「エログロ」とも評される作風が人気の漫画家、松本次郎。2007年には『フリージア』が実写映画化され、さらにその名を知られるようになりました。今回は、そんな彼の作品のなかでも特におすすめの5作をご紹介していきます。
エログロの作風で知られる漫画家の松本次郎。1992年、武蔵野美術大学に在学中に漫画家としてデビューしました。
荒々しい雰囲気を保ちながらも緻密に書き込む作画と、斬新なアイディアが織りなすストーリーが特徴です。
2007年に『フリージア』が映画化されて話題になりました。オリジナル作品のほか、時代小説のコミカライズなども手掛け、幅広い活動をしています。
ハローワークに通っている青年、叶ヒロシ。ある日「カツミ執行代理人事務所」を紹介され、そこで働くことになりました。
時は、凶悪犯罪によって命を落とした被害者遺族が、加害者に復讐することができる時代。「執行代理人」とは、被害者遺族から「敵討ち」を依頼された際に、法律で規定された武器を使って執行の代理をする職業です。
「執行代理人」として働くことになったヒロシですが、実は彼にはある特殊能力があり……。
- 著者
- 松本 次郎
- 出版日
凶悪犯罪の被害者遺族が、加害者に対して法的に復讐ができるようになった近未来の日本。描かれるのは、被害者側である「執行代理人」と、加害者と彼らを守る「警護人」の殺しあいです。
彼らが使うのは法律で定められた武器だけなのですが、そのなかには銃やナイフも含まれているので、もちろん血しぶきが飛び交います。アクションシーンは過激ですが迫力もあり、バイオレンス系が苦手でなければそのスピード感を楽しむことができるでしょう。
一方で登場人物たちの内面にもスポットが当てられていて、被害者・加害者双方の葛藤が描かれています。
そんななか、ヒロシは「執行代理人」として働くことになります。一見地味な彼ですが、彼が選ばれたのにもある理由がありました……。
女子攻兵……それは女子高生の姿をした、巨大な生体兵器です。次元世紀2011年の新東京都市では、そんな異常な兵器を投入した戦争がくり広げられていました。
第13独立女子攻兵猟隊を率いるタキガワ中尉は、いつものように制御不能になってしまった女子攻兵を始末するため現場に向かいます。
しかしそこに待ち受けていたのは、思いもよらない光景で……。
- 著者
- 松本 次郎
- 出版日
- 2011-11-09
まず「次元世紀」というのは、異次元に移り住んだ人類が使用している西暦です。彼らは地球からの独立を目指していて、そのために「女子攻兵」で武装し、両者は戦争状態にありました。
「女子攻兵」は巨大な生体兵器で、人が実際に乗り込んで操縦をしなければいけません。頭をぱっくりと割ってその中に座るさまは、なんともシュール。そしてグロさも兼ね備えています。
そんな本作で描かれるのは、人間の自我だと言ってよいでしょう。短いスカートをはき携帯電話のようなものを持っている「女子攻兵」ですが、彼女たちの意志がしだいに操縦者の意識を飲み込んでいってしまうのです……。
独特な世界観に、1度ハマると抜け出せなくなってしまうはず。中毒性のある作品です。
『女子攻兵』については<『女子攻兵』の魅力を最終回までネタバレ考察!>の記事で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
近未来、砂漠化した世界で資源は枯渇し、力の弱い人々はコミューンをつくり、助けあって暮らしていました。
そんななか、どこのコミューンにも属せず、ひとりで「悪党退治」を生業にしている14歳の少年がいます。彼は、追いはぎをしている悪人を狙って物資を奪っていました。
ある日強盗に襲われているキャラバンを救うと、あるモノと出会います……。
- 著者
- 松本 次郎
- 出版日
- 2011-02-18
「近未来ディストピア・スナイパー・ロマン」と銘打たれているように、物語の舞台は荒廃した世界。砂漠が広がり廃墟が点在しています。
スナイパーとは、そこでひとりで生きているシュウという少年のこと。天才的な狙撃能力を持っています。
そんな彼が「飼って」いるのが、まさに不思議の国から抜け出してきたような人造人間。廃れてしまった世界に立つロリータファッションの少女が印象的です。
幼い2人はタッグを組むかたちで、次々と人を殺していきます。エロとグロとバイオレンスが追い込まれた、少年少女の物語です。
死んだ杉並区民の霊魂が向かうのは、この世とあの世の中継点である河川敷。そこでゾンビ退治に励むのは、2人の女子校生「べっちん」と「まんだら」です。
彼女たちはなぜかゾンビを退治する管理人の手伝いをすることになるのですが、どんな会話をしても一向に話がかみ合わず……。
- 著者
- 松本 次郎
- 出版日
- 2009-11-26
「べっちん」と「まんだら」は、決して仲良しの友達同士なわけではありません。行くあてもなく彷徨っているべっちんに、まんだらが付きまとっているように見えます。
そんなまんだらにべっちんが苛立ち、しかしまんだらはなぜ彼女が怒っているのか分からず、いわゆるディスコミュニケーションのような雰囲気。しかもお互い記憶があやふやなところがあり、奇妙にすれ違っていく会話劇が魅力です。
「銃は持って来たんでしょーね」
「持ってきたよ でもね…クスリを忘れてきたんだ」
「クスリ? 何の」
「ほら赤いカプセルのと――こんな小さい白い丸いヤツがあったじゃん」
「何言ってんの それはあちしが飲むクスリじゃん」
「え゛ーーー」
「アホみたいなカオすんなよ あれ? ちがったっけ」
「……さあ」
「忘れちゃったよ」(『べっちんとまんだら』より引用)
またゾンビの大群と戦うシーンは迫力抜群。そちらにも注目です。
時は幕末。大政奉還がおこなわれ、江戸は混乱の一途を辿っていました。江戸幕府と武力で決着を付けようとしている薩摩藩は、「御用盗」という集団を結成。資金提供という大義名分を掲げて、毎晩のように江戸の商家を襲っていました。
しかしそれは、江戸幕府を挑発する行為でもあったのです。
そんな混乱する世情のなかで、ある侍たちが力自慢の百姓を集め、「選抜試験」を実施して……?
- 著者
- ["松本次郎", "永井義男"]
- 出版日
- 2016-11-30
永井義男の小説『幕末一撃必殺隊』を原作にした漫画。ストーリーと絵柄がぴったりマッチしています。
侍たちは、金で力自慢の百姓を集め、彼らにさまざまな課題を与えて「選抜試験」をおこないます。侍と百姓のあいだには圧倒的な身分の差があり、何か気にくわないことがあればばっさりと斬り殺すことも。容赦がありません。
幕末が舞台な歴史漫画なので、これまでの松本作品とは一線を画しつつ、バイオレンスやグロの要素は健在。選抜試験の先に待っているものとは何のなのでしょうか?
いかがでしたか?エログロで話題を集めることの多い松本次郎の作品ですが、その奥にはさまざまなテーマが隠されています。ぜひ皆さんで感じ取りながら楽しんでみてください。