漫画『ゴールデンゴールド』が怖いのに面白い!魅力を全巻ネタバレ紹介!

更新:2021.12.13

「フクノカミ」と呼ばれる奇妙な生き物によって、とある島の生活が変わっていくさまを描いたSFホラー漫画『ゴールデンゴールド』。不気味な恐ろしさと謎を追求していく面白さをあわせもった作品です。

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漫画『ゴールデンゴールド』が怖いけど面白い!魅力をネタバレ紹介!

『刻刻』で注目を集めた堀尾省太が描くSFホラー漫画『ゴールデンゴールド』。人間の「願い」と「欲望」に焦点をあて、登場人物たちが徐々に変貌していくさまが描かれています。

物語の舞台は瀬戸内海にある「寧島(ねいじま)」という架空の島。学校や病院など最低限の設備はありますが、スーパーは1軒しかなく、少々不便。これといった産業も無いので、観光客が来ることもめったにありません。
 

しかし寧島はかつて、「フクノカミ」と呼ばれる存在によって繁栄していた時期がありました。そして再び現れた「フクノカミ」。その日から、島は変わっていきます……。

本作の魅力は、やはり不気味さでしょう。その気持ちを解消したいがゆえに続きを読み進め、いつの間にか作品の世界に入り込んでしまうのです。

この記事では、そんな『ゴールデンゴールド』の各巻の見どころと魅力を紹介し、物語に散りばめられている謎の考察もしていきます。ネタバレを含むのでご注意ください。

 


堀尾省太のデビュー作『刻刻』については<漫画『刻刻』全8巻の伏線をネタバレ解説!【アニメ化】>で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

著者
堀尾 省太
出版日
2016-06-23

漫画『ゴールデンゴールド』瀬戸内海の島で起こる奇妙な出来事【あらすじ】

漫画『ゴールデンゴールド』瀬戸内海の島で起こる奇妙な出来事【あらすじ】
出典:『ゴールデンゴールド』1巻

 

祖母とともに瀬戸内海の「寧島」に住んでいる女子中学生、早坂琉花。ある日海辺で、奇妙な彫刻のようなものを見つけます。

深く考えずに家に持ち帰り、洗ってから山中の祠に祀りました。

願いごとをすると……なんとその彫刻が動き出し、その日以降琉花の家に居座るようになったのです。

どことなく七福神の「福の神」に似ているため「フクノカミ」と名付けられたそれは、琉花の願いを叶えるため、寧島を欲望に染めていきます……。

 

『ゴールデンゴールド』1巻ネタバレ:フクノカミ現る!

瀬戸内海に浮かぶ寧島で、祖母とともに暮らしている中学生の早坂琉花。及川という同級生のことが気になっていました。同じ高校に進学するだろうと思っていましたが、彼は大阪の高校に行くとのこと。

最大の理由は及川の父親が仕事で大阪にいるからなのですが、彼はもうひとつ、「アニメイトが家から近い」ということも理由にあげました。1年後には離れ離れになってしまうことにショックを受けた琉花ですが、自分の気持ちを伝えるほどの勇気はありません。

そんなある日、彼女は海辺で奇妙な彫刻のようなものを見つけます。七福神の「福の神」に似ていて、不気味だなと思いながらも、なぜか家に持ち帰りました。スポンジで洗い、冷静になってみるとやはり気持ちが悪いので、近くの山中の祠に祀ります。

そして、なかば冗談のように、祈りました。

「どうかここに でっかいアニメイトが建ちますように」(『ゴールデンゴールド』1巻より引用)

その直後、「福の神」がまるで意思を持った生物のように動きはじめたのです……。

 

著者
堀尾 省太
出版日
2016-06-23

 

1巻では早々に「フクノカミ」が登場。そして琉花の祖母が経営している民宿に居座るようになります。

それ以降、なぜか民宿には次々とお客さんが来るようになりました。さらに、一緒に営んでいる小さな商店も大繁盛。仕入れが追い付かないほどになります。

ここで気になるのが、フクノカミに対する認識の齟齬が生じていること。島の出身ではない琉花と、民宿に泊まりにきている小説家の黒蓮、出版社の青木には地蔵のような姿をした奇妙な生物に見えているのですが、島出身の人たちからは50歳前後の小柄なおじさんに見えているようなのです。

また、祖母の様子にも変化が現れました。フクノカミが座れる神棚のような祠のようなものを部屋の中につくったり、ぼーっとお金を見つめたりしています。

この行動には矛盾が生じていて、フクノカミを人間のおじさんとして認識しているはずなのに、扱い方は神様のようになっています。

謎だらけの1巻。フクノカミにまつわる不気味な物語が幕を開けました。

 

『ゴールデンゴールド』2巻ネタバレ:「寧強会」を結成。欲望の連鎖が始まる⁉

琉花の祖母の商売はさらに勢いがつき、商店をコンビニへ改修することになりました。そして、開店祝いの飲み会の席で、彼女は寧島をもっと積極的に発展させるために強化する会「寧強会」の設立を提案します。

もともと商工会に所属していた面々は反対を示しますが、島外出身で「フクノカミ」が見えた会員が恐る恐る入会の意向を伝えると、不思議と彼らの店も繁盛しだしたのです。

ただ、祖母の勢いにいい顔をしない人もいます。島で唯一のスーパーを経営している岩奈は、彼女がコンビニに続いてスーパーを新設しようとしている噂を聞き、妨害工作を始めました……。

 

著者
堀尾 省太
出版日
2017-01-23

 

2巻では「寧強会」の設立と、島内の対立が描かれます。この対立はフクノカミによって引き起こされたものといっても過言ではありませんが、琉花の祖母の商売が邪魔されるのを黙って見ているわけはありません。

争いを鎮静化させるためなのか、フクノカミは海から巨大な蜘蛛のような海老のような生物を連れ出し、当事者を襲うのです……。恐ろしいし謎が深まる展開ですが、目が離せません。

そして何よりも不気味なのが、祖母の顔が時おりフクノカミのようになっていること……。金銭に絡む話をしている際に起こります。

また「寧強会」に賛同しているメンバーが繁盛を祈ると、その願いを吸い上げたフクノカミの顔がツヤツヤになり、同時に祖母の肌もハリのあるものへと変化するのです。

これは、彼女自身がフクノカミに乗っ取られはじめているということなのでしょうか。

 

『ゴールデンゴールド』3巻ネタバレ:フクノカミが失踪⁉

フクノカミが海から連れてきた奇妙な生物によって、寧島で暴行事件が発生し、死者が出てしまいました。被害者は直前まで祖母と揉めていた人物。調査のため、島外から警察が訪れます。

一方の琉花と作家の黒蓮は、このままでは祖母が侵食されてしまうのではと恐れ、フクノカミを民宿から追い出すことを決めました。しかしその目論見は当の祖母によって崩されます。

人が死んだこと、そしてそれに少なからず祖母が絡んでいることを重く受け止めている琉花でしたが、そんな時、及川から島を出ることを考え直す内容のメールが届き……。

 

著者
堀尾省太
出版日
2017-10-23

 

死者が出たことで、いよいよきな臭くなってきました。琉花はこの事件をきっかけに、フクノカミを強く否定するようになります。

しかし、元はといえば彼女が祈ったことで動きはじめたフクノカミ。逆の立場で考えれば、困惑してしまったのでしょうか。琉花の前から姿を消すのですが、思いもよらない場所に潜んでいて……。読んでいて、思わず悲鳴をあげてしまうかもしれません。

さらに、島外から訪れた警察のひとりが、フクノカミに対して強い執着を示します。人を見定めて引き寄せる不思議な力があるのでしょうか。

そしてまだまだ物語は続きます。人間の欲望は留まることを知らないのです。

『ゴールデンゴールド』4巻ネタバレ:フクノカミの能力と影響力

暴行殺人事件がきっかけとなり、フクノカミに興味を持った酒巻は独自に調査を始めました。たまたま、流花の母親のツイートを発見した酒巻は、流花の祖母を任意同行するという強行突破に。

流花の祖母を車の後部座席に乗せて走り出しますが、しばらくすると、座っているのがフクノカミであることに気が付きます。驚きで酒巻は車の運転を誤り、脱輪。目の前には車よりも大きな猫が立ちはだかり、酒巻は、フクノカミをどうこうできるものではないと判断し、これ以上深入りしないことを誓うのでした。

著者
堀尾 省太
出版日

一方、黒蓮と流花はフクノカミの能力や影響力を考察。まずはフクノカミの影響力がどれくらいなのか調べるため、寧島を出て大阪まで出てみることに。流花は及川と一緒に大阪に行くことになるのですが、ここで思いもよらない発見をするのです。

また、流花の祖母と寧教会にも異変が起きていて…!?

フクノカミという得体のしれない不気味な存在が、より際立つ内容になっています。

『ゴールデンゴールド』5巻ネタバレ:祖母の夢と新たなフクノカミの登場!

先頭に立って寧教会を大きくし、寧島を発展させようとする流花の祖母。すべてはフクノカミの影響かと思っていましたが、実は、流花の祖母の性格が大きく影響していたようです。かつて流花の祖母は、漁師から安く魚を買い、それを島民に売って歩くことでお小遣いを得ていました。このころから商売上手でしたが、自分の店をたたむという苦い経験もしてきたようです。

そんな流花の祖母の夢は、社長になること。フクノカミの影響により、長年の夢を思い出したかのような流花の祖母ですが、このまま金の亡者になってしまうのでしょうか?

また、金のにおいを嗅ぎつけ、流花の祖母が営む民宿にやってきた、草田という人物にも注目していただきたいです。草田は疫病神ともいえるほど、フクに見放された人物。

しかし、流花の祖母は彼の不運さを利用して、あることを始めるのです。

著者
堀尾 省太
出版日

さらに5巻の終盤では、フクノカミとは別の、第2、第3のフクノカミが登場!見た目こそ違いますが、これはフクノカミが分裂したということでしょうか?それとも、それぞれ何らかの能力を持っている…?

新たなフクノカミの登場で、ますます目が離せない展開となっています!

『ゴールデンゴールド』6巻ネタバレ:フクノカミが激ヤセ⁉及川を想う流花の気持ちがカギとなる!

新たに登場したフクノカミは2体。目を見開いた丸顔の存在は、散財や投資を促す能力を持つカネノカミ。少し怖い顔をした面長法は、人を集めることに長けているのでヒトノカミと名付けられました。

フクノカミが多様性を求めた結果生まれたようですが、この2体の仲はよくありません。協力関係ではないと判断していいでしょう。

3体のフクノカミの登場で寧島が揺れる中、流花の恋に変化が起きていました。なんと、及川が流花のことをなんとも思っていなかったことが判明したのです!

著者
堀尾 省太
出版日

そもそも、フクノカミが登場した原因は、流花が県外に出ようとする及川を繋ぎとめようとしたから。ここまで流花の願いにこたえようと尽力してきたフクノカミは、流花の気持ちが変化したことで力を失ってしまいました。

流花の祖母が経営するコンビニは閑散とし、祖母は体調不良で寝込んでしまいます。このままフクノカミは消滅し、金の亡者となった祖母も元に戻るかと思きや…!?

ここからフクノカミがどのように動くのか、及川を想う気持ちがフクノカミに影響すると知った流花はどうするのか、今後の物語に大きな影響をもたらしそうですね。

『ゴールデンゴールド』7巻ネタバレ:ヒトノカミとカネノカミが暴走!

6巻の終盤で描かれたカネノカミとヒトノカミの争い。2体を登場させた張本人であるフクノカミが仲裁に入りますが、なぜかフクノカミは2体に殴られてしまいます。たまたまその場に居合わせた黒蓮は、酒巻に一部始終を報告。

黒蓮の報告を踏まえ、酒巻は「今まで眠っていたフクノカミは、現代人の底知れぬ欲望に対応できず、限界を突破して不具合を起こした」という仮説を立てました。

「飢えることなく生きていければいい」というごく簡単な欲とは異なり、現代人はネットやテレビによって「富」「福」の最大値を知っています。つまり、「富」や「福」の最大値を知った人間の欲は果てしなく、フクノカミはそういった欲に対応できていない、ということでしょう。

著者
堀尾 省太
出版日

簡単に言ってしまえば、フクノカミの分身であるはずのヒトノカミとカネノカミは暴走状態。今まではフクノカミが寧島での出来事をコントロールしてしまたが、2体が暴走したとなると、何が起こるか予想できません。

自分の力ではどうすることも出来ないと思ったフクノカミは、ついに流花に助けを求めます。

フクノカミの助けを求める声を聞いた流花はどのように動くのでしょうか?

これからの寧島の行く末が気になりますね!

『ゴールデンゴールド』8巻ネタバレ:お祈りのやり直し!寧島はどうなる!?

最悪の事態を避けるため、流花に助けを求めたフクノカミ。流花の祖母を利用し、流花に「お祈りのやり直し」をするよう頼みました。しかし、簡単に一度願ったお祈りを帳消しにすることは出来ず…

そこで流花は、「中学を卒業したら及川には会わない」「ばーちゃんがだれのことも不幸にせず、末永く商店を続けていけるように」とお祈りをし直します、これによりフクノカミは寧島に起こる最悪の事態を回避するために動き出すのですが、この翌日、流花にとって思いもよらないことが起きます。

なんと、及川から告白されたのです!しかし、昨日のお祈りを実現するためには、及川をふらなければなりません。ずっと及川を想い続けた流花は泣く泣く及川を振るのですが、このシーンが本当に切なかったです。

著者
堀尾 省太
出版日

一方、流花の祖母は草田からある話を持ち掛けられていました。どんな話かというと、島外の商業施設の委託先公募に入札してみないかというもの。流花の祖母は寧島を発展させたい、モールを良くしたいという思いはあるものの、島外の出来事には無関心。そのため、草田の提案を断るのですが、草田の口車に乗せられてしまいます。

草田はカネノカミに魅入られていますし、カネノカミはフクノカミも制御できないほど暴走しています。

流花の祖母がどうなってしまうのか、また、お祈りをやり直した流花がどうなってしまうのかに注目してお読みください!

漫画『ゴールデンゴールド』フクノカミの謎を考察

漫画『ゴールデンゴールド』フクノカミの謎を考察
出典:『ゴールデンゴールド』1巻

 

物語の核心ともいえる「フクノカミ」。まだまだ分かっていないことが多いですが、謎を考察していきましょう。

フクノカミは、「福の神」と同様に商売繁盛など「福」を呼び込む力があります。ただギャンブルをしても効果が出なかったので、「人」と「財」を集める効果のみがあるようです。

また、寧島で生まれ育った者には50歳前後の小柄なおじさんの姿に見え、島外出身の者には奇妙な地蔵のようなフクノカミの姿として認識されています。

フクノカミにまつわることは寧島を離れると強制的に忘れるようになっており、秘密が漏れないようになっているようです。

そして本作で最大の謎なのが、1巻の冒頭で描かれているあるシーン。侍のような恰好をした人物が海辺に転がっている死体を見ています。彼らの顔はすべてフクノカミと同じ……。

しかし「奴だけがおらん……」とつぶやいていることから、本当に探したかったものは見つかっていないようです。

寧島はかつて急激に栄えた時期があり、それがまた急激に衰退していったそう。どうやらそこにもフクノカミが関係しているようですが、詳しいことはまだわかっていません。

ただ、冒頭の死体がフクノカミの顔になっていること、そして琉花の祖母の顔も時おりフクノカミと同じ顔になっていることを考えると、嫌な予感しかしませんね。再び惨劇が起こってしまうのではと考えてしまいます。

 

とにかく不気味で謎が多いですが、不思議と物語に引き込まれてしまう『ゴールデンゴールド』。ぜひ読んでみてください。

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