SF映画の金字塔!『ブレードランナー』続編公開前に読んでおきたい3冊

更新:2021.11.10

1982年に公開された、SF映画の金字塔『ブレードランナー』。その続編にあたる『ブレードランナー2049』が2017年10月27日に公開になります。今回は、そんな本作と続編をより楽しむための3冊をご紹介します。

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1982年に公開された、SF映画の金字塔『ブレードランナー』。その続編にあたる『ブレードランナー2049』が2017年10月27日に公開になります。『ブレードランナー』には5つのバージョンが存在し、どのバージョンを観たかによって印象が変わるのも特徴の一つであり、ファンの想像力を掻き立てられる理由でもあります。今回は、そんな本作と続編をより楽しむための3冊をご紹介します。

原作を読んで復習・世界観の奥深さを知る

著者
フィリップ・K・ディック
出版日
1977-03-01

時は1992年。第三次大戦後の地球は、放射能灰に汚染され廃墟と化していました。多くの動物や人間も命を落とし、生き残ったとしても精神障害や不妊を患うといった状態。一部の裕福層は地球外に移住していましたが、ほとんどの人間は地球から出られませんでした。そんななか、火星で植民奴隷として使われていたアンドロイド8人が逃亡し、地球に逃げ込むという事件が発生。下級警官のリック・デッカードは、彼らに懸けられた莫大な懸賞金を狙って「アンドロイド狩り」の仕事を引き受けるのですが…。

映画との違いを端的に挙げると、時代の違いと主人公リックのステータスです。映画は2019年が舞台でリックは独身のザ・ハードボイルドな男性として描かれていますが、原作では1992年が舞台で結婚しているが夫婦生活はあまりうまくいっていない、ちょっと情けなさがある男性として描かれています。また、映画ではほどんど触れられていない「電気羊」ですが、この世界では多くの生物が絶滅して稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっていました。リックも妻の親の遺産として本物の羊を飼っていたのですが、病気で死んでしまったのちに周囲への見栄のために本物の羊そっくりの電気羊を特注し、それを飼い続けていました。しかし、やっぱり本物の動物を手に入れたいゆえに、リックは「アンドロイド狩り」を引き受けたという経緯があります。

このように、映画とは違った世界観と(当然といえば当然ですが)映画では描かれきれなかった部分を楽しむことができます。

フィルム・スタディーズの見地からどういう観点から観ると面白いかを知る

著者
浅見 克彦
出版日

 

サイボーグ表象について書いてみようと思い始めたのは、久しぶりに『ブレードランナー』を観た二〇〇二年の新春だったと記憶している。(249ページ)

あとがきの最初に書いているこの一文を見て、「この本は買いだ!」となった1冊です。本書では、『ブレードランナー』のみならず、『ターミネーター』や『2001年 宇宙の旅』、『ロボコップ』や『スタートレック』といった数々のSF映画(小説にも言及しています)から、各作品に登場する人間と人間ではないものの接触がもたらす〈意味〉について探究しています。

映画版でも原作でもそうですが、特に寿命や記憶、感情といった面から人間とアンドロイド(レプリカント)の境界は果たして何なのか、もっと大胆に言ってしまえば「人間とは何か?」という問題がストーリの軸となっています。しばしば表象としてのアンドロイドやロボットは、人間の写し鏡、恐怖や欲望の分身といった意味合いを持つことが多いです。『ブレードランナー』の世界観ももれなくそうで、人為的なものが溢れる「日常」のなかで、一体何が〈本物〉で、何か〈偽物〉なのかが分からないことへの不安がリックについて回ります。現実世界でもAIの存在が脅威として語られ、「よく分からないものへの恐怖」といったものが身近になった今、我々は何を考えるべきなのでしょうか。そのヒントとなるような観点が書かれています。

専門的な用語や先人が数多く登場するのですんなり読めるものではありませんが、特に「第2章 ひび割れた鏡像」と「第3章 ドッペルゲンガー」は『ブレードランナー』の世界観を読み解くにあたって参考になる章です。『ブレードランナー』だけではなく複数のSF映画にも同様の問題がはらんでいるので、その絡まり合いにも自然と触れることができます。

 

雑誌の特集からマニアックな情報と新作の情報を知る

著者
["こだま", "大森望", "清水亮", "速水健朗", "成毛眞", "三田武志(エーラボ)"]
出版日
2017-04-15

映画『ブレードランナー』で描かれた世界があと2年後に迫った今、ある意味でその世界が現実のものとなってきたと言えるでしょう。前述したようなAIの飛躍的進歩やそれによるシンギュラリティ(人工知能があらゆる点で人間を超越し、それらが自ら技術開発と行動をし始めるという技術的特異点が2045年に訪れるというもの)が我々にどのような影響を与えるのか、その際にどうやって共存していけばいいのか、そういった点から特集を組んでいます。

そういった真面目な記事ももちろんのこと、個人的に面白いと思ったのが『ブレードランナー』の世界で描かれた未来都市とそっくりな風景を探す記事や、あの「2つで十分ですよ!」問題に真面目に挑む記事、そして、特集ページ全てのページ下に豆知識が書かれている点です。ファンの間で語り継がれてきたあるあるネタから「そうだったのか!」という裏話など、非常にマニアックでありつつ知っているとより考察が深まる記事に、思わず熟読してしまいました。

また、続編『ブレードランナー2049』の情報にも触れているので、ぜひ公開前に読んでおきたい1冊です。ちなみに、前作から30年後の2049年の世界を描いている続編ですが、シンギュラリティを迎えるのは2045年。シンギュラリティ後の世界がどのように描かれているのか非常に楽しみです。

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