女子におすすめの青春小説5選!みずみずしい日々を綴った作品

更新:2021.12.12

もう子どもじゃないけど、まだ大人でもない……かつて持っていたはずのあのみずみずしい気持ちを思い出してみませんか?青春時代を描くプロたちが手掛けた小説を5作ご紹介していきます。

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青春小説の女王、あさのあつこが女子高生を描く『ガールズ・ブルー』

女子高生の理穂と、友人の美咲、如月が過ごす一夏を描いた小説。彼女たちが通う稲野原高校は「地域のダストボックス」といわれ、落ちこぼれが集まっていました。

そんななか3人は、コンプレックスと葛藤を抱えながらも、毎日を軽やかに生きていきます。

著者
あさの あつこ
出版日

主人公の理穂は、誕生日の目前に彼氏に振られてしまいました。美咲は未熟児で生まれたため身体が弱く、頻繁に入退院をくり返しています。また如月は、野球で将来を期待されている兄と比べられる日々を送っていました。

それぞれが抱える葛藤に立ち向かっていく切り口は三者三様で、そのどれも大人は口に出せないような少女らしい感性が光っています。

なかでも、稲野原高校の進級率が極端に低いため、友人がいなくなっていくのを寂しく思う理穂に対し、残りの2人が言った言葉は印象的。

「忘れるよ。傍にいないやつのことなんか、すぐに忘れて楽しくやれるって」
「おれな、おまえがいなくなっても、そう簡単に忘れないと思うぞ」
(『ガールズ・ブルー』より引用)

対極のようなセリフですが、どちらも本音がストレートに表れています。

学生のころは何でも話せていた友人が、いつの間にか疎遠になってしまうことは、読者の多くが経験しているのではないでしょうか。仕事や日々の暮らしに思い出は埋もれていくものですが、本作はかつてを思い出させてくれます。

物語の終盤で理穂が放った言葉も、切なくも輝かしい青春時代を体現するようなものでした。

「あたしたちの前には、長い長い時間がある。それなのに、今しか着れない浴衣も、今しか感じられない歌も、今しか愛せないものもある」
(『ガールズ・ブルー』より引用)

忘れかけていた「あのころ」を思い出させてくれる一冊です。

離島で生きる高校生の日常『島はぼくらと』

瀬戸内海にある架空の島「冴島」を舞台に、高校生たちの日常を描いた小説。冴島には高校がなく、毎日フェリーに揺られて通学している朱里たち4人。おのおの、密かな夢を抱きながら日々を過ごしていました。

登場人物ひとりひとりが魅力的で、島の大人たちの想いとともに、悩みながら成長していきます。

著者
辻村 深月
出版日
2016-07-15

物語は、母親に女手ひとつで育てられた朱里を主人公にして進行していきます。彼女と共に本土へ通うのは、網元の後継者である衣花、父親とともに東京からやってきた源樹、そして脚本家になることを夢見ている新です。

4人は高校がある本土への憧れを抱きつつも、冴島にも愛着をもっていました。島に住む子どもとしての視点で、不便さと魅力をリアルに感じさせてくれます。

なかでも特に高校生らしさを感じられるのは、網元の娘として将来も島に残らなくてはならない衣花のセリフでしょう。彼女は3人島を出る時にはじめて本音を叫びます。

「朱里、行かないで」
(『島はぼくらと』より引用)

人生のなかで出会いと別れはつきものですが、このひと言を実際に口にできる人がどれだけいるでしょうか。自分を置いていってしまう友人を、衣花は引き止めずには入られませんでした。

4人のみずみずしい感性に触れ、読者もきっと素直な気持ちを口にしたくなってしまうはずです。

青春が終わるほろ苦さを結集した小説『少女は卒業しない』

校舎の取り壊しが決まっている高校で、その前日におこなわれた卒業式の1日をつづった物語。

7人の少女の視点から描かれており、それぞれが青春の詰まった学校がなくなる寂しさと終わりの切なさを、異なる切る口で語っています。

著者
朝井 リョウ
出版日
2015-02-20

作者の朝井リョウは男性でありながら、少女たちの繊細な心情がありありと語られていることに驚くでしょう。卒業を迎えることも、校舎が取り壊されることも、どちらも抗うことのできない出来事です。この別れの1日は、彼女たちにとってどれほど切ないものなのだろうと感じるはずです。

日常が実はかけがえのないものだったということは、失ってみて初めて気づくもの。少女たちもこの日を迎えて、ようやくその事実に直面し、戸惑いながらも先に進んでいくのです。

作中で印象的なのは、彼女たちの心理描写。まだ大人になりきっていない心だけが生み出せる美しい言葉が散りばめられています。

「伸ばした小指のつめはきっと、春の先っぽにもうすぐ届く」
「一瞬だけ、何も聞こえなくなった。虫眼鏡で太陽の光を集めたみたいに、私から放たれる五感の全ては先生の瞳に集中していた」
(『少女は卒業しない』より引用)

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少女たちの闇と再生の物語『つきのふね』

中学2年生のさくらと、親友の梨利の交流を描いた作品。2人は何をするにも常に一緒で、遊びのつもりでやっていた「窃盗ごっこ」が行きすぎた結果、万引きをすることが日常化しています。

「どちらかが捕まっても絶対にバラさない」と約束していましたが、ある時それをさくらが破ってしまうのです。

そこから、2人の友情は壊れていきます。闇を抱えた少女たちの心は、はたして再生することができるのでしょうか。

著者
森 絵都
出版日
2005-11-25

少女ゆえの力強さと危うさを、存分に感じることができるでしょう。さくらは、友情が壊れていくことも梨利が暗い世界に落ちていくことも止めらません。そんな2人を仲直りさせおうと、勝田という少年と、智というコンビニ店員が登場します。

彼らもどこか不安ややりきれなさを抱えていて、だからこそ純粋さが浮き彫りになっていくのです。梨利を説得しようとする勝田の言葉には、読者もハッとさせる強さがありました。

「梨利は人よりも大変な性分に生まれついたと思ってんのかもしんないけどさ、自分の弱さを怖がってんのかもしんないけど、でもほんとはみんな一緒じゃん。誰だって自分の中になんか怖いもんがあって、それでもなんとかやってるんじゃないのかよ」
(『つきのふね』より引用)

万引き以外にも、薬物や売春にまで手を染める梨利に対し、彼はあえて手を差し伸べず自ら再生する強さを求めました。

物語が終盤に向かっていくと、さくらは梨利にひと言、こう伝えます。

「会いたい。会いたい……。」
(『つきのふね』より引用)

かつてともに時間を過ごした少女たちには、余計な言葉は必要ありません。そこにあるのは純粋に相手を想う気持ちだけで、それがストレートに表現されています。

「普通」の高校生たちを描いた青春小説『か「」く「」し「」ご「」と「』

主人公は、人の心が見えるという特別な能力を持った5人の高校生たち。

青春時代にちょっとした隠し事を共有した彼らの、なんとも爽やかで少し不思議な物語です。

著者
住野 よる
出版日
2017-03-22

5人が持っている能力はそれぞれ少しずつ違います。京は相手の頭の上に浮かぶ「、」「。」「!」「?」を見ることができ、パラは人の鼓動を見ることができます。

おのおのの力をうまく使っている子もいれば、嫌っている子も。ただ共通しているのは、誰もこの力を特別なものだと思っておらず、「普通」に日常生活を送っていることでしょうか。

人の心臓に感情のプラスマイナスを示すバーが見えるミッキーは、こんなコメントを。

「私と話す時、ヅカはいつもそれだ。少しくらい心動かしたってよくない?」
(『か「」く「」し「」ご「」と「』より引用)

自身の能力を巧みに使って、コミュニケーションをとっていくのです。

また本作は、能力以外の部分で高校生らしい心情が綴られているのもポイント。

「人生なんてさ、やりたいことだけやっててもきっと時間足りないんだ、やりたくないことやってる時間なんてないさ」
(『か「」く「」し「」ご「」と「』より引用)

彼らのリアルな言葉で綴られた青春小説です。

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