森で出会ったのは、熊に襲われるソーセージ。そんなシュールな世界を描いた漫画『おとぎのファルス』が、2017年12月現在、スマホのマンガアプリにて無料公開中です。この記事では、キャラクターたちの魅力についてご紹介したいと思います。
どこか童話的な雰囲気のある『おとぎのファルス』。心優しい孤児な少女が、周囲でくり広げられるボケの嵐の中でたくましく成長していく姿を描いたギャグ漫画です。変人たちの癖のあるシュールなギャグにやみつきになります。
ここでは、物語を盛り上げる登場人物の魅力をご紹介いたしましょう。既刊1巻(2017年12月現在)のネタバレを含みますので、ご注意ください。
- 著者
- 九目
- 出版日
- 2016-08-23
住む家もなければ、頼れる人もいない薄幸の少女アメリア。宛のない旅の途中で出会ったロボットの少女リリーとともに森を彷徨っていると、熊に襲われているソーセージに出会います。
熊を撃退して「ブルスト」と名乗るソーセージを救った二人は、彼に連れられて一件の肉屋にたどり着き、そこの主人ゼベットとともに暮らすことになりました。幸運にも優しい人たちと出会えたことで、やっと安心することができたアメリアでしたが、彼女を狙う暗殺者はすぐそこまで迫っていたのです……。
身寄りもなく、住む家も失った薄幸の少女アメリアは、持ち物もお金も少ないのに、凍えている子供にマフラーをゆずるような心優しい少女です。しに弱い部分もあるため、変態に絡まれることもしばしば。冒頭では「若い女子の靴下を集めている」という老人に靴下を剥ぎ取られていました。
礼儀正しく、常識的な考えの持ち主である彼女は、目の前でどんな不可解なことがおこってもまずは相手を気遣い、助けようとします。ブルストと出会った時もそうです。転んでケガをし、中身を溢れさえてしまったブルストを見ても、溢れ出る疑問を押し留めながらまずが手当てをしました。ッコミよりも思いやりが先行するという、少々珍しいタイプのツッコミ役です。
その後も優しくて流されやすい性格はかわらず、多くの事件に巻き込まれ、いろんな変態に目をつけられます。変人たちと関わることで徐々にたくまたくましくなっていくアメリアに注目です。
アメリアは、通りかかった街で合わない力仕事に苦しめられていた、労働用の少女型ロボットのリリーを庇います。アメリアの所持金のすべてで買い取られたリリーは、アメリアに恩返しをするために旅に同行します。
ロボットとは言っても人とほぼ同じ知能を持っており、アメリアたちとなんら変わらない生活スタイルを取ります。異なる部分と言えば怪力。ブスルトを襲っていた熊も一撃で仕留め、側に立っていた木ごとなぎ倒しました。
5歳だというリリーの姿は、アメリアと並ぶとまるで妹のようです。無邪気さの残る彼女はブルストとの相性もよく、ソーセージとロボットが仲良さげに交流している風景は異様ですが、微笑ましいものとなっています。
アメリアたちを受け入れた肉屋の主人、ゼベット。優しく穏やかな男性で、ブルストの生みの親です。病気の奥さんを亡くして以来、ブルストと二人きりで暮らしてきました。
まさに優男といった雰囲気のゼベットは、返り血のような汚れで真っ赤というなかなかショッキングな姿でアメリアたちの前に現れます。調理用の豚の血をこぼしてしまったと説明しますが、光のない瞳と薄ら笑いに妙に似合って寒気がします。
初対面のアメリアたちのために、気を利かせたジョークで場を和ませようとしてくれますが、その内容の恐ろしさときたら……。住む部屋を与えてくれたゼベットの優しさに感涙するアメリアにこう言いました。
「僕も嬉しいんです ベーコンの材料が足りなくて 困っていたところだったので」(『おとぎのファルス』1巻から引用)
行く宛のないアメリアたちを迎え入れ、奥さんの命日にはかかさず墓参りし、怪我をしたブルストを手厚く介抱するゼベット。彼の様子から優しくて親切な人柄を感じることができますが、笑顔の裏に何かがある気がしてなりません。新しく始まった4人での生活では、どんな温かさと薄気味悪さを感じさせてくれるのでしょうか。
服を着て歩くソーゼージのブルスト。存在自体はギャグでしかありませんが、性格はとても親切で常識人です。生みの親であるゼベットのことも、命の恩人であるアメリアたちのことも慕っています。料理が得意ですが、自分が直接鍋に入って出汁を取っていたシーンをアメリアに見られてしまい、彼女は彼の食事を食べることができなくなってしまいました。
ソーセージのため体はもろく、転ぶとすぐに皮が破れて中身が溢れてしまいます。その姿はおそらくグロテスクなのでしょう、ケガをしたブルストにはモザイクが……。ゼベットは、彼の中に新しい肉を詰め直すことで手当てしているようです。
ブルストが抱える一番の謎は「何から作られているのか」というところ。奥さんを病気で亡くし、何もできない日々を送っていたゼベットが「このままではいけない」と自分を奮い立たせ作った大きなソーセージがブルストなわけですが、ゼベットはこの時、どうやったのか、何の肉を使ったのかを覚えていないというのです。もしかしたら、奥さんを……。という恐ろしいファンの間で噂が流れましたが、著者は作品の中で「奥さんを使ったわけではありません」と明言していました。
謎の多いブルストは、本作のマスコットキャラクターでもあります。他のキャラクターの半分程度しかない身長で、みんなの間を行き来する様子はまるで子供のよう。ブルストの、場を和ませてくれる可愛い行動に注目です。
ヒズベルトは、ある組織からアメリアの暗殺を依頼された手練れの暗殺者です。街で買い物をしていたアメリアとブルストを人気のない場所に連れ込むと、躊躇することなくブルストの眉間を銃で打ち抜き、アメリアのことも手にかけようとしました。
獲物をなぶり殺すことに快感を感じる変態のヒズベルトは、「時間をかけて切り刻む」といってアメリアの首を絞め上げますが、ここでまさかの展開が。窮地に屈さなかったアメリアの「最初から殺すつもりだったのね」「最低、あなたなんて大嫌い」という言葉をきっかけに、アメリアの恋をしてしまったのです。彼女の強い姿勢に胸を打たれたのか、それとも実はマゾヒストだったのか……。
「死ぬほど殺したい 泣き叫ぶ声が聞きたい 絶望に歪む顔が見たい だが出来ない! 他の奴らに殺される等我慢ならん!」(『おとぎのファルス』1巻から引用)
歪んではいますが、これはヒズベルトの恋なのです。そして自覚していない彼はストーカーとなり、アメリアの部屋から見える木の上に住み着くようになってしまったのでした。
意図せず頼れるボディガードを得たアメリアですが、その後も続く彼の変態行動には頭を悩ませます。残忍な殺し屋だったはずのヒズベルトは、初めて恋をしたことでどう変わっていくのでしょうか。
魔女のヒドノラは、大きなとんがり帽子と黒い衣服が特徴のセクシーな女性。ゼベットの古くからの友人で、肉屋の近所で薬屋を営んでいます。
実験が大好きな彼女は、作成した「欲望を顕示化せる薬」の効力を試すため、背後からアメリアを襲って勝手に飲ませるという荒技を見せました。そのせいで、幼い頃に亡くしたために「父親」に憧れを持っているアメリアは一時、近くにいる中年男性全員を父親だと思うようになってしまい、騒ぎとなりました。
ただ、本音か建前か、この実験に関してヒノドラはこんなことを言っています。
「…人の良い友人の所へ来た客人が どのような人物なのか 知りたいと思ったのです」「もっとろくでもない性根の持ち主なら 只で済ますつもりはありませんでしたが…」(『おとぎのファルス』1巻から引用)
つまり、ゼベットを思ってのことだったのです。手荒ではありましたが、心配性なヒノドラの優しさが見えたエピソードでした。しかし、実験が大好きなのも事実。彼女はこの後も怪しい薬を作っては、勝手に誰かに飲ませるのでしょうか。
- 著者
- 九目
- 出版日
- 2016-08-23
いかがでしたか?癖になる笑いを届けてくれる本作は、中毒性の高い作品となっています。ぜひ楽しんでみてください。