小説を始め、映画や漫画とシリーズ化が止まらない『人狼ゲーム』。とある施設に集められた高校生10人は、人狼と村人に分かれ騙し合いながらデスゲームを繰り広げます。生き残るのは人狼か、村人か。漫画『人狼ゲーム』の人気の秘密を見ていきましょう。
村人と人狼に分かれて、自分の正体を隠しながら、相手の正体に迫っていく……。このような心理戦がくり広げられる「人狼ゲーム」は、現実の世界だけでなく、スマホのアプリや小説、映画の題材となり、大ブームを巻き起こしました。
今回紹介する漫画『人狼ゲーム』もこのゲームを題材にしています。ただ、作中では「デスゲーム」として物語に絡んでくるのです。
本作の魅力は、参加者が次々と惨たらしく殺されてしまうグロ描写。スピード感を持って描かれるため、ときに読者を混乱に陥れるほどです。
そんな壮絶バトルでは、窮地に追い込まれた人間の黒い部分がこれでもかと描かれています。イヤミス好きは特にハマりこんでしまうでしょう。
今回は、漫画『人狼ゲーム』のあらすじから、ゲームの詳しい紹介をしたうえで、ネタバレ考察をしていきます。また、続編「ビーストサイド」についても少しだけご紹介。
人狼ゲーム
2014年07月07日
映画版『人狼ゲーム』で主人公を務める土屋太鳳の出演作品を紹介した<土屋太鳳が出演した作品一覧!実写化した映画・テレビドラマの原作作品の魅力を紹介>の記事もぜひご覧ください。
高校生の仁科愛梨は、見知らぬ施設で目を覚まします。周りには同じ制服を着た高校生達。彼女らはそれぞれ村人と人狼の役を与えられ、強制的にゲームへ参加していくのです。
村人は、紛れ込んでいる人狼を見つけ出して皆殺しにしなければなりません。毎晩全員で人狼だと思う相手に投票を行い、最も投票の多かった人が処刑対象となりますが、それだけでは終わりません。夜間は与えられた自室で過ごすことを全員が義務付けられ、人狼は村人の中から一人を選んで殺すことができるのです。
誰もが半信半疑な中、ゲームは進み、実際に人が死んでいきます。生き残るのは村人か、人狼か。それぞれの因果関係と、気になる人狼の正体について、考察してみましょう。
まずはルールについて、簡単に説明していきます。
10人の男女はまず8人の村人と2人の人狼に分けられます。自分の役のみ知らされ、他の誰が何役なのか分かりません。毎日20時にそれぞれ人狼と思われる相手へ投票を行い、投票された人は他の人に役目を知らされないまま処刑されます。
処刑が終わった後、深夜0時から翌朝6時までは、各自与えられた部屋で過ごすことが義務付けられます。その中で人狼は2時間だけ抜け出すことができ、村人を1人選んで殺すことができるのです。
毎日20時に全員で1人を処刑し、夜中に人狼が1人を殺害。これを住人か人狼のどちらかが全滅するまで繰り返し、生き残ったほうの勝利チームになります。生き残ったほうには合計1億円が与えられる事が約束されています。
10人の中からたった2人の人狼を見つけ出さなければならない……。一見、村人のほうが不利に思えるルールかもしれません。しかし、村人を有利にする役割「予言者」があります。「予言者」は、毎晩他の参加者一人の正体を知ることができるので、村人にとって心強い存在。この「予言者」をどう利用するかが、ゲームの大事な鍵となっていくのです。
ルールに適応しなかった者が犠牲となり、愛梨が戸惑う中でゲームは進行します。お互いの事を何も知らないと投票もできない、という理由で自己紹介をしますが、それ以外はお互い分からないまま。夜の20時まで自由行動となります。
突然、川崎文隆という人物が愛梨の部屋を訪問し、ある一人の男性に投票してくれないかと言い出しました。「あいつを生かしておくのは危険なんだよ。あいつは見た目と雰囲気で周りを恫喝してる」(『人狼ゲーム』PLAY3引用)と説得されますが、愛梨は拒否したために豹変した川崎に罵しられ、その場を逃げ出します。そんな愛梨を慰め、共感してくれたのは多田友宏という人物です。
最初の投票時間となりますが、投票が最も多かったのはなんと言い出した川崎文隆のほうでした。処刑方法は決まっておらず、参加者の誰かが行わなければなりません。処刑しなければ、全員に罰が与えられます。
そんなルールもこのゲームの嫌なところですよね。誰かが必ず手を汚さなければならないのですから……。
他の参加者が処刑を行い、愛梨は結局何もできないまま、指定された部屋へ戻ります。今夜人狼に殺されるのは自分ではないか、そんな思いで眠れるはずもなく一晩を過ごさなければなりません。
各参加者の部屋にはモニターが設置されており、参加者はお互いに何らかの形で恨みを抱いている関係だという映像が流れます。愛梨がバイトしていた書店で、万引きを繰り返して店を閉店に追いやった人間が参加者の中にいることが判明しました。
朝起きてみると、その人物はなんと人狼に殺されてしまっていたのです。周りから疑いの目をかけられる愛梨、そんな彼女を助けてくれたのは、またも多田友宏でした。愛梨の事を何度も助けてくれる彼に対し、愛梨は好意を抱くようになり、2人の関係は進展していきます。
1日目がようやく終わり、朝を迎えます。
主人公、仁科愛梨
高校2年生の彼女はアルバイト帰りに何者かに拉致され、気付いたらゲームに参加していました。「誰も殺したくない」という信念があり、自分へ投票したり、処刑の際も自分では何もせず見ているだけといった行動をとったりすることが多いため、他の参加者から批判されることもあります。カードは村人でした。
猪瀬尚子
高校2年生、主人公の友人。突然の状況にも冷静に対応しているようですが、ルール説明が終わった後に辞退を申し出ました。参加を拒否した事によって彼女の首輪が作動し、無残な形で命を落とします。彼女の結末を見た事で、皆はルールに従わないと殺されると理解したのです。
多田友宏
真面目そうな外見で、リーダーシップをとって話を進めていく存在です。突然の状況や、身近な人の死に戸惑う愛梨に対して何かと優しく接します。次第に2人の仲は深まっていき、友宏は外に出られたらデートすることを愛梨と約束しました。
井上真理絵
このみの姉。大人しい性格で、妹に対して何かと気を使っている様子です。2日目に自分は「予言者」であると言い、人狼の正体を占ったと証言します。
井上このみ
高校1年生、真理絵の妹。姉へ対する態度が冷たいようにも感じますが、実はきちんと思っているようです。井上真理絵と藤木毅のどちらが予言者であるかを巡り投票した際、「こんなんだけど一応……姉妹だしさ」(『人狼ゲーム』PLAY12引用)と姉のことを助ける場面もあります。
藤木毅
坊主頭で反抗的な口調が目立ちます。井上真理絵が予言者だと証言した際、自分が予言者であると訴えるも、普段の態度が横暴なため信用されません。
以上が主要な参加者になります。10人の中に紛れた人狼を見つけ出すため、お互いが疑心暗鬼なまま2日目を迎えます。
このゲームの魅力は何といっても、裏の読み合いにあります。勝つためには、数少ないヒントから相手の正体を割り出さなければならない、このゲーム。相手が村人なのか人狼なのか、何もわからない状態で疑心暗鬼になりながらも、誰が本当のことを言っているのか見破る必要があります。
普通にプレイしても、難しくて奥が深い「人狼ゲーム」。本作では命をかけてプレイしなければならないので、多くのプレイヤーが冷静さを失い、さらに混沌としたものになっています。おまけに、ゲームの勝者には1億円の賞金が用意されてしまっては、いつも通りにプレイできるわけがありません。
裏の読み合いや駆け引きが多く、人狼ゲームを知らない人でも楽しめる内容になっています。ぜひ、手にとってみてください。
- 著者
- ["川上 亮", "小独活"]
- 出版日
- 2015-01-07
本屋さんからの帰宅途中に、何者からスタンガンで襲われ、気を失ってしまった主人公。目が覚めると、そこはまったく知らない空間でした。周りを見渡すと、高校の生徒10人が同じように椅子に縛り付けられています。彼女らはまったく知らない館のような空間で、生き残りをかけたデスゲームに巻き込まれてしまいました。
王道デスゲームのような設定の漫画『人狼ゲーム』。本作では、ゲームの設定と同じく毎晩1人が殺されてしまいます。人狼が誰か分からないまま、次は自分が殺されるのではないかかと恐怖に襲われる村人たち。はたして彼らは生き残ることができるのでしょうか。手に汗握る展開から目が離せません。
デスゲーム漫画が好きな人も、そうでない人も、楽しめること間違いなしの漫画『人狼ゲーム』。ぜひ読んでみてください。
村人でありながら、誰が人狼か知ることができる予言者。1晩に1人の参加者を占い、確実に正体を知る事ができます。予言者は受け身に回るしかない村人の中で唯一、人狼に対して脅威を与えられる存在なのです。
しかし、脅威的な存在である予言者を、人狼が放っておくわけがありません。予言者は正体を人狼に知られてしまえば、真っ先に殺されてしまいます。自分が予言者であることを発言するべきなのか、それともただ黙って人狼に投票を続ける方がいいのか、正しい答えは誰にも分かりません。
人狼らは「私が予言者である」と発言し、村人たちを混乱に追い込みます。その結果本作では、自称予言者が3人も現れてしまいました。本当の予言者は誰なのか。そして、預言者は自らの役割を果たすことができるのでしょうか。
人狼は誰なのかということだけではなく、それぞれがどの役を与えられたのか、ぜひ全員の役を推理しながら楽しんでみてください。
- 著者
- ["川上 亮", "小独活"]
- 出版日
- 2015-07-17
2日目になると参加者もルールを理解し始め、行動を起こし始めます。
井上真理絵が自分は予言者であると言い始めました。すると藤木毅が、自分が本当の予言者であると反論します。昨晩誰を占ったのか、という問いに対しそれぞれが違う人物を答え、人狼だったと返答するのです。普段の様子を見て井上真理絵のほうが信用に足る人物だったため、彼女が人狼だと指名した相手が投票で選ばれ、処刑となります。
2日目の晩に別の人物が人狼の手によって殺されます。そして3日目の朝、井上真理絵は、もう1人の人狼は藤木毅であると言いますが、皆が真理絵の言う通りに藤木を疑う中で、愛梨だけが疑問を抱くのです。
愛梨は、最初の投票の時に、真理絵が人狼だと証言した2人がお互いに投票していた事を思い出しました。人狼はお互いの正体を知っています。誰が誰に投票するかまったく予想のつかない初日の投票で、仲間を殺そうとするとは考えにくいです。真理絵の妹であるこのみに打ち明けますが、最初は受け入れられない態度を見せていたこのみも、最終的には納得するしかなく、その日の晩に井上真理絵が処刑されます。
残ったプレイヤーは4人となりました。愛梨が推理し、暴いた人狼の正体とは……。
村人視点で物語が展開する『人狼ゲーム』は全3巻で完結しています。人狼側の視点で描かれた続編も出ています。それが、『人狼ゲーム ビーストサイド』です。
ここでは、簡単に続編のあらすじを紹介します。ネタバレも含みますので、未読の方はご注意ください。
- 著者
- ["川上 亮", "小独活"]
- 出版日
- 2016-02-25
前作『人狼ゲーム』で勝利をおさめた愛梨は、もう一度ゲームに巻き込まれてしまうことに。前回は村人の役職でしたが、今回与えられたのは人狼でした。
集められたメンバーの中には、前回のゲームでも一緒だった井上このみもいました。愛梨とこのみは、自分たちが人狼であることを目配せで確認しています。
恐ろしいゲームを経験済みである主人公は、ルールを熟知している状態です。しかし、今回新たに追加となったルールもありました。
【『人狼ゲーム ビーストサイド』で追加された新ルール】
これまで以上に、惨忍な主催者によって弄ばれる参加者たち。はたして、主人公の愛梨や他のメンバーは、地獄のようなゲームから自らの身を守ることができるのでしょうか?
- 著者
- 川上 亮
- 出版日
- 2014-07-07
それぞれの人間の性格、傾向、感情などさまざまな要素が絡み合い、嘘つきを見つけるという単純なルールながらも複雑な内容になる人狼ゲーム。もともと設定とはいえ不穏な雰囲気にゾクゾクするという魅力があるゲームでしたが、それを現実の生死に結びつけ、よりその恐怖感に拍車をかけたのが漫画作品です。
人を殺さないという、このゲームではほぼ不可能に近い結果を本気で求め、成長していく主人公・愛梨の様子がその暗闇の中での光となり、ストーリーにより引き込ませる要因となっています。
ぜひその鮮やかな対比、読んでいるだけでゾクゾクするようなスピーディーでスリル満点の展開を漫画作品で味わってみてください。
漫画『人狼ゲーム』に興味を持っていただけたでしょうか。
最初は自分に投票し、怯えて何もできなかった愛梨が、徐々に覚醒し推理を繰り広げていきます。初回の投票の時点で、すでに推理は始まっていたのです。なんとそんなに前から!と読者は思い、ついつい1巻から読み返したくなるでしょう。そして最初の怯えていた愛梨とは全く違う。周りを巻き込み、人狼を追い詰めていく愛梨がとても頼もしく見えます。
そして愛梨の「人を殺したくない」という思いの強さに感動します。いくら危機的状況に陥ったとしても、「人を殺したくない」という思いは誰だってありますよね。その信念を最後まで通せるのか、気になる所です。
漫画『人狼ゲーム』ぜひチェックしてみてください。