人生がマジでヤバかったときに読んだ、おすすめの3冊

更新:2021.12.13

QOOLANDというロックバンドでヴォーカルをやっています。5年間、活動して来ましたが、本当に山あり谷ありでした。 結成3本目のライブを自主企画にして、いきなり赤字が13万円になったり、PV撮影で監督が失踪したり、雪で車が止まったりと、大変なことは盛りだくさんでした。しかしコンテストで優勝したり、クラウドファンディングが成功したり、無所属でメジャーデビューできたりと、それ以上に素晴らしい経験も浴びてきました。

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それらを掴むことができたのは、苦しいときに背中を押してくれた名書があったからです。人生の先輩たちが書き記してくれた言葉は、優しくも厳しく、背筋を正してくれるものばかりでした。そのなかでも今回は「僕の人生がマジでヤバかったときに救われた3冊」をご紹介します。

「やっている意味」を再確認する

著者
岩田 松雄
出版日
2012-10-08

この本に出会ったとき、僕たちは異常なペースでライブをしていました。1カ月に10本以上の公演を半年近く続けていたり、5日間連続でステージに立ったりと、あきらかに自分たちのキャパシティを超えるスケジュールをこなしていました。

毎日のように歌っていたので、身体に諸々の変調がありました。泊まる場所がネットカフェ中心だったのも原因だったのかもしれません。僕自身、もともとインドア派なので、そんな体育会系の活動がつらくなかったと言えばウソになります。むしろ、心が折れかけた日もありました。自分で増やした公演数で折れているというのは、今思えば情けない限りです。

巡業中、カバンにこの『ミッション』を入れていました。ライブが終わり、眠る前に少しずつ読み進めました。ネットカフェの明かりに照らされた「どうやって働くかではなく、なんで働くか」という言葉は、今も僕の行動理念になっています。「なんで働くか」は、もっと深く突っ込めば「なんで生きているか」ということかもしれません。つまりは目的です。

僕たちには、それだけの公演数をやっている目的がありました。「何としてでも報われたい」「一人でも多くの心を動かしたい」「人をインスパイアできる人になりたい」。それらを実現させたいと4人とも思っていました。それらは僕たちにとってのミッションでした。

乾燥するフラット席でページをめくるたび、強い言葉がどんどん飛び込んできました。

《そもそも何のために存在しているのか》
《ミッションの実現に人生を賭けていくこと》
《自分自身の火花が散っている瞬間を見逃さないこと》

各章に散りばめられた言葉は、独特の言い回しでユニークに、だけど凛とした意志を持って書かれています。読み進めていくうちに、僕の中で元気の源泉みたいなものが沸き上がってきました。そして、やっているスケジュールが自分にとって、決して間違いではないものだと信じられるようになりました。

僕たちはライブのペースを保ったまま、その4カ月後にロッキング・オンのコンテストに優勝し、初めてROCK IN JAPAN FESTIVALに出演することができました。乏しい実力でそれができたのは、ひたすら重ねた公演本数による馬力だったと信じています。

オリジナリティとは何ぞや

著者
午堂 登紀雄
出版日
2010-01-29

今年の8月に「31日連続でコラムを書く」という仕事を頂きました。僕は日刊でブログもやっているので、この夏はかなりの文章を書きました。数えたら、合計12万1229字でした。400字詰め原稿用紙に換算すると300枚以上になります。

今思えば、よくやりきれたなと思います。作家の方や、文章を書く才能がある人ならば、難しくはない案件かもしれません。しかし、僕のような素人にとっては「そんな量を書いたこともないし、実際にやれるかどうかもよく分からない」というレベルでした。もともと文章を書くのは好きですが、31日×2記事=62記事ものコンテンツを用意できる能力が自分にあるかは、疑問でした。

ですが、どうせやるなら、読んでくれる人の心を動かせるようなものが書きたかったので、連載が始まる前に、文章術について書かれた本を5冊ほど買いました。しかし、それらは【術】の域を出ませんでした。正しい日本語の使い方や文章作法について書かれたものが中心で、どうも僕が求めているものとは違うように感じました。

連載が始まり、わりとすぐにアイデアが出なくなりました。連載10日ほどで、書けなくなってしまいそうでした。

そんなとき、書店でこの一冊に出会いました。1ページ目から、「情報をどうやってインプットし、どうやって価値のあるコンテンツをアウトプットするか」という言葉がありました。これはまさしく、僕が欲しかったものです。

連載中、この一冊が大きな支えになりました。書けなくなったり、アイデアが出なくなったとき、この本を開いて、なんとかやってこれました。

《ありふれたものに違う解釈、違う教訓を見いだす》
《自分の体験を一般原則化する》

など、丁寧な文章でつづられる午堂先生の発想術は、文章を書く以外にも言える、創作の本質です。音楽を作る際も、まったく同じだと思います。

僕はずっと、同じ情報に触れても人と違う切り口が出せる人間になりたいと思っていました。2016年は改めて、「オリジナリティとは何か」ということを、深く鋭く考えさせて頂いた夏になりました。

次の瞬間、死んでもいいように

著者
ジョン・キム
出版日
2012-05-25

QOOLANDは所属事務所を辞めた時期があります。昨年、2015年の夏に独立しました。独立と言えば聞こえはいいですが、ワガママと社会に順応できなかった、自分自身の未熟さゆえの末路だったように思います。

そして、辞めるタイミングで、僕は自分自身のコントロールを完全に失っていました。先々がどうなるか分からない不安、リリースが保障されていない活動の怖さに押しつぶされそうでした。いつもイライラしたり、悲しくなったりを繰り返していました。しかし、事務所のなかでうまくやっていくモチベーションが無いのも事実でした。【辞める】と自分で決めたことなのに、人間として自分のレベルが、【独立】に追いついていないことを、ひどく実感しました。

そうして途方に暮れていた頃、新宿の書店で、この『媚びない人生』に出会いました。タイトルに惹かれ、パラパラとめくっていたとき、あるページで親指がとまりました。そこには「その選択が生み出す結果に対して責任を負う決意に基づくのであれば、その選択はその時点で常に正しい」とありました。

不思議な感覚でした。まるで萎んでいた心に、後ろから気合いを注がれたように感じました。立ち読みで拾った、たった一つのフレーズに、救われた瞬間です。その一冊をすぐにレジに持っていき、一日のうちに読み終わりました。そんな本との出会いは久しぶりでした。一生に何冊も無い、僕の人生にとって大切な一冊となりました。

《居心地の良さを警戒せよ》
《クリエイティブは事前許可無しに生まれる。事前許可無しで動ける人間になれ》
《不満を自分の原因に昇華できたなら、不満は不満でなくなり、成長の糧になる》
《内面をコントロールできなければ、他者や社会を、まっすぐに、正しく見つめることはできない》
《次の瞬間、死んでもいいように死生観を張りつめる》

など、あらゆる言葉に、仮初めでない勇気を貰いました。実際、読了した次の日には、僕はクラウドファンディングに乗り出していました。

クラウドファンディングには以前から興味はありましたが、自分がやるイメージは沸きませんでした。事務所を辞めたときに、一瞬は頭に浮かびましたが、浮かんだだけでした。思いついた何かを実行に移すか移さないかは、天と地ほどの差があります。まだバンドでやっている人は少なかったこと、異端的であること、理解される自信がないことなど、僕はやらない理由ばかり挙げていました。それに、そんな誰もやっていない、やらなくてもいいことに手を出して、傷つくのは嫌でした。

ですが、読み終わった後、それらのやらない理由を完全に捨てていました。未開の地を行く勇気を授けてくれたのは「結果に対する全責任」という、当書の言葉でした。やっている最中のドライブ感、やり遂げたときの充足感の手触りは、今もしっかりと残っています。

そして何があっても、どんなに怖くても正しいと信じる道を進もうと心に決めて、今もやっています。独立後、1年でメジャーデビューが掴めたのも、実力や才能ではなく、その一念だけだと信じています。

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