「魔球」は野球漫画の醍醐味の一つですね。消えたり曲がったりと、手品のような技でギャラリーを盛り上げてくれます。ただ、本作『デッド・オア・ストライク』に登場する魔球は、地面に刺さったり、爆発したり、放電したりと、さながらバトル漫画のような迫力を見せます。 この記事では作品のキャラクターと、規格外の必殺技の数々をご紹介しましょう。
- 著者
- 西森生
- 出版日
- 2016-07-27
野球漫画と聞いて期待するのは消えたり、分裂したりする「魔球」や、どんな球でも打ち返す「打法」ですよね。物語の中のかっこいいプレイに感化されて野球をはじめる子供たちも多いはずです。
しかし、漫画『デッド・オア・ストライク』を普通の野球漫画だと思って読むと痛い目を見ます。本作は野球漫画というよりも、バットとボールを用いていればなんでもアリのバトル漫画。こんなに人が吹っ飛ぶスポーツ漫画は見たことがありません。
著者の西森生(にしもりうい)自身「いつか空想科学読本に取り上げられたい」と言っているほどのとんでもない野球漫画『デッド・オア・ストライク』の魅力とは、一体なんなのか。この記事では注目の登場人物と超人的な「魔球」、「魔振」をご紹介します。
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野球エリート養成学校である私立「頂高校(いただきこうこう)」は、すべての実力が「野球」のみで測られる場所です。頂高校の入学式へと向かう新入生で溢れるモノレールに、主人公の初月和希(みかづきかずき)も乗っていました。
しかし突然、モノレールはマシンガンのごとし「千本ノック」に襲われます。入学式はもう始まっていたのです。果たして、初月の運命は……?
物語の紹介の前に、まずは舞台となる「頂高校」について説明いたしましょう。野球を志す者なら誰でも入学のチャンスがあり、在学中に高い成績を残せばプロ選手への道は確保されるも同然。最強の野球選手を育てるために創られた学校です。
そのヒエラルキーは上から「1軍」「職員」「2軍」「3軍」「掃除部」、という段階分けられています。3軍以上で野球に携わっていられる生徒の数は推定8500人ほど。掃除部に落とされた生徒の数は不明です。さらに頂高校から与えられている地位・権力は学校の外でも有効で、一部地域に意見を通すことも可能な様子。日本中から一目置かれている組織であるということがわかります。
全ての施設は軍ごとに区別されており、1軍ともなると部室も高層ビルというような、どこもかしこスケールの大きい頂高校。初月はどんな方法で頂高校の頂点へと迫っていくのでしょうか。
頂高校の新入生初月和希は、なんと野球初心者。入学式へ向かう途中に野球の入門書を読んでいました。全国の中学校から名だたる選手たちが集結する中で、彼の存在は異質です。ただ本を読みながらも、空いている片手ではバットとボールを起用に操っているあたり、ただの素人ではない様子。
突如モノレールを襲った千本ノックで新入生たちが無残に蹴散らされていく中、初月のみが無傷でボールをキャッチし「3軍」への入団を認められます。しかし初月は、笑顔ではっきりと言いました。
「俺、3軍とかぶっとばして1軍いきたいんだけど 1軍に案内してよ」(『デッド・オア・ストライク』1巻から引用)
この言葉をきいた3軍キャプテン碇山剛宗(いかりやまごうしゅう)は大激怒。即座に初月を敵とみなし、碇山の処分と初月の退学を賭けた「開戦(バルティード)」が行われます。3軍とはいえキャプテンの座に君臨する碇山の魔球を相手に、初月が見せた打法とは……?
- 著者
- 西森生
- 出版日
- 2016-07-27
初月の故郷は、国内某所にある孤島「豆粒島(まめつぶじま)」。その島は現在、なんらかの事情で頂高校に奪われそうになっていました。初月が頂高校に入学した目的は「頂高校のトップに立って、学校をぶっ潰す」こと。島のみんなの希望を一身に背負い、次々に現れる強者たちに立向かいます。
幼さを感じさせるような無邪気な様子で、人懐っこい性格の初月。敵意をむき出して襲いくる相手選手を前にしても、笑顔で野球を楽しめる度胸と余裕を持っています。そんな彼が胸の内に秘めている「故郷を守る」という覚悟。この二面性は初月の魅力の一つです。
モノレールに揺られながら野球入門書と読む初月に、「なにそれ、ギャグ?」と話しかけた女子生徒がいました。細身で長身、美しい黒髪をたなびかせる彼女の名前は雪村沙奈(ゆきむらさな)。頂高校の3年生で、1軍の専属マネージャーです。初心者の初月に秘められた才能を見抜くほどの目を持っています。
マネージャーとはいえ1軍の生徒。頂高校独自のヒエラルキーでいえばトップの地位・権力を持っている人物です。3軍キャプテンの碇山との決闘に勝利した初月のために、権力を行使して「1.5軍」というものを設立しました。どうやら初月に大きな期待をよせているようです。
「この少年は… 私がもらう‼」(『デッド・オア・ストライク』1巻から引用)
1軍18人、2軍400人、3軍8000人分のデータが頭に入っているという驚異的な把握能力で、チームからは絶対の信頼を勝ち得ています。2017年11月現在既刊の2巻まででは、彼女にまつわるその他の情報は明かされていません。雪村はこれから初月をどうしていくのか、1軍専属マネージャーの実力に注目です。
入学早々3軍キャプテンを破るという大波乱を見せた初月の噂は学校中に広まり、とんでもない人物を引っ張り出すこととなりました。頂高校の中では「神」と呼ばれる存在である1軍のレギュラー、早舞間甲志(さぶまこうし)。守備位置はセカンドです。
派手な髪型といい、耳や眉上のピアスといい、一見不良かなにかに見える早舞間ですが、その実力は本物。初月の方から申し込んだ一打席勝負では、キャッチャーミットに入ったことすら気づけないほど速い「超音速返球(ソニックワルツ)」を見せ、雲泥の差を初月に知らしめました。
実力を知らしめたとはいっても、早舞間が見せたのはたったの2球。彼にとっては肩慣らしにすらなっていません。早舞間と同等、またはそれ以上の人物が存在するのだと思うと震えてしまいそうです……。今後開催されるレギュラーの「入れ替え戦」で真の力が明かされることを期待しましょう。
初月にとって初めての開戦相手となった3軍キャプテン、碇山による魔球「死死球球feat.三振」は、バッターの目の前で分裂する魔球です。縦6つに並んで迫ってきた球を、初月はバットを他縦に構えてすべて受け止めることで直撃を回避しますが、いったいどんな回転がかかっているのかボールは勢いを失わず、バッドを押し続けます。
これだけでは終わりません。バッターはバットを振れない状況でさらに3球投げ込まれ、一気に三振を取られてしまいます。無理に撃ち抜こうとすればデッドボールの餌食、なんて悪質な魔球でしょう。少なくとも2本の腕では対処しようのないインチキ魔球となっています。
初月は、1軍レギュラーの座をかけた「入れ替え戦」の参戦権を手にいれるため、集まった実力者たちをさらにふるいに掛ける「トライアル試合」に参加します。その試合は頂高校の地下に設置されたマリンスタジアム、通称「地底湖」で行われました。グラウンドは水深20〜70cm、時間によって水位が変動するという厳しい環境です。
初月の対戦相手の投手が放ったのが、この「蛇腹球」。球に横に流れる高速回転をかけることで螺旋状の球筋を描きます。一定の動きとはいえ、バッターのもとに届く時にどの角度から刺さってくるかわからない球を打ち返すのは至難の技。並みの動体視力では絶対に攻略できない魔球です。
同じく地底湖でのトライアル戦で、一昨年の「入れ替え戦」の優勝経験者明日葉(あしたば)が繰り出した魔球「マキシム・ザ・コンクラーベ」。投球されてからゆっくりと漂うようにしてバッターのもとへと向かう超スローボールが、投手の合図とともに溜まった威力を放出し、一気に加速する魔球「コンクラーベ」がレベルアップしたもので、この時明日葉がかけた時間は実に半日。明日葉が出せる最大の威力、スピードで放たれたボールが初月を襲います。
ピッチャーからバッターへの距離はおおよそ17.5m。その間を時速80〜160kmほどのボールが走るわけですが、明日葉が力を溜めている間もボールはゆっくりとバッターのもとへ向かいます。つまり、下手をすると10m以下の近距離から豪速球を投げ込まれるのと同じ状況になるのです。
また、どれだけの威力でいつ加速するかも明日葉しだいのため、バッターはゆっくりと迫りくるボールを10分や20分、果ては10時間以上注意深く見ていなくてはなりません。攻略にはとんでもない時間と体力、集中力が必要となるでしょう。
入学早々1.5軍となり、学校中の注目の的となってしまった初月。入学式が終わるやいなや、彼の元には次々に挑戦者が現れました。「氷柱落とし」はその中の1人、鮫定(さめさだ)による魔振です。
鮫定の打った球はピッチャー初月の頭上に上がります。なんて事のないピッチャーフライです。初月は1アウトを奪えたと安堵しますが、落下してくるボールの異変に気付いて咄嗟に離れます。なんと、落ちてきたボールは氷柱のように尖って地面に突き刺さったのです。
この氷柱落としは魔球でも応用されますが、バッドには突き刺さるわ、キャッチャーも盾で受け止めるわで危険極まりないボールです。そもそもどんな力が加われば野球ボールが氷柱状に尖るというのでしょうか。当たれば無事では済まない殺人ボールといえるでしょう。
味方も満足に揃えられないまま鮫定たちと戦っていた初月は、今の戦力差のままでは挽回しようもないほどの窮地に立たされていました。そんな初月は、顔見知りとなった堅物な2軍選手花菱(はなびし)に助っ人になるよう頼みます。本来ならば、ヘラヘラと真面目さの感じられない態度ばかり見せる初月など嫌いな花菱でしたが、この時ばかりは助っ人として打席に立ってあげるのでした。
花菱の魔振「ビクトリーロード」で打たれた球は、目の前でV字に変化して投手の股の間を抜き、そのまま遥か彼方へと伸びていきます。ちりとした性格の花菱らしい魔振。まだ投球フォームすら崩せていないピッチャーに鋭く切り込むライナーが取られることなど、そうそうありません。
サッカーを例に「股抜きとは、相手に屈辱感をあたえるプレー」と説明されていますが、野球でも同じことはいえるはず。まるで嘲笑われたかのような選手たちの精神的動揺は、その後のプレーにも影響するかもしれません。
こちらはトライアル戦で披露された魔振。初月と同じチームで、守備でも攻撃でも一定の貢献を見せたオールラウンダー長宗我部(ちょうそかべ)が見せた技です。
「通電閣」という字からも、感電している選手の様子からも分かるように、長宗我部が発しているのは電気。届かない距離にあるボールに電気を当てて弾き飛ばすという魔法のような必殺技です。「水電動率の高さを生かした打法」という説明もあるとおり、試合の環境が水の中だったからこそできた技かもしれませんが、超人的なことには変わりありません。
打った長宗我部本人も感電し、続く試合はリタイアとなってしまいました。ベンチで休まされるだけでなく、きちんと病院に行ってほしいところです。
修学からしばらく経ち、初月を含む新入生たちの中にはぞくぞくと才能を露わにする選手たちが現れはじめました。そんな中、1軍レギュラーの座をかけた「入れ替え戦」の参戦権をかけたトライアル試合は行われます。
学年は関係なく、たくさんの邪魔や試練を乗り越えて会場にたどり着くことができた選手だけが参加できるこの戦い。控え室で初月が見たのは、いくつもの修羅場をくぐり抜けてきたことが一目でわかるような猛者たちばかりでした。
試合会場は全域水浸しのマリンスタジアム。濡れれば濡れるほど固まり、最終的には体の自由を奪われるほどに硬直してしまう特殊なユニフォームを着させられて、選手たちは「100耐」に挑みます。
- 著者
- 西森生
- 出版日
- 2016-07-27
100イニング制、もしくは100点差コールドによって勝敗が決まる「100耐」。勝てば一気に1軍までの距離が縮まりますが、負ければなんと「地下牢行き」という、今後の頂高校での野球人生をかけた勝負となります。初めてのチーム戦の初月は心を躍らせますが、彼が思っているよりもずっと過酷な試合となりました。
昼夜問わず続けられる途方もない激闘に耐えられず倒れる選手や、チームを勝利へと導くための捨て身の魔球・魔振を使って倒れる選手、敵味方問わずどんどん脱落者は増えていき、ついには初月と明日葉の一騎打ちとなりました。勝てば天国、負ければ地獄なトライアル戦。軍配はどちらに上がるのでしょうか?
キャラクターも続々と増え、ど派手な魔球・魔振もどんどん披露されはじめた第2巻。さらなる高みを目指す選手たちだけでなく、学校に君臨する1軍たちも動きを見せるようになりました。人々が吹き飛び、建物が倒壊し、地形まで変わりかねない特大威力の必殺技もちらほらと見られ始めています。
さらには試合会場となるグラウンドまで、まともな場所の方が少ないということがわかった今、選手たちが今後どんな場所で戦わされるのかもまったく予想がつきません。『デッド・オア・ストライク』が、これからどんな展開で読者をおどろかせてくれるのか、続く3巻への期待が高まります。
いかがでしたか?必殺技だけでなく、試合会場や形式まで規格外な本作は、見どころの連続です。ぜひ作品を手にとってみてください。