我々が暮らすこの世界はマトリックスである――と信じるハイテク業界の億万長者たちが脱出方法を求めて科学者らに秘密裏に投資。イーロン・マスクやバンク・オブ・アメリカなど、世界屈指の富豪や有力者の多くは、人類が仮想現実の世界を生きていると確信している。
世界有数の富豪や一握りの有力者は、我々が生きているこの世界はコンピューター・シミュレーションに違いないと考えている。そして彼らは今、何か手を打とうとしている。少なくともシリコンバレーの億万長者2名が大金をつぎ込み、人類を彼らの言う「仮想空間」から抜け出す方法を探っているようだ。
この世界が非常によくできた仮想現実ではないと確かめる術はないのでは、との懸念を哲学者は古くから懸念を抱いてきた。だが、その懸念はこの数年、コンピューターおよび人工知能が進歩するなか、急速に現実味を帯びつつある。
その結果、ハイテク業界の富豪数人が仮想空間ではない確率を「数十億分の一」と見なすに至った。バンク・オブ・アメリカのアナリストさえもが、今年9月、人類がマトリックス的な仮想空間を生きている確率は実に50%に上ると発表した。そして現在、少なくとも2人の億万長者が科学者らに投資し、仮想空間からの脱出法を探らせているという。方法は不明だ。
「シリコンバレーでは多くが仮想現実説を信じている。我々が現実として経験するのはすべてコンピューターによるねつ造という考えだ」と、ニューヨーカー紙のタッド・フレッドはレポートする。「ハイテク界の富豪2人が科学者を雇い、仮想空間から抜け出す方法を探らせている」。その2人の富豪が誰なのか、フレッドは明らかにしていない。ただ、ハイテク企業の設立に協力する会社、Yコンビネーターの経営者サム・アルトマンには注目しているという。
フレッドの記事によれば、ハイテク業界の有力者の多くが仮想現実説を口にしており、かのイーロン・マスクも徒労に終わりかねないプロジェクトに私財を投じている。マスクは今年前半、この世界が仮想空間でない確率は「数十億分の一」と確信していると語った。その結論に至ったのはスパで他の富豪らと言葉を交わした後のことで、コンピューター・テクノロジーの進歩は極めて速く、未来のある時点で現実と仮想現実との区別はつかなくなる、であれば、すでにそれが起きており、我々は仮想現実を生きていると考えない理由はない、と指摘されたという。
マスクいわく、この世界が仮想現実でないなら、人類はおそらく間もなく終わりを迎える、だからこそ仮想現実だと期待したい。「そうでない場合、文明が進歩を止めるとすれば、その原因は文明化を阻む破滅的出来事になるだろう」と、マスクはマイクロソフト社のカンファレンスで語った。
アルトマンも同様の恐怖を感じていると思われ、「我々を取り巻く機器が宇宙の全意識を死滅させる恐れがある」とニューヨーカー誌に語っている。これに対処するための最良のシナリオは「融合」であり、脳をクラウドにアップロードするなどして、人間の脳とコンピューターを一つにするのが望ましいという。
「携帯は我々を支配している。融合はすでに始まっている。実際、融合こそがベストのシナリオなんだ。融合なきシナリオでは、必ずや衝突が生じる。我々がA.I.を奴隷にするか、A.I.が我々を奴隷にするか。融合にもいくつかヴァージョンはあるが、まさにぶっ飛んでるのが、我々の脳をクラウドにアップロードするやり方だ。できたら最高だね。人類をレベルアップする必要がある。我々の子孫は銀河を征服するか、全宇宙の意識を永遠に葬り去るか、そのどちらかなんだから。まったく、なんて時代を生きてるんだ!」
Photo:(C)WENN / Zeta Image
Text:(C)The Independent / Zeta Image
Translation:Takatsugu Arai
- 著者
- 出版日
- 著者
- 士郎 正宗
- 出版日
- 1991-10-02
- 著者
- 清水 亮
- 出版日
- 2016-10-17