初めまして。槙田紗子です。22歳です。ホンシェルジュで本を紹介させていただくことになりました。本に特別詳しい方ではないと思いますが、ホンシェルジュを通してたくさんの本と触れ合いたいと思っています。よろしくお願いします!!
- 著者
- 桐野 夏生
- 出版日
東電OL殺人事件のことを調べていたら、この本に出会いました。東電OL殺人事件を元に描かれた作品です。美しすぎる容姿の持ち主 “ユリコ”を妹に持つ“わたし”。“ユリコ”に心惹かれていく“わたし”の同級生“和恵”。
東電OL殺人事件の被害者は昼間は一流企業のエリートOL、夜は売春婦。このフレーズだけでもなかなか衝撃を受けますよね。被害者のモデルになっているのは誰なのか、読んでみないとわからない。というより、人それぞれ解釈が違うのではないかと思いました。
この本のタイトルである『グロテスク』という言葉は、一般的には『血』とか『死体』を連想させる言葉として使われていますが、この本ではそういった意味合いではないです。ここに描かれているのはもっと残酷さを極めた『グロテスク』だと思います。
愛憎だったり、自尊心と同族嫌悪だったり、人間は知らず知らずのうちに両極の感情に振り回されていると思います。「絶対ああはなりたくないよね」と言いながら自分を保っているつもりが、知らぬ間にその対象に堕ちていく。私もこういう場面を見たことがあります。
人に強く惹かれたり、人を強く憎んだり、そういう“急激で強い”感情は自分を保てなくなるということを再確認させられる本です。確かに暗い話ではありますが、皮肉にもこの作品に人間らしさが詰まっていると思いました。
ゾクゾクしますよ! オススメです!
- 著者
- 島本 理生
- 出版日
主人公は茨城県に住む中学三年生の藤枝黒江。母子家庭で、親子関係がうまくいっていない。プロカメラマン・浦賀仁の写真集に感銘を受け、ファンレターを送ったことから、2人の文通が始まり、カメラマンになるという夢を抱く。
黒江の身に起こることが、辛い出来事ばかりで読んでいるとしんどいかもしれません。仕方のないことですが、家庭環境は人間の心理に深く関わってくるだと思います。彼女は家に居場所がなく、親の抱えている問題もここには書けませんがかなり深刻。そのため、愛情を求める気持ちが人一倍強い。時に、恋愛なのか信仰なのかわからないくらいのギリギリのラインで異性を求めてしまう。それは若さの所為なのか。
人生で起こること全てが必然なら、トラウマを抱えた人間はそれをどう受け入れ、前に進むか。その方法に正解はないですよね。
“人は生きてるんじゃなく、生かされてる”
だけど、どうしたって生きていかなきゃいけないんだと改めて思う一冊。彼女に夢があってよかったです。。。
- 著者
- 桜庭 一樹
- 出版日
- 2010-04-09
第138回直木賞受賞作品。浅野忠信さん、二階堂ふみさん主演で映画化されたことでも有名な作品です。
『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』という桜庭さんの作品が好きですが、そこに出てくる親子が生き延びたイメージで描いたそうです。
花にとって淳悟は家族で、恋人。養父を男として愛してしまう感覚は共感できないですが、『血』は何よりも濃く裏切らないという意識は共感できます。淳吾の元恋人や、花の婚約相手の存在が、花と淳悟の関係が他に代わりのないものであるとより感じさせます。
桜庭さんの、読者を吸い込んでしまうような文章。読み終わった後、本の世界からなかなか抜け出せません。