「花の24年組」と呼ばれる伝説的な漫画家、大島弓子。忌憚のないストーリー運びは、時を経て読んでも色褪せない輝きがあります。今回は少女漫画の大家である彼女の手掛けた作品をご紹介していきます。
1947年生まれの大島弓子。萩尾望都、山岸凉子、竹宮惠子らとともに「花の24年組」といわれています。彼女が生まれた年は実際には昭和22年ですが、昭和24年前後生まれで活躍する女性漫画家が多かったため、こう呼ばれるようになりました。
短大在学中の1968年に出版社へ初めて持ち込みをした『ポーラの涙』でデビュー。それ以降、「週刊マーガレット」、「少女コミック」を中心に活動していきます。
作風は発表年代によって異なりますが、「少女コミック」に拠点を移した理由として自由な編集方針をあげていることからも、彼女自身の内面を反映したしばしば問題作といわれる物語を描くこともありました。活躍していたのが1990年代までなため絵柄はやや古めですが、総じて人の心を掴むストーリーが得意であるといえるでしょう。
また愛猫家としても知られており、自身が飼っていた猫を題材にしたコミックエッセイも発表しています。
飼い主に捨てられたことを理解できない白い仔猫がいました。道端で行き倒れてしまっていた彼女を、須和野時夫という青年が拾います。彼によって、「チビ猫」と名付けられました。
チビ猫は、いつか成長して人間になると信じていました。そして人間になった暁には、最初に時夫に「ありがとう」と言おうと心に決めます。
しかし彼女は、やがて厳しい現実を目の当たりにすることになるのです。
- 著者
- 大島 弓子
- 出版日
- 1994-06-01
1978年から「LaLa」で連載されていた作品。1979年には講談社漫画賞少女部門を受賞し、1984年にはアニメ映画化もされた名実ともに大島弓子の代表作です。
チビ猫の容姿はふわふわの髪の毛に、ちょこんとついた耳、エプロンワンピース。いまや珍しくなくなった「猫耳」ですが、その成り立ちを辿っていくと本作に行きつくといわれています。
物語は、擬人化されたチビ猫の視点で進んでいきます。猫かつ幼い子どもの彼女は、無垢の象徴。時には現実と幼い自己の乖離で苦しむことも。ファンタジーでありながら残酷さも内包しているところは、大島の真骨頂ともいえるのではないでしょうか。
仔猫の感性が現実をどのように捉えていくのか、見守ってあげてください。
カトリック系の女子校に通うみどりとマーヤ。2人は幼い頃からの親友でした。
ある頃からマーヤは、みどりの家に下宿している大学生の秋夫と急接近していきます。みどりは秋夫に片想いしているのですが、2人の間に割って入ることができません……。
生徒が生徒を管理する学園で、すべてを取り仕切っているのは3年生のデスデモン。転校生のセイラは彼の指示でみんなから無視されてしまいます。
そんななかうっかり声をかけてきた生徒がいて……。
- 著者
- 大島 弓子
- 出版日
- 2001-12-01
本作は「別冊少女コミック」などで掲載されていた作品をまとめた短編集。比較的初期のものが多いですが、大島の感性がいかんなく発揮されており、今読んでも瑞々しさにあふれています。
表題作の「ほうせんか・ぱん」は、意図せず三角関係になった男女の物語。みどりは秋夫に想いを寄せていますが、マーヤもまた大切な親友です。マーヤにとってもそれは同様で……お互いがお互いを思いあう友情と恋愛の物語です。
読み進めていけば、タイトルの意味も分かりますよ。
主人公の三浦衣良は、転校してきた高校での最初の自己紹介で、とんちんかんな発言をくり返していました。幸いクラスメイトに小学生時代の友人・御茶屋さえ子がいたためその場は事なきをえます。
さえ子がよくよく話を聞くと、衣良はもうすぐ結婚してしまう姉への依存度が高く、ノイローゼ気味のよう。誰か男の子と付き合えば気持ちも持ち直すだろうと、人のいいさえ子は画策するのですが……。
- 著者
- 大島 弓子
- 出版日
- 1995-09-01
本作は、1977年から1978年に「月刊セブンティーン」で連載されていた短編をまとめたもの。
主人公の衣良は女子高生の割に幼く、どこか周囲とずれた言動をします。姉の結婚が決まってからはあまりにも度が過ぎるため、両親も精神病院を受診させようか考えるほどでした。時代を考慮しても、なかなかハードな設定ですよね。
そんな彼女のために骨を折ってくれるのが、幼馴染のさえ子です。彼氏を見繕おうとしますが、ここで難題がひとつ。衣良のタイプを聞くと、「世間に後ろめたさを感じている男色家の男性」だと言うのです……。
そしてお眼鏡にかなったのは、なんとさえ子の兄で大学生の御茶屋峠でした。
実際の峠は女性を好むプレイボーイだったのですが、紆余曲折を経て、衣良のノイローゼを緩和するために2人は偽装結婚をすることに。大変なのは彼のほうで、男色家を装ったり衣良を気遣ったりと気苦労が絶えません。
年頃の少女の心は不安定ですが、さえ子と峠と関わることで、衣良はどのように変わっていくのでしょうか。
ラップランドという国で暮らしていた、日本人の少女いちご。父親に先立たれ、一念発起して日本で暮らそうと旅立ちました。かつてラップランドに旅行で訪れた青年、生田林太郎と結婚すると言うのです。
メモに書かれた住所を頼りに、突然生田家を訪れたいちご。もちろん皆混乱しましたが、はるばるやってきた彼女を迎え入れてくれました。
いちごは四苦八苦しながら日本での生活に慣れていくのですが、やがて自分の出自がわかってきて……。
- 著者
- 大島 弓子
- 出版日
1975年に「週刊少女コミック」で連載されていた作品。少女漫画らしい絵柄と展開で、架空の外国からお嫁さんになるために少女がやってくるというメルヘンチックな物語です。
いちごは自然豊かな国で育ちました。当時の日本は高度経済成長期で、あまりの環境の違いにカルチャーショックを受けるものの、自身が持っている感性を大事に生きていきます。
ターニングポイントとなるのは、彼女の父親が著した「いちご物語」という小説。そこから、いちごの出自が判判明し、彼女の運命を変えていきます。
ラストは涙なしには読めない、感動の物語です。
長年飼っていた愛猫のサバを亡くした作者。失意に暮れていた彼女はある日、ペットショップに入り、アメリカンショートヘアの仔猫と運命的に出会いました。
ひとりと1匹の平穏な日常の物語です。
- 著者
- 大島 弓子
- 出版日
- 2008-06-25
本作は1996年から「ヤングロゼ」、「本の旅人」などで連載されていたコミックエッセイです。
『綿の国星』でも猫をモチーフにしていましたが、大島弓子は大の猫好きで有名。愛猫のサバとは13年間をともにしその後新たに迎えたのがグーグーでした。
大きな出来事や劇的な変化はありませんが、日々の生活に寄り添ってくれるかけがえのない存在として、グーグーが描かれています。
過度な脚色は無く、メルヘンチックなデフォルメなどもされていない猫ですが、普段どおりに過ごせることのありがたさが伝わってくるのです。猫を飼っている人はきっと共感できるはず。
いかがでしたか?どの作品も外せませんが、サブカルチャーを語るうえで『綿の国星』の偉大さは群を抜いています。この機会に1度手に取ってみてくださいね。