ここ数年、ゾンビと人間の戦いを題材にした作品が増えてきました。今回ご紹介する『セーラーゾンビ』もそのひとつで、女子高生とゾンビとの戦いを描いています。
『セーラーゾンビ』は元々映像作品として、2014年にテレビドラマが放送されました。同年にコミカライズされ、「月刊ヒーローズ」で連載を開始しています。
物語の舞台は、ゾンビに支配されてしまった世界。女子高生の舞子を中心に、生き残りをかけて戦いに挑む学園ホラーアクションです。一見サバイバルホラーもののようですが、どこかポップな雰囲気もあり、女子高生たちのノリとゾンビのホラー要素がうまくマッチして、不思議な魅力を醸し出しています。
学校内に籠城してゾンビたちから身を守っている女子高生たちですが、その校内にもさまざまな思惑や秘密が渦巻いています。それらを伏線として描きながら、やがて明かされていく衝撃の真実や、主人公である舞子に隠された秘密など、練り上げられた設定が魅力で、単なるホラーで終わらない内容なのです。
この記事では、全4巻の見どころを紹介していきます。
- 著者
- ["ジジ&ピンチ", "犬童 一心"]
- 出版日
- 2014-09-05
世界がゾンビに支配されてから、2ヶ月。主人公の舞子はアイドルになるのが夢の女子高生でしたが、迫りくるゾンビから逃れる日々を送っていました。
やがて、生き残った人が学園に身を寄せ合って生活していることを知り、彼らが隠れ住む藤美女子高校に保護されることになります。そこには教師や生徒以外にも、近隣の住民などさまざまな人たちが暮らしていました。
舞子は学園の生徒たちとともにゾンビに立ち向かうことを決意し、熾烈なサバイバルに身を投じていくことになるのです。果たして彼女たちは、生きてこの世界から脱出することができるのでしょうか?
- 著者
- ["ジジ&ピンチ", "犬童一心"]
- 出版日
- 2015-02-05
「もうダメかも……」(『セーラーゾンビ』1巻より引用)
弓矢を持って何かから逃げている少女がコンビニに入ると、そこには人ならざる者の姿が。コンビニも含めて街は荒廃しており、真っ暗な闇に包まれています。
なぜ街がこのような姿になっているのか、なぜゾンビが街中に存在しているのか……読者はここですでに心を掴まれてしまうに違いありません。
主人公の舞子はアイドル志望の高校生で、ほんの2ヶ月前は文化祭の舞台で踊っていました。しかしそこで、休憩中にコンビニに行った友人のB子が何者かに襲われてしまいます。窓から外を見てみると、学校のグラウンドには無数のゾンビの姿があったのです……。
一方で、睦美と由梨という2人の少女は、学校の中に立てこもってゾンビから身を守っていました。彼女たちが、ゾンビから走って逃げている舞子を助け、校内に招き入れます。そこには合わせて40人ほどの人たちがいました。
彼女らと一緒に藤美女子高校での生活を始めることになった舞子ですが、その夜中、監禁されたひとりの男性と出会いました。そして「睦美は気をつけたほうがいい」と舞子に警告をしてきます。彼はかつて睦美を殺そうとしたことがあるようなのですが……?
- 著者
- ["ジジ&ピンチ", "犬童 一心"]
- 出版日
- 2014-09-05
男性は小島という教師で、殺人鬼と言われていました。舞子は思わず彼を自由にしてしまうのですが、その罪で学園を追放されることになってしまいます。そこに睦美と由梨もついてきて、3人での旅が始まりました。
藤美女子高校に戻れる条件は、「小島先生を見つけて戻ってくること」。
3人は、学校のすぐ隣にある空き家に身を隠しました。皆が寝静まった頃、睦美がひとりで起き出します。校庭に向かう彼女を待っていたのは、小島でした。彼は校内にゾンビを集め、自分は車で逃げようとし、睦美を陥れます。
その時、突然校内に「DJアルル」と名乗る人物によるゲリラ放送がはじまりました。流れてくる曲を聴いたゾンビたちは、なぜか涙を流しはじめるのです……。
なぜこの世界にゾンビが存在しているのか、彼らはどこから現れるのか、そしてなぜアルルの歌で涙を流すのか……謎がいっぱいで今後の展開が気になる1巻です。
アルルという少女の歌を聴くと、ゾンビたちが涙を流す……。
彼女の歌がゾンビに有効だということを知った舞子たちは、アルルに関する情報を持っているタクローという生徒を探しに出かけることになります。
彼は舞子の同級生で、さらに初恋の相手でした。しかしその道中で、途中で大量の「駅伝ゾンビ」に襲われてしまいます。
- 著者
- ["ジジ&ピンチ", "犬童一心"]
- 出版日
- 2015-02-05
2巻では、占いが得意なアリサという少女が登場します。彼女が導き出した結果は、「9人が4人になる」。
これは、5人がゾンビに殺されてしまうということなのでしょうか……?
舞子たちはそれぞれ得意な武器を使って次々に襲ってくる駅伝ゾンビを迎撃するのですが、数が多すぎてキリがありません。果たして無事にタクローを探し出すことができるのでしょうか?
2巻では、ゾンビに関する情報も少しずつ開示されてきます。ゾンビに噛まれた人間は「感染」状態になり、24時間経過すると完全なゾンビになってしまうようです。この「感染」状態が今後のキーになってきそうです。
また本作の面白い要素のひとつとして、モブキャラの扱いがあります。作中では彼らが割り切った描き方をされており、たとえば顔のパーツの代わりに「A」「B」という記号や「甲」「乙」「丙」という漢字が書かれています。名前もその文字のとおり「A子」や「B子」です。
一見その他大勢のキャラなのかと思いきや、ゾンビと意外な善戦をくり広げることもあり、そんなモブキャラたちが逞しく生き残っていく姿も見所のひとつではないでしょうか。
「アルルの歌」を探し出すため、そしてタクローを見つけるために旅を続ける舞子たち。しかし彼女は道中で、ゾンビ化してしまった親友を手にかけることになってしまいました。
さらに、藤美女子高校には「なな子」という謎の少女が突如現れます。彼女の正体と目的は?
ストーリーも中盤を迎え、シリアスな場面も増えて、徐々に雰囲気が緊迫していきます。舞子にはさらに過酷な運命が待ち受けていて……。
- 著者
- ["ジジ&ピンチ", "犬童 一心"]
- 出版日
- 2015-08-05
ようやくアルルにたどり着いた舞子たちでしたが、なんと彼女はすでにゾンビ化してしまっていました。またアルルの兄であるタクローも、舞子の目の前でゾンビになってしまいます。
なんとか彼のゾンビ化を止めようと「祈りの歌」を歌う舞子でしたが、その思いは届きません。さらに「祈りの歌」を歌った代償として、舞子の髪は白くなり、記憶を失って幼児化してしまいます。
3巻では、アルルの歌の秘密が徐々に明らかになってきます。彼女が歌の中で感情を表現すると、歌を聞いたゾンビたちがその感情どおりの行動を起こすのです。たとえば、殺意や怒りを表した歌であれば、ゾンビたちは暴れまわって最後には共食いをしてしまいます。
この仕組みを利用したなな子は、隠し持った音源を使って山田という男子生徒のゾンビを操っていました。 ますますアルルの正体が気になります。
また幼児化してしまった舞子は、これからゾンビと戦うことができるのでしょうか。最終4巻に向けて、読者を不安にさせる要素が増えてきました。
舞子たちは、せっかく戻ってきた藤美女子高校からまたもや追い出されてしまいました。かつて潜伏していた学園の近くの空き家に身を隠します。
そこへアリサが、学校から部屋の中に意味深なカプセルを投げ入れてきました。そこにはあるメモが入っています。
すると、六車シホという女子生徒が舞妓たちを学園の中に入れてくれました。彼女は、舞子たちを高校から追い出したのは手違いだったと説明してくるのですが……。
そこへなな子が姿を現します。藤美女子高校では、3ヶ月前に校内放送でこの歌が流れたのをきっかけに、歌に耐性のある新型のゾンビが生まれてしまったと言うのです。どうやら彼女は、舞子のことを「実験材料」と考えている様子でした。
- 著者
- ["ジジ&ピンチ", "犬童 一心"]
- 出版日
- 2016-03-05
同じころ、アリサがカプセルに入れて舞子たちに渡したメモの内容が、なな子に知れてしまいます。なな子は、アリサと甲・乙・丙という生徒たちを「山田くんの刑」と称してゾンビの山田に殺害させてしまいました。
現場は血まみれ。さらに、新型に進化したゾンビが舞子たちを襲ってきます。しかしこれらのゾンビを舞子がすべて倒してしまいました。
ここに盛子という少女が現われ、なな子の本性を舞子に告げるのですが、彼女もその場で殺されてしまいます。
気づいた時には、舞子は銃を持った生徒たちに囲まれていました……。
3ヶ月前、藤美女子高校に一体何が起こったのでしょうか。そして、新型ゾンビに対抗する唯一の鍵となるのは……実は舞子?
『セーラーゾンビ』最終4巻は、まさにジェットコースター級の展開と、物語のカギを握る重要な秘密がどんどん明かされていきます。悪役として描かれているなな子も、本当は悲痛な気持ちを隠していました。
哀しくも衝撃の結末をぜひ見届けてください。
- 著者
- ["ジジ&ピンチ", "犬童 一心"]
- 出版日
- 2014-09-05
ゾンビというワードがタイトルにはあるものの、序盤の作品の見所は少女たちの掛け合いにあり、徐々にゾンビを巡る展開が加速していく本作。ゾンビが弱いということもあり、怖すぎるホラーものがダメな人にもおすすめです。
ほぼ少女しか登場しないこと、セーラー服がタイトルにも入っていることから、そのような要素が好きな人もハマるかもしれません。AKB48のメンバーがキャストを務めてドラマ化された作品のコミカライズとあって、可愛らしい少女たちも魅力のひとつなのです。
当初はゆったり、徐々に加速していく展開から目が離せなくなること間違いなし!ぜひその面白さを4巻通して確認してみてください。
「歌」が物語の重要な鍵となる、これまでになかった斬新な設定のホラー漫画『セーラーゾンビ』。すべての伏線が集束する4巻の展開は、特に圧巻です。少女たちが活躍するゾンビものを楽しみたい方は、迷わず手に取ってほしい作品です。