下着メーカーで働くおどおど挙動不審な主人公と、大学時代の先輩、合コンで知り合った男性……3人を取り巻くさまざまな人物の思惑と恋心にキュンとして、ゾクッとします。 今回は、ドラマ化漫画『きみが心に棲みついた』の見どころをご紹介!
主人公は、挙動不審ですぐにテンパる小川今日子。本作は、「キョドコ」と呼ばれる彼女に執着を見せる大学時代の先輩・星名、そして彼女が変わるきっかけとなった吉崎という男性を中心に、大人の恋愛模様が描かれています。
恋物語という言葉からは想像できないほどドロドロとしたエピソードや、恐怖心を抱かずにはいられないキャラクターなど、登場人物たちの思惑と欲望が渦巻く展開が魅力です。
1度は完結した『きみが心に棲みついた』の続編として、掲載誌を変えて連載されている『きみが心に棲みついたS(エス)』。2018年にはドラマ化も決定しています。この記事では、無印からエスの5巻までの登場人物、見どころを紹介していきます。 ネタバレも含むのでご注意ください
このヘビーな恋愛?鬱?漫画が気に入ったら、『ぼくらのへんたい』という作品もおすすめ。そちらもご覧になってみてください。
『ぼくらのへんたい』が面白い!切なくて泣ける隠れた名作を全巻ネタバレ紹介!
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/4792
- 著者
- 天堂きりん
- 出版日
- 2017-11-20
挙動不審で人前に立つとテンパってしまう小川今日子は、下着メーカーで働いています。誘われた合コンで素敵な人と出会い、なんとか前を向いて歩き出そうとした矢先、大学時代の先輩にして想い人、しかし忘れられないトラウマを植え付けられた相手でもある星名が、同僚となって職場に現れました。
彼の呪縛から解放されたいと願う反面、拒みきれない自分もいる……もどかしい葛藤を抱えながらも、今日子は合コンで知り合った吉崎に惹かれていきます。
しかしそんな彼女を星名が許すはずもなく、再びその毒牙を、今日子とその周りの人々に向けるのです……。
下着メーカー「ワンナナコール」でデザイナーとして働くのが28歳の小川今日子。ドラマ作品では吉岡里帆がその役を演じます。
彼女の最大の特徴は、やはり優柔不断で自信がなく、余裕がなくなるとどもってしまう挙動不審なところ。その様子からキョド子というあだ名までつけられてしまっています。
今日子は家庭環境に恵まれず、母親にも吃音症のような特徴をいとまれ、妹ばかりが可愛がられるという状況で育ちました。そこから自信を持てない性格が顕著になり、ずっとそのことで悩んできました。
しかし大学生になって、彼女にそのままでいいと言ってくれた男性が現れます。それが星名。一見優しそうに見える彼ですが、実はかなりの策略家で腹黒い人物でした。
大学時代をすべて彼に捧げ、言われたままに行動した結果、今日子は身も心も傷ついてしまいます。
しかしそれでも星名のことが忘れられず、大人なった今でも過去から進めず、彼にやってもらった、ストールをねじらせて巻くスタイルをすると安心できる自分がいるのでした。
そんななか、合コンで知り合った吉崎にそんな自分の核心を突く発言をされ、目を覚まします。そのまま勢いで告白し、少しずつ前進し始めるのですが、そんな時に限って星名と再会してしまうのです……。
大手出版社で編集者として勤め、今日子の希望の星になりそうな存在が吉崎。ドラマ作品では桐谷健太がその役を演じます。
今日子と合コンで出会った当初は「ちゃんとした恋愛がしたい」と言う彼女に対し、その「ちゃんとした」が「他人から見て普通の」という意味だということに嫌悪感を表し、その場を立ち去りました。
今日子とは、嘘のない言葉に感動した彼女にあとを追いかけられ、付き合ってくれと切羽詰まった顔で掴みかかられ、という散々な出会いをしています。
そのあとさすがに怖くなり彼女を突き飛ばすのですが、そこから腐れ縁ともいえる今日子との関係が始まっていくのです。
ぶっきらぼうに言葉を投げながらも、必ず行動で優しさを示す吉崎。いつも不安定で流されがちな今日子に愛想をつかすのではないかと不安になることもありますが、結局彼女の味方になってくれるいい人100%の登場人物です。
今日子が働くワンナナコールでマーチャンダイザーとして働き、今日子にトラウマを植えつけた人物が星名漣。ドラマ作品では向井理がその役を演じます。
原作ではまったく人間味らしいものを感じさせず、とにかく今日子を陥れることしか考えていないような性格の星名。彼女が傷つく姿を見るのが快感らしく、執着させて自分から離れられないようにしたあとで、何度も期待を裏切ります。
どこまでも共感できない人物かと思われていた彼ですが、少しずつ過去が明らかになり、この性格になってしまった原因が伺えるようになります。
実は星名は幼少期の頃は出来が悪く、性格も暗く、いじめられていた少年でした。母親が不倫した相手との間にできた子供だということもあり、父親からは冷たくされ、母親からも自分の不義の象徴のように扱われ、居場所がありませんでした。
そしてとうとうある日、母から衝撃の言葉を言われ、性格を完全に歪ませてしまうのでした。
まったくと言っていいほど共感できず、恐ろしさばかり感じさせる星名ですが、隠された過去が明らかになるにつれ、同情する部分も出てきます。今後少しでも変化し、人間らしい部分は出てくるのでしょうか?
向井理のその他の実写化作品を知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
<向井理のおすすめ実写化映画10選、テレビドラマ20選!異色の経歴を活かした役柄に注目>
おどおどしていて挙動不審、人の意見に流されやすく、興奮するとテンパってうまく言葉を伝えられない……。今日子は実の母からも冷たい態度を取られ、周りからは「変」と言われて相手にされず、いつまでも過去の男に囚われる日々を過ごしていました。
仕事では後輩の飯田に先を越されるなど、職場でもプライベートでもあまりよい毎日を過ごしているとは言えません。
合コンで知り合い、勢いで告白してしまった吉崎からは引いた目で見られ、会社での良き理解者・堀田から声がかかっていた新規プロジェクトへの参加もなくなるなど、ネガティブになる要素はそこかしこに転がっています。
自分に自信がない今日子は、精神安定剤の一部でもあるスカーフをぐるぐる巻いた「中尾巻き」を頼りに、変わりたいと願いながらも「自分にできる範囲のことだけ」をやって生きるのが精一杯でした。
吉崎のアドバイスを元に変わろうとする今日子ですが、そんな折、大学時代に彼女を苦しめ、現在もその影をチラつかせて彼女の心を捕らえている星名漣が、同じ職場へ異動してくるのです。
他のスタッフの前では初めて会った体を装う星名でしたが、2人きりになるとそのたびに今日子を手中に収めようとします。
彼は常に柔和な笑みを浮かべ、人当たりがよく物腰が柔らかいため、異動直後から社内で人気と知名度を高めていきました。
- 著者
- 天堂きりん
- 出版日
- 2017-11-20
しかし今日子は、星名を見るたびに震えてしまい、挙動不審な行動をとってしまいます。今日子が自分のことを忘れていないと悟った星名は、彼女の気持ちを揺さぶり、突き落とし、絶望を味わわせることに注力していくのです。
星名がたまに見せる光のない荒んだ瞳は、何を企んでいるかわからず、読者にゾッと不気味さを感じさせます。そして彼は、その何の感情もない顔をした後に、甘い言葉をかけたり罵声を浴びせたりするのです。
ずっとひとりだった今日子にとって星名が心の支えとなっていたことは間違いないですが、それは決してよい繋がりではありませんでした。
今日子に執着を見せる星名。一方の今日子も、彼の一挙手一投足、一言一句が気になってしかたありません。
2人の出会いは大学生の時。子どもの頃からすぐにテンパってしまう今日子は、常に周りの友人から距離を置かれる日々を送っていました。
いざ大学に入学しても、サークルの自己紹介では噛みまくり、また無視されてしまうのです。そんな彼女に声をかけてくれたのが星名でした。
これまで人からウザがられ、距離を置かれていた今日子は、優しくしてくれあ星名に言葉巧みに騙され、甘やかされ、依存していくようになります。
今日子の最初の精神安定剤は、母が編んでくれた「三つ編み」でした。母は今日子が幼いころからずっと髪を編み、三つ編みを触らせることで気持ちを落ち着かせようとしていたのです。
その精神安定剤をほどき、別のものに差し替えたのが星名でした。社会人になった今日子が精神安定剤としている「中尾巻き」は、彼が始めたものだったのです。
自分を支配してく星名の本性に気づいても、初めて自分を認め受け入れてくれた彼から離れるのが恐ろしく、今日子はどんどんのめり込んでいくようになります。
そして星名は、必死にすがってくる彼女を嘲笑うかのように、その気持ちを踏みにじり、傷つけていくのです。
無印上巻の冒頭に、星名と今日子の関係がわかるようなシーンが掲載されていますが、そこからは彼女が現在しているボブヘアーも、もしかしたら星名の影響なのかもしれないと想像させられます。
合コンで出会った吉崎に最初は勢いだけで告白した今日子でしたが、厳しいことを言いながらも自分にまっすぐ向き合ってくれる彼の姿にどんどん惹かれていくようになります。
一方で星名の呪縛からも抜け出せずにいた彼女は、職場で再会したことにより、再び依存心が溢れてしまいました。
吉崎は、今日子のあり方を許容するような言葉はかけません。ダメなところはダメだと指摘し、よいところよいと褒めてくれます。言葉のひとつひとつは厳しいですが、たとえ呆れても引いても、彼女を見捨てることなく手を差し伸べてくれるのです。
今日子自身も吉崎と関わるたびに、星名から離れたほうがいいと思います。しかし、彼は決してそれを許してはくれません。
星名の言葉は、呪縛のように今日子を締め付けていきます。星名と一緒にいれば傷つけられること、報われる可能性はゼロに等しいことなどをわかっているにも関わらず、それでも長年すがってきたものを簡単に切り離すことはできないのです。
星名は職場の後輩である飯田と関係を持ち、今日子を試すような態度ばかりとります。しかしふとした時に優しさを見せるので、今日子はすがらずにはいられないのです。
- 著者
- 天堂 きりん
- 出版日
- 2014-06-07
星名によって再び翻弄されることになってしまった今日子。その負のスパイラルから抜け出すための希望ともいえる吉崎と出会い、心境の変化がみられました。ただ、それ以上に星名の呪縛はしぶとくつきまとってきて……。
無印の続編となる「S」では、星名の過去が明らかになったり、相変わらず女を弄ぶ姿が描かれたりします。今日子は星名の支配下から逃れ、底の見えない心の闇から抜け出し、まともな人間関係を築いていくことができるようになるのでしょうか?
ここからは、続編となる『きみが心に棲みついたS』の見どころを紹介していきます。
星名と男女の関係になった飯田が訪れたバーで、バーテンダーをやっている牧村という男性。彼は大学時代の星名の友人でした。そして、今日子が処女を捧げた人物でもあります。
当時、星名は「牧村と寝れば今日子以外の女性と関係を断ち切る」と言い、牧村に彼女を抱かせたのでした。しかしその後の彼は、約束などなかったかのように、牧村に抱かれた今日子を拒絶します。そして、他の女性と関係を切ることはありませんでした。
その一件以来、今日子と牧村は関わることなく過ごしてきましたが、星名と牧村が再会したことで再び顔をあわせることになるのです。
- 著者
- 天堂 きりん
- 出版日
- 2014-12-08
呪縛から解き放たれたいがため星名を否定するようになった今日子は、合コンで出会った吉崎への想いを募らせていきました。一方でそれを快く思わない星名は、標的を吉崎に移し、今日子の傷をえぐっていこうとするのです。
そこで登場するのが牧村です。今日子にとって牧村との行ためはトラウマのようなもの。彼と再会したことによって、心が大きくかき乱されます。
やっと幸せを見つけ前に進もうとした矢先に現れた、取り返しのつかない過去。牧村自身は今日子にあまり興味はないようですが、今日子を絶望させるために星名が彼を使うことも考えられます。
彼女の周りの環境がどんどん複雑に、そして怪しく変化していきます。今後の星名の動向から目が離せません。
今日子は星名への依存を完全に断ち切ることができず、それでも吉崎を男性として慕っています。吉崎も彼女を放っておけず、なんだかんだ気にするようになりました。
一方で星名は、今日子を手元に置いておくために吉崎に近づき、3人の関係は複雑に絡み合っていきます。
- 著者
- 天堂 きりん
- 出版日
- 2015-08-08
さらに、星名が飯田を手懐けたことで、飯田が今日子への敵対心を露わにし、星名への執着を強めていくのです。事あるごとに自分と星名の仲を今日子にアピールし、今日子より自分の方が上だと言わんばかりの態度を見せます。
星名はそんな飯田をうまく利用して、今日子の心をどんどん自分の方へと傾かせていくのです。
星名の本性を知っていてそれでもなお離れられない今日子と、星名を優しい男だと信じ一生懸命尽くす飯田。互いに負けないよう張り合っていきますが、今日子はある一点において、他の女性とは一線を画していました。
彼女は、星名に抱かれたことがないのです。星名にとって今日子がどのような存在なのか、どう思っているのか不明瞭な点も多いですが、彼女は明らかに他の女性とは立ち位置が違いました。
今日子は自分だけのその立場に自信を持とうとしますが、仕事でもプライベートでも星名のそばにいることを許された飯田に、嫉妬せずにはいられないのです。
星名が女として興味を持ってくれない、絶対に抱いてもらえない、ということを再認識した今日子はひどく落ち込みます。仕事も手につかず、良き理解者だった同僚の堀田さえも失望させてしまう始末……。
仕事の楽しさややりがいを見失い始めていた彼女を救ったのは、辛い気持ちに寄り添ってくれた吉崎と、周りに流されず今日子に真っ向からぶつかっていったデザイナーの八木でした。
吉崎からのアドバイスを元に、今日子は八木と組んでいた仕事に向き合うようになります。
八木は当初から今日子に当たりが強く、裏表がない人物でした。歯に衣着せぬ物言いに怖気づいていましたが、今日子が食い下がるようになったことで、八木も少しばかり彼女に気を許すようになるのです。
しかし、八木との仕事を成功させようと意気込んでいたところで、再び星名の妨害が入ります。
今日子と飯田を仕事で直接対決させるよう仕掛けてきたのです。さらに星名は、飯田を勝たせようとするアドバイスともとれる発言をしますが、八木は目先のことにとらわれるような人物ではありませんでした。どちらが自分のデザインをよりよい形にし、販売するに相応しいかを総合的に判断します。
今日子は「仕事が楽しいかどうかわからない」と口にすることがありますが、仕事をしている彼女の姿は真剣で、生き生きしているのが見てとれるでしょう。
そんな彼女が最善を尽くし、自分のやるべきことをまっとうするシーンは、彼女が本来持っているであろう根性を垣間見ることができますよ。どこまで仕事をものにできるのか、注目です。
今日子や飯田など女性の心を惑わし、会社の人々も自分の手のひらで転がそうとする星名。なかなか性格の歪んだ彼ですが、元からそうだったわけではありません。
実は彼も今日子のように、人にからかわれ、見下されるような幼少期を送っていました。同級生にイジメられるだけではなく、姉には冷たくされ、父からは厳しく叱責され殴られることもあったのです。
- 著者
- 天堂 きりん
- 出版日
- 2016-04-08
それでも星名は笑みを絶やさず、どんな理不尽にも耐える「よい子」でした。そんな彼の唯一の支えは、常に自分のことを心配し、いつも味方でいてくれた母です。
しかし、そんな母が、父の転勤を機に顔を変えるよう、星名に頼んできたのです。「整形しろ」というその言葉に素直に従った星名ですが、母がずっと抱えていた気持ちに気づき、彼の性格は歪んでしまいます。
それまでは決して整った容姿ではなかった星名ですが、整形し顔立ちを変えたことで、転校先ではイジメを受けることなく過ごすことができました。
しかし心の拠り所にしていた母の気持ちに傷つけられたことで、彼は人を傷つける側の人間へと変わってしまったのです。
どんどん星名に溺れていく飯田ですが、星名にとって彼女は利用できるコマのひとつでしかありません。自分と今日子の関係に疑いを持っている飯田の心をうまく揺さぶっていきます。
飯田は星名と体の関係を持ちますが、会社では堂々と一緒に居られるわけではありません。星名と親しげな様子を見せる今日子に、どんどん嫉妬心を募らせていきます。そして、自分が優位であることを示そうと今日子を牽制するようになるのです。
しかし、飯田が星名との関係に自信をつけていくのに比例して、星名の飯田への態度は冷たくなっていきます。言葉や態度で拒絶されたわけではありませんが、飯田は徐々に星名との間に壁があるのを感じとるようになりました。
そんな時、星名がプライベートで今日子に会うことを知ります。そしてその日の夜、連絡がつかなくなった星名の家まで、足を運びました。
合鍵で室内に入った飯田は、星名が今日子でもない別の女性を抱いている場面に遭遇します。あまりのことにショックを受けますが、彼女はすでに星名に本気で夢中になっていたのです。
吉崎と無事交際を始めた今日子ですが、その関係を知りながらも目立った行動を見せない星名を警戒しています。
一方の星名は、いまだ「中尾巻き」を卒業できない彼女を少しずつ突つき、まるで様子を確認しているよう。また飯田とは潮時だと感じたのか、彼女に距離をとりたいと伝えました。
- 著者
- 天堂 きりん
- 出版日
- 2017-02-08
すがりついてくる飯田を、星名はなんでもないように軽く突き放しました。この時、彼女の星名への純粋な恋心が、異常な執着へと変わってしまいます。星名を絶対に諦めないと決めた飯田は、彼が近づきたがらないある人物を訪ねることにするのです……。
飯田が不穏な動きを見せるなか、星名は、今日子や八木らが立ち上げた新ブランドの展示会で、何か行動を起こすような素ぶりを見せます。彼が一体何を考えているのか、今日子の心をどう傷つけていくのか、吉崎との仲をどのように壊そうとするのか、気になるところです。
ドラマでは、おどおどしながらも一生懸命前を向こうとする今日子を吉岡里帆が、どこか狂気をはらんだ星名を向井理が、そして今日子を星名の呪縛から解放する役割を持つ吉崎を桐谷健太がそれぞれ演じます。
ドラマを見る前に、ぜひ原作の漫画をチェックしてみてくださいね。
吉崎と付き合いはじめ、ようやく星名の呪縛から解かれてきた今日子。クリスマスには彼からネックレスをもらい、やっと中尾巻きをはずせるようになりました。
仕事面でも軌道にのりはじめ、新規プロジェクトの立ち上げメンバーに任命されることに。恋愛も仕事もうまくいき、すべて順調に進んでいるように見られましたが……。
- 著者
- 天堂きりん
- 出版日
そんな今日子が幸せそうにしている姿を、星名が黙って見ているはずもありませんでした。お前は俺だけ見ていればいい、と言わんばかりに、吉崎からのプレゼントであるネックレスを今日子の首元から引きちぎって捨ててしまうのです。
イケメンだから許される、という度を超えた性悪さ。しかしそんな星名相手に、今日子もまったく変わらない姿勢でした。せっかく新規プロジェクトに参加できることになったのに、星名とチームが別になってしまうのはいやだ、と嘆いているのです。
念願の吉崎と付き合えることになったのに、しぶとく星名に執着する今日子。星名から離れようとすればするほど、彼女のなかで星名の存在が大きくなっているようにも感じられます。
6巻では、さらに複雑にこじれる恋愛模様が展開されていきます。吉崎を思う気持ちの隅で星名に執着してしまう今日子、彼女を信用しきれない吉崎、星名につきまとう飯田など、それぞれの思いがどこに帰着するのか注目です。
吉崎と交際する幸せな日々を送っていた今日子。しかし、それは意外にも早く、そして呆気なく終わりを告げます。星名の住むマンションに、今日子と星名が入っていくところを目撃した飯田は、今日子が出てくるまで待ち伏せて何回も鞄で今日子を叩きます。
「あんただって地獄に落としてやるから」
(『きみが心に棲みついたS』7巻より引用)
泣きながら恨めしそうに今日子を見る飯田。凄まじい迫力があります。しかし、会社や今日子以外の前では今まで通りの自分自身を見せるのですから、彼女のオンオフの切り替えには目を見張りますね。
飯田はこの宣言通り、今日子が星名に手を引かれマンションに入る姿をおさめた動画データを吉崎宛に送りつけたのです。そして吉崎は、星名と今日子の共通の知り合いであるバーテンダー・牧村に、2人のことについて尋ねてしまいます。
2人の秘密を知る牧村は、過去に今日子と星名の間に起きたこと、その関係性を、隠すことなく、しかし確実に悪意を持って吉崎に伝えたのです。吉崎が彼女の過去を知ったころ、今日子はこれ以上吉崎に後ろめたいことはしないと決意し、大きな一歩を踏み出したところでした。
- 著者
- 天堂きりん
- 出版日
吉崎は今日子と話し合いの場を設けますが、2人の気持ちと心はすれ違ったまま、別れることになってしまいます。そのショックで、今日子は会社を3日休むことに。八木が訪ねてこなければもっと休んでいたかもしれませんね。
その時に、一見強い女性に見える八木が抱える、恋愛の古傷を知った今日子は、あらためて過去から抜け出すことを決意します。ただ仕事では、新規プロジェクトのチームリーダーに任命された矢先の欠勤ということで、少々居づらい状態に。しかし、今の今日子はその程度ではくじけません。
自分の失態を挽回すべく誠意を持って働く今日子。そんな今日子のもとに星名の魔の手が伸びてきます。今までのように、彼女の全てを受け入れるような甘言で誘惑する星名。しかし今日子は己を奮い立たせ、彼と向き合い、その言葉を全てを拒絶するまでに。吉崎との別離で、精神的な強さを手に入れたのです。
過去を振り払いつつある今日子ですが、星名は未だ過去にがんじがらめにされているよう。7巻では、星名が整形後の幼少期どういう暮らしをしていたのかが描かれています。星名の心に棲みついているのは何なのか、それが見え隠れしていますよ。
- 著者
- 天堂きりん
- 出版日
- 2017-11-20
パステルカラーで、ふんわりとしたイメージの表紙からは想像がつかないほどの鬱恋愛が描かれる本作。2018年1月からドラマ化されたことで話題になっています。
大学時代に出会った星名の呪縛にとらわれ続ける今日子。恋愛だけでなく、相変わらず自分に自信が持てずにいました。ある合コンで、自分の意見をはっきりと言うことができる吉崎に出会い……少しずつ変化しようと努力していきます。
しかし、なんと星名が職場に異動に。過去の記憶がよみがえり、彼によるトラウマを抱える今日子は、またもや彼の思惑どおり追い詰められてしまうのでしょうか?
また、新たな恋愛に踏み出し、さまざまな人間関係を通して、自分らしさを取り戻すことはできるのでしょうか。恋愛や仕事、人間関係に悩めるすべての大人におすすめしたい作品です。
ちなみに冒頭でもお話しましたが、本作が気になる方は『ぼくらのへんたい』という作品もおすすめ。
事前にどんな作品か知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
『ぼくらのへんたい』が面白い!切なくて泣ける隠れた名作を全巻ネタバレ紹介!
https://honcierge.jp/articles/shelf_story/4792