名言で読む伊坂幸太郎作品おすすめ5選!

更新:2021.11.12

伊坂幸太郎作品には、当たり前のようなことでも「はっ」と気付かされる言い得て妙な表現がたくさん出てきます。今回は、「名言」にスポットを当てて5作品紹介させていただきます。

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本屋大賞の常連、伊坂幸太郎

2000年に『オーデュボンの祈り』でデビュー。2004年に『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を受賞します。

そして本屋大賞では、第1回から第4回まで毎回ノミネートされ、第5回に『ゴールデンスランバー』で受賞。その後も多数ノミネートされています。

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映画や漫画、舞台など伊坂幸太郎の作品は小説以外のかたちでも目にする機会が増えました。現実感とフィクションが程良く入り混じるユニークな設定や、スリルに溢れたダイナミックなストーリーを持つ伊坂作品をランキング形式でご紹介します。

名言1:春が二階から落ちてきた。(『重力ピエロ』より引用)

冒頭を彩るフレーズがこちらです。字面だけみると詩的な言い回しですが、そういう比喩的な意味ではありません。

春は主人公泉水の弟の名前なのです。冒頭では、そんな春が女の子を助けるため、体育倉庫の二階から飛び降りるところを描写しています。

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2006-06-28

10年後、泉水たちの周りでは連続放火事件が発生します。連続放火の現場近くにはグラフティーアートがかならずあり、放火事件を追っていくと、グラフティーアートには遺伝子に関わるルールがあることがわかります。

遺伝子をテーマとしているため、ほんの少し難しい部分もありますが最後まで読むと、こういう意味があったのか、と驚かされるはずです。

名言2:「周りの雰囲気とか、世間体を気にして、やりたいことができないような自分はちょっといやだ。何のための人生なんだ、って思うよ」(『魔王』より引用)

本作は、自分が念じたことを相手に言わせることができる男・安藤が主人公の「魔王」、安藤の弟・潤也を主人公とした「呼吸」 の2編からなります。上記のセリフは、「呼吸」からの引用です。

潤也の妻・詩織は、ものすごい大金があったら何に使うか、潤也に聞きます。すると潤也はイタリアの独裁者ムッソリーニが処刑されたときの話を持ち出します。

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2008-09-12

ムッソリーニは恋人のクラレッタと共に処刑され、死体は広場に晒されました。その後、死体は逆さ吊りにされクラレッタのスカートはめくれてしまいます。その様に群衆は大喜びだったのですが、1人が周りのブーイングを受けながらもスカートを自分のベルトで押さえ、めくれないようにしてあげました。

潤也は、その行動が正しいかはわからないとしても、もしそのときスカートを直したいと思ったのなら、自分のやりたいことはやりたいと言うのです。また、お金は力であり、お金がたくさんあれば自分のやりたいことができるのかもしれない、とも話しました。

なぜ、潤也がそういった考えに至ったのか。理由は潤也がもつ能力にあります。その能力とは何なのか。是非一度読んでみて下さい。

名言3:「『絶対』と言い切れることがひとつもないなんて、生きてる意味がないだろ」(『チルドレン』より引用)

先の2作に比べ、読みやすいのがこの作品。『逆さに吊るして叩けば、おそらく出てくるのは、「失礼」と「無遠慮」』という家庭裁判所調査員の陣内が繰り出す数々の名言に心が奪われます。

片想い中のレンタルビデオ屋の店員に告白に行くという陣内に、とある事件で知り合った、盲目の青年・永瀬とその彼女の優子はその場に来るよう誘われました。

店員と客との会話しかしていないのに妙に自信のある陣内。絶対にうまくいく片想いだという陣内に、優子は絶対と断言できるものは何一つないと、識者の言葉で説得を試みます。そこで上掲のセリフが出てくるわけです。

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2007-05-15

またこの作品では、盲導犬を連れた盲目の永瀬が見知らぬ婦人から5000円を受け取るシーンがあります。それを見た陣内が「何で、お前がもらえて、俺がもらえないんだよ」というので永瀬は盲導犬を連れているからだろうというと、「そんなの、関係ねえだろ」「関係ないっつうの。ずるいじゃねえか」と喚き出します。

盲目で盲導犬を連れている人間にそんなの関係ないと言える、陣内みたいな人が増えたらもっと良い世界になるのかもしれませんね。

名言4:明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか」(『終末のフール』より引用)

8年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡すると発表されてから5年。残りの3年の生き方について「ヒルズタウン」の住民たちはそれぞれ思案します。本作は、終末を目前とした人々の8つの物語からなる短編集です。

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2009-06-26

キックボクサーの苗場は「明日死ぬって言われたらどうする?」と問われ、「変わりませんよ」「ぼくにできるのは、ローキックと左フックしかないですから」と答えます。さらに「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか」と問いかけます。これは「鋼鉄のウール」の中の一節です。

どれくらい生きるつもりの生き方か、なんて普通に生きていたら考えつかないことなんじゃないでしょうか。終末を意識したそれぞれの住人が織りなすストーリー。是非読んでみてください。

名言5:「俺にとって残っている武器は、人を信頼することくらいなんだ」(『ゴールデンスランバー』より引用)

友人森田に言われた「逃げろ!オズワルドにされるぞ」の言葉通り、首相暗殺の犯人として仕立て上げられた主人公の青柳。

逃げる先々で青柳を助けてくれる数々の人たち。そして上掲のセリフが出てきます。

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2010-11-26

また、「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」 というセリフもあるなど、本作は「信頼」というキーワードが軸となっています。大きな権力により濡れ衣を着せられた青柳は果たして逃げ切ることができるのでしょうか?

第1部と第2部では事件発生からおよそ3日間の出来事を、第3部ではそれから20年後のことが書かれています。それぞれリンクしていて、はっとさせられるところが伊坂作品の魅力のひとつでもあります。


『重力ピエロ』『ゴールデンスランバー』は長編で、残りの3作品は短編集となります。伊坂幸太郎の作品は、1つの作品に出てきた登場人物が他の作品でも脇役で出てくるなどリンクしている部分があるので、どんどん他の作品も読んでみたくなると思います。ぜひご一読ください。

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