『ペリリュー 楽園のゲルニカ』に太平洋戦争のリアルを見る【無料漫画】

更新:2021.1.15

太平洋戦争について描いた漫画は数多くあれど、可愛らしい絵柄で戦場の壮絶さをここまでリアルに描いた作品はそう多くはないはず。『ペリリュー 楽園のゲルニカ』は読みやすい絵柄と内容でありながら、リアルな戦争を描いた作品です。ここでは、2017年現在無料で読むことができるこちらの作品についてご紹介していきます。

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無料で読める戦争漫画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』が可愛い絵なのに悲惨

ペリリュー島という島の名前を知っている人は、どれほどいるでしょうか。この島は、現在のパラオ共和国、日本から遠く離れた南の海に浮かぶ島です。1944年9月15日から11月27日までの、島で駐屯していた日本軍約1万人と、アメリカ海軍約5万人との壮絶な戦いは、ペリリューの戦いとして知られています。

南の島での戦闘の多くがそうであったように、ペリリューの戦いもまた、日本軍は劣勢を強いられた戦いでした。日本軍は、ゲリラ戦を繰り返しながら、上陸した米軍と交戦。結果、双方に膨大な犠牲者を出し、日本側の玉砕で幕を下ろしました。アメリカ軍の死者、約2300名、日本軍に至っては、たったの240人ほどしか生き残ることができず、ほぼ全滅となった苛烈なものでした。

この壮絶な作戦を、田丸という一等兵からの目線で描いたのが『ペリリュー 楽園のゲルニカ』です。島に上陸して塹壕を掘っているところから物語は始まります。最初はまだ戦闘を行なうこともなく、主人公の田丸自身も本当に戦闘をするのかどうかわからずに思っているほど、当初は穏やかな雰囲気があります。しかしその後、アメリカ軍が上陸して、激烈な死闘を繰り広げるという展開が大筋の流れと言えるでしょう。

著者
["武田一義", "平塚柾緒(太平洋戦争研究会)"]
出版日
2016-07-29

戦争漫画は数多くありますが、この作品が良作とされるには訳があります。それは、戦場の恐ろしさをリアルに表現しているという点。華々しい戦果もなく、「無駄死に」していく兵士。また、戦場で人を殺すということや、「最後の一人になっても戦う」ことを強制されていた兵士たちの極限の精神状態。それらが、読者をまるで戦場に招き入れるようなリアルさを伴って切実に描かれるのです。

絵柄が可愛らしくて、簡略化されているからこそ読むことができる戦場の地獄。美しく飾られたストーリーのないリアルさが、この作品の魅力であり、価値であると言えるでしょう。今回は、この作品の魅力と、見どころもご紹介したいと思います。 

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『ペリリュー 楽園のゲルニカ』あらすじ

著者
["武田一義", "平塚柾緒(太平洋戦争研究会)"]
出版日
2017-01-27

田丸というただの一等兵を主人公に描かれた『ペリリュー 楽園のゲルニカ』。この作品は、ペリリューで行なわれた作戦を、一等兵の目線から描いた作品です。

召集兵であり、決して優秀な兵士ではなかった主人公の田丸。彼が、同期や上官たちが死んでいく中、生き残って戦闘に参加していく姿や、塹壕の中で隠れて命を繋ごうとする兵士たちの姿が描かれています。田丸という、命令に逆らうことを許されていない一等兵の目線から、戦場の地獄を描いた作品であると言えるでしょう。

徐々に迫り来る戦争の実感

徐々に迫り来る戦争の実感
出典:『 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻

『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を読んでいて胸に去来するのは、徐々に迫り来る戦争の実感と恐怖です。冒頭ではまだ、外で塹壕や洞窟を掘っていた主人公たち。アメリカ軍の空襲がたまにあるものの、まだ銃を構えて戦争をする、という現実からは遠い存在として描かれています。

しかし、アメリカ軍が本格的に上陸作戦を実行して以降、圧倒的なアメリカ軍の重量により、日本軍の防衛戦は徐々に後退せざるを得なくなります。田丸が配属された分隊も、全滅前提で出撃命令を出され、ほぼ全滅。運よく助かった主人公たちが、命からがら自分たちが掘った洞窟の中に隠れるのですが、ここにも爆撃が当たり、死者が多数出るのです。

その後も、侵攻するアメリカ軍の影に怯えながらも、出撃命令を出されて再び出撃する主人公たち。目の前で仲間たちが死んでいく壮絶さは、想像を絶しています。そうした壮絶さと恐怖が、まるで戦場に立っているかのような臨場感をもって読者に迫ってくることが、この作品の最大の見所でしょう。

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可愛い絵で中和されるが、戦争の悲惨さに胸が痛む

可愛い絵で中和されるが、戦争の悲惨さに胸が痛む
出典:『 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻

戦場での壮絶さと地獄を描くこの作品をなんとか読者が読み進めることができるのは、可愛らしい絵柄があってこそでしょう。簡略化された表現や、二頭身のキャラクターはおよそリアルとは程遠いもの。だからこそ、作品で描かれる悲惨さが中和されるのです。 塹壕に隠れて、アメリカ軍と銃撃戦をするシーンでは、ほぼ一方的に銃撃されていく日本兵たちが、頭を破裂させたり、血の海に身を沈める様子が描かれます。

他にも、爆撃で原型を止めることなく、死んでしまった多くの兵士。また、ジャングルを歩いている時に時折見つける仲間の腐った死体。そして、その死体を食うカニやウジ虫。 このような残虐なシーンをリアルに描こうとするこの作品は、まさにこの可愛らしい絵でなければ読み進めることができないほど悲惨です。

戦況下での個々人の生き方

戦況下での個々人の生き方
出典:『 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻

この作品では、苛烈な戦況下での個々人の生き方もリアルに、多様性をもって描かれています。例えば、主人公の田丸。もともと漫画を描くことが好きで、戦場でもストレスを発散するために、時折、戦場の漫画を描いていました。そんな彼は、その特技を買われて「功績係」という任務を言い渡されます。

それは、戦死した仲間の死に様を、日本にいる家族に伝えるための仕事でした。 その任務のために、事故で死んだ仲間を思って、「立派に戦って死んだ」と虚偽の記録をつける田丸。しかし、それが果たして本当に良かったことなのか、問い直してゾッと背筋を凍らせる彼の心情は、物語を読んで初めてわかるもの。その心情を理解した時には、読者もその悲痛さにゾッと恐ろしくなるでしょう。

また、田丸の同期で友人であった小山という人物の生き方も、非常に辛いものがあります。彼は、生きて日本に帰ることを信じて疑わなかった田丸に、自分は「違う」と言います。彼は、太平洋の島々での戦況を理解し、ペリリュー島も、他の戦場と同じく玉砕することを予見していたのです。

だからこそ、死ぬ覚悟を決めていた小山。しかし彼は、自分の父が大陸での戦争で華々しく戦って死んだように、敵と戦って死にたいと考えていました。無駄死にだけは嫌だと言う小山。しかし彼の死は、その願望とはほど遠いものだったのです。

彼が死んだのは、田丸と雨の中、水浴びをしていた時。裸で水浴びをしていた最中に、アメリカ軍の爆撃機が上空を通った際、慌てて服を着ようとして、足を滑らして頭を打って亡くなったのです。願いとは裏腹に、無駄死にとも言えるような死に方をしてしまった小山に、胸が痛くなること間違いありません。 

出典:『 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』1巻

他にも、田丸と同期でありながら優秀な成績ゆえに、上等兵に任命されていた吉敷も、作品の中で時折着目されます。拳銃の扱いに優れ、銃撃戦の最中にも数名のアメリカ兵を倒すことに成功。しかし、その際にアメリカ兵が「ママ」と呟いて絶命したことをきっかけに、その声に取り憑かれてしまうのです。戦場で、人を殺したことの重圧に耐える彼の優しさ。そんな彼の置かれた状況も、戦況が悪化するごとに悲惨さを増していき、目を逸らしたくなるほどです。

こうして必死に戦う兵士たちがいる一方で、抜け目なく生き残ることを最優先する兵士も描かれています。それが、小杉伍長。特攻を命令した分隊長が、味方の誤射によって死亡したのち、田丸たちと一緒に生き残るために隠れて洞窟に身を隠すことを優先した人物です。

彼は自分が生き残るために、戦闘には参加せず、田丸たちを洞窟の外の危険な場所にある水を取りに行かせたり、怪我をした兵士を見殺しにしたりするのです。一見、褒められた行動は取っていない小杉伍長ですが、戦場の悲惨さを考えると一概にそれを否定できないのも事実でしょう。

他、怪我をした仲間を助けようとするものの、懇願されて銃で撃ち殺す上官や、同じことを繰り返し言って笑うことしかできなくなった兵士など様々な兵士が描かれています。人間としてのモラルすら保つことができなくなった人びとの姿のリアルな表現に、とても胸が痛くなる作品であると言えるでしょう。 

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少しずつ終わりに近づく。隊員たちに救いはあるのか【最新4巻ネタバレ】

時は11月24日。3巻の最後で前半編、4巻冒頭では、後半編が描かれています。歴史上では、11月24日はペリリュー島での戦闘が終結した日として知られています。この日から数日間、何が起こっていたのでしょうか。

満開の桜。その下で花見をしている隊員たち。田丸は綺麗な桜の様子をスケッチで残そうとしています。場面が一瞬で切り替わり、遠くの山の方から聞こえてくるのは鳥の鳴き声。あの日以来、鳥はいないはず……。

そう考えているのもつかの間、次に目に飛び込んできたのは、隊員たちの死体の山に群がるおびただしい数のハエでした。そして、「どうして敵から逃げている お前も戦ってこっちへ来い」という恐ろしい声が聞こえてくるのです。

ハッと気づくと、全部夢でした。幻想と地獄とが混ざった悪夢にうなされる戦場の日々です。

著者
["武田一義", "平塚柾緒(太平洋戦争研究会)"]
出版日
2018-02-28

水と食糧を求めて、歩き回る隊員たち。たどり着いたのは、壕が立ち並ぶ味方の陣地でした。敵にやられ、すでに死体は白骨化しています。食糧があるかもしれない、と手分けをして暗闇の壕の中を慎重に探していくのです。

生と死が常に隣あう戦場で、彼らは必死に生きるため、もがき苦しみました。彼らの苦しみは、簡単に言い表わせるものではありません。ましては、絵ですべてを伝えることも不可能でしょう。しかし、本作は歴史の一事件と真摯に向き合い、現代を生きる人々に伝えようとしているのです。

日本列島からはるか遠く、秘境の地で戦った男たちの生き様を本書で確かめてみてください。

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戦場の悲惨さをリアルに表現した『ペリリュー 楽園のゲルニカ』。ひどく恐ろしく、悲痛な雰囲気に満ちている作品ですが、「目をそらしてはいけない」ものを伝えてくれる作品でもあります。戦争の雰囲気が遠くなった現代。想像をすることすらもままならない戦場のリアルを、今一度教えてくれる良作であること間違いありません。


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