岡本倫のおすすめ漫画5選!アニメ化された作品『エルフェンリート』など

更新:2021.11.25

唯一無二と言ってよい奇抜な作風で評価される岡本倫。代表作の『エルフェンリート』などで、読者のハートをつかんできました。今回はそんな彼の魅力を余すところなく堪能できる5作品をご紹介しましょう。

ブックカルテ リンク

岡本倫、心をえぐるエログロSFのマエストロ

岡本倫(おかもとりん)は和歌山県出身の漫画家。2000年の「ヤングジャンプ増刊 漫革」に後の代表作となる『エルフェンリート』の読み切り版が掲載され、商業デビューを果たしました。

学生時代は神奈川大学の漫画研究会に所属するも、芽が出ずにプロの道を断念。一時は玩具メーカーのバンダイに就職して企画に携わり、PCゲーム「時の国のエルフェンリート」の製作に携わります。これ自体は育成ゲームなので、漫画『エルフェンリート』との関連はありませんが、思い入れのあるタイトルであることがうかがえますね。

作風はほのぼのしているかと思えばグロがあり、ギャグも鬱もエロもあって、読者の意表を突く展開が得意。また、時代性を反映する小物を描写しない、というこだわりを持っていて、10年後や20年後に読まれても古く感じられないようにしているそうです。

普遍性のある物語を幅広い世代により長く届けようとする工夫からか、作品は国外でも評価されています。

この記事では代表作である『エルフェンリート』や『極黒のブリュンヒルデ』を含む5作品の魅力をご紹介していきましょう。

岡本倫の代表作!新人類の少女が見る幸福な日常と残酷な現実『エルフェンリート』

とある離島にある国立生態科学研究所。その地下20メートルに、貴重なサンプルが厳重に封印されていました。現行人類を滅ぼす可能性をもつ突然変異体、「ディクロニウス」です。このことは、国家レベルの機密事項です。

研究所室長の蔵間は、「ルーシー」と呼ばれる個体を研究のために別の施設へ移送することを計画していました。しかしそんな矢先、ある事故が起きてルーシーが脱走してしまうのです。

一方、大学進学のために鎌倉に引っ越してきたコウタという青年。由比ヶ浜を歩いていると、浜辺でひとりの少女と出会いました。衣類を身に着けず、「にゅうにゅう」としか話すことができないようです。コウタは彼女を「にゅう」と名付け、下宿先へ連れ帰りました。

この少女こそ、研究所から脱走したルーシー。逃げる途中で頭に衝撃を受けたことから多重人格となっていたのです。

しかしコウタはそんなこと知る由もありません。少女と暮らすうちに、人類の存亡に関わる大騒動に巻き込まれていくのでした……。
 

著者
岡本 倫
出版日
2002-10-18

本作は2002年から「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた作品。2004年にテレビアニメ化され、その衝撃的な内容から大きな話題を呼んだので、ご存知の方も多いでしょう。

タイトルはドイツ語で「エルフの歌」という意味。これだけ聞くとメルヘンチックで、登場人物たちもハーレムものかと見まごうキャッチーなキャラクターなのですが……

そんな第一印象からは到底想像できないような、とてつもなくグロテスクな描写が特徴の作品なのです。

主人公のルーシーは、当初は人格がスイッチしたことで幼児退行したかのような状態。幼さを前面に押し出したマスコットのようなポジションでした。しかしその正体は、「ベクター」と呼ばれる見えない腕を持ち、その力で人体を軽々と引きちぎるような危険な存在だったのです。
 

一見重要そうなキャラクターたちが、彼女をはじめとした「ディクロニウス」によってあっさり惨殺されていきます。

平時はラブコメの日常生活が展開されますが、根底にはハードなSF設定があり読みごたえたっぷり。シリアスとラブコメのギャップが凄まじく、先の読めないストーリーにどんどん引き込まれていきます。

ハードでグロテスクでちょっとエッチ。他に類を見ない唯一無二の作風で世界的にも人気の高い作品です。
 

『エルフェンリート』については<『エルフェンリート』可愛すぎ…。胸キュンエログロ漫画のネタバレ紹介>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

金メダルのため、性別を偽り空へ翔ぶ!『ノノノノ』

スキージャンプの有望選手である加東が練習をするということで、妙高高原には多くの人が集まっていました。期待に違わず、見事なジャンプを披露します。
 

そこへ、水を差すひとりの少年が。中学3年生で野々宮悠太(ののみやゆうた)と名乗る彼は、加東の記録を圧倒的に上回る記録を叩き出したのです。その凄まじい才能に、一気に注目を集めます。

しかし野々宮にはある秘密がありました。実は本名は野々宮ノノといい、女の子です。悠太は彼女の双子の兄の名前でした。

かつて金メダル候補と期待されていたのにオリンピックの舞台で失敗し挫折してしまった父親と、亡くなった兄のために、ノノは男装してオリンピック出場と金メダルを目指すのです。
 

著者
岡本 倫
出版日

本作は2007年から「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた作品。『エルフェンリート』に続く岡本の第2作です。作風はSFからがらっと変わり、スキージャンプを巡る青春スポーツ漫画となっています。

まず注意しなければならないのが、本作を連載していた当時は、女子スキージャンプがまだオリンピックの種目に正式採用されていなかったということ。実際には2011年に採択されていますが、当時は女人禁制の男子スポーツとして描かれ、現在の状況とは若干の差異があります。

主人公のノノはスキージャンプで頂点を極めるため、性別を偽り挑んでいくのです。彼女は非常に意志が強く、性別を隠しながらも健気に、そして気丈に振る舞います。ジャンプにかける情熱は計り知れません。そしてその分、彼女の不遇な状況が読者の胸に突き刺さるのです。

亡くなった兄の悠太も、かつてノノ同様にスキージャンプを習っていました。しかし妹ほどの才能は無く、それなのに性別のせいで彼女がくすぶっていることに追い詰められていきます。父親からも見放された彼は、自身の夢と希望をすべてノノに託して自ら命を絶ってしまったのです。

登場人物たちに壮絶な試練を与えるところはさすが岡本作品。巧みに描かれるスキージャンプの世界をぜひ体験してみてください。
 

『ノノノノ』については<『ノノノノ』結末までの見所ネタバレ紹介!鬱展開も問題になったスキー漫画?>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

天文台には世界を終わらせる魔法使いが住んでいる『極黒のブリュンヒルデ』

主人公の村上良太は高校生。10年前に不慮の事故で死なせてしまった幼馴染の少女、「クロネコ」のことをずっと引きずっています。宇宙人の存在を信じていた彼女の想いを証明すべく、NASAの研究員になることを目指し、天文部に所属しながら猛勉強をしています。

そんなある日、高校2年生となった彼のクラスに、黒羽寧子(くろはねこ)という少女が転校してきました。亡くなったクロネコによく似ていましたが、もちろん同一人物のはずがありません。

寧子は「魔法使い」と呼ばれる身体を改造された超能力者で、とある研究所から脱走してきていました。やがて彼女とともに逃げ出した仲間の少女たちもやってきて、良太が使っている天文台を根城にするのです。

そしてそこへ、研究所の刺客たちが次々と襲い掛かってくるのでした……。

著者
岡本 倫
出版日
2012-05-18

本作は2012年から「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた作品です。2014年にはテレビアニメ化もされました。

いわば第2の『エルフェンリート』ともいえるような、日常あり、ギャグあり、エロあり、鬱あり、グロありの物語。さらに派手なアクションと能力バトルの要素も追加された豪華版だといえるでしょう。

見どころは、読者のツボを刺激してくる魅力的な女性キャラと彼女たちが織りなすコメディ展開、そしてそこから打って変わってくり広げられる陰惨なSF展開のギャップです。

たとえばヒロインの寧子は、黒髪グラマーな知的美少女ですがどこか世間ずれしていてポンコツぎみ。魔法を使うと、その反動で記憶の一部が欠落してしまうのです。刺客に狙われているため戦う運命にあるのですが、魔法を使えば使うほど……。

さらに彼女たち魔法使いは、全員体内に自壊プログラムが施されており、それを回避するための薬を毎日摂取する必要があります。このように、どこか脱力系ななかに恐ろしくハードな設定が盛り込まれているのです。

また、『エルフェンリート』にもエロティックな場面がいくつかありましたが、本作はさらに輪をかけた下ネタも登場。おまけに血飛沫噴出、内臓こぼれ落ちるグロも絶好調です。細部に仕掛けられた伏線でSF要素もパワーアップしており、岡本作品好きはとことんハマってしまうでしょう。

『極黒のブリュンヒルデ』については<『極黒のブリュンヒルデ』結末までの3つの見所を考察した【ネタバレ注意】>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

エロスが爆発する異世界ハーレム!『パラレルパラダイス』

主人公の太多陽太(ただようた)は、いたって普通の男子高校生。誇れることは剣道の県大会で準優勝した経験があるくらいです。

ある日、学校で奇妙な人物を見かけたと思ったら、そのまま襲われて3階から転落。目が覚めると、見知らぬ土地にいました。

そこはまるでファンタジーの世界のような惑星で、陽太は王国の女騎士であるルーミと、彼女が連れている3本足の喋る鳥ジーニアスと出会いました。

ジーニアスによると、この世界には数千年間「男」が存在しておらず、女性は20歳を迎えると処女のまま死ぬというのです。

異世界に飛ばされてただひとりの男となった陽太は、死にゆく女性たちを救うため、その惑星を支配する「嫉妬深い神」を倒すことを決意するのでした。
 

著者
岡本 倫
出版日
2017-08-04

本作は2017年から「週刊ヤングマガジン」で連載されている作品。グロテスクなSF、社会派スポーツ漫画、ダークファンタジーに続く岡本の4作目は、なんと異世界転生モノでした。

主人公以外は男性が存在しないという設定なので、登場するのはほとんど女性。陰鬱さとグロは比較的控えめですが、なによりその突き抜けたエロ表現と下ネタに驚くかもしれません。

美人ぞろいのキャラクターですが、特に目を引くのはやはりヒロインのルーミでしょう。騎士なだけあって気丈な性格をしていますが、なにぶん男性への免疫が皆無。陽太に触られるだけで腰砕けになり、発情してしまうのです。他の青年漫画であれば寸止めの描写で終わるところも、ブレーキをかけず行為に及んでしまいます……。

いまのところコメディ成分とエロスの汁がマシマシのファンタジーですが、先の読めないジェットコースター展開がウリの岡本。今後どのように進んでいくかは、読み続けないとわかりません。

『パラレルパラダイス』について紹介した<漫画『パラレルパラダイス』がエロすぎる!魅力を最新3巻までネタバレ紹介!>の記事もおすすめです。

岡本倫の魅力をギュッと凝縮!読みごたえ抜群の短編集『Flip Flap』

健全な男子学生の主人公は、クラスメイトの藤崎真子になぜか惹かれています。彼女は容姿端麗ながらも変わり者で、全裸徘徊や、猫に変身していたという噂すらあります。周りの友人とも距離を置いていました。ある日少年も、彼女が火事の現場に佇みカラスに変身するところを目撃してしまうのです……。

世界一のピアニストを目指す少女。高名な指揮者の父とピアニストの母からの期待を背負い、必死に練習に取り組んできました。ところが8歳の時、ポーランドでおこなわれたコンテストで天才ピアニストのアキラと出会い、運命が変わっていきます……。

著者
岡本 倫
出版日
2014-07-18

本作は2008年に出版された、岡本のデビュー作を含む未発表作品が収録された短編集です。2014年には内容が追加された新装版も発売されました。

オムニバス短編集ということで、それぞれの話に繋がりはありません。しかし岡本特有の要素は、全作品から感じ取ることができます。おかしくて、奇妙で、ちょっと泣けて、そしてもちろん欠かせないエロとグロは、初期作品から健在だったのですね。

全体的にSFテイストが多く、小粒ながらも読ませる話ばかりです。なかでも気になるのは、代表作『エルフェンリート』と同タイトルの作品でしょうか。中身はまったく別物で、荒唐無稽な部分もありますが胸を打つ感動作になっています。

岡本倫ワールドにより深くハマりたい方におすすめの一冊です。
 

いかがでしたか?繊細にして大胆、荒唐無稽にして破天荒な独自の世界を切り拓き続ける岡本倫の魅力をお伝えしました。発表年代によって絵柄にムラがあるため、避けていた方もいらっしゃるかもしれませんが、1度読んでしまえばハマること間違いなしですよ。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る