盛田昭夫の本おすすめ5選!世界のソニーを創りあげた名経営者

更新:2021.11.10

ウォークマン、CDなど、数々のイノベーティブな商品で世界にインパクトを与え、かのスティーブ・ジョブズからも崇敬されていた盛田昭夫。26歳で起業した彼は、いかにして「世界のモリタ」と呼ばれるにいたったのでしょうか。その生涯や経営哲学を知ることのできる本を5冊紹介します。

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世界中からリスペクトされる経営者・盛田昭夫

盛田昭夫は1921年、愛知県の小鈴谷村(現・常滑市)で、300年以上続く酒造の15代目の跡取りとして生まれました。10歳を過ぎる頃から父親に会社に連れられ、経営者としての教育を受けて育ちます。

しかし中学時代に転機が訪れます。科学や電気に夢中になった彼は、電気蓄音機やラジオ受信機づくりに夢中になり、高校受験に失敗してしまったのでした。浪人を経て入学した高校では物理学に目覚め、大学は大阪帝国大学(現・大阪大学)の理学部物理学科へ。ますます家業と離れていってしまいます。

大学で好きな研究に没頭する日々が続くも、時は太平洋戦争まっただなか。大学卒業後、海軍に入った彼は、そこで井深大との運命の出会いをはたします。2人がソニーの前身、東京通信工業を創業するのは、敗戦の翌年、1946年のことでした。

当時盛田は26歳。オフィスは雨漏りのするバラック小屋、社員は30名以下でした。しかし「自由闊達にして愉快な理想工場」を目指すその会社は、1950年に日本初のテープレコーダーを開発すると、破竹の勢いで「世界のソニー」へと駆け上ってゆくのです。

1958年に世界最小のトランジスタラジオをアメリカ、ヨーロッパで発売。後にアップルストアのモデルともなったショールームを1963年にニューヨーク5番街にオープンしたかと思えば、1970年には日本企業初のニューヨーク証券取引所上場。さらに1980年代のソニー黄金時代を生んだ「ウォークマン」やCD、8mmビデオ……。

前代未聞のアイデアで人びとのライフスタイルまで変えてしまうその商品群は、いつしか欧米企業にとっても脅威の的となります。

そして、それらの商品開発、セールス、マーケティング、ブランディングなど、あらゆる戦略の前線に立って指揮を執っていたのが、盛田昭夫でした。世界中の経営者から尊敬を集め、「世界のモリタ」と呼ばれた彼は、日本が生んだ真のグローバルリーダーといえるでしょう。

盛田昭夫はいかにして「世界のモリタ」になったのか

本書は1983年、スティーブ・ジョブズが小型フロッピー・ディスク・ドライブを購入するために、ソニーの厚木工場を訪れた時のエピソードで幕を開けます。そのジョブズが生前、誰よりも心酔し、ロールモデルにしていたのが盛田昭夫でした。

世界を変えたジョブズと盛田。この2人には大きな共通点があると著者は述べています。それは、目標達成のために周囲を巻きこむ、天才的な「説得力(コンピシング・パワー)」です。

著者
森 健二
出版日
2016-04-22

いかにエンジニアや社員をその気にさせるか、それがソニーの経営のエッセンスの一つでした。そして商品を開発するだけでなく、セールスマン、そしてマーケッターでもあった盛田にとって、その説得力は「商品コンセプトの明確化」として、顧客や社会に向けても発揮されていたのです。

「納得しなければ人は動かないし、ついてこない。商品もぐだぐだ説明しなければならないものは売れない。美しいとか、役に立つとか、お客がシンプルに共感できなければダメなんだ」(『ソニー 盛田昭夫』より引用)

とはいえ盛田自身、最初からそのようなことに気づいていたわけではありません。よいと思って開発した商品が売れない、そんな失敗を何度も重ねながら、実践のなかで商売の本質を掴んでいったのです。

生い立ちからグローバル・リーダーになるまで、「世界のモリタ」の軌跡をたどり、その秘密に迫った本書。経営、セールス、マーケティング、ブランディングにかかわる方はもちろん、「新しいことがしたい」と意気込むすべての人を「その気にさせる」一冊です。

小さな町工場から世界へ。盛田昭夫の戦いの記録

1987年、世界進出を図る日本企業へ欧米からのバッシングが高まるなか、英語で書かれアメリカで出版された作品。

盛田自身によって生い立ちから語られた本書は、戦時中に技師として圧倒的な技術力の差を実感しながらも、世界のソニーを目指し、先陣切ってアメリカに乗り込んでいった彼の「戦いの記録」といえます。

著者
下村 満子 盛田 昭夫
出版日
2012-01-13

盛田がトランジスタラジオを売り込むために初めてアメリカの土を踏んだのは1953年。当時の外国人が日本に持つイメージはというと、唐傘、着物などといった古めかしいものでした。「MADE IN JAPAN」は安かろう悪かろうの象徴。彼の戦いは、そんな状況からはじまったのです。

文化や商習慣の違いで何度もピンチを迎えるも、そのたびに持ち前の勇気とアイデアでくぐりぬけていく姿は手に汗握るほどスリリング。後にスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾスに影響を与えるイノベーティブな発想と戦略についても、詳しく語られています。

真に世界を豊かなものにするのは、新しいアイデアによる技術の進歩。そう信じてやまない盛田は、「ものづくり」という本来の役割を忘れつつある世界の産業界にむけて、最後にこのように警鐘を鳴らしています。

「いまや経済は、お金をあやつる人びとのなすがままになっている。あらゆる会社が金融商人の対象にされ、伝統ある企業が目先の利益を求めて自己の財産を食いつぶしている。(中略)こうしたことは、われわれが望んでいる、より安定した世界を作るためには、何の役にも立たない」(『MADE IN JAPAN』より引用) 

世界を驚かせたソニーの熱い人間ドラマ

生い立ちからソニー創業、そしてその死までを描く、盛田昭夫の生涯に迫るノンフィクション小説です。

「小さな町工場」から「世界のソニー」へ。その奇跡のようなストーリーが、臨場感をもって綴られています。

著者
江波戸 哲夫
出版日
2005-04-21

主人公はあくまで盛田ですが、タイトルに「学校」とあるように、彼のもとで働いていた社員一人ひとりにもスポットが当てられています。

「新商品を世の中に送り出すっていうことは、もともとそういうことなんです。前例なんてまったく当てにならない。道なき道を、これこそ世の中に受け容れられるに違いないっていう思い込みだけで突き進んでいくのですよ」(『小説盛田昭夫学校』より引用)

この盛田の言葉が象徴するように、商品開発からアメリカ進出まで、彼らの前に現れるのは前例のない壁ばかり。それでも寝食を忘れて仕事に打ち込む彼らに、「新しい日本」をつくるべく立ち上がった幕末の志士たちの姿さえ重なります。

ビジネス小説の枠をはるかに超えた、手に汗握る熱き人間ドラマを堪能してください。

慣習にとらわれない盛田昭夫の経営哲学。その根幹にあるものとは?

盛田昭夫の著作物、講演録、インタビューから社内スピーチまで、あらゆる発言を収集し、そのエッセンスを収めた本です。従業員30名にも満たなかった小さな会社をグローバル企業へと育て上げた、彼の経営哲学と方法論が凝縮されています。

人材育成からマーケティング、ブランディング、世界進出まで、さまざまなテーマについて語られていますが、盛田がここで訴えていることは非常にシンプル。それは「根本原則」を認識せよ、ということです。

著者
盛田 昭夫
出版日

盛田はその考え方を「物理学」から学んだといいます。

「物理とは『たくさんの現象を、なるべく簡素化した法則で説明する学問』なのである」(『21世紀へ』より引用)

アメリカ進出の際、多大なコストを投じてニューヨークの一等地にショールームを設立したのも、既存の代理店経由ではなく、現地で直接販売・サービスをおこなう仕組みにしたのも、そしてニューヨーク証券取引場で上場させたのも、すべてこの根本原則にしたがってのことだったのです。

「まずマーケットをクリエイトしなければ、いかに優秀な商品でも売れない。マーケットをつくるには自分で自分のブランドを確立しなければならない。マーケットが拡大してきたら、現地で生産を開始する。資金調達は、よい会社が有利に調達できるような市場と方法で調達する……。みなすべて、単純明快な原則である」(『21世紀へ』より引用)

さまざまなマーケティング手法や経営戦略の情報にあふれ、本質を見失いがちな現代。あらゆるビジネスパーソンにとってヒントとなるでしょう。

好奇心旺盛でエネルギッシュ。盛田昭夫の人間的魅力を知る一冊

著者の黒木靖夫はソニーの企業ロゴをデザインしたほか、「ウォークマン」の商品化にもたずさわり、開発グループのリーダーを務めた人物です。

本書は1960年にソニーに入社した彼が、34年にわたる盛田昭夫との思い出を綴った一冊。身近にいた人間しか知ることのできない、盛田の人間的魅力に満ちたエピソードが紹介されています。

著者
黒木 靖夫
出版日

「初対面の人でも30分会話しただけでトリコにし、また会いたいと思わせる」。黒木は、盛田の魅力をこのように表現しています。そして好奇心旺盛で、とにかくエネルギッシュ。趣味はミュージカルからスポーツまで幅広く、50歳を過ぎても、『POPEYE』をはじめ若者向け雑誌を愛読し、朝からステーキを食べていたそうです。

なかでも注目すべきは、仕事でのエピソード。あれほどの企業を創りあげた経営者でありながら、盛田はコンセンサス(同意)を嫌い、つねに自分と反対する意見や少数意見に耳を傾け、会議でも満場一致で可決された議論については不純なものを感じていたといいます。

「やることは未知のことばかり。他社の真似はせず、すべて自分たちが最初なのだ。『わからないけれど、とにかくやってみよう』という台詞を何度聞いたことか」(『大切なことはすべて盛田昭夫に教えてもらった』より引用)

資本金に匹敵するほどの巨額を投資して銀座の一等地に設立したソニービルも、逆風のなかでの「ウォークマン」の商品開発も、すべてはこの「とにかくやってみよう」から。ソニーの黄金時代を生みだした、人を惹きつけて離さない、盛田の型破りな人柄に本書で触れてみてください。

彼のことを知らなかった方は、「こんなスゴイ日本人がいたのか!」とビックリするはず。ぜひ、どれか一冊手にとってみてください。

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