漫画「デスノート」の社会的影響は。キラキラネームのきっかけ?
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漫画「デスノート」の社会的影響は。キラキラネームのきっかけ?

更新:2020.11.30 作成:2017.12.22

『DEATH NOTE』は、原作・大場つぐみ、作画・小畑健の少年漫画。映画化やテレビドラマ化などさまざまなメディアミックスをされた、言わずと知れた大人気作品だ。この記事では、そんな「デスノート」をはじめとする漫画が社会にどのような影響を与えているのか、実際に起きた国内外の事例を紹介しながら考えていく。

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私たちは早稲田大学マスコミ研究会のメンバーです。 マスコミ研究会は1967年に創立されたサークルで、マスコミや出版に興味のある人が集まって、大学内で配るフリーペーパー『ワセキチ』を制作したり、文化祭で文化人を呼んで講演会を開いたりという活動をしています。 毎年数名がこのサークルから出版やマスコミ業界に進んでいきます。 本アカウントでは、社会問題や時事問題について考えながら、本を紹介していきます。
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漫画「デスノート」の簡単なあらすじ。世界的大ヒット作!

漫画やアニメといったサブカルチャーが、ときに社会に強い影響を与えることがある。たとえば『キャプテン翼』で起きたサッカーブームや、『SLAM DUNK』で起きたバスケットボールブームなどは記憶に新しいだろう。

この記事で紹介する『DEATH NOTE』は、単行本全12巻の世界累計発行部数が3000万部を突破した、間違いなく社会に大きな影響を与えた作品のひとつである。

まずは本作のあらすじを簡単に紹介しよう。

著者
["大場 つぐみ", "小畑 健"]
出版日
2004-04-02

天才的頭脳を持つ主人公・夜神月(やがみライト)はある日、高校の敷地内で謎の黒いノートを拾う。それは、死神・リュークが人間に拾わせたらどうなるかを見物するために、わざと落とした「デスノート」だった。

その日から月はリュークの姿が見えるようになり、ノートについて、「紙面に名前を書きこまれた人間が死ぬ」などさまざまなルールを知ることになる。そして自身が信じる理想の世界「犯罪者のいない世界」を創りあげるために、世界中の犯罪者の名をノートに書き記し、抹殺していく……。

「デスノート」の社会的影響を事例とともに紹介。キラキラネームのきっかけに?

【国内】

日本の小中学校では「デスノート」と称するノートを自作して、特定の生徒の名前を書きこむいじめが各地で発生した。

これは一時的なものではあったが、保護者たちの間でも自分の子どもが本当に死んでしまうのではないかと考え、怯える者がいた。

「ノートに名前を書かれると死ぬ」という設定に多大な影響を受けた当時の親たちの間では、「見ただけでは読み方を推測できない名前」や「他人が人名だと思わない名前」を子どもにつけることが流行した。

これらは夜神月が作中で呼ばれていた「キラ」という呼び名にちなんで「キラキラネーム」と呼ばれるようになり、新語・流行語大賞にもノミネートされるまで知れ渡った。

【国外】

「ベルギー紙デルニエルールによると、首都ブリュッセル南部の公園で切断された白人男性の遺体が見つかり、その近くに近くに日本の人気漫画「DEATH NOTE(デスノート)」のせりふ「わたしはキラです」と読める日本語をローマ字で書いた紙片が置かれていたことが分かった。警察は殺人事件として捜査、紙片を重要な手掛かりとみて関連を調べている」(日本経済新聞2007年10月3日付夕刊より引用)

事件発生からおよそ3年後の2010年9月、犯人は逮捕され、彼が『DEATH NOTE』のファンであることがわかった。

また2013年、ロシアのエカテリンブルグで15歳の少女が飛び降り自殺をした。捜査当局が彼女の部屋を調べると、遺書のほかに漫画『DEATH NOTE』を4冊発見。

この事件から、ウラル保護者委員会に所属する保護者たちは公開書簡のなかで『DEATH NOTE』が子どもの死への関心をあおるとしたうえで、心の発育に悪影響を及ぼすと主張し、同作のロシア国内での購買禁止をもとめて運動を起こし話題になった。

漫画が与える社会的影響について

漫画が実社会に影響を与えた例として、岡山県倉敷で起きた小5女児監禁事件を紹介しよう。当時、この事件の被告がおとなしい性格で無類の漫画・アニメ好きだったため、ニュース番組などではこれらの作品が人格形成に悪影響をもたらすのかという議論で持ちきりになった。

ここでひとつ、興味深い論文を引用する。

「概観すると,マンガ(漫画)の影響に関する議論は過去何度か起きている。海外では1940-50年代に,国内では1950-70年代に,マンガ(漫画)が子どもに及ぼす悪影響という内容に関する雑誌記事が多く見られる。当初マンガ(漫画)の読者は子どもが中心だったので,子どもへの(悪)影響が議論の中心であった。マンガ(漫画)の悪影響として挙げられていたのは, 「少年非行に及ぼす影響」と「本を読まなくなること」 (活字離れ)が中心であった。また,教育上よろしくない表現・内容が含まれている(低俗・残酷・破廉恥なものが子どもに悪い影響を及ぼしては困る)ということもマスコミによって盛んに煽られ,マンガ(漫画)に関する議論の隆盛に影響した。マンガ(漫画)の影響に関する論考の大半は,子ども-のネガティブな影響についてであり,ポジティブな影響や大人への影響についての言及や実証的研究はほとんど見られかった。」(家島明彦,2007)

上記からもわかるように、漫画が社会に与える影響についての議論はいまに始まったことではないのだが、ポジティブな影響について言及された本や論文はなかなか見つけることができない。

しかし、漫画が日本の文化の重要な一部になっていることはいまや周知の事実だ。そしてこの文化は、今後ますます国際的に広がっていく。

漫画が本当に凶悪な人格形成を助長するのか、悲惨な事件を起こすきっかけに成り得るのか検証することは困難だが、メディアの報道も含めて我々読者は作品とうまく付き合っていかないといけないことは間違いないだろう。