に退職届を出しました。彼は犯罪者の兄と縁を切り、自分たちの過去を知ってるすべての人との関わりも断ち切ろうとしたのです。

もちろん、それは家族を守るために。

そして彼は離れたところに引越して、小さな電気屋に就職します。そんな彼の元に、かつて一緒にバンドをしていた寺尾がやってきました。直貴は彼に、兄と絶縁したことを告げます。

しかし、そんな彼に、寺尾は刑務所の受刑者を相手に慰問コンサートをするからお前も来い、と彼を誘うのです。そこは、兄がいる刑務所でした。

兄のところへ行ってしまえば、絶縁という決意は揺らいでしまうかもしれません。彼は迷います。

実は兄に最後の手紙を送った後も、彼にはやり残していること、心にひっかかっていることがありました。彼はそれを終わらせない限り、いつまでたってもすべてにケジメをつけることはできないと考えるようになるのです。

直貴は、どのようにすべてのケリをつけようとするのでしょうか?また、由美子と娘を除いて唯一の家族である兄に対して、何を思うのでしょうか?

ケジメをつけるために、直貴は兄のいる刑務所の慰問コンサートで歌うことを決意します。彼が歌にのせて、兄に伝えようとしたことは、心を揺さぶるもの。積年の思いがメロディにのって届けられる、切ないストーリーの最後は、ぜひ作品でご覧ください。

犯罪者の弟というレッテルを貼られ、社会からの差別に苦しむ人間は、どのようにこの現実と向き合うのでしょうか。ぜひ本作を読んでその気持ちを感じ取ってみてください。

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