【沖矢昴編】漫画『名探偵コナン』を本気でネタバレ考察!

更新:2021.12.6

サンデー史上最長の連載期間を誇り、単行本の全世界累計発行部数は2億3000万部を突破している名作『名探偵コナン』。安室透、世良真純と並んで黒の組織の探り屋・バーボンではないかと疑われていた沖矢昴。ミステリアスで謎に包まれた彼の正体について徹底解説します。

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『名探偵コナン』沖矢昴をネタバレ込みで考察!

著者
青山 剛昌
出版日
2008-01-12

単行本60巻というバーボン編の初期から登場していた沖矢昴。工藤邸に住み、灰原を監視し、類稀なる推理力を持つ沖矢の正体をはじめ、謎めいた言動についても考察していきます。

沖矢昴のプロフィール

沖矢昴のプロフィール
出典:『名探偵コナン』第76巻

バーボン候補として登場

「黒の組織の新しいメンバーが動き出した!情報収集及び観察力・洞察力に恐ろしく長けた探り屋で、コードネームは…バーボン!気をつけて!」(『名探偵コナン』第60巻より引用)

黒ずくめの組織に戻ったCIAの諜報員・水無怜奈からFBIにもたらされた情報です。このメールの後に登場した新キャラクター、つまりバーボンだと疑われる人物は3人。沖矢昴はその中のひとりとして登場しました。

出典:『名探偵コナン』第64巻

表の顔は大学院生

細目に眼鏡をかけた優男・沖矢昴は27歳の東都大学大学院の工学部博士課程に在籍する大学院生。木馬荘というアパートに住んでいましたが火事で焼けてしまったため、住む家を探していたようです。最初は阿笠邸に居候させてもらおうと考えていたようですが、灰原の拒否とコナンの提案によりその隣の工藤邸に住むことになります。子どもたちや蘭たちにも優しく、柔和な印象を受けますが……。

沖矢昴の正体は赤井秀一

沖矢昴の正体
出典:『名探偵コナン』60巻

沖矢の正体については、徐々に読者にヒントが与えられてきました。

コナンと張るほどの推理力

作中で沖矢は名探偵と言われる新一(コナン)と同等の推理力を見せています。バーボンも高い洞察力を持つ人物だと言われていましたが、以下に挙げる「ヒント」から沖矢はだんだんとバーボン候補からは外れていきます。

コナンからの信頼

アパートが焼けて住むところがなくなったという沖矢に対し、警戒心を顕にしていた灰原。しかしその一方でコナンは、初対面であるにも関わらず沖矢に工藤邸に住むことを提案しています。

コナンが本当に初対面の人間に家を貸し出すほどリスキーなことをするはずがありません。さらに、沖矢に怯える灰原に対して信用できる人物だと諭しているなど、コナンの沖矢に対する信頼はかなりのものでした。

出典:『名探偵コナン』第76巻

ドライブテクや銃を出す素振り

単行本第76巻File.5「立体交差の思惑」で、沖矢はコナンが誘拐された車を追いかける際に見事なドライブテクを見せており、さらにわかりにくくはありますが、懐から銃を取り出そうとしている様子も見受けられます。走る車のタイヤを狙って発砲するつもりであったとすれば、かなりの腕前であることが予想されます。

出典:『名探偵コナン』第76巻

赤井秀一を彷彿とさせる言動 

「そんな顔をするな…逃しはしない…」(『名探偵コナン』第76巻より引用)

同じく「立体交差の思惑」にて、コナンを心配する灰原に対しての沖矢の台詞です。灰原はこの台詞で、灰原の姉・宮野明美の元恋人であり、組織を裏切った男・諸星大(赤井の偽名)を思い出しています。

他にも沖矢の言動には、赤井を彷彿とさせるものが多いです。たとえば、沖矢の正体が諸星ではないかと疑った灰原が、沖矢のハイネックに手をかけた際には、こんな言葉をかけています。 

「ここから先はこちらのエリアだ…君の領分じゃない…」(『名探偵コナン』第77巻より引用) 

また、沖矢は以前、FBI捜査官のジョディとショッピングモールでぶつかった際、こんな台詞を言っています。 

「でも、過失の割合は50:50(フィフティフィフティ)です…周りの注意を怠っていた君にも非はある…」(『名探偵コナン』第67巻より引用) 

「50:50」も「エリア」も赤井が口癖のように使っていた言葉であり、これらのことから沖矢の正体は赤井ではないかと推察されてきました。

出典:『名探偵コナン』第78巻

赤井秀一の姿をした男はバーボン!

しかしここで沖矢=赤井の仮説を邪魔するのが、顔に火傷を負った赤井とまったく同じ容姿をした男の存在です。ジョディやキャメルといった既知の仲の目から見ても赤井にしか見えない彼は、顔の火傷痕も相まってキールに撃たれたあとの爆発から生き残った赤井ではないかと思われていました。

しかし、単行本78巻File.7「ミステリートレイン〈終点〉」において、それはバーボンこと安室透がベルモットの協力を得て変装した姿でした。安室は赤井の死を疑い、赤井の姿をしてFBIや妹に接触することで本当に死んでいるのかを確かめたかったようです。

ここで、安室透=バーボンであり、沖矢はバーボンではないということが分かります。また、ここで沖矢はベルモットと同等の変装術を持つ有希子と面識があるような様子を見せており、灰原が薬で幼児化した宮野志保であることを知っているような素振りを見せています。

「さすがに姉妹だな…行動が手に取るようにわかる…さぁ…来てもらおうか…こちらのエリアに…」(『名探偵コナン』第78巻より引用)

灰原が薬で元の姿に戻り、組織の人間の前に姿を現す覚悟を決めたときに現れた沖矢の台詞です。「姉妹」ということから沖矢は明美のことも知っていることがわかりますね。

さらに、バーボンの前に一瞬現れた赤井秀一らしき人物と、話の最後で見せた沖矢の目……ほぼ確実に、沖矢の正体が読者に知れたエピソードでした。

さらに『劇場版名探偵コナン 異次元の狙撃手』では、沖矢はラストにライフルで見事な腕前を見せており、ジェイムズとの電話中赤井と同じ声に変わっています。

 


安室については<【安室透編】漫画『名探偵コナン』を本気でネタバレ考察!>の記事で紹介しています。安室と赤井の関係もこちらで詳しく取り上げているので、気になる方はぜひご覧ください。 

出典:『名探偵コナン』第85巻

沖矢昴の正体は赤井秀一!

沖矢の正体について全てが明るみになったのは、単行本第85巻に収録されている「緋色シリーズ」でのことです。赤井の姿をして周囲の反応を確認しても、まだ赤井の死にはからくりがあると疑っていた安室。彼は赤井が死ぬ前に拳銃自殺していた組織の末端・楠田陸道の遺体を使って、赤井が死んだように見せかけたのではないかと推理します。 

キールは赤井を撃った後、ジンの指示で車に爆弾を仕掛け、車ごと赤井の身体を燃やしています。かろうじて焼け残った遺体の右手から採取された指紋が、生前赤井が手にとったコナンの携帯に付着していた指紋と一致していたことから、赤井は死んだものだと判断されていました。 

しかし実はコナンの携帯に付着していたのは、その前に携帯を拾った楠田の指紋であり、燃やされたのは楠田の遺体。赤井は携帯に指紋がつかないよう、あらかじめ指先にコーティングをしていたのではないかというのが、安室の推理です。 

安室はこの推理に確信を持つと、沖矢が住む工藤邸を訪れます。同時に赤井を確実に組織へと引っ張るため、ジョディとキャメルを来葉峠にて拘束するよう部下に指示を出していました。 

しかし、この展開を読んでいたコナンの方が一枚上手でした。安室は沖矢のハイネックの下に変声機が仕込まれているのだと確信しており、ハイネックをめくるも、そこには変声機はありません。ほぼ同時刻、キャメルの車の後部座席に潜んでいた赤井が姿を現し、赤井の生存は知られるも、沖矢=赤井という事実をなかったことにすることに成功します。 

実は、工藤邸で安室と対峙していたのは、有希子によって沖矢の変装を施された工藤優作であり、監視カメラにて別室で沖矢と安室の会話を聞いていたコナンと協力することで、安室との会話を凌いでいたのです。つまり安室の推理は正しく、普段赤井は沖矢昴として生活しているのですが、安室はごまかされてしまった形になりますね。

沖矢昴の怪しい言動の意味

沖矢昴が赤井秀一と共通点を見出されながらもバーボンかもしれないと疑われていた理由は、その怪しい言動の数々です。

類稀なる推理力と身体能力

水無怜奈のメールからわかるように、バーボンはかなりのキレ者だと推察されていました。沖矢は先述のとおり高い推理力を持ち、尚且つ蘭の蹴りを受ける振りをしていなしているなど、身体能力も高いことがうかがえます。どう見てもただの大学院生には思えず、怪しさ満載です。

しかし、同時期に登場したバーボン候補の世良真純や安室透も同じく高い推理力と身体能力を持っていたので、沖矢がバーボンだという決め手にはなり得ませんでした。

赤井は黒の組織からも組織の心臓を射抜く「シルバーブレッド」と恐れられるほどのキレ者であり、截拳道という格闘技の使い手でもあります。沖矢の正体が赤井と分かれば納得のいくものですね。

 

 

出典:『名探偵コナン』第76巻

灰原哀に怯えられる

組織から追われる立場の灰原は、組織の人間特有の匂いを感じ取ることができます。しかし、灰原は初対面時から沖矢に怯えており、沖矢がバーボンかもしれないと読者に思わせた描写のひとつとなりました。赤井は5年前から2年前までの3年間黒ずくめの組織にFBI捜査官として潜入していました。灰原が感じ取った「匂い」はそれが原因だと見られます。

出典:『名探偵コナン』第85巻

灰原哀を監視

FBIやコナンは、バーボンの目的は組織を裏切ったシェリー……つまり灰原であると考えていました。世良と安室もそれぞれ灰原に対し意味深な言動をとっていますが、沖矢のそれは他の2人よりもあからさまでした。  

阿笠邸を見張っていたり、阿笠邸に盗聴器を仕掛け、コナンと灰原の本来知られてはならないはずの会話を盗聴していたりと、彼がバーボンだったらかなり危うい状況です。 

しかし、これも沖矢が赤井であることが分かると意味のあることだと分かります。 

優作「私がわざわざ身代わりになったFBIの彼は…またここに戻って来るのか?」 
コナン「ああ…守んなきゃいけねぇ奴が…いるからな…」(『名探偵コナン』第85巻より引用) 

「緋色シリーズ」で安室が工藤邸から退散したあとの優作とコナンの会話です。コナンがこの台詞を隣の阿笠邸を見ながら言っていることから、赤井が守らなくてはいけない人というのは灰原に違いないでしょう。 

灰原の姉である宮野明美と交際していた赤井は、最初は組織への足がかりとして彼女を利用していましたが、ジェイムズの台詞から最終的には彼も明美を愛していたことが分かります。赤井が沖矢として阿笠邸の隣である工藤邸に住み、灰原の行動を監視していたのは、明美の妹である灰原を組織から守るという理由があってのことでした。

出典:『名探偵コナン』第85巻

登場のきっかけとなる「お裾分け」

「クリームシチューのお裾分けに来てみたら、戸口で何やら不穏な会話が耳に入って…」(『名探偵コナン』第76巻より引用) 

このように、作り過ぎた料理のお裾分けということでたびたび阿笠邸に顔を出し、コナンや灰原の危機に現れていた沖矢。 

阿笠邸を盗聴している姿からこの「お裾分け」は首を突っ込むための言い訳であることが読者にも察せられますが……。 

赤井としては、食費と気分転換の面からも料理をしていたようです。おそらく、子どもたちが遊びに来ることを鑑み、言い訳としての面も兼ね備えて、多めに作るのがデフォルトなのでしょう。沖矢として子どもたちに接する姿を見ると、とてもあの赤井秀一だとは思えません。案外、赤井の意外な面が全面に押し出されているのが沖矢なのかもしれません。 

出典:『名探偵コナン』第85巻

バーボンを飲む姿 

単行本第60巻を始め、たびたびバーボンを飲む姿が確認されている沖矢。これは沖矢が以前からバーボンが好きだと明かされていた赤井ではないかという説を裏付けるものであり、同時に沖矢の正体がバーボンではないかというミスリードの役割を果たしていました。  

キャメルによると、赤井は以前までバーボンの他にもスコッチを愛飲していたようなのですが、最近はバーボン一筋とのこと。「スコッチ」とは組織の一員のコードネームであり、赤井と安室との確執は彼の死が原因となっています。 元々ウイスキーが好きで、バーボンもスコッチも飲んでいた赤井ですが、スコッチの死を原因にスコッチを飲めなくなったということになるのでしょうか。

沖矢昴の正体を知る人物

黒ずくめの組織には一部を除いて完全に死亡したと思われている赤井秀一。彼が沖矢昴として生きていることを知っているのは、必然的に少数に限られます。

江戸川コナン

組織に戻ったキールが赤井を殺すように指示されることまで見越し、死体取り替えトリックを考えたのはコナンです。

赤井「まさかここまでとはな…」
キール「私も驚いたわ…こんなにうまく行くなんて…」(『名探偵コナン』第58巻より引用)

単行本第59巻File.1「鋼の楔」において、赤井を撃ったキールと撃たれた赤井はこんな会話をしています。これは傍から見ればここで終わりとなった自分の運命を憂いている台詞と、あの赤井秀一をこんなに簡単に殺すことができるなんてというキールの台詞に聞こえますが……。

「だが、これにある言葉を加えると…その意味は一変する…」
「まさかここまで…読んでいたとはな…」(『名探偵コナン』第85巻より引用)

単行本第85巻File.1「緋色の疑惑」にて、安室は赤井の台詞が自分の不運を嘆いているものではなく、死体取り替えの計画を企てたコナンへの賞賛の言葉だったことに気がついています。

キール(水無怜奈)

当然、赤井の死の偽装には、赤井を撃つキールの協力が必要不可欠ですから、キールも赤井の生存を知っていることになります。しかし、赤井が名と容姿を変え沖矢昴として生活していることまで知っているかどうかは分かりません。

阿笠博士

赤井が「沖矢昴」として生活するのに欠かせないチョーカー型変声機は、阿笠博士の発明品です。コナンの蝶ネクタイ型変声機のチョーカー型ということになります。「沖矢昴」が普段ハイネックの服しか着ないのも、この変声機を隠すためです。

また、赤井がいつも黒いニット帽を被っていることと、キールを監視していたジンがトドメをさすときにはいつも頭を撃つという癖を利用し、空砲に合わせてニット帽から血ノリが吹き出す仕掛けを作ったのも阿笠博士だと考えられます。赤井の死の偽装を実現できたのは、阿笠博士によるところが大きいですね。

工藤有希子

かつて初代怪盗キッドである黒羽盗一に弟子入りした経験から、ベルモットと同等の変装術を持つ有希子。赤井は彼女に授けられた変装術によって、容姿のまったく異なる「沖矢昴」になることができています。

安室に沖矢の正体がバレそうになったときには、夫である優作を昴に変装させ自らは優作に変装して代わりに授賞式に出るなど、かなりの活躍を見せています。

「全て変声機を作ってくれた阿笠博士と…この家の家主工藤優作氏の妻である有希子さんの変装術と…そしてこの策を授けてくれたこのボウヤ…江戸川コナン君のお陰だよ…」(『名探偵コナン』第85巻より引用)

赤井がこう言うように、コナン、阿笠博士、有希子は沖矢昴の立役者といってもいいでしょう。

工藤優作

沖矢昴の正体が赤井秀一であると確信を持った安室が工藤邸に乗り込んできた際、「沖矢昴」に変装して安室と対峙したのが優作です。「緋色の捜査官」という赤井をモデルにした小説でマカデミー賞を授賞していることから、最初から沖矢の正体をコナンから知らされていたと推測されます。

ジェイムズ・ブラック

組織の人間が赤井の死に疑問を持ち、何らかの手段で探りを入れてくれば、赤井の死が偽装であることがバレかねない……そんな懸念からコナンと赤井は、赤井の生存をFBIの誰にも明かすつもりはありませんでした。しかしジェイムズには死体すり替えの肝となる指先のコーティングに気づかれてしまい、やむなく話しておくことになりました。

ジョディ・スターリングとアンドレ・キャメル

ジョディとキャメルはふたりとも赤井がキールに殺されたと思い込んでいましたが、来葉峠で安室の部下である公安に追い詰められた際、ふたりの乗っていた車の後部座席に潜んでいた赤井が登場。彼の生存を知ります。安室以外の組織の人間は赤井の死亡を疑っていませんから、ふたりにバレても問題ないということになるでしょう。

バーボン(安室透)

赤井の死を疑い、ベルモットの協力を得て赤井に変装して周囲の反応を伺いながら真実にたどり着いたのが安室です。「緋色シリーズ」ではコナンや工藤夫妻の策略によって沖矢=赤井だという確証を掴むには至りませんでしたが、何らかの手段で誤魔化したということには気づいているようです。

「そのハイネック…この場でめくりたい衝動に駆られてますが…今は止めておきましょう…」(『名探偵コナン』第90巻より引用)

単行本90巻File.6~File.9では、「緋色シリーズ」後初めて安室は「沖矢昴」と再会しましたが、やはり沖矢昴は赤井であると確信している節が見られます。

安室が沖矢の正体に勘づきながらもそれを見逃しているのは、彼も公安警察から組織に潜入しているスパイであるという事実を赤井に握られているからです。ふたりは互いに互いの秘密を握っている状態にあります。しかし、安室の赤井に対する憎悪は深く、もしかするとこれから先「沖矢昴」の正体が組織にバレる日が来るかもしれません。

以上、沖矢昴の正体と言動についてまとめました。これから先も沖矢昴として活躍するであろう赤井……果たして彼の正体が組織に知られてしまうことはあるのか?今後の展開に注目です。

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