

作者 | 美内 すずえ |
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出版社 | 白泉社 |
出版日 | 1976年04月20日 |
先月から続いています。連載当初から圧倒的なストーリーテリングで読者を惹きつけてやまないスポ根演劇大河マンガ「ガラスの仮面」。その中から己の好きなところをただただ際限なく語る、作中演目ランキング、さっそくレッツラゴー。なお、10位から6位はこちら。
第5位「若草物語」※コミックス2巻、3巻収録

作者 | 美内 すずえ |
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出版社 | 白泉社 |
出版日 | 1976年07月01日 |
マヤの初舞台。劇団つきかげの発表会です。演劇まるっきり初心者のCクラスでありながら、四姉妹のうちのベス役に大抜擢。しかし、なんせ初めてなので、役柄をつかむ以前にマヤは見様見真似で「演技」というものをしようとあせるばかり。
先生:きみの演技にはまるで裏づけができてないんだ!
マヤ:裏づけ?(ぽかーん( ゚д゚))
先生:そうとも! まず気持ちがあって、その気持ちが動作やセリフをいわせるんだ!
急にそんなこと言われましても。月影先生はマヤに、一週間ベスとして生活することを命じます。マヤは学校にも行かず、子猫を拾ってきたり編み物したり家事したりしてるうちに、なんかしらんけどベスの役柄を見事つかむのだった。
(ゴクッ) ベスよ…ベスだわあの子… ベスを演じているのではなくて、ベスそのものなのよ…
(額と目の下にものすごい量のタテ線)
さらに、瀕死の病人となったベスの演技をつかむためマヤは一晩中雨に打たれ、40度の熱を出しながら舞台に立ち、見事! 瀕死の演技(ていうか普通にマヤが瀕死)をやり遂げるのだった!
いいよね。狂ってるよね。舞台袖で、高熱のあまり思わずふらついたマヤに「ではその頭を冷やしてあげましょう!」つってバケツの水ぶっかける月影先生もその上をいく狂いぶり。師弟狂い咲きの巻~~。
第4位「真夏の夜の夢」※コミックス21巻、22巻収録

作者 | 美内 すずえ |
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出版社 | 白泉社 |
出版日 | 情報なし |
劇団つきかげと劇団一角獣とで、Ⅰ公園の野外ステージで公演することになりました。妖精パック役のマヤは、すばしっこくてきびきびしたパックの動きができない。かつてこの役を演じたイギリスの俳優はオリンピック選手並みの訓練をしたそうよ!どうする、マヤ!しかし、月影先生考案のある特訓方法によって、その動きの基本となる反射神経とリズム感をいつの間にか手に入れるのだった。この「特訓」が出てくる感じがまさに昭和。飛雄馬……!
パック…! あたしはパック…!(鏡に向かって自己暗示~~)
特訓はさておき、やはり劇団一角獣が絡むと、お芝居の描写自体が面白い。マヤだけでなくほかの出演者たち全体が魅力的に描かれるのは、たくさんのお芝居のなかでもこれがずばぬけているなあ。
なお、この町の風景描写は吉祥寺で、I公園はまんま井の頭公園です。マヤたちは町のあちこちで、衣裳をつけて芝居で街頭宣伝をします。
じゃら~~~~ん (とタンバリンをならす)
大道芸には大道芸のやり方があるわ(ニヤ)
吉祥寺のサンロードいくたびに毎度つぶやいてしまうよ。いいよなあ、あのシーン。じゃら~~~ん。
第3位「奇跡の人」※9巻~12巻収録

作者 | 美内 すずえ |
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出版社 | 白泉社 |
出版日 | 1979年08月01日 |
姫川亜弓とともに、ヘレンケラー役のオーディションを受けるマヤ。かつて劇団つきかげをつぶそうとした劇団オンディーヌの小野寺が演出、制作が速水真澄の大都芸能、アニー・サリバン役が亜弓さんの母・姫川歌子。もう、まわりは敵だらけだ。どうするマヤ!
目も見えず、耳も聞こえず、口もきけないヘレンの役柄をつかむため、紫のバラの人はマヤに長野の別荘を提供。そこでマヤは自らに目隠しをし、粘土を耳に詰め、ヘレンとして生活することでヘレンの感覚をつかむのだった! なぜ別荘に粘土が! 人さまの別荘でガラス割りまくり! 物こわしまくり! もはや感情だけでやたらめったら動くぞ、ゴーゴー!
おかげさまで、めでたく、ヘレン役は姫川亜弓とマヤのダブルキャストに決定しました。ありがとうございます。
オーディション前の候補者たちそれぞれの稽古風景、オーディション、亜弓さんと姫川歌子の稽古、マヤと姫川歌子の稽古、亜弓さんの舞台本番、マヤの舞台本番、と、この話は見どころがいっぱいです。
しかしまあなにがすごいって、完璧なヘレンの亜弓さんと、毎回違うヘレンを繰り出してくるマヤ、双方に完璧に対応する姫川歌子がほんとは誰より一番すごい。そして時々出てきてマヤに嫌味を言うだけの小野寺が、演出家として完全に空気だ。万年ベレー帽。
初めてこれ読んでから30年ちょい、これまで何度も読み返してましたが、作中のサリバン先生のセリフで思わずもらい泣きしたのは今回が初めてでした。これが加齢か。
第2位「ふたりの王女」※22巻~28巻収録

作者 | 美内 すずえ |
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出版社 | 白泉社 |
出版日 | 1983年11月01日 |
速水真澄がわざとそう仕向けたとも知らずマヤがのこのこ日帝劇場へ向かうと、そこは、姫川亜弓の相手役の降板で急きょオーディションをおこなうこととなり、てんやわんやであった。
で、もちろん受けることになりました。ありがとうございます。こちらも、オーディションから大変に面白い回。マヤはさ、もう、芝居がうまい下手とか、せりふ回しがどうのとか、そういう次元じゃないんだよね。審査員たちの前で
ここにいるのは“審査員”という名の観客…!(白目)
とか、マジやばい。オーディション行ってこんな白目の人いたら距離をとります。
課題のセリフを、みんながそれぞれ感情を込めて読むのに対し、マヤは一人芝居。課題曲を使ってなにかやる課題に、みんながいろんなダンスをイエーイっつって踊ってるのに対し、マヤはまさかのパントマイム。
そして、レストランで支配人をただ歩かせるだけの舞台に、変化をつけてなんらかの感動を与える、という課題。ざわ……、ひるむ候補者たちを前に、マヤは言いました。
なァんだ! よかった…!
おもしろそう……! こういうのだったら、いくらでも演れる(やれる)わ!(ニコニコ、キラキラ、背景いっぱいにお花)
もう、この人さ。なんでそれ声に出して言っちゃうかな。やめてよまじで。そんで、圧勝。
ホホホ これはあの子の得意技ですよ
なにしろあの子は千の仮面をもっているのだから…(月影・談)
そして配役発表。おおかたの予想を裏切り、マヤが花のような王女アルディス、亜弓さんが野心と復讐心に燃える王女オリゲルドにキャスティングされる。
(ざわ・・・)ミス・キャストだこれは…! あの美しい亜弓さんがオリゲルドだなんて…
(ざわ・・・)王女アルディスを北島マヤだって…?! あの子につとまるわけがない…!
ね、前ふりはバッチリです。普段の自分と真逆の役柄をつかむため、2人は生活を交換。亜弓さんは地下劇場で缶詰を食べ、変装して夜の町をうろつき、スケバンたちと(スケバン…)ビン振り回して喧嘩。一方、マヤは亜弓さんの豪邸でのんびりと音楽聞きながらケーキ食べてお花ながめて紅茶飲んでいました。さらに、
月影先生:「あなた達の演技には足りないものがあります! 気温がないのです!」
ってんで、舞台となる極寒の地を体験すべく、2人は精肉卸の冷凍庫に閉じ込められ、おしくらまんじゅうをします。まあ、そんなこんなで役柄をつかんだ2人。マヤは演技力で絶世の美女になり、亜弓さんは5キロ痩せて冷気を発する女優になった。演技力ってすげえよな。
月影先生も30年ぶりに舞台に出演。立ってるだけですごい存在感、出てきただけで舞台の空気が変わる、さすがは往年の大女優。目の部分に仮面をつけて多少衣装がキラキラしてはいるけれど、髪型まんまだし、杖ついてるし、普段ととくに変わりなし!
ところでこのひとたち、役柄をつかむためにちょいちょいその役になりきった生活をしますね。わたしもいつかオリゲルドみたいな役が来たら、スケバンと喧嘩せねば。ていうか、まずはスケバンを探さねば。まだいるかな。
なお、この「ふたりの王女」は作者オリジナルのお話のようですが、物語が最初から最後まで、コミックスでいうと丸2冊チョイ使ってきっちり描かれていて読みごたえがあります。
舞台上でオリゲルドを圧倒的に演じ切り、勝利に酔いしれる亜弓さんに、しかしマヤは天才ゆえの無邪気さで亜弓さんに身もふたもないことを言うのであった。ほんっと、天才ってやつはなあ! この辺から、読んでるこっちは亜弓さんに肩入れしていきます。亜弓さん、小さいころから天才天才ともてはやされながら、その実ものっすごい努力の人だから。なのに、ああもう、マヤなんて! なんであんなひとがいるのかしら! 悔しい!
第1位「忘れられた荒野」※28巻~33巻収録

作者 | 美内 すずえ |
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出版社 | 白泉社 |
出版日 | 1985年08月01日 |
そりゃもう、狼少女ジェーンですよ。
演劇界の鬼才、演出の鬼将軍、黒沼龍三5年ぶりの舞台は、狼に育てられた少女がやがて人間の社会に連れ戻され、野生の本性と闘いながらどう生きていくかという物語。
この役ができるのは、どんな役の仮面でもかぶりこなすに違いない北島マヤのみ!っつってオファーして、マヤは引き受けます。おおかみ……。
もちろん狼の役柄をつかむため、お得意の、狼になり切った生活をアパートで送ります。私、この人と同居したくありません。
で、なんやかんやあって、相手役の桜小路くん以外の共演者が全員降りちゃって出演者を一般公募したり、稽古場を追われたり、上演予定のホールが廃館のボロボロの映画館に変更させられたり。次々襲い来る苦難! しかし、このボロボロのホールは、紫のバラの人によりたった3日でピカピカ、新館同様修理されているのであった。よッ、タニマチ、太っ腹!
この紫のバラのひとさ、全部費用負担してマヤを高校に通わせたり、役柄をつかむためにっつって服やらなんやらわんさと贈り物送ったり、ヘレンケラー役の時みたく別荘貸したり、ほんといろんなことやってくれるんですけど、このホール立て直すってのはさ、もう、なんだ、いちファン、とか全然越えて、さすがにやりすぎなんじゃないか。マンガみたいじゃないか。すげえよ速水真澄。すげえよ大都芸能。どこかにこんな速水真澄が落ちていませんか。
マヤはジェーンの野生をつかむため、急に山行って狼として過ごしてみたりします。スカートにローファーで。山をなめんな。川に流されかけたり、素手で魚捕ろうとしたり、がけから落ちたり。そして数日後、水に映った自分の姿を見る。
つかんだ…! 狼少女ジェーンの表情……!
え、もう?
そしてボロボロの姿で稽古場に帰ってきました。
キ…(ドアの開く音)
!!ザワ…(どよめく共演者たち)
マヤ:遅くなりました 今もどりました (ふらふら)
黒岩:それで、ジェーンはできたのか?
マヤ:はい…!
ニコ!(星キラリ) ただいまあ…!
ただいま、ちゃう。前からちょいちょい感じてたけど、あなた、やりすぎよ。そんで、なんやかんやで、みなさまもう予想がつくと思いますが、舞台は大成功、マヤと桜小路くんと黒沼龍三の3人は紅天女の上演候補に選ばれるのであった。完。
この話ではガラかめで初めて、演出がどんと前に出てきます。経験のある俳優のみならず、相手が素人であっても個性や魅力をぐいぐい引っ張り出す、黒沼の演出マジック。やけ酒喰らって稽古場来ちゃったりするけど、凄腕です。なんか、すごい楽しい。観てるほうも、演ってるほうも、読んでるほうも、ワクワクするんすよ。この話も作者オリジナルだそうですが、演出と相まってしっかり演劇としておもしろいです。
はー。私はこんな感じなのですが、いかがでしたでしょうか。この他、ランキング外で、大河ドラマ『天の輝き』とか、宿敵・小野寺のえげつない妨害で急きょ一人芝居となった『ジーナと5つの青いつぼ』とか、「うめえうめえ、おらこんなうめえものくったなァはじめてだ」でおなじみ、舞台上で泥まんじゅう食べる『夜叉姫物語』とかいろいろあるんですけど。もういい? いいか? ファミレスかどっかで続き話す?
『忘れられた荒野』終了時点で33巻。ここからついに『紅天女』上演に向け、マヤと亜弓の戦いが始まりますが、それは2012年に刊行された49巻でなお終わらず、昨年連載40周年を迎え、今年は東京と京都で「ガラスの仮面展」が開催され、と、おいおい、本編の続きはよ。どうか、完結しないでこのまま終わるのだけは勘弁してください。夢オチとかもやめてください。なんならもう、最悪、結果発表だけでもいいです。プロ野球の結果速報みたく。
・マヤと亜弓のどっちが勝ったか
・マヤは真澄さんとうまいこといったか
とりあえずこの2点だけ。もう、それだけでいい。白黒はっきり決着つけてから終わってください神さま。そしたら、あとはなんとでも脳内で補完しますので。どうぞよろしく。
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