長野で農家の嫁をやりつつ、息子を育てつつ、俳優をしている山本裕子(やまゆう)のなまぬるい子育て連載。毎週水曜更新です。第6回に寄せられたお悩み相談は「息子が野菜を食べません」というもの。野菜に囲まれながら暮らしている農家の嫁、山本裕子はどう答える?
子育て中の皆様ならびにそうでない皆様、アンドおとっつぁんおっかさん、おつかれさまです、やまゆうです。
さっそくですが、身につまされるご相談がきておりますよ。
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2才8か月の息子が、野菜を食べません。
離乳食の頃は、なんでも食べてくれたので安心していたのですが、2才になる少し前くらいから食にもこだわりが出てきたようで、特に野菜をまったく食べなくなりました。
形が見えるのが嫌なのかと、細かく刻んでこっそり料理に忍ばせたり、うらごししてポタージュスープにしてみたり、いろいろ方法を探ってはいますが、やはり食べず。
手をかけて作っても、ぐちゃぐちゃにして遊んで、そのままぽいっ、と・・・。
ここ最近は、納豆とごはんとヨーグルトで生きていると言っても過言ではありません。
もう、ごはんを作るのが苦痛です・・・。 (P.N.味噌こしの狼)
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味噌こしの狼!あんた偉いわ!よう頑張ってはるわ!
ぜひそのお悩み、わたしも便乗させてください。
うちもほんっと、野菜、食べねえでやんの。
なんであんなに目がいいかなあのひとたち。とりあえず緑のものを全拒否。細っかいベジのかけらを、ちまちまちまちま、伝統工芸の職人かってくらいの繊細さをもって取り出していくのよ。こちとら老眼進んできてんのよ、もはや見えないんですけど!
お野菜食べさせましょう~ってさ、2才児検診でも3才児検診でも、そしてこれからもずっと指導されていくんでしょうけど、そしてもちろん当方も、少しでも摂取させようと努力はしてるんですけど。
「できるだけ刻んじゃって~カレーに混ぜたり~」
そんなもんとっくにやってるわ。そしたらカレー自体を食べるのやめよるんじゃ。
「お父さんお母さんが、おいしそうに野菜食べてるところを見せたり~」
うち野菜農家やぞ。あふれる野菜を、毎日山ほど、もしゃもしゃ食べてみせとんじゃ。なのに「それは大人の食べ物、我関せず」て顔しよるんじゃ。
せめてもの気休めに、ふりかけは「野菜ふりかけ」にして、アンパンマンジュースあげるなら野菜入ってるやつにして、と一応足掻いてますけど、それもう、ほぼ誤差の範囲でしょ野菜摂取量としては。
なので、うちもへたすりゃ白米とふりかけ、チーズと牛乳がお子の体の主成分ですよ。どやさ。
食生活でさらに親を追い詰めるのが、お子が最近覚えてしまった某マクドナルドの「ハッピーセット」。ハンバーガーとポテトとジュースと、そしておもちゃがついてる、ごきげんにハッピーな、セット。あああ、野菜の影も形もナッシン~~。
YouTubeでドライブスルーごっこ、とか見ちゃってから、もう夢中です。
明けても暮れても
「はんばぐぐ!」
「はんばぐぐ、たべるの!」
つって。惜しい「ハンバーガー」な。
わたしが小さいときも、マクド(関西呼び)は確かに、憧れの食べ物でした。ハンバーガーもポテトもシェイクも、ほんと何でも素晴らしくおいしかった。年に数回しか食べられなかったし。
弟の小学生のときの夢は
「おとなになったらハンバーガーひゃっこ買う!」
だった。かわいかったなあ~小学6年生まで冬でも毎日半ズボンだった、弟よ。そんなヤツも今年で40。肉食べすぎると胃もたれが・・・とか言うおっさんになってしまった。ガクー。
「セイくん(仮名)! そんなしょっちゅうハンバーガーばっか食べたら、アメリカ人になるよ!」
脅してみても、あまりぴんとこない様子。ていうか言うてる方もやや逆上気味ではありますが、それくらい、母は切羽詰まっているのです。
わたしももう、ごはん作りたくない!味噌こしの狼さん、いっしょに手に手を取って逃げませんか!ごはん作りのない世界へ!
ほんと、何なんだろなあ、この罪悪感。
お子が野菜食べない=食事作ってる母の怠慢、みたいなさー。
別に誰から指摘されるでもないのに、自縄自縛のさー。
どんな手つかってでもアタイが食べさせなアカン!この子、病気なってまう!みたいな強迫観念。
まあ、それだけお子の体が、母は、つか親は、常に心配、ということなんですけども。
だれか、人生のこの時期に野菜をほぼ食べなかったひとがその後どうなったか、詳細な統計出してくれませんか。健康状態のみならず、学力とか、出世具合とか含め。そんで万一、なんだよ案外みんなそれなりの人生送れてるや~ん、とかわかったら、もうちょっとわしら気が楽になるんじゃないか。
だいたいね、己の人生を振り返って、野菜、すき~~!とか、思ったことありました?こどものとき。
わたしは、なかったですよ(きっぱり)。
嫌い、ていうか別にすきじゃないっていうか、なくて全然困らんというか。
野菜より肉。断然、肉。肉だけ食べて生きていけたら。100歩譲って、魚。
でも、家のごはん、おかずだけでは腹ふくらまへんから、米つめとけ!ってなもんですわ。
野菜なんて、積極的に食べるようになったの、30越えてからかも。年取ってきて、体が必要とするものが変わってきたというか。
そんで、おまえはマドンナか!ってくらいボウルいっぱい食べるようになったのは、野菜農家に嫁いでからかも。ほら、家に余ってるしさ。そんで、おいしいしさ。
だからもう、ええやないの。お子、いま、ベジたべずとも。
人生100年時代、いつかベジたべる日も来るでしょうよ。
それまでは一応、食卓に野菜は常に並べつつ、横でぱくぱく食べて、おいしいおいしい、つって。書き置き残して母失踪より、楽しく食事の時間を過ごす方が、まだなんぼかましでしょうよ、同志・味噌こしの狼よ。
愛は食卓にある。
キューピー、いいこと言った!
そしてどうかそのうち、気まぐれにでも野菜かじりますように。
なのでそれまでは、うちの子はバンコラン、と思いましょう。
「だーれが殺した、クックロービン」クックロビン音頭でおなじみのご長寿マンガ「パタリロ!」のバンコラン少佐ですよ。あのひと、まったく野菜食べないの。1日3食、毎回ステーキとワイン1本なの。それでも体こわさずに凄腕スパイなんだから、やっぱりこういうのって体質なのかしらねえ~、とかなんとか、現実逃避しすぎか。
古いか。若い人は知らんかバンコラン。
ではまた来週。
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次回:1月17日水曜更新予定
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