夜寝て見る夢や、覚めて見る夢。「夢」にまつわる、おすすめの5冊

夜寝て見る夢や、覚めて見る夢。「夢」にまつわる、おすすめの5冊

更新:2021.12.13

例えば、夜寝ている時に見る夢。そして将来に対して抱く夢や目標といったもの。憧れや欲求。 「夢」という単語はいつしかたくさんの意味を連れ立ってむくむくと膨らみ、得体の知れないものとして時に目の前に立ちはだかるように感じることがあります。夢に破れたり叶えたり、夢を見る人、見ない人、いろんなタイプがあります。 その言葉のだだっ広さに、夢という単語を避けていた時代もあったのですが、私は小さい頃から、夢を見る人なんだと最近改めて思い出すことがありました。そして夜寝る時も夢をよくみるわたしです。

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すべて放り出して旅に出てしまいたいという妄想

著者
津村 記久子
出版日
2011-04-15
生活の為に働き時間が過ぎていく毎日に嫌気が差し、世界一周旅行に憧れる29歳工場勤務のナガセ。

こういうことはよくある、と思うのです。充分なすき間のない日々の中、全部放り出して旅に出てしまいたいという妄想。夢。そして、それを掲げるだけですでに自由を手にしたかの様な解放感をナガセは享受していたんじゃないでしょうか。

けれど、世界一周旅行の資金をついに貯めることができたナガセが、結局旅に出たのかどうかは本の中では分からない。

私は、出なかったんじゃないかと思います。物語が進むにつれどんどん逞しくなっていったナガセは、最後にはもう、旅に出なくとも良くなっていたような気がするのです。

現実と夢との区別が付かなくなった猫

著者
江國 香織
出版日
夢に出てくる、ピンクの壁のある場所……を夢見て旅に出る猫のハスカップ。夢に見た場所に辿り着いて現実との区別が付かなくなったハスカップ、最後は一体どうなるのでしょう。

絵本なので絵と一緒にハスカップは進んでいきますがとても可愛い色と絵です。字体もファンタジー。ハスカップはどうしてもピンクの壁のあるモンテロッソに行かなくちゃいけなかったのです。

そういうことって、ありますね。私もどうしても行かなくちゃいけない所ってあるし。

「鍵のない夢を見る」人たちのお話

著者
辻村 深月
出版日
2015-07-10
とても痛いお話でした。痛いところを突かれるお話。ここまで個人の領域に入ってこられるような感覚は、恥ずかしくなります。だけど物語なんですよね、不思議です。

タイトルの、鍵のない夢ってなんだろう、でも何だか惹かれる響きだなぁと思って読み始めたんですが、特に「芹葉大学の夢と殺人」という章がぐさりと来ました。同じ大学に通い、恋人同士である雄大と「私」。雄大が夢だと語る自身の将来像は、他者を寄せ付けない絶対的な正義として、2人を苦しめているみたいに見えました。そしてついに雄大は他人を殺めてもしまいます。最初からこうなるのではなかったはずだけれど、「鍵のない夢を見る」人たちのお話です。

夢を語る強力なエネルギー、忘れられない記憶

著者
宮本 輝
出版日
1998-11-30
工業デザイナー、写真家、医者、美容師。ひょんなキッカケから、それぞれに夢を持った4人の男女が一緒に暮らすことになります。その様はまさにひとこと、青春、という感じです。

「私はあの一九八〇年の初夏から一九八二年の春までの二年間のことを思い浮かべるのが好きだ。」(本文冒頭より)

この一文にすごく共感してしまいました。思い出したからって、何をどうしたい訳ではないけれど、ただ思い浮かべるのが好きという感覚。

そんな記憶があるだけでその先ずっと生きていけると思うんです。夢を語り邁進することのエネルギーはとても強力で、忘れられない記憶になるものと、思います。

靄に包まれたようなファンタジー感

著者
村上 春樹
出版日
2005-02-28
2つの世界を交互に行き来するパラレルワールドな小説は、初めて読んだ時には不思議な感じがしました。少年カフカと老人ナカタさんの視点でまったく別のストーリーが交互に進んでいくのですが、カフカが時おり見る夢はこの物語の中ではとても重要なことなのですが、現実と夢の世界の境界もなんだか曖昧なところが素敵です。

そしてこの作品に限らず、村上春樹さんの小説はいつも、夢の中みたいだと思うのです。靄に包まれたようなファンタジー感。いろんなことの辻褄が少しずつ合わないのに、まったく疑う余地がないような感覚。は、ちょうど夜寝ていて夢を見ているときの感じにすごく似ています。

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  • 本と音楽

    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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