ネットで本が買えるどころか、電子書籍も各段に使い勝手がよくなった現在。逆にその影響もあって(今更言うのもなんですが)リアル書店の魅力が増しています。ということで今回は、リアル書店の楽しみ方が見えてくる4冊をご紹介します。
- 著者
- 嶋 浩一郎
- 出版日
- 2013-06-03
ネット書店と違って、リアル書店での本との出会いは実に唐突です。誰かが興味を持ったからこそ本となった、あらゆるテーマが目の前に並んでいるわけです。もっと読みたいかどうかの試し読みも、ぱぱっと本を開いてサクッとチェックできます。
『なぜ本屋に行くとアイデアが生まれるのか』は、そういったリアル書店に備わったぜひとも活用すべき魅力をたっぷり語っている本です。ノスタルジーで言っているのではなく、欲しいタイトルが決まっている時はネット書店、唐突で偶然な本(情報)との出会いを求める時はリアル書店に足を運ぶといいよ、といったスタンスです。
この本では、リアル書店をどう楽しむと面白いアイデアにつなげることができるのか、というところも大きなテーマの一つなんですが、著者のようにクリエイティブなお仕事に関わってなくとも、自分自身の興味の幅を広げるために、この方法は役に立つのではないかなと思います。リアル書店の本来の魅力を再認識させてくれる1冊です。
- 著者
- ミシマ社 編
- 出版日
- 2012-08-05
『THE BOOKS』は、365人の書店員さんや書店主さんが「これぜひ読んでみて」というのを1冊ずつ紹介している本です。1ページで1冊の本が紹介されていて、紹介している人の手書きのキャッチコピーがまず目に飛び込んできます。その手書き文字の佇まいは、書店員さんのお人柄と作品を読んだ感想がにじみ出ているようで楽しいです。
書店員さんのお気に入りってどんな本だと思いますか? ここでは実に様々なジャンルの本が紹介されています。自分のお気に入りの本を紹介している本屋さんが現れたら、妙に親近感を覚えてしまうのがまた楽しいです。そしてこの本のもう一つの顔が、書店ガイドとしての役割です。登場した書店がどのあたりにあるか、おおまかなMAPが巻末に添えられているんです。
この本は第2弾の『THE BOOKS green』も発行されており、そちらではまた別の365軒の書店によって中高生におすすめの本が紹介されています。ご縁があって、私も1冊ご紹介させて頂きました。
- 著者
- 出版日
- 2016-09-07
皆さんは本を買うとき、カバーをかけてもらいますか?私はだいたいかけてもらいます。素敵なデザインのカバーだと嬉しくなります。『日本のブックカバー』は、書皮友好協会監修のもと、3000種に及ぶブックカバーから選りすぐりの350種を掲載した本です。カバーを収集して楽しんでおられる方々がおられることを初めて知ったのですが、凝ったデザインを次々と眺めていると、なるほど収集したくなる気持ちにも頷けます。
無料のブックカバーは、かつてどこかの本屋さんが百貨店のオリジナル包装紙に着想を得たのが始まりではないかということです。その後全国の本屋さんで定着した商習慣のため海外ではほとんど例がなく、訪日外国人の方にとっては嬉しい驚きなのだとか。これまでのコレクションということのようで、現在入手できないものも含まれているんですが、地元や本に対する思い入れがたっぷり詰まったブックカバー目当てに、書店巡りしてみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 早川 義夫
- 出版日
- 2013-12-10
『ぼくは本屋のおやじさん』は、小さな書店主の気苦労がひしひしと伝わってくる1冊です。いざ書店を始めてみると、憧れとはかけ離れた書店運営のどうにもならない実情に直面します。ここにある「嘆き」は、書店特有のものもあるけれど、様々な小売業やサービス業に通じる「嘆き」も含まれているように感じます。
ネットで飲食店の評価が必要以上にシビアだったりするのを見ると、客商売をする立場上つい同情しちゃう時があります。しかしここで知って頂きたいのは、店の主はそれ以上にお客様のことをよく見ているということです。でないとお客様に適切な気配りができたか自己反省ができないし、気持ちのよいお客様にはより親切にできたらいいなあと考えてもいるからです。
私自身も、自分でお店をするようになってから他のお店での買い物がもっと豊かな時間になりました。店主の立場から見た「気持ちのよいお客様」がどのようなものかを、素敵なお客様の振る舞いから教わったのです。店主のリアルな思いに触れて頂くことで、お店で過ごす時間がより豊かなものになってくれれば嬉しいなあと思います。
とはいえ、リアル書店は立地条件が必ず伴います。よって、地域で果たすべき役割と本屋としての役割や理想との狭間で、バランスを大切にしながら運営している書店がほとんどではないかなと思います。「地域の顔」でもあるリアル書店、地元の書店はもちろん、様々な地域におでかけの際も、ぜひ各地で頑張っているリアル書店にお立ち寄り頂けたら嬉しいです。