終わりの物語

終わりの物語

更新:2021.12.2

こんにちは、ふくろうず内田です。 バンドは解散しましたが、「ふくろうず内田」として始めたホンシェルジュだったので、最後も「ふくろうず内田」として終えたいと思います。 そんなわけで今回が最終回。 最後にわたしが紹介したいのは「終わりの物語」。 過去に紹介した作品から、一冊だけ選んでみました。 改めて紹介させて下さい。

泡の子

密やかな結晶

著者
小川 洋子
出版日
1999-08-10

海に囲まれた不思議な孤島。

そこでは「物」は順番に「消滅」していきます。

例えばバラ。

「バラ」の「消滅」が始まると、「バラ」の姿形は勿論、バラにまつわる思い出全ても人々の心から「消滅」してしまいます。

そんな悲しい「消滅」が次々と起こる中で、物の「消滅」が訪れない人間も、ごくわずかにいます。

「消滅」の訪れない人間はそのことがバレてしまうと秘密警察に捕まってしまうため、記憶を失ったようなフリをして、目立たぬよう生活しています。

ある日、主人公である小説家の女は、担当編集の男から自分が「『消滅』が訪れない人間」であることを告白されます。

告白を受けた主人公は、彼を秘密警察から匿うことを決めます。

そして、二人はやがて「消滅」という運命そのものに抗うことを決めます。

悲しくて重苦しい灰色の世界に、わずかな希望がポツポツと灯って、また消えていくような、そんな儚い物語です。

わたしたちの作ってきた音楽も、いつかは「消滅」するんだと思います。

ビートルズの音楽のように、100年後も残っているとは思えません。

でも、完全に消え去ってしまうその日まで、ほんのわずかにでも良いから誰かの心の中でそっと輝いていて欲しい。

そう願っています。

そうしたら、わたしはバンドをやってきて良かったなあと思えます。


それでは、皆さん。

今まで本当にありがとうございました。

また、どこかで会いましょう!

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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