今回の記事は、漫画「くーろんず」シリーズについてです。作品の魅力だけでなく、作者のダ・ヴィンチ・恐山についても紹介していきたいと思います。このシュールな世界観を体感してみてください。
「くーろんず」シリーズは、4人の女子高生によるシュールなディスカッションを描いた作品。3Dキャラを配置して作るマンガ作成ツール「コミPo!」を使って描かれているのが特徴です。
シュールな世界観のなかでくり広げられるボケとツッコミの応酬、しっかりとしたオチで人気を集めています。おまけの「4コマくーろんず」や「ふれあいコーナー」(それぞれ後述)などもあり、読者を飽きさせません。
単行本は2017年現在第2巻まで発売されていますが、最終回が収録されているはずの第3巻はいまだに発売予定が立っていません。しかし「月刊ビッグガンガン」の公式サイトにて最終回以外の未収録エピソードを読むことができます。
さらに、無料漫画アプリ「マンガUP!」で2017年現在配信中ですので、興味のある方はぜひ読んでみてください。
- 著者
- ダ・ヴィンチ・恐山
- 出版日
- 2012-11-24
作者のダ・ヴィンチ・恐山は、異色の経歴を持った人物です。
最初の活動となったのは漫画原作でした。2009年から始めたTwitterでの投稿が人気となり、1年ほどで8000人を超えるフォロワーを獲得します。特に彼の「後輩女性(自称輝き女子)」に関するツイートが人気で、2011年には『輝きジョシ子さん』というタイトルで4コマ漫画化されました。
2011年から2015年まで「くーろんず」を連載した後、2015年には「品田遊」という名義で小説家デビューも果たします。デビュー作のタイトルは『止まりだしたら走らない』です。
独自の視点で生み出す面白ネタが広く評価されており、その実力はプロのギャグ漫画家たちに混じって参加した大喜利大会で優勝したこともあるほど。「くーろんず」の中には、恐山自ら読者の質問に答える「ふれあいコーナー」があり、そこでも独特な感性を垣間見ることができます。
ちなみに、「ダ・ヴィンチ・恐山」というペンネームは小学生時代に使っていたもので、ダ・ヴィンチの名を冠してはいるものの、本人いわく、キリスト教にはあまり詳しくないとのことです。
メインの流れは、畑いつみ、龍野みみ、大朋ふい、土佐なじみという4人の女子高生が、世の中のあらゆるものに疑問を抱き、それについて語り合うというものです。取り上げられるテーマは「キラキラネーム」や「バナー広告」といった身近なネタから、「もし乳首がいきなり取れたら」という突拍子もないものまであります。
天然キャラのふい、負けず嫌いないつみ、知的でクールなみみの3人がボケ担当で、唯一の常識人であるなじみがツッコミ担当です。
そんな4人がシュールな掛け合いをめまぐるしく重ねた末、きちんとオチにたどり着きます。毎回、巧妙にテーマを回収するオチは必見です!
メインストーリーの他に、おまけ漫画「4コマくーろんず」というものがあります。そこには主要キャラの4人は一切登場しませんが、彼女たちに負けないくらいのインパクトを与えるキャラが目白押しです。
たとえば、女子高生の高岡は給食がないのに給食費を持ってきたり、王様ゲームに勝利して自分の歯を抜いたりと、クレイジーな行動を連発します。しかし、ラーメンを「アラブマシマシ」で注文して重油入りのラーメンを出されるなど、ヒドイ目に遭うことしばしば。
その他にも、なぜか警察に捕まらないシリアルキラー女子の窓縁は、殺人の証拠を隠滅していて遅刻をしたり、ファミレスでダイナマイトを作ったりと、こちらも相当クレイジーです。なぜかそうした行動が周りから容認されてしまうという不思議さが、面白さに繋がっています。
彼女たちの他にも、個性の強いキャラが登場し、本編とは一味違った笑いを楽しめることでしょう。
もう一つの面白い要素として、読者からの質問にダ・ヴィンチ・恐山が答える「ふれあいコーナー」があります。引用画像で何だこれは、と気になった方もいるのではないでしょうか。この問答がなかなか作者、そしてその作者を愛する読者のクレイジーさを物語っています。
最初は普通の質問ですが、回を重ねるごとに「恐山ファン」らしい奇抜な質問が増えていくこのコーナー。ここでは、実際のやりとりをいくつかご紹介しましょう。
質問:「恐山先生は、公的書類の『職業』の欄に何と書いているのですか?」
ダ・ヴィンチ・恐山:「夢狩人」(『くーろんずシリーズ 空論基礎・I』より引用)
質問:「恐山さんが考える最もしょうもないこと教えてください」
ダ・ヴィンチ・恐山:「『公認かき氷士』という資格。」(『くーろんずシリーズ 空論基礎・I』より引用)
質問:「短歌を1首つくってもらえませんか?」
ダ・ヴィンチ・恐山:「『人間か、ならば証拠を出してみよ』二度間違えた画像認証」(『くーろんずシリーズ 空論基礎・II 』より引用)
漫画家の職業欄という普通の読者でも気になるものから、しょうもないことを教えてくれ、短歌をつくってくれなど、どう考えてもボケ待ちのものまで。
短歌をつくってください、というざっくりしたフリに、画像認証時の質問についてのものをいれるあたり、その時何度も間違えてイラっとしていたのでしょうか……。想像の膨らむ歌です。
こうしたやりとりがページの片隅で淡々と繰り広げられています。どれも恐山の感性が練りこまれており、思わずクスッと笑ってしまうものばかりです。
- 著者
- ダ・ヴィンチ・恐山
- 出版日
- 2013-12-25
2015年に完結した「くーろんず」ですが、先述のとおり第3巻が発売されていないので、最終回が読めません。公式サイトの未収録エピソードも最終回直前までしかなく、「マンガUP!」などのアプリでも最終回は配信されていないというのが現状です。
最終回前のエピソードは、ふいとみみが愛読していた漫画が唐突に最終回を迎えるという話をしている最中に、風紀委員が乱入。そして「ろくに活動もせずだべってばかりの華道部を廃部にする」と宣言し、なじみたちはそこで初めて自分たちが華道部だったことを知る、という内容でした。最終回はおそらくこの続きから始まるのでしょう。
「くーろんず」にはいつも「いつもどおりのラスト」「ちょっといい話のラスト」「どんでん返しのラスト」「みんな大好きラスト」という4通りのラストがありますが、実際に最終回を読んだ方の感想には「完璧」「最高」といった好評が多く見られます。
最終回を読む方法としては、掲載されている「月刊ビッグガンガン」の2015年Vol.4を入手するしかありません。何が何でも読みたいという方は、中古で探してみるとよいでしょう。
いかがでしたか?最終回を読むのに多少苦労する作品ですが、それまでのエピソードの面白さから考えても、きっと苦労に見合った満足感が得られるでしょう。気になった方は、単行本やアプリなどでぜひ読んでみてください!