心動く3冊。様々な感動を【橋本淳】

更新:2021.12.5

あけましておめでとうございます。橋本淳です。 2018年ですね。これを書いてるのは2017年です。 まだ新年あけたという実感がない中で、この文章を書いていることを薄々感じながら、読んでください。 新年を迎えるというのは、本当に清々しい気持ちになりますね。新しいノートを使い始め、今回こそは綺麗に使うぞ、と心に誓っては、二週間後には忘れる学生時代を思い出します。 違うか、いやでも、近いか。 この新鮮な気待ちを一年間キープしつつ、初志貫徹したいなと。 そして皆様にとってもいい年になりますよう。 さてさて。 新年一発目は、やはり正月ボケになっている心と頭をすっきりする、感動作を。 テレビにも飽きてネット配信も観まくったあなたには、ぜひ読書を。 今年もよろしくお願いします。

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旅屋おかえり

著者
原田 マハ
出版日
2014-09-19

丘えり子、通称“おかえり”は旅番組のリポーターをしていた。有名な番組ではなく、細々とひっそりと放送している番組。元アイドル。“売れない”という形容詞が付いてしまう肩書き。事務所も社長と事務員とおかえりという最小人数の小さな会社。その細々した番組だけで、なんとかやっていた……のに。番組中のあることをきっかけに、唯一のスポンサーである「江戸ソース」を怒らせてしまい、番組は打ち切りに。途方にくれる面々。路頭に迷っているなか、奇跡のような出会いから、おかえりたちは「旅屋」という何とも怪しげで、しかし未知な輝きを持つ、仕事を始めることに。

少なからず、芸能の世界に身を置いてる自分には、ガシガシとビシビシと伝わるものが多かった。それを抜きにしても、ストーリーと人物の魅力というか奥行きさに先導されて気づけば、最後のページだったという感覚でした。原田マハさんの描く世界観に今回も見事にハマってしまったなぁと、至福の時間でした。皆様もぜひ“おかえり”と旅をしてみてはいかがでしょう。

心に刺さった一節

「本日休業」の四文字が、あっというまに風の中に消え去った。

火花

著者
又吉 直樹
出版日
2017-02-10

メディアにも多く取り上げられ、誰もが知る有名小説ですね。恥ずかしながら、今読んでみました。

売れない芸人「スパークス」徳永は、花火大会会場で花火を目指し歩いている人たちに向けて漫才をしていた。スタンドマイクは漫才用のものでないため、相方とマイクを頬張るかのように唾を飛ばし合っているが、肝心の客は立ち止まることなく観覧場所へと向かっていく。なんとか自分たちの持ち時間をやり過ごし、舞台から降り、最後のコンビが、僕とすれ違うときに「仇とったるわ」と憤怒の表情でつぶやいた。それが先輩芸人であり、徳永の師となった神谷との出会い。神谷は天才肌の芸人、周囲に媚びることがなく、常に戦う姿勢を崩さない。笑いとは人間とは何かを、スピード感あるやり取りで勢いよく問う。

徳永、神谷のスピード感ある、ボケとツッコミのやり取りや、徐々に別の道を進む2人の切なさが身に染みる。誰もが感じたり、持つものを、代わりに小説の中で叫んでくれているような感覚に陥りました。時に気持ちよく、時に息苦しくなるのは、それだけこの作品が僕の心をかき乱していたのかなと。一気読みの一冊。

心に刺さった一節

いつの間にか、僕達は随分と遠くまでやってきた。

モルヒネ

著者
安達 千夏
出版日
2006-07-01

在宅医療の医師、真紀は婚約していた。そんなところに、7年ぶりに現れた元恋人のヒデ。彼は、ピアニストとして海外に行っていたはずだが急に現れた、その理由とは……。やがてヒデは末期の癌であることが発覚する。元恋人の出現だけでなく、その発覚により真紀は心を惑わせる。

冒頭のシーンから、空気感が独特でした。なんだか薄い靄がかかっているような幻想的な印象を勝手に抱いた。会話のリズムが、どの小説でも感じない面白味があり、そういう部分から引き込まれる。内容は語らずに、まず読んでほしいい作品です。感動の一冊。

心に刺さった一節

センテンスを切り、ゆっくりと事実が告げられる。

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