『ハイスコアガール』に捧げるおすすめマンガ3冊【熊谷和海】
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『ハイスコアガール』に捧げるおすすめマンガ3冊【熊谷和海】

更新:2020.11.25 作成:2017.10.2

BURNOUT SYNDROMESの熊谷です。この度我々は「ハイスコアガール」という楽曲をリリースいたしました。親愛なる連載読者の皆様はお分かりの通り、漫画『ハイスコアガール』へのトリビュートソングです。というわけでリリースを祝しまして今回はその作者、押切蓮介先生の漫画を他に3作品ご紹介!

熊谷和海プロフィール画像
バンド「BURNOUT SYNDROMES」Vo/Gt
熊谷和海
平均年齢23歳、大阪出身・在住の3ピースバンド、BURNOUT SYNDROMES(バーンアウトシンドロームズ)のVo/Gt。バンドメンバーは熊谷の他、石川大裕(Ba/Cho)、廣瀬拓哉(Dr/Cho)。2005年結成。日本語の響き、美しさを大切にした文學的な歌詞やヴォーカル、その世界を彩る緻密に計算されたアレンジ。スリーピースの限界に常に挑戦している。2016年3月にメジャーデビュー・シングル「FLY HIGH!!」を発表。10月には2ndシングル「ヒカリアレ」をリリース。11月に1stアルバム『檸檬』を発売した。2018年2月21日、2ndアルバム『孔雀』がリリースされた。 http://burnoutsyndromes.com/

「作者買い」する派? しない派?

僕は断然する派です。

好きな作者の本はすべて集めたい。いわゆる収集癖の一種だとは理解しつつも、作品を集める度に作者への理解が深まっていく感覚(錯覚?)は何物にも代え難い。

個人的にベストなのは10巻前後のシリーズを何本も擁する作家さん。一本の長期連載よりは短編で、いろんな世界観を堪能したいものです。

そんな収集家としての僕がおすすめするのが押切蓮介先生。

以前にも紹介した『でろでろ』『ハイスコアガール』のような、キャッチーなコンセプトとキレのあるギャグをホラーテイストな絵柄で見事に纏め上げる鬼才。また一転して「ミスミソウ」「ゆうやみ特攻隊」(後述)のようなホラー漫画出身ならではの恐怖演出にも長けており、多彩なベクトルの組み合わせで読者を魅了し続ける大人気作家。

同一作家の作品を読み比べることはそのジャンルを深く理解すること。押切先生を通して目眩く漫画道に皆様を誘いたいと思います。

ピコピコ少年

著者
押切 蓮介
出版日
2009-09-17
学校の授業よりも何よりも
俺を成長させてくれたのはゲームだ

自他ともに認めるゲーマー漫画家・押切蓮介の幼少時代の、ゲームにまつわる体験を漫画にしたもの。時に楽しく、時に人間関係にトラブルを起こしつつもゲームを愛する当時のピコピコ少年達を描く。全部実話であるという。

『ハイスコアガール』のノンフィクション版とでもいいましょうか。ロマンチックなエピソードこそ皆無なものの、フィクションに負けず劣らず面白いのがスゴイ。新作をいち早く購入するため徹夜でゲーム屋に並ぶ心細さ。ギャルゲーの主人公と自分の境遇をつい比較して凹む工業高校時代。ヤンキー達の縄張り争いの隙間をぬって通うゲームセンター……普通に生きてたら経験しないようなエピソードの数々になぜか共感し、笑ってしまいます。

勉強も運動も何一つ出来ない主人公・神崎良太(押切先生の本名)が、「俺のような生き方があってもいいじゃないか」と、唯一の得意分野であるゲームに傾倒していく心境は、「平均以下」の劣等感を経験したことがある人ならば大いに共感できるのではないでしょうか。

作中で神崎少年はそんな自分を「学業からの逃げ」と冷静に評します。しかし、それが巡り巡って20年後に漫画になり、読者を笑わせるのですから「逃げ」も長い目で見れば前進であり、「真っ向勝負」にも勝る肥やしとなって成長を促すこともある。そんなふうに我々を勇気づけてくれる作品でもあります。

ゆうやみ特攻隊

著者
押切 蓮介
出版日
2007-07-06
自分の拳に全身全霊の 命を込めてぶつけてやりな!!

気弱な少年・辻翔平は悪霊に殺された姉の仇を討つため、姫山高校の心霊探偵部に入部する。霊体に肉体的暴力を振るえる能力者・弥依と部員仲間・カエデとともに翔平は近隣で発生する怪奇現象を解決していく。そんな中、ある依頼で翔平は姉を殺した悪霊の正体を知り、心霊探偵部一行はその住処である黒首島へと向かう。しかしその島は猟奇的な風習が色濃く残る治外法権の島で……。

霊も怖いが人間はもっと怖い。総毛立つ肉弾ホラーアクション。タイトルは押切蓮介の愛するホラーゲーム「夕闇通り探検隊」のオマージュ。

個人的には非常に好きなシリーズ。ホラー&アクション多め、ギャグ少なめという硬派な配分ではありますが、これぞ押切蓮介の真骨頂!という印象。「霊を肉弾戦でぶっ飛ばす」というコンセプトは初期の代表作『でろでろ』から引き継がれたアイデアでもあり、押切先生が楽しんで描いているのがヒシヒシと伝わってきます。作者が楽しんで作るものは(細かいことはどうあれ)大抵よいモノです。

もう一つ、この作品の素晴らしいところは敵が完膚無きまでに悪人という点。一族存続のために弱者を拷問にかけ、生贄に捧げる悪鬼羅刹たち。彼らを拳一つでバッタバッタと薙ぎ払っていく爽快感は他に類を見ない域に達しており、一読の価値有りです。

ミスミソウ

著者
押切 蓮介
出版日
2013-03-12
私の家族は焼き殺された

ミスミソウ。厳しい冬を耐え抜いた後に雪を割るようにして咲く花。閉鎖的な田舎町の中学に転校してきた少女・春花を待っていたのは、壮絶なイジメだった。堰きとめられない憎しみに、少女の心は崩壊する。

押切蓮介上級者向け。ファンのなかでも「黒押切」と呼ばれる、先生のダークな部分のみを抽出した一作。ギャグ? ありませんよそんなの。キレイなのは表紙だけです!!

終始暗く陰鬱な展開、残酷描写、後味の悪さなどが一時話題になり、コンビニにも置かれていたこともあって、今では押切蓮介という作家を語るには外せない作品になりました。

ではこの話題作は刺激的な要素だけを詰め込んだウケ狙いのエンタメ作品なのか? 答えはNOです。

エスカレートする「イジメ」の果てに家族を殺された少女の復讐劇。これでもかと悲劇的に転がっていくストーリーからは、面白さ優先のフィクションというよりも、〈「イジメ」と「殺し合い」を隔てるのは薄氷一枚でしかない〉という強いメッセージを感じます。

「イジメ」とは加害者と被害者、どちらか一方のタガが外れれば「ミスミソウ」の如く凄惨な血の華が咲く、きわめて危険な行為です。倫理感云々でイジメ撲滅を謳うよりも「歯止めが効かなくなった場合の取り返しのつかない損失」を描いたこの漫画の方が余程「イジメ」への抑止力になるように思えます。

敢えて道徳の教科書に載せるべき。そんな作品。敢えて、ね。