世界最悪の上司、あるいは慈善家としても知られるAmazon.com創業者、ジェフ・ベゾス。そんな彼と、彼の哲学、Amazonという会社を知る書籍を今回はご紹介します。
WebサービスAmazon.comの創業者であるジェフ・ベゾスは、一瞬ですがビル・ゲイツの総資産額を上回る資産を計上した世界の富豪の1人です。
彼は1964年ニューメキシコ州アルバカーキで生まれ、両親の離婚にともなってテキサス州に引っ越しました。早くから自分の部屋に警報装置を付けるなど、電子工学的な分野に興味を持っていました。高校時代にはコンピューターに興味を持ったようです。高校でもプリンストン大学でも優秀な生徒・学生でした。
卒業後、ベゾスはニューヨークで金融関係の仕事につきます。Fitelという国際貿易ネットワークを構築し、その後に投資・技術開発会社のD. E. Shaw & Co.で働くことになりました。
1994年、ヘッジファンドの仕事を辞した彼は、インターネット書店のCadabra.comを開設。翌年の1995年にAmazon.comを設立します。その後べゾスの天才的手腕により、世界最大の小売業者にまで登りつめました。
2000年にはブルー・オリジンという宇宙飛行の会社を設立。同社は数年秘密裏に行動していましたが、宇宙の商業化への道を拓こうとしています。また2013年には個人でワシントン・ポストを現金で買収、その他にもたくさんの企業に投資をしています。
「世界最悪の経営者」と国際労働組合連盟に命名されるなど賛否両論渦巻く彼の行動ですが、いずれにせよ世界最大のIT巨人としてその名をとどろかせているのです。
検索、ソーシャルネットとは違う切り口で、いかにしてベゾスと彼の会社が、あんなにも巨大な企業となったのかについて丹念に取材し、まとめ上げたノンフィクション作品です。
本作はマスコミ嫌いのベゾス公認の作品であり、彼の幼少期から成功を収めるまでを克明に描いています。
これまでの行いから「エキセントリックな人物」だと思われている彼の実態を知ることができるので、Amazonを理解したい人がまず手にとるべき一冊でしょう。
- 著者
- ブラッド・ストーン
- 出版日
- 2014-01-08
元々はインターネット書店であったはずのAmazonが、どんな道筋を辿って複合的な企業になったのか、その成長過程が手に取るように分かりますが、注目すべきはやはりベゾスの経営手腕です。やはり彼も天才であることが理解できます。
赤字をいとわない無茶苦茶な発想に見えますが、サービスのすべては顧客のためを思ってのことであり、顧客目線が常にないと成功しないことがわかるのです。その目線をキープしているということが、ベゾスの怪物的な部分であるのでしょう。
徹底した顧客至上主義と、恐るべき速度で行なわれる試行錯誤の様子が細かく記され、臨場感を感じながら読み進めることができます。
本書も、ジェフ・ベゾスとAmazonの歩みについて記した作品です。
ベゾスの考え方は、根本的なものは他の多くの経営者たちとそう変わりません。しかし「自身が持つ経営哲学を極限まで推し進める」という、一見無鉄砲とも取れてしまう戦略に、成功の秘訣があったということがわかります。
- 著者
- リチャード・ブラント
- 出版日
- 2012-10-18
彼の成功の要因には、運や閃きもあったかもしれませんが、なによりも「成功のヴィジョン」が最初から見えていたのです。徹底した顧客至上主義で、成功への道を直進したAmazon。その無頼派ともいえる行動哲学に幾多の先行企業が敗れ去っていく様には震え上がります。
Amazonが今後どのような展開をしていくのか、その未来を予測するための一冊として、あるいはAmazonという企業を俯瞰するよき資料として、本書はおすすめです。
非常に刺激的なタイトルの本書は、ジェフ・ベゾスの経営の技術を検証したものです。
無茶苦茶な性格と発想の持ち主ゆえに「世界最悪の経営者」という異名までつけられてしまうのに、それでも世界中の人々がAmazonを愛用する。その理由一端がこの作品から読み取れるでしょう。
外資系企業について学んだことのある読者なら、聞き覚えのある内容が散見できるかもしれませんが、だからこそAmazonの特異な部分をハッキリと理解することができます。読み手の胃を痛くさせるようなベゾスの経営手法が、分かりやすく列挙されているのです。
- 著者
- 桑原 晃弥
- 出版日
- 2015-02-25
自分のやりたいことは何が何でも推し進め達成する、そういう猪突猛進的な経営手腕が満載です。敵は徹底的に叩き潰し、法律の網をかいくぐり、社員は馬車馬のように働かせる。そんな「悪の技術」が詰め込まれています。
彼の成功には「何かを切り捨てる」ことに関しての躊躇がないという指向性があり、それが成功への鍵であると本書は語ります。そして、その無茶苦茶さのすべてが「顧客のため」という目的に向いているということから、Amazonがたくさんの人々に愛用される何よりの理由なのです。
ジェフ・ベゾスの名言を集めたもので、「1分で彼の戦略がわかる」と謳われています。つまりはスキマ時間の読書にぴったりということです。
名言集ということで、彼の考えが端的にまとめられており、確かに短い時間で読むことができますが、短い言葉でも十分濃密であり、「人間はどう生きるべきか」という哲学の領域にも踏み込んでいます。
マーケット戦略や組織戦略などについて語るベゾスの一言一言には深く頷かされ、「こういう風に生きられたらいいな」と思わせてくれるでしょう。
- 著者
- 西村 克己
- 出版日
- 2014-06-20
「イノベーションを続ける」という哲学が彼の中にありますが、つまりこれは「そのためのエネルギーを保ち続ける」ということです。彼の尋常ならざる能力を真似ることはもちろん容易ではありませんが、一つでも心に留めておくことで、身近な物事に対する姿勢がよい方向に変わるのではないでしょうか。
利益よりもサービスを重視する、これが赤字をいとわないAmazonの基本戦略であることは間違いありませんが、それを彼の口から直接聞かされることで、これまで利用してきたAmazonについて気づける部分があるかもしれません。
強烈な美意識に裏打ちさせた言葉の数々が、読者にとっても大事なヒントとなってくれるでしょう。
本書は、財務資料や裁判資料などの客観資料を元にしたAmazonの研究書です。
ベゾスの生い立ちから始まり、黎明期の彼の人間関係、またベゾスがいた環境など、外側からAmazonに迫っている本書は、Amazonに対する新しいイメージをを読者の中に構築してくれます。
取り入れた資料は膨大で、難解な言葉も出てきますが、これもひとつの評伝として有用と思われます。
- 著者
- 脇 英世
- 出版日
- 2011-06-10
一番興味深いのはやはり、ベソスが「書籍」というものを商品として扱いだした点です。
当初の予定では、店舗も在庫もまったく持たないことになっていたのが、どんな戦略・発想から現在のAmazonに転換されたのかなど、ベゾスの歴史だけでなく、Amazonの歴史についても理解できます。
Amazonをテーマとして扱った他の本では見られない特許についての記述など、参考になることが多い一冊といえるでしょう。
IT成功者はいずれも強烈な人格の持ち主が多いですが、ジェフ・ベゾスはそれは突出していると言わざるを得ません。しかしその裏側にある彼の顧客至上主義を鑑みるに、彼の主張は正しいのかもしれません。彼の戦略がユーザーにとってどう出るかを占う意味でも上記の書籍はおすすめです。