心をギュッとさせる、ティーンネイジャーの物語

心をギュッとさせる、ティーンネイジャーの物語

更新:2021.12.13

これを読んでいるみなさんは、今、おいくつでしょうか? 今10代という人も、昔10代でした、という人も、きっといろんな人がこの記事を見てくれてるんじゃないかなぁって思います。わたしはもう、20歳を超えてしまいましたが、読み返すとなんだか当時のことを思い出すような、ちょっとせつなくてはかない、今回はそんなティーンネイジャーが主役の作品を紹介します。

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「行きたくないを計ったら赤いがたくさんテレビ箱です ごめんなさいごめんなさい」

著者
阿部 共実
出版日
2013-01-08
一風変わったタイトルのこの一冊。ポップでかわいらしい表紙に、鮮やかな巻頭カラーの「乙女心」に始まり、「デタジル人間カラメ」、「あつい冬」など7作品を収録したオムニバス形式のマンガです。どれも読みごたえがありますが、表題作の「大好きが~」は巻末に掲載。久しぶりに中学時代の親友に再開した志織ちゃん。うれしい気持ちでいっぱいになるのですが、実は彼女の高校生活は…読了後、とりわけ言いようのない感情に包まれる秀作です。

一話完結で読みやすく、だけど一つ一つがずっしり重たい。むしろオムニバス形式なので世界観ももちろん各話で違うのですが、全話が一冊を通して、一つのグラデーションになっているといった感じ。ビビッドな原色から徐々に色彩を失い、白と黒の世界になっていくのが読み進むほどに感じられます。単純に作品の寄せ集めではなく、一冊としての存在感が強く、少し薄めの単行本ながらも読みごたえは十分すぎるほど。

後味云々というより、読み終えた後、胃袋に、脳に、優しい重たさをもたらす、そんな作品。本を閉じた後も、表紙の志織ちゃんのはにかんだような寂しそうな笑顔が、頭に焼き付いて、あまりよく眠れなかった。そんな初めて読んだ日のことを思い出しました。

阿部共実さんの作品は、『空が灰色だから』など、ほかにも思春期の少女を描いた作品が多くあり、こちらもぜひみなさんにお薦めしたいです。

世界中で愛される15歳の少女。「わたしは、理想をあきらめない」

著者
アンネ フランク
出版日
言わずと知れたこの作品、世界中で翻訳され、ミュージカルや舞台、映画やコミック作品、とにかく色々な媒体で今でも人々に親しまれています。読んだことのない人でも、きっとタイトルは聞いたことがありますよね。そんな『アンネの日記』ですが、どういう背景で世界に広まったかを皆さんはご存知でしょうか。戦争が激化するなか書かれたこの日記。アンネ一家はユダヤ系であるため、身を隠して生活しますが、連行されてしまいます。そのときに落とした日記を、彼女の死後に、父であるオットー・フランクが編集し出版、世に広まったのです。

アンネの日記には数種類あると言われていますが(編集前の「完全版」と言われているものと、編集後など)、どれにも彼女の可愛くてちょっとひねくれてて、それでいてまっすぐな人柄が読み取れます。本当に、普通の10代の女の子なんですよね。明るくて同性の友達も多くて男子からもモテるけど、おとなしくて聡明な姉のマルゴットにライバル心を燃やしてみたり、お母さんと折り合いが悪く、ケンカばかりだったり…

そして、有名な「まだ理想のすべてを棄てていないということが、自分でも不思議。その理想は現実離れしてるから。だけど、わたしはそれを待っている。今でも信じているから」の一節。日記を書き終える直前まで、希望を捨てなかった彼女の芯の強さが伺えます。

この作品を読むのであれば、一緒にWWⅡについての参考文献(とりわけドイツのものを)を傍らに置くのが、個人的におすすめです。時系列を追って、当時の国の動きや政治などと彼女の日記がシンクロし、より楽しめるはず。もちろん、それを差し引いて純粋な文学作品としても楽しめます。最近では、より読みやすい文章にまとめられて、児童向け文学やアニメの映画にもなっています。平和について考える一冊として、手に取ってみるのもいいかもしれませんね。

戦争を生きる10代といえば、こちらもぜひ。

著者
["江良 至", "高橋 しん"]
出版日
ある事情から、普通の高校生だったのに兵器に身体を改造されてしまった少女ちせと、お付き合いしたばかりの彼氏、シュウジの物語。新世紀エヴァンゲリオン等のいわゆる「セカイ系」の作品の中でも、当時は特に人気が高く、今でも多くのファンの間でラストシーンの解釈についての議論が交わされているようです。初々しい二人の恋愛は、どんどん戦禍に呑まれていきます。人間の心を持ちながら、身体は兵器としてどんどん成長を遂げていくちせ。二人の未来の行方は―…。

わたしが住んでいる、北海道を舞台にした作品。もう10年以上前の作品ということで、札幌の町並みは少し今と違う部分もありますが、実際に行ったことのある場所も多く、そういった場所が空襲で炎の海になっている様子を見ると、登場人物の気持ちと相まって胸がしめつけられる思いです。ちなみにこちらは、「どんな戦争か」などの詳細は作中に記されていません。それでも登場人物の気持ちがとてもリアルに伝わってくる。今10代の人も、昔10代だった人も、一度手にしてみてはいかがでしょうか?『いいひと』『きみのカケラ』等で人気の高橋しんさんが描くティーンネイジャーのラブストーリーです。

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