氷河期が過ぎ、温暖化へと移るなかで土器や独自の生活スタイルを確立していった縄文時代。当時の人々はどのように生活していたのでしょうか。今回は縄文時代の生活の特徴や弥生時代との違いを、関連本の紹介とともに説明します。
縄文時代は、世界史では中石器時代・新石器時代あたる約1万5000年前頃から紀元前4世紀ごろ。豊かな自然に囲まれ、狩猟や採集、漁などで生活し、縄文土器を使用していた時代をさします。
縄文土器はこねた粘土を低温で焼いて硬くした器をいい、その特徴は表面を平らにするために縄を使用したときにできる縄目の文様です。そのほとんどが深鉢形で、鍋やフライパン代わりの調理器具として利用していました。
一方で、食料の貯蔵用としても役立ったため、この土器の発達により旧石器時代の移動生活から一ヵ所に留まる生活スタイルへと変化するきっかけとなりました。縄文時代は約1万年にわたって続いていたと推測されています。
縄文人たちはどんな生活をしていたのでしょうか。
旧石器時代では洞窟に住みながら獲物を追って東西南北を移動する生活をしていました。しかし、縄文時代になると竪穴式住居を建て、身分の差もなく一定期間1ヵ所に住み続ける生活スタイルが始まります。そこには、貝塚や墓も作られていました。
竪穴式住居とは、床は円形や方形などさまざまなものがあり、建物自体は4,5mほど掘った地面に大きな柱を数本建てて植物で屋根を作った簡単なものです。
食事は、魚やタコ、イノシシやシカ、鳥やウサギ、木の実などを収穫していました。場所によってはツキノワグマやヒグマを相手に狩りをしていたようです。ほかにも、ハマグリやアサリなど200種類以上の貝殻が貝塚から見つかっています。
獣の肉は生で食べたり、焼いたりして食べていましたが、ドングリやシイの美などの木の実はそのまま食べるのは固くて困難でした。そのため、縄文人は土器を使用し、煮炊きをしていたようです。また、肉をこねて、松の実、栗などを入れて味付けしたハンバーグのような料理や、つぶした木の実と水を混ぜて練ったクッキーも作っていました。さらに、ニワトコの実を使った果実酒も飲んでいたと推測されています。
縄文時代では弓矢が活躍します。旧石器時代の狩猟対象はナウマンゾウなどの大型獣でした。そのため投げ槍や突き槍が主要な狩猟道具でしたが、縄文時代では二ホンジカなどすばやい中型獣が対象のため、主流が弓矢に変わるのです。これは氷河期が終わり、大型の動物が絶滅するかわりに小動物が増えていったためといわれています。
また、漁で使用する釣り針や銛が石器や骨や角などを加工した動物の骨角器などで作られていました。かなり本格的で、魚が逃げないようにしっかりと返しも作られていたようです。これまでの打製石器に加え、砂などで研いで磨いて作った磨製石器も使用され始めました。
縄文人は交易も行っていました。縄文時代の遺跡を調べると、北海道でしか採れない医師が本州にあったり、その逆もあったりと海を渡って交流をしていたようです。大きな木を石器でくり抜いて作った丸木船で、交易以外にも釣りやイルカ業、遠洋漁業にも使われていました。全国に160艘ほどの丸木船が見つかっています。
縄文時代の顔は四角く、彫りが深く、頬骨が小さく、鼻が高いのが特徴です。目が二重で大きく、眉毛は太く、目鼻立ちがしっかりした顔だったそうです。
縄文人の平均身長は、男性が約158cm、女性が約148cmと小柄でしたが、手足指は長かったといわれています。
また縄文人の平均寿命はわずか14.6歳でした。そして乳幼児を生き延びた場合の平均地寿命は30歳前後です。このことは乳幼児の死亡率がとても高く、全体の平均寿命が下がっていることが原因のようです。
縄文時代と弥生時代との大きな違いは「狩猟」と「稲作」という生活スタイルの違いです。弥生時代に朝鮮半島から多くの移民が濃厚文化を持ち込んだことで、生活が一変します。縄文時代後半では農耕が始まっていましたが、弥生時代に入ると水田稲作などの農耕による生活が中心となっていきました。
縄文時代の1番の特徴は「土器」です。土器の発達によって、それ以前の人々の食生活ががらりと変わりました。魚の燻製や、ドングリやクルミなどの木の実の灰汁(あく)取りなど狩猟や採集で得た食物の調理が可能になったのです。さらに食料を少し貯蔵できるようになったことで、以前のように獲物を追いかけて移動する生活をする必要がなくなりました。
ただし道具はまだ木製が多く、集団で生活はしていましたが明確な身分の差もありませんでした。生活は基本的には狩猟・採集であり、狩猟や番犬のために犬を飼っていたということも遺跡からわかっています。出土した骨が人間とともに見つかる場合もあり、縄文人は犬を相棒のように扱っていたようです。
一方、弥生時代の1番の特徴は「トップの登場」です。稲作は1人では行えないために集団で生活する意識が強くなり、「ムラ」「クニ」などの集落が誕生します。さらに収穫の時期を狙って他の「ムラ」などを襲うなど、「ムラ」同士の争いなども発生しました。弥生時代後期に誕生した「クニ」こそ、卑弥呼というリーダーに率いられた邪馬台国です。
身分の違いがみられるようになったのも弥生時代から。また、大陸からや朝鮮半島からの影響は、農具だけでなく、縄文時代に相棒だった犬への扱いまで影響したようです。犬を食用とする風習が始まったのです。この風習の変化は、長崎県の原遺跡をはじめ、さまざまな遺跡から食べられた後の全身バラバラ状態の犬の骨の痕跡から分析されています。
本書は1万5000年前にあった縄文時代を生きた人々の儀式や貝塚の必要性、当時のヘアスタイルの再現までイラストを用いて説明しているので、楽しく読める一冊です。
- 著者
- 譽田 亜紀子
- 出版日
- 2017-03-07
土偶の鑑賞ポイントや縄文人の夜の営みなど、まさに「知られざる縄文ライフ」であり、今までの縄文時代の印象をよい意味で覆してくれるでしょう。著者は弥生時代への移行は決して無理やり行われたわけではなく、縄文人の生活をベースに稲作が上乗りしたのだと分析しています。現代の日本に至るまでの道のりにこのような時代があったのだと、多角的に縄文時代に触れられる内容になっています。
「日本の歴史」シリーズの旧石器時代から古墳時代までを丁寧に描いたロングセラー作品です。
- 著者
- 岩井 渓
- 出版日
- 2007-07-01
人々の間に身分の差もなく、争いもなく、平和にのびのびと暮らしていた縄文時代。しかし、中国大陸や朝鮮半島から農耕文化が伝わり、稲作が中心となった弥生時代では格差が現れ、ムラ同士の争いが増えていきました。
ムラの支配、ムラを統一したクニの支配、と支配を進めるなか朝鮮との交流が始まり、徐々にクニ同士の争いまで勃発して、という風に古代史の歴史がコンパクトに、スピーディーに進んでいきます。漫画の質も高く、内容も大ざっぱすぎないため、日本史の流れをつかみたい人におすすめの一冊です。
学校で当たり前に習った縄文時代という歴史的区分、概念は、実は戦後民主主義とともに作られたという著者の指摘から始まる本書は、縄文時代の概念がどのような経路をたどって形成されてきたのかを明らかにした一冊です。
- 著者
- 山田 康弘
- 出版日
- 2015-11-27
著者は、世界で「石器時代」と呼ばれる時代をあえて「縄文時代・弥生時代」と日本が独自の時代区分を持ち込んだのは、政治的に作られた概念の色が濃いと分析しています。戦後の「新しい日本の歴史」を作成するうえで必要とされた縄文時代にはあやふやな側面が多く、私たちが記憶する縄文時代の概念は日本古来の概念ではないのであるという点について詳細にわかる内容となっています。
縄文時代を生きた人々は自然の恵みを味わいながら、家族や仲間と力を合わせて暮らしていました。今回紹介した本は、縄文時代の概念から縄文人の生活ぶりまで知ることができるものとなっています。ぜひ、手に取ってみて、教科書だけではわからない縄文時代に触れてみてください。