成長し、値下げをしても買い手のつかないぶちゃいくな猫を引き取ったのは、ひとり暮らしのおじさまでした。『おじさまと猫』は、1人と1匹の愛と癒しがあふれる日々を描いた漫画です。 スマホの無料アプリで読むことができるので、ぜひチェックしてみてください。
Twitterで話題となり単行本も発売された『おじさまと猫』。思わず感動してしまうほのぼの作品となっています。
・動物好きにはぜひ読んでほしい!
本作に登場する猫の「ふくまる」は作中、可愛らしくご主人に甘える姿や寂しがって泣いてしまう姿のほかにも様々な表情や行動を見せてくれるので、そんな描写の数々に心が温まります。猫や犬好きにかかわらず動物が好きな人にはぜひ読んでほしい作品です。
・ほのぼの…。そして感動
本作のストーリーはおじさまとふくまるの出会い、ほのぼのとした日常生活のほか、過去の出来事なども描かれているため、ほっこりするのはもちろん。思わず感動してしまうこと間違いありません!
『神とよばれた吸血鬼』などで有名な漫画家、桜井海がTwitterにあげていた猫漫画、『おじさまと猫』。
ダンディーな中年のおじさまと、まるまるとしたぶちゃかわ猫の「あるある」な日々が描かれています。特徴は、飼い主側の視点だけでなく、ふくまるの視点でも物語が展開されているところではないでしょうか。
表情豊かなふくまるに、あふれんばかりの愛を注ぐおじさまの、笑いと涙がたっぷり詰まった日常です。
- 著者
- 桜井海
- 出版日
- 2018-02-22
猫というと、どこかそっけなくツンとした態度をイメージする方も多いかもしれませんが、本作のふくまるは非常に表情豊かに描かれています。やっとできたたったひとりの家族・神田に甘えてみたり、優しさに感動して涙を流したりと、さまざまな感情をあらわにするのです。
特徴なのが、嬉しいときや幸せな時にすぐ泣いてしまうこと。大きめな体に反して涙もろいのはギャップがあり、読んでいてもついギュっとしたくなってしまいます。
これはふくまるの品種である「エキゾチックショートヘア」が涙を流しやすい性質を持っていることに由来しているのかもしれませんが、感情を行動で表す姿には心打たれるものがあるはずです。
また、甘えているときの遠慮がちな様子や、幸せそうな表情も見どころ。神田に対しふくまるは、伝えきれない嬉しさを表すかのごとくずっとそばにいるのです。最初は嫌われないか心配して遠慮がちな様子も見られましたが、しだいに彼のやさしさに素直に甘えるようになります。
ご飯がもっと欲しいとすり寄ったり、自分以外を見ないでほしいと作業をしている手元に寝転がったり、常に同じ布団で寝ようとしたりする姿は、猫好きにはたまらないポイント。随所に猫らしい仕草が描かれているのが本作の魅力でもあります。
もちろんまるまるとした体や、じと目、猫口も愛嬌たっぷり。とにかく全部がかわいいふくまるです。
ある日ふくまるに、ここには入ってはダメと言って、神田はある部屋に入ります。パパさんのジャマをしたらダメ!とよい子で待つことを決めたふくまるでしたが……ついつい寂しくなって神田を読んでしまうのです。
すると神田が部屋から出てきて、ふくまるを部屋へ入れました。部屋の前で大騒ぎするふくまるを見て、どうやら彼は子供たちを思い出した様子。でも、その表情はなんだか寂しそうで……。そしてピアノを弾く神田は、普段と違う様子なのです。
そんな彼を気遣ってか、それとも偶然か、ふくまるはなぜかピアノの上に大の字で寝てしまうのです。これには思わず、神田も吹き出してしまいました。
苦しく辛いことがあっても、ペットの存在が安心感や癒しを与えてくれる。ペットという存在の大切さに気づかせてくれる話です。
もうひとりの主人公であるダンディーなおじさま、神田。まるっとしたふくまるとは正反対の、スーツにオールバックが決まっているおしゃれな人です。
妻に先立たれ、広い家にひとりで住んでいた神田は、これまで生き物を飼ったことがありませんでした。ふらりと立ち寄ったペットショップでなぜふくまるを選んだのかはわかりませんが、彼はふくまるを見つけた瞬間から、無償の愛を注ぎます。
トイレの猫砂をバラまかれても、洗濯物の上に乗られても、仕事の邪魔をされても、笑顔。まさに目に入れても痛くない、親バカという言葉がぴったりではないでしょうか。
ふくまるの行動ひとつひとつを嬉しそうに見ている姿は、まるで子どものような無邪気さがあり、他の人と話しているときはけっして見せない笑顔がギャップがあって可愛らしいのです。
なんでもスマートにこなしそうな神田が、ふくまるのこととなるとつい一喜一憂してしまうのもポイント。いろんな想像をして百面相をするさまは微笑ましいです。きっとふくまるが家族になったことで、ひとりきりで暮らしていた神田の生活は、以前とは比べ物にならないくらい充実したものになったのではないでしょうか。
また、慣れないスマホを使ってなんとかふくまるを写真に収めようとするシーンも見どころですよ。連射モードになっていることに気付かずおんなじ写真を何枚もとってしまったり、インカメラの存在を知らず、通常のカメラで自撮りをしてなんとか画角に入ろうとしたり……。猫好きだけでなく、おじさま好きの人にもおすすめできる作品になっています。
本作では、ふくまるが人間の言葉を完璧に理解していたり、感情が書かれていたりとややファンタジックな要素もありますが、根底にあるのは1人と1匹のたしかな愛情です。
ふくまるは、ペットショップのゲージの中で、長い間誰にも買ってもらうことができずに過ごしていました。「どうせ自分は……」とどこか諦めていたところ、自分を「かわいい」と言ってくれる人が現れたのです。
以前の暮らしと現在を比較し、感謝の気持ちと愛情を神田に表現します。
一方の神田は、亡き妻と「猫を飼おう」と話していたことを思い出し、ふくまるを飼うことを決めました。悲しい過去をいまだひきずりながらも、ひとりぼっちになった自分に寄り添ってくれるふくまるへ愛情を注ぎます。
人がペットを可愛がるのは当然のことかもしれませんが、その愛が一方通行ではお互いにとってストレス。本作での神田は、常にふくまるの都合を優先してあげようという意志が見られます。
もともと猫は自由気ままな性格で、その時の気分によって行動を変えるもの。神田もふくまるにべったりするのではばく、構われたそうにしている時に構い、反対に自分の邪魔をされても無理にどかしたりはしません。
のびのびと育てる様子はまるで子育てのようで、ふくまると神田の仲睦まじい姿を見ていると、ペットもかけがえのない家族なのだとあらためて感じるでしょう。
お互いを尊重して思いやる彼らの姿に、ペットを飼っている人もそうでない人も、じーんと感動させられるのではないでしょうか。
そもそも、「ふくまる」という名前は、どうやって名付けられたのでしょう。
ふくまるを家に連れて帰ってきた神田は、名前を考えることにしました。いろいろな名前を読んで見ますが、全部の名前に返事をしてしまう、ふくまる。かわいい……。
名前は大切な贈り物だから、しっかりと考えて決めたいと神田は考えていました。そして、考えに考えた結果、「ふくまる」という名前にすることにしたのです。出会えたことが幸福だからという、非常に会いに溢れた命名でした。
名前がないというのは、一体どういう気持ちなのでしょう。それは自分の一部が欠落してしまったような、非常に寂しい気持ちなのではないでしょうか。ペットショップで売れ残り、もう一生名前なんてもらえないと思っていたふくまる。
名前をもらって嬉しそうに返事をしているふくまるを見ていると、思わず涙が出そうになります。
本編だけでなく、神田の周りの人々を中心にした「番外編」も見どころです。注目は、神田と友人の小林のやりとりではないでしょうか。
小林もダンディなおじさまで、茶子という名前の犬を飼っています。初めてふくまるの写真を見せたときは「なんだそのブサ猫は」と散々な反応を示しましたが、その後もたびたび気にかけている様子が描かれていて、ある日2人は雑貨屋へ。
おじさま2人が一緒に小物を見ているというシチュエーションだけでもなかなかグッとくるものがありますが、そこで神田が手にしたのは、ファンシーな猫がたくさん描かれたスマホケース……。
小林もさすがに「駄目だろ」とツッコミますが、次に神田が手にとったのは、ケースごと猫の形をしているもので……。
買い物をしていて「うちの子に似ている!」と思わず手にとってしまうのは、ペットを飼っている方は経験があるのではないでしょうか。普段はダンディーな神田も、同じようにペットを飼っている小林の前ではかなり本心をさらけ出しているようです。
本編とはまた違った見どころや楽しさがあるのがとても魅力的ですね。また、物語の合間合間にある4コマ漫画もとても可愛く癒されますよ。
そろそろ成猫になるというのになかなか売れず、ましてやお客さんから嘲笑を浴びていたふくまる。もう自分を迎えにきてくれる人はいないと諦めていました。そんな彼を、神田は優しく抱き上げます。
「この猫をください」
「プレゼントですか?」
「いいえ 私が欲しくなったのです とても可愛くて 可愛くて」
(『おじさまと猫』1巻より引用)
この言葉を聞いて、「期待にゃんかさせないでくれ」と思いながらもさっそく涙を流すふくまるの姿が印象的な1話です。
犬も猫も、生まれたばかりのころは買い手がつきやすいですが、大きくなってしまうと値下げをしてもなかなか選ばれないのが現状。とくにふくまるは鼻がぺちゃっとつぶれた品種なので、人を選ぶのでしょう。
これまでふくまるはガラスのゲージの中で、ペットショップに来るお客さんの声を聴き続けてきました。自分なんて、と悲観していた気持ちを考えると、神田に可愛いといわれたこと、欲しいと言ってもらえたことは、ふくまるいとって何よりも嬉しいことだったのではないでしょうか。
「愛されている」という実感は、行動から得られるものです。神田に抱き上げられた時にふくまるが涙したのは、これまで触れることのできなかった愛を感じられたからではないでしょうか。
2月22日という猫関連のイベントごとにぴったりの日に発売された単行本。発売から1日で重版が決まる人気っぷりのようです。
1話〜15話と番外編が7つ、書下ろしの漫画が60ページ以上収録されています。
特徴は、これまでWeb上で発表されていた漫画も、清書されていること。背景やおじさまの服装が変わっていて、同じストーリーでも雰囲気の異なるものになっています。
書下ろしの漫画には、これまで本編に登場したキャラクターたちのエピソードが描かれていて、こちらもまた泣ける内容に……。Web上とはまた違ったふくまるの表情も見ることができるので、まずはスマホアプリで読んでみて、気になる方は単行本でも読んでみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 桜井海
- 出版日
- 2018-02-22
あいかわらず、ふくまるバカなおじさまこと、神田と、彼に甘えっぱなしのふくまる。彼らの仲良しな日常が描かれます。
そんな2巻では、神田の過去が少しずつ明らかになっていきます。小学生のころは、同級生と遊ぶことができず、友達のいない日々を過ごしていた神田。強がりながらも、寂しい思いを抱えていました。
- 著者
- 桜井 海
- 出版日
- 2018-11-22
それを変えてくれたのが、大らかな奥様だったのでしょう。彼女は亡くなってしまったようですが、彼の中で生き続けるのでした。
彼女の生前の夢は、「猫を飼うこと」。次の仕事から帰ってきたら飼うと約束しましたが、果たされることはありませんでした。そんな焦燥感を抱えながら生活していた矢先に出会ったのが、ふくまる。
ふくまるも、家族を持つことを諦めていました。ふくまるの家族に対する期待と、諦め。そして、おじさまと出会えたことで変わった生活。
寂しさを抱えた者同士が、お互いをきっかけに前に進んでいくことを感じられる2巻です。コメディ展開も健在で、クスッと笑えるのも魅力的。ペットショップのお姉さんの優しさにも、なんだか救われる気持ちになるでしょう。猫が好きな方、ペットショップで働きたい方、全員におすすめできる作品です。
すでに累計140万部を記録し、勢いが止まらない人気漫画『おじさまと猫』ですが、このたび連続ドラマ化することが決定しました!
累計140万部を誇るインターネットで話題沸騰の大人気コミックを連続ドラマ化!
2021年1月6日水曜日の深夜0時58分から地上波で放送される予定です。主演は草刈正雄ということで期待が高まりつつある中、さらにParaviでは、2021年1月1日金曜日の夜9時から独占で先行配信を行う予定だとか。いち早く見ておじさまと猫に癒されたいですね!
本作でおじさま・神田冬樹役を務める草刈正雄。「真田丸」を始め数々の大河ドラマに出演し、朝ドラ「なつぞら」では、ヒロインを刺激する演技が感動した、と話題になりました。
数多くの作品に名を残す草刈正雄は、意外にもテレビ東京でのドラマ主演は初めてな上、神田もあまりやったことのないタイプのキャラクターだと言います。しかし、実は自身もチワワを飼っているほどの動物好き。ふくまるに「かわいいね」、「いい子だね」と優しく語る姿は、自分そっくりだと照れ笑いを浮かべ、挑戦することが楽しみだった旨を明かしています。
最後に、「珍しく、登場人物みんなが心のきれいないい人ばかりで、そこも楽しんでほしい」と語る草刈正雄。日本一ダンディな男がどのようにしてふくまると触れ合っていくのか、見逃せません!