小説『白夜行』7の魅力!悪女・雪穂が怖すぎる!!亮司との関係に愛はある?

更新:2019.4.18

大阪で起きた、未解決の殺人事件。その被害者の息子と容疑者の娘は、一見接点がないように見えました。しかし、成長した2人の周りでは、不可解な事件が数多く起きて……。ドラマ・映画化もした東野圭吾の代表作で、読者に暗い衝撃を与える名作が本作『白夜行』です。 重くて暗い世界観のなか、光が見えない展開に、読者は引き込まれずにはいられません。強烈な読書体験となること間違いなしの一冊。ぜひ、この記事を読んだのを機に、お試しください。

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目次

名作小説『白夜行』とは?あらすじの内容をネタバレ紹介!東野圭吾の代表作!

1973年、大阪。質屋「きりはら」の主人・桐原洋介が、何者かに殺害されました。息子をかわいがる、大阪の商人らしい人物であった洋介。しかし彼は、その裏に別の顔を持っていたのでした。

容疑者は見つかるも、事件は迷宮入り。この事件を機に、洋介の息子である亮司と、容疑者・西本文代の娘である雪穂の人生は、大きく変わってしまうのです。

その後、まったく別の人生を歩んでいるように見えた亮司と雪穂。しかし、成長した彼らの周りでは、不可解で凶悪な事件が多発していて……。

彼らの周りで起こり続ける事件を、19年にもわたって追い続けていく本作。人が、人としての心を喪失することの恐ろしさと哀しみを、繊細で丁寧に書きあげています。

著者
東野 圭吾
出版日
2002-05-17

 

本作に魅了された元フィギュアスケート選手・町田樹が、テレビドラマ版の劇伴曲『白夜を行く』をスケートプログラムとして表現したことは、あまりにも有名です。

2006年には、亮司を山田孝之が、雪穂を綾瀬はるかが演じてドラマ化。さらに2011年には、高良健吾、堀北真希のキャストで映画化もされています。ドラマでは時代設定などが変更されていましたが、映画は原作に忠実につくられました。

本作の魅力は海を渡り、韓国でも『백야행 - 하얀 어둠 속을 걷다(白夜行 - 白い闇の中を歩く)』のタイトルで映画化。 2018年11月には、上海でミュージカル化もされました。

 

『白夜行』の魅力1:作者は人気作家・東野圭吾!

 

「加賀恭一郎」シリーズや「ガリレオ」シリーズなどのドラマ・映画化によって、読書をしない人にまで広く、その名や作品を知られている人気作家。

1958年、大阪市生野区に生まれ。実は高校2年生になるまで、ほとんど読書をしたことはなかったのだとか。その後、推理小説にはまって執筆するも、友人から酷評されてしまいます。この際に執筆した『アンドロイドは警告する』『スフィンクスの積木』は、未だ未発表のままです。

理系が得意だった作者は、1年の浪人を経て、大阪府立大学工学部電気工学科に進学。卒業後は日本電装株式会社に勤めながら執筆活動をおこない、そして1985年に『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞したのを機に、作家デビューを果たしました。

 

著者
東野 圭吾
出版日
2008-08-05

理系に特化した内容の作品を書くというだけでなく、女性というものを書くことにこだわりを持っている作者。本作『白夜行』や『幻夜』、そして『容疑者Xの献身』などでも、最後までシッポをつかませないのは、女性です。

このことについて東野は、『幻夜』についてのインタビューで、

男にとっての“究極の女”を創造してみたい、という気持ちがありました。
女性には強く、したたかであってほしい。(中略)
とことん自分のために生きる、自分さえよければいい、
くらいにがんばってくれたほうが
『つえーなぁ』と思う。爽快ですよね。

と答えています。確かに『白夜行』の雪穂は、ここで言う「究極の女」そのものでしょう。

『白夜行』の魅力2:雪穂の悪女っぷりがめちゃくちゃ怖い……暗さがクセになる!

 

雪穂のおそろしいところは、なによりも、まず美しいことでしょう。「虫も殺さないような顔をして……」というのが、とにかく怖いのです。

彼女は自身が過去に体験しているので、性的暴行というものが被害者の魂を奪い、なおかつ他者に訴えにくいものだということを知っています。

だから、それを駆使して、自分の思い通りにならない女性たちを排除していくのです。仲がよかった友人・川島江利子のことですら、簡単に被害者にしてしまいます。そうなってくると、交友を持ったことすらも、何らかの理由で利用するためだったのでは?と読者は邪推することになるのです。

どこまでの「悪」で、どこまで闇が深いのか……読み切れないところが、雪穂という人物の怖さであり、魅力なのかもしれません。

 

『白夜行』の魅力3:篠塚、今枝……雪穂に関わると不幸になる恐怖!【登場人物紹介】

 

西本雪穂が主人公なのか、桐原亮司が主人公なのかと問われれば、もちろん主人公は雪穂でしょう。彼女を中心にさまざまな思惑が動き、彼女がその人々の思惑をうまく利用していくのです。そして、そんな彼女の周りでは、数多くの不幸が起こります。

彼女の母である文代は、ガス中毒によって死亡。自殺とされていますが不審な点も多くあり、大阪府警捜査一課所属の笹垣潤三は、まだ子どもであった雪穂を「信じがたい」としながらも、疑っています。

この母をはじめ、雪穂にとって邪魔となるような人物は皆、事件の被害者となって姿を消していくのです。

大学の部活が一緒だった篠塚一成のように、彼女の不穏さに気づいた者もいました。でも、確信はない。だから誰も、彼女を止められないのです。一成に依頼されて雪穂を調べていた探偵・今枝直巳も亡くなってしまいます。

一方、質屋殺し事件で父親が殺害された亮司は雪穂の幼馴染ですが、中学卒業を機に彼女の前から姿を消します。華々しくもあやしい雪穂のストーリーに、彼はまったく姿を見せないのです。

しかし、実は彼も「秋吉雄一」という名を名乗り、暗躍しています。

栗原典子と付き合いながら、偽ソフト製造に手を染め、巨額の富を手にするのです。プログラミングの得意な園村友彦や、経理が得意な西口奈美江を味方につけ、かつて「きりはら」で自分の父の部下として働いていた松浦勇に海賊版のソフトを販売させるのでした。

暗躍はしているものの、亮司の暮らしはいたって質素。突然いなくなったり、本名を隠していたり……。しかし彼の行動の謎は、雪穂とのつながりを考えることで、一気に解けていきます。

それに反して、雪穂の本性はなかなか読めません。彼女の本心は、一体どこにあるのでしょうか。それとも、そんなものは、もう彼女のなかにはないのでしょうか。

 

『白夜行の魅力4:雪穂の巧みな嘘!高宮に妊娠したと言った理由を考察

 

雪穂は、高宮誠との結婚を「この結婚は売春なんだ」と言っています。妊娠したと嘘をついたのも、高宮に結婚を決意させるためです。

怖いのは、自分の妊娠を彼に信じ込ませるため、他人の妊娠検査薬を見せているところ。そして雪穂が、彼をまったく愛していないところでしょう。

彼の実家が資産家だったため、結婚して、夫の暴力や浮気を原因に離婚して、慰謝料をもらおうと考えていたのです。

結婚後、雪穂は堕胎したことを子供が出来ない理由とし、さらには性行為すらも出来ない体になったということにして、高宮との関係を疎遠にしていきます。

なにもかも、計算づく。

そして彼女の陰には、いつも亮司がいるのです。

 

『白夜行』の魅力5:すべては子ども時代に始まった……雪穂と亮司の過去!

 

亮司と雪穂には、2人でおそろしいものを退治して逃げ切ったという、深いきずなが存在します。

かつて図書館で出会った2人は、ハサミを使って切り絵をしたりしながら、しだいに仲よくなっていきます。

そんなある日、父・洋介が雪穂とともに建物に入っていくのを目撃する亮司。そこで彼が見たものは、獣のような父親と、裸になった雪穂でした。彼はとっさに、手に持っていたハサミで、父親を切りつけて殺害するのです。

そんな彼から、ハサミを取り上げる雪穂。「殺したのは私」と亮司に言うのです。その後日発見されたのは、ガス中毒で死亡した彼女の母親・文代でした。実は、この母親が金のために、娘を洋介に売ったのです。雪穂は容疑者を母親にすることに成功させ、洋介と文代に対しての復讐を果たしたのです。

お互いのためを想って行動し、強い絆で結ばれた2人。しかし、その強さは、やがて「悪」へと変わっていくのです。

彼らがどんなに酷い目にあったのかを考えれば、雪穂や亮司がどれほど歪んでいるのか……うっすらとわかってくるでしょう。しかし、それにしても……と思ってしまうのが、この物語なのです。

 

『白夜行』の魅力6:続編『幻夜』も面白い!美冬は、雪穂のその後の姿?

 

阪神淡路大震災の後、自らの叔父を殺害してしまった男・水原雅也。それを目撃していた謎の女・新海美冬。震災で両親を亡くした美冬と、ずっと1人だった雅也は、孤独なもの同士共存し合うようになります。

しかし、共存しあいながらも、美冬はみるみるとのし上がっていき、邪魔な者は雅也に殺害させていくのです。富みも、名声も手に入れたうえに美しい美冬は、果てしない欲望のために、愛のない結婚を決意します。

しかし、刑事・加藤亘が、2人の奇妙な関係に気づき始め……。

 

著者
東野 圭吾
出版日

美冬の発想があまりにも雪穂と似通っているため、ファンの間では、美冬=雪穂説がささやかれています。しかし実際には作中で触れられておらず、真相は謎のまま。そもそも美冬は「新海美冬」を名乗っているだけで、他の素性はわかりません。しかし、だからこそ読者は、美冬=雪穂であると思ってしまうのでしょう。

また『白夜行』と『幻夜』の1番の違いは、協力者である雅也の主観で物語が進むことでしょう。『白夜行』では、亮司の気持ちはまったく見えてきませんでした。しかし『幻夜』では雅也の気持ちが明確に見え、犯行におよぶ際の葛藤や、苦しみがかい間見えます。

この大きな違いにより、『白夜行』と同じ世界観であるにも関わらず、まったく違う雰囲気を楽しめることができるのです。

『白夜行』の魅力7:雪穂と亮司の間に愛はあったのか……切ない結末【ネタバレ注意】

捜査を進めるなかで笹垣は、秋吉雄一の正体が亮司だと突き止めます。そして、ブランド店を立ち上げて成功している雪穂の店の3店舗目がオープンするということで、彼がそこに来るとふんで待ち伏せします。

もし、ここで彼を捕まえることができれば、過去の洋介の殺人、そして文代のガス自殺の真相が明らかになるかもしれない。

果たして、彼の狙い通り、亮司はやってくるのでしょうか。

著者
東野 圭吾
出版日
2002-05-17

 

雪穂は幼少期の事件で心を失い、太陽なんて見えなくなった、と述べています。亮司は彼女と悲しい過去を共有しましたが、彼女と同じ経験をしたわけではありません。雪穂の方が、きっと酷く心が壊れていたでしょう。

しかし亮司も、雪穂を手助けしていくうちに、彼女以上に心を荒ませました。そんな彼を想うと、本作の結末を読んでも、「なぜ?」という疑問を抱く人は多いはず。

雪穂と亮司の間に、愛はあったのか。亮司は利用されただけだったのか。人によって、感じ方は違うはずです。

人によっては、雪穂は亮司に対しても復讐をおこなっていたのでは、という感想を持つ人もいます。

あなたは、どう読みますか?

 

『白夜行』は、雪穂の残忍さや幼少期に受けた心の傷などの陰惨な部分と、亮司が心を通わせるノスタルジックなシーンのバランスが絶妙です。主人公2人の気持ちがほとんど描かれないので、多くのことは推測するしかありません。その不透明さも、本作の魅力といえる部分の1つなのでしょう。