押しも押されぬ人気漫画『進撃の巨人』。その魅力はカッコイイ登場人物?魅力的なストーリー?謎めいた世界観?もちろん、そのすべてです。今回はそんな『進撃の巨人』と共通した要素のあるおすすめ漫画5作をご紹介しましょう。
近未来。他の遺伝子の長所を取り込んで進化する発展型成長遺伝子の研究が進み、人類の叡智はついに、不老不死に手が届くところまで発展していました。
ところがその実験で不備が生じ、未曾有のバイオハザードが発生。人類の想定を越えて急激に成長した「彼ら」――発展型遺伝子生命「シャヘル」は、わずか2年で南北アメリカを完全制圧してしまいます。
アメリカ壊滅で世界中の対応が後手に回るなか、唯一反撃を始めた国家がありました。軍を再編成した日本です。戦力の中心になったのは外骨格兵装を身に纏う対シャヘル機甲歩兵、通称「侍」。若き侍、塚原武道(つかはらたけみち)たちが、人類存亡の危機に挑みます!
- 著者
- 戸土野 正内郎
- 出版日
- 2006-08-10
本作は2005年から「月刊コミックブレイド」で連載されていた戸土野正内郎の作品。種の危機に瀕した人類を描くSF漫画です。
『進撃の巨人』は壁の内側で生活せざるを得ない人類が、外に向かってうって出る物語です。本作の設定も少し似ていますが、立場が逆。人類はアメリカこそ失いましたが、かろうじてシャヘルをアメリカ大陸に封じ込めることには成功しています。
しかし、それもかなり危ういバランス。シャヘルの尖兵を生み出す生態工場ともいえる「巣(ネスト)」がアメリカ大陸外に根付いてしまえばアウトです。群体の特性を持つシャヘルは、テレパシー能力をもち、1体の経験を全体で共有し、異常な速度で発達する危険な存在なのです。
それに対抗するのが「侍所」と呼ばれる日本の組織。主人公の塚原武道はそのなかのエリート部隊、特殊実験部隊に配属されます。部隊は1番から5番隊まであり、それぞれ装備テストの名目で男性のみ、女性のみの部隊などがあって個性豊か。隊員の色恋も見られ、このあたりは学園モノを思わせるでしょう。
謎めいた経歴の武道なのですが、戦いのなかで急成長していきます。1番隊の同僚にしてライバルの、九十九五六八との淡いロマンス、人類反抗作戦の要「K計画」などさまざまな要素を孕みながら、物語は進んでいきます。
アメリカに巣くうシャヘルとの戦いのゆくえ、そして強化外骨格の適性者である少年少女たちの運命やいかに……。
『イレブンソウル』については<『イレブンソウル』が面白い!侍魂を描くSF漫画は名言だらけだった!>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
2013年、地球は人知れず脅威に晒されていました。宇宙から、宇宙怪獣「進化侵略体」がやってきたのです。
修学旅行で台湾を訪れていた女子高生の小椋しお(おぐらしお)は、その宇宙怪獣と、地球の超国家組織「DOGOO(ドグー)」の戦闘に巻き込まれてしまいます。
一般人が逃げ惑うなか、しおは同級生の浅尾かおる(あさおかおる)を守るため、立ちあがりました。
DOGOO戦闘員のひとり、アダム・ミューアヘッドが落とした装置を拾ったしお。彼女は自身の中で眠っていた偉人の遺伝子「織田信長」を覚醒させ、見事に敵を撃退していきます。
侵略体への数少ない対抗手段となった彼女は、大切な人を守りたいという使命感を胸に、DOGOOの一員となって戦いの渦中に身を投じていきます。
- 著者
- 久 正人
- 出版日
- 2012-02-10
本作は2011年から「コミックアース・スター」で連載されていた久正人の作品。2014年にテレビアニメ化されたので、タイトルだけご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
本作のウリはなんと言っても「謎の宇宙怪獣」対「偉人の能力を活用する超人」の戦いです。作者が子どもの頃から好きだったという怪獣モノに、能力バトル要素が加わって、SFアクション漫画に仕あがりました。
進化侵略体は密かに地球に来訪し、海中で侵略開始の時を待っていました。そのままであれば、地球は確実に彼らの手に落ちていたのでしょうが、これに対して入念に準備していた者たちがいたのです。それがDOGOO。かつて侵略体に故郷を滅ぼされたひとりの異星人が、数千年前から歴史に少しずつ介入して築いた組織です。地球を救い、侵略体を滅ぼすことは、彼の復讐でした。
異星人がおこなっていたのは、組織の構築だけではありません。地球人類史のなかで特に優秀な傑物の遺伝子を集めて武器とし、それに適合する戦士を生み出していたのです。適合する者は「E遺伝子(イージーン)ホルダー」と呼ばれ、小椋しおもそのひとりでした。
しおの遺伝子は、かの有名な織田信長。その力を「AU(エーユー)ボール」という装置によって巨大な銃の形で発現させます。
ポップな絵柄に、おちゃらけたタイトルで惑わされそうになりますが、物語は徐々に重い展開へと進んでいきます。E遺伝子ホルダーたちの身を削るギリギリの戦いは、『進撃の巨人』のエレンや調査兵団の奮闘に通ずるものがあるでしょう。
人間同士の信頼、怪獣の猛攻、機略策略、そして激戦に次ぐ激戦!偉人をルーツとした異能超人怪獣バトルです。選ばれた偉人のなかには、思いも寄らない意外な過去が明かされる者もいますよ。
30人あまりの孤児が共同生活をする孤児院、グレイス=フィールドハウス。主人公のエマ、ノーマン、レイは年長組として、他の孤児や「ママ」と慕う優しいシスターイザベラたちと、擬似的な家族生活を続けていました。
幸福な生活が破られたのは、6歳のコニーが里子に出た日のことです。コニーが忘れた宝物を持って、こっそり見送りに行ったエマとノーマンは、そこで恐ろしいものを見てしまいました。
そこにいたのは、無惨にも殺されたコニーの死体と、それを食料として扱う大柄な異形の鬼たち。グレイス=フィールドハウスは孤児院などではなく、人肉を飼育する人間農場だったのです。
子どもたちは生き残るため、密かに脱出計画を練りはじめます……。
- 著者
- 出水 ぽすか
- 出版日
- 2016-12-02
本作は2016年から「週刊少年ジャンプ」で連載されている白井カイウ原作、出水ぽすか作画の作品。ジャンプでは異色のグロテスクなサスペンス漫画です。
孤児という境遇ながらも、兄弟同然に育った仲間たちに、母親代わりのシスターがいるその日常は、最悪の形で瓦解し、あまつさえ食人鬼に供されるために飼育されていたという現実です。孤児院だと思っていた場所が、死が待つ囚われの箱庭だったという、あまりにもショッキングな展開で物語がはじまります。
「孤児」とされる子どもたちは皆、出荷待ちの生きた食料。その事実に気付いていることを知られてはいけません。昨日までの日常が今日からはサバイバルになるのです。
本作には『進撃の巨人』のような激しいアクションはありません。主人公たちに突き付けられる冷酷な現実と、その絶望感にめげることなく、知略を尽くして抗うところが特徴です。
細かな伏線が張り巡らされ、残酷なのに面白い、という部分が共通しています。
12歳までに里親のもとに行く、とされるグレイス=フィールドハウス。ここでいう里子とは、つまり出荷のことです。次の里子は11歳のエマたち3人の番。残された時間はわずかしかありません。
皆で生き残り、皆で逃げ延びるためには、賢く立ち回り、鬼に与するイザベラたち大人を欺かなければなりません。2017年現在まだまだ連載中の本作、彼らは今後どうなってしまうのでしょうか。
「第10位」の魔王モーテムに挑む主人公アドゥと仲間たち。彼らの攻勢は魔王に痛打を与えたかに見えましたが、かつて人間対悪魔の一大決戦を一撃で決定付けたモーテムの力はとてつもないものでした。
アドゥをはじめとしてパーティは全滅……したかに見えましたが、死んだはずのアドゥが再び立ちあがり、単身モーテルを撃破したのです。
16年前、人類は「12階梯」と呼ばれる12人の魔王と、彼らの統べる悪魔の軍勢によって危機に瀕していました。しかし、突如最強の悪魔である「第12位」とそれに次ぐ「第11位」の魔王が消滅。それによって人類のあいだには「英雄が現れた」と希望がもたらされたのです。
しかし事実は違いました。天使と契約した名もなき「第12位」の魔王、いまはアドゥと名乗る彼が、悪魔軍を裏切っていたのです。人間勢力に紛れて暗躍するアドゥが、魔王全滅を虎視眈々と狙います。
- 著者
- 山本 晋
- 出版日
- 2016-05-14
本作は2015年からwebコミック誌「ファミ通コミッククリア」で連載されている山本晋の作品です。いきなり最強パーティが全滅するという衝撃的な展開をみせ、主人公が徐々に強くなっていくというバトル漫画の定石を覆す意欲作です。
本作の主人公はどんどん弱くなっていきます。魔王でありながら人間になることを望んだアドゥは、天使と契約を結びました。その契約は、魔王を1体倒すごとに人間に近付くというものだったのです。当然、人間に近付いた分だけ、魔王としての力を失っていきます。
どこか手塚治虫のファンタジー時代劇漫画『どろろ』を彷彿とさせるこの設定。面白いのは、アドゥは人間になりたがっていますが、精神はまだ人間的ではないところでしょう。
弱体化する制約があるため、強い魔王から倒していこうとするのですが、最初に「第11位」の魔王を倒した時点で、「第10位」のモーテムには敵わなくなってしまいました。
そこでアドゥは足りない力を補うために、人間を利用することを考えます。社会に溶け込み、有望な人材を選別して集め、魔王にぶつけ、踏み台にするのです。もちろん人間たちはそんなことつゆほども知りません。
いつも笑顔を絶やさないアドゥですが、それは経験則で人当たりよく振る舞っているだけ。今後、魔王を倒して人間に近付いていけば、精神も人間的になっていくでしょうし、同時にその時々の仲間との関係も大きく変化していくことでしょう。
主人公でありながら、人間対悪魔の戦いのゆくえを左右するトリックスター、アドゥ。彼はこれからどのように成長――いや弱くなり、人間的に変わっていくのでしょうか。
人類の母なる星、地球と太陽系が破壊されてから1000年。母星を飛び立った人類の播種船(はしゅせん)のひとつ「シドニア」は、故郷を滅ぼした未知の生命体「奇居子(ガウナ)」の脅威に晒されながら、新天地を求めて旅を続けていました。
シドニア最下層で戸籍もなく、ひっそり暮らしていた主人公の谷風長道(たにかぜながて)。ひょんなことから存在を知られた彼は、シドニア艦長小林の援助を得て、対ガウナ用機動兵器「衛人(もりと)」の操縦士訓練生に抜擢されます。
長道の甘酸っぱい日常と、神経を磨り減らす過酷な戦闘の日々は、こうして始まりました。
- 著者
- 弐瓶 勉
- 出版日
- 2009-09-23
本作は2009年から「月刊アフタヌーン」で連載されていた弐瓶勉の作品。代表作『BLAME!』をはじめとして、その作風は重厚な世界観を「語らない」ことで謎を深め、世界的評価を得てきました。
本作ではハードSFの奥深さはそのままに、他は一転して人型ロボットや学園ハーレムモノの要素を前面に押し出し、非常にとっつきやすい作風へと転換しました。こうして間口は広くなったのですが、中身の濃い部分は相変わらず。無意味で無慈悲で無下な死がそこかしこで見られます。キャッチーな表層の下にあるのは、これまでどおりの虚無的な世界観なのです。
弐瓶は実の娘に、『進撃の巨人』のような漫画を描けばいいと言われ、ショックを受けた経験があります。しかし彼のハードSFの作風は、日本のみならず世界中の創作者に影響を与えており、誰であろう『進撃の巨人』作者の諫山も弐瓶のファンを公言しているほど。いわば『進撃の巨人』の持つエッセンスの原点なのです。娘さんが知らないこととはいえ残酷なひと言ですね……。
目的のわからない襲撃者に対し、限られた生存領域を特殊技能者が死守する……かろうじて対処できたとしても、それは一時的なことで、敵の領域は広大かつ無尽蔵。人類は生き残りを模索しつつ、今は反撃の機会をうかがって雌伏するのみです。
これはどちらの作品にも共通する設定で、作品世界は大きく異なりますが、『進撃の巨人』が好きで、ロボットやハーレムが琴線に触れる方には、本作がぜひともおすすめです。
人を襲い、人に擬態する、対話不可能な存在ガウナ。どこから来て、なぜ人類を付け狙うのか、1000年もの間続いているこの戦いに終わりは来るのでしょうか。そして、シドニアという限られた箱庭で細々と生きる人類の未来はどうなるのでしょうか。
いかがでしたか?いずれも劣らぬ作品ばかりをご紹介しました。謎めいた『進撃の巨人』の続きも気になりますが、これらの作品で新しい知見を得れば、より深く楽しめるようになるかも知れません。