ご存知、幕末の風雲児、坂本竜馬の一生を描いた作品です。武市半平太、岡田以蔵の2人を幼馴染という設定として、3人の交流・成長を軸に進んでいきます。薩長同盟という一大事業を如何にして竜馬が成し遂げたのか、ぜひご一読ください。
- 著者
- ["武田 鉄矢", "小山 ゆう"]
- 出版日
ご存知、幕末の風雲児、坂本竜馬の一生を描いた名作です。
原作は金八先生で有名な俳優・歌手の武田鉄矢。武市半平太、岡田以蔵を幼馴染として、後世にそれぞれ名を残すこの3人の交流・成長を軸にして物語は進みます。
生涯を通じ竜馬の考えに影響を与えた母親の教えと死、主君山内容堂・土佐の上級武士との確執、そこに至る当時の土佐の身分制度、幕府の形骸化した権威、勝海舟から学んだ民主主義・海軍の必要性などに、読者は竜馬と共に時に怒り、時に涙を流して共感すること必至です。
幼い頃は泣き虫で、勉学・剣術ともに道場で落ちこぼれだった竜馬。優しい母親想いのこの竜馬が、上士(藩祖山内一豊が連れてきた家系の家臣)というだけで、郷士(土佐土着の家系の武士、元々の長曾我部家の家臣、竜馬の坂本家もこれにあたる)を抑圧する土佐の中で、花見の際、禁止された日傘をしたことが引き金となって、後々母が死亡することになります。これを機に優しさに強さが加わって、自らの進むべき道を模索しながら成長していきます。
黒船来航を直接目撃したことから、今後の日本の取るべき道について考え始める竜馬。生涯の師である勝海舟と出会うことで新しい世界観を身に着けていきますが、その間、世の中も激動。尊王攘夷から開国、大政奉還へと進んでいく歴史のうねりの中で、幼馴染の半平太は一時土佐の頂点に近づくも、機を見るに敏な老獪な山内容堂の政略の前に、以蔵ともどもその若い命を散らします。
そうした無念・私怨を乗り越え、竜馬は時に協力、時に敵対しながらも様々な人たちとの様々な場所での交流(人物:千葉定吉・重太郎親子、勝海舟、中岡慎太郎、高杉晋作、桂小五郎、西郷隆盛、大久保利通、トーマス・グラバー、沖田総司、土方歳三、徳川慶喜、陸奥宗光、岩崎弥太郎、板垣退助、後藤象二郎など、場所:土佐、江戸、京都、長崎、薩摩、長州、上海など)を経て、剣術から海軍、海軍から海援隊、海援隊から国造りへ邁進していきます。具体的なツールとしては、刀から拳銃、拳銃から大砲、大砲から軍艦、軍艦から法律といった進化でしょうか?
こうして竜馬は、奇しくも自ら誕生日に、潜伏先の京都で大政奉還後のこれからという日に凶刃に倒れるまで、日本の明日を夢見て東奔西走し続けます。
- 著者
- ["武田 鉄矢", "小山 ゆう"]
- 出版日
- 2002-05-01
あらすじでも触れた優しかった母の死、その引き金となった土佐藩固有の身分制度の理不尽さ・山内容堂の日和見主義、強権に立ち向かうことになる、幼い竜馬や以蔵の姿、涙なくしては読めません。
また、竜馬が脱藩する際、それを察知した兄権平が一族とも重罪が課せられることを恐れ、事前に竜馬の刀を隠してしまうため、丸腰で出発しようとするところへ、乙女の上の姉お栄から名刀陸奥守吉行(元々お栄が離縁され際の形見の刀)を託されます。こののち竜馬は無事脱藩に成功しますが、お栄は一族の安泰を図るため自害、残った家族はこの死を伏せ、竜馬にも永く秘匿して暮らします。
この顛末を竜馬が手紙で知り、姉お栄を思い出す場面は当作品中でも最大級の泣けるポイント、涙なくしては読めません。
- 著者
- ["武田 鉄矢", "小山 ゆう"]
- 出版日
- 2002-07-01
以蔵の手引きで天井から女湯を覗いたり、半平太の案で廓に登楼したりする思春期の挿話があります。若者の気持ちを素直に表現していて、微笑ましい挿話です。結果、以蔵しか目的は果たせないのですが、半平太はこのときの経験から女性は後の妻、富一筋となります。
また、竜馬と幼少時からの知り合いであった、土佐藩家老の娘、年上の加代との初恋も描かれます。
両想いであるものの身分の違いから結ばれない運命の2人ですが、出会った当初竜馬は幼く、加代の側が竜馬へ好意を寄せていた形でした。当初は半平太が加代に対して一方的に想いを募らせていましたが、竜馬も成長につれて加代に惹かれていきます。2人が江戸で再会するエピソードがありますが、ここでの望まぬ輿入れをした加代の告白にも胸を打たれます。
幼少時の剣道対決で後藤象二郎に勝ちを収めたり、江戸遊学中の御前試合で並みいる強豪(最後は桂小五郎)を倒して優勝したりと大活躍の竜馬ですが、剣の立ち回りでなんといってもカッコいいのが、第10巻の次のシーンです。
半平太、以蔵が土佐で処刑されたことを京都で西郷隆盛の接待中に手紙で知った竜馬。接待先の旅籠前の船着き場で茫然としているところを、運悪く浪人を警戒中の幕府方見廻組の侍達に見とがめられて囲まれてしまいます。2人の死に動揺と憤りを隠せない竜馬は(本作では刀で人を傷つけることはそれまでなかった)手元の狂いからか、相手を傷つけてしまいます。その時の居合抜きの描写が文句なしにカッコいいのです。
また、同じ郷士の弟分、池田寅之進が、普段から横暴な上士山田広衛の仕打ちによって自害に追い込まれたの時は、仲間の郷士たちとともに、上士と戦を交える覚悟の竜馬。訪れた上士の陣屋で、敵の剣客、福富健次の刀を一撃で跳ね飛ばし、格の違いを見せつけます。この時の竜馬の剣裁き・立ち振る舞いも、惚れ惚れするカッコよさです。
- 著者
- ["武田 鉄矢", "小山 ゆう"]
- 出版日
- 2002-11-01
友情・成長・恋愛・勝利という王道要素をすべて盛り込だ上で歴史上の人物・出来事を描いた作品です。書きそびれてしまってましたが、第7巻での妻おりょうとの出会いの場面も見ものです。なにしろ新選組の沖田総司と同行中で、その足で越前の松平春嶽公を訪ねるという設定(以後の沖田に竜馬の人となりを強烈に印象づける挿話)です。