廃村寸前の集落で起こる凄惨な事件の数々と、その凄惨さを引き立たせるグロ描写が魅力的な作品『屍囚獄』。今回はそんな本作の魅力をご紹介していきます。
- 著者
- 室井 まさね
- 出版日
- 2015-06-17
グロテスクな暴力描写と、不穏な空気からの衝撃的な結末が魅力の作品『屍囚獄』は、読者にとって印象に残りやすい異色作の数々を世に生み出した漫画家「室井まさね」によるサスペンスホラー作品です。
本作はとある村に訪れた女学生たちが、村に伝わる因習によって血生臭い悲劇に巻き込まれていくという衝撃作となっています。
本作はその衝撃的な内容が反響を呼び、実写映画化までされた作品となっていますが、今回はそんな本作の魅力についてネタバレをまじえてご紹介していきます。
室井まさねのほかの作品にも興味を持ってる方には『煉獄女子』がおすすめです。学校で次々と起こる事件はやがて死人まで出る事態に。そんな『煉獄女子』については<『煉獄女子』結末まで見所を紹介!真犯人は登場人物の中にいる?【ネタバレ注意】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
主人公の美琴を含む女学生たちと大学教授は、大学のレポート作成のために廃村寸前の八坂村にやってきました。古い因習が残る村に、渋々ながらも単位のためと割り切って訪れた面々でしたが、そこは外部から訪れた人間以外に女性がいないという不可思議な集落だったのです。
そして村人たちは徐々にその本性を露わにし、女学生たちに対し暴行を働こうとしたり、果ては村人同士で殺人を起こしたりと、猟奇的な事件が起こり始めるのです。廃村寸前の集落で、今血と狂気に満ちた時間が幕を開けます。
本作は八坂村という集落で起こる凄惨な事件の数々に巻き込まれながら、徐々に真実に近付いていくという展開の作品となっています。
そんな本作の魅力を引き立たせるのは、八坂村がおおよそ都会では考えられない独自の古い慣習を残しているという設定が、実にそれらしく描写されているという点でしょう。
例えば、あらすじでも記載した通り、八坂村には女性が存在せず、その為出生率が村にとって致命的な問題となっているという背景があるのです。これは実際の日本においても過疎化した集落などではよく聞く問題であり、その為、移住や婚約などの手段で村に女性を招き入れるよう、四苦八苦しているという実態があります。
本作ではそんな実際の日本で起こっている問題とホラー設定を上手く交えることで、より現実味のある展開として描写しているのです。
八坂村においては、その女性がいないという問題が非現実的な域で深刻化しており、なんと600年もの間、村で女性が生まれていないという事態となっているのでした。そして、その原因とされているのが、村に伝わる「ウズメ様の祟り」であり、そのウズメ様の呪いによって村には男性しか産まれなくなってしまったのだというのです。
作中では村長もそんな言い伝えを迷信だと言い、否定するのですが、本作中にはそんなホラー要素を感じさせる描写や設定が各所に散りばめられており、果たして物語の結末にそれらがどのように関わってくるのかと読者の注意を引くのです。
また、村人たちはそうした現況に対し村外から女性を引き入れる手段として、嫁を取るのではなく、拉致してきては村の男たち全員で共有し、手籠めにして子供を産ませるという、とんでもない手段を取っています。
法治国家である日本では到底考えられない程に野蛮で低俗であると言えますが、もし仮に警察も機能しないこんな環境の集落が現存していたのだとすれば、あり得てしまうかも知れないと思わされてしまいます。
本作の設定についての魅力をご紹介しましたが、やはり最もインパクトが強く、読者の印象に残りやすいのは、事件の凄惨さを描写したグロ展開の数々でしょう。
本作は八坂村で起こる女性達への暴行と、村に関わる人間達による殺し合いが各所で描かれています。その中でもメインとなるグロ描写としては、本作に登場する「猿田彦の面」というお面を被った人物による殺人のシーンでしょう。猿田彦の面を被った人物は、村内にある斧や鉈などを武器に登場人物達を次々と殺害していきます。
村を訪れた女学生達はもちろん、なぜか村人に対してまで被害がおよぶこととなるのです。その目的については本作を読んで確認して頂きたいと思いますが、その殺害の描写は頭を一撃でかち割られていたり、肩口から切り落とされていたりと、凄惨の一言。こういった描写に慣れていない読者の方は注意が必要となりますが、グロ描写にも耐性のある方であれば実に印象的なシーンの数々であり、それが魅力的にも感じられることでしょう。
本作はこの猿田彦の面の人物以外にも殺意を持って他者を殺めようとする人物が数多く登場するため、そうした人物達による殺し合いも随所で行われます。
物語が進むにつれて、そうした人物達の関わり合いがどのように発展し、生き残るのは誰なのかを推察するのも楽しみの一つといえるかも知れません。
また、先述した通り村では子供を産ませるための女性がいないという環境により、男達にとって本作に登場する女性達は子供を産ませるための格好の標的となってしまうのです。その為、女性達が性的な暴行を受ける場面も数多く存在し、グロ描写と相まって事件の凄惨さを引き立たせることとなっています。
とにかく最初から最後まで衝撃的な描写には事欠かない作品となっていますので、サスペンス作品が大好きだという方はぜひ読み進めて頂きたいと思います。
- 著者
- 室井まさね
- 出版日
- 2015-10-17
日本の古い因習と、それに関わる人物達による凄惨な殺し合いを描くことで、鮮烈な印象を読者に残る『屍囚獄』。
ご紹介したサスペンス描写の数々はもちろん、ホラーとしての要素もたっぷりと盛り込まれた作品であり、恐怖シーンを描写した際の人物の表情をアップにした際などは、思わず背筋が凍りつくような悪寒が走ることでしょう。
ホラーにしてもサスペンスにしても、読者にとってゾクゾクするような展開が盛りだくさんとなっており、最初は陰鬱な空気に嫌悪感を抱いてしまうかもしれませんが、読み進めていくうちにクセになってしまうかも知れません。
狂気に満ちた魅力に取りつかれてみたい方にはぜひともご一読頂きたい作品となっておりますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。