スキーのなかでもジャンプ競技に特化して描かれたスポーツ漫画が『ノノノノ』。作者は『エルフェンリート』などで有名な岡本倫です。 スポーツ漫画ならではのアツい展開はもちろん、作者の作風である鬱展開やエロチックなシーンも見所の本作。この記事ではその魅力を徹底解説いたします。ネタバレを含むので、気になる方はスマホアプリで読んでみるのもおすすめです。
スキージャンプ界に、無名の新星・野々宮悠太が現れます。しかし、その名前は実は双子の兄のもの。本当は野々宮ノノが本名で、性別は女子、つまり男装していたのでした。
本作の連載当時でスキージャンプはオリンピック競技となっていましたが、男子しか出場できませんでした。(現実での女子スキージャンプオリンピック競技認定は2014年~。本作の連載終了は2011年)
女子であるノノはその才能を活かしてオリンピックで金メダルをとるために、双子の兄に男装することとなります。
- 著者
- 岡本 倫
- 出版日
ある日、有望選手である加東のジャンプを見たノノは彼よりも飛べると本人に言い、2人は勝負をすることになります。そしてバッケンレコード(ジャンプ台での記録)をはるかに超えるジャンプに成功するのです。
その後ノノはウインタースポーツ強豪校である、奥信高校に悠太として入学。そこで天才ジャンパーである天津暁や世界フィギュアで金メダルをとった興梠みかげをはじめ、さまざまなキャラと出会います。果たして彼女は正体を隠しきって金メダルをとれるのでしょうか?
男子としてふるまわなくてはいけない苦労を味わいながら、さまざまなキャラと戦い、時に助け合いながら試練を乗り越えていく姿に圧倒される作品です。
本作品の作者は岡本倫です。和歌山県出身の男性漫画家で、2000年1月に読切版『エルフェンリート』が掲載され漫画家としてデビューします。その後2002年6月から同作は連載を開始し、2004年にはアニメ化もされました。
『エルフェンリート』については以下の記事で紹介しています。
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2002年から約3年間、「週刊ヤングジャンプ」で連載された『エルフェンリート』。ミュータントと人類が描くドラマと、双方の存亡を掛けるストーリーです。国内だけでなく、海外でも高い評価をされています。ここでは作品全体と登場人物について紹介・考察します。
- 著者
- 岡本 倫
- 出版日
- 2002-10-18
『ノノノノ』は2011年で連載終了となりましたが、その後も彼ならではの鬱展開やサービスシーンにはファンが多く、『極黒のブリュンヒルデ』や『パラレルパラダイス』などヒット作を世に出しています。
特に鬱展開には、主要なキャラが非業の死を遂げるなど、物語を大きく揺るがす予測不能な魅力があります。しかも単に死を遂げて終わりではなく、死に意味を持たせるなど工夫がされているので、読んでいて考えさせられるのです。
グロイともいわれている展開も多いですが、綺麗な線で描かれた可愛いヒロインが、気持ち悪い、痛そうな状況かに強いられる様子は絶妙な魅力でもあります。
岡本倫のおすすめ作品をこちらの記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
岡本倫のおすすめ漫画5選!アニメ化された作品『エルフェンリート』など
唯一無二と言ってよい奇抜な作風で評価される岡本倫。代表作の『エルフェンリート』などで、読者のハートをつかんできました。今回はそんな彼の魅力を余すところなく堪能できる5作品をご紹介しましょう。
スキージャンプはオリンピック競技でもあるため、多くの人が知っているでしょう。しかし細かいルールなどは知らない人が多いのではないでしょうか。そのため作中では競技のルール解説を細かく入れるなどの工夫が見られます。
- 著者
- 岡本 倫
- 出版日
- 2008-06-19
また、本作では各キャラが競技のルールを説明しているのも特徴です。一人語りで説明するのではなく、シーンごとに出てくるキャラ同士が話をしながらルール説明をしているので、物語の語り部からの解説よりもストーリーの流れを分断せずに自然に知識を取り入れることができます。
ルール説明を読んでいると疲れたり、読み飛ばしたりしがちな人も多いなかで、この工夫は頭に入りやすく、テンポよく読み進められるでしょう。
また、ジャンプシーンで流れる会場アナウンスによって、緊張感や緊迫感が増すのも、現実感を取り入れたことならではの演出でしょう。しかし、こちらも必要最低限まで減らす工夫がされているので、ストーリーの邪魔をしません。
主人公のノノは、オリンピックに出場するために男装しています。主人公ということで個性的なのですが、そのほかにも個性的なキャラがたくさん出てきます。
- 著者
- 岡本 倫
- 出版日
- 2008-09-19
たとえば天津暁は、負けるくらいなら死んだ方がマシというほど負けず嫌い。ノノと同学年でライバルとなるのですが、スキージャンプ一家に生まれたサラブレットということで、その性格とともに選ばれたものゆえの存在感もあります。
加えて面白い設定が、女性アレルギーだということ。女性がいるとじん麻しんが出てしまうのですが、男装したノノと初めて顔をあわせたときにもじん麻しんが出ます。じん麻しんは惚れた女性には出ない特徴もあるので……。この設定にも注目です。
また、尻屋潔はスキー部の先輩ですが、尻屋を英訳した「アナルショップ」というあだ名があり、それで呼ばれるとかなり怒ります。美少女の興梠みかげをおとすために、A4用紙12枚にシミュレーションを構成するなど変人っぷりを見せています。
スキーの能力以外にも魅力的なキャラが多いので、その設定もお見逃しなく!
また、本作は岡本の特徴である鬱展開もやはり見所です。
ノノの父はスキージャンプ選手として活躍していましたが、金メダルを逃して多くの人にパッシングされます。子供に夢を託そうとノノの双子の兄・悠太をジャンパーとして育てようとし、その教育はあまりにも厳しいものでした。
- 著者
- 岡本 倫
- 出版日
- 2008-12-19
さらに不運なことに、スキージャンプの才能は妹であるノノに受け継がれていました。この当時女子はオリンピックに出場できなかったので、父は自暴自棄になってしまいます。
また、ここまでの描写もかなり心にくるものなのですが、ここからがまた悲惨。悠太は厳しいスパルタ教育に堪えていたものの、大会で85位という結果に終わってしまい、父から諦められたことで発狂してしまい……。野々宮家の複雑な過去は読んでいると辛くなるようなものです。
しかし、そんな壮絶な生い立ちを抱えているものの、ノノは持ち前の強さでいろいろな壁を乗り越えていきます。鬱展開があるからこそ、彼女がひたすら壁に立ち向かう強さが引き立ち、読者にも勇気を与えてくれるのです。
本作品の最終回は、掲載雑誌と単行本にて内容が異なります。掲載雑誌の最終回では、女子であることがバレるきっかけが、本当にちょっとしたアクシデント。そのときのシーンが非常に衝撃的で、男性の読者であれば、興奮間違いなし。
しかしここまで隠しとおしてきた設定がそれだけで終わるのか、というのが疑問に残るラストでもあります。
- 著者
- 岡本 倫
- 出版日
- 2011-02-18
また、単行本でも女子であることがバレるという展開が漫画作品では反則すれすれともいえるオチ。賛否両論の最終回といわれていますが、重くならない読後感がいいともいえるのではないでしょうか。
また、なにより本作はスキージャンプを知るよいきっかけとなる作品です。個人競技ですが、まわりの人のはげましもありベストな状態で競技ができることも描かれている素晴らしい内容となっていますので、ぜひその過程も含め楽しんでみてください!