アラサー美女のタカコが婚活に奮闘する姿をコミカルに描いた漫画『美人が婚活してみたら』。2019年3月には実写映画化も決定している話題作です。本当の幸せを追い求めるタカコの姿に、共感する読者が続出。ぜひチェックしてみてください。
2016年から漫画サイト「Vコミ」で配信中の人気漫画。2019年3月には実写映画化されることも決まりました。
作者のとあるアラ子は、彼氏のCDを片っ端から聴いてレビューをしたブログ「うんいち~運命の一枚をさがせ~」が話題を呼び、コミックエッセイ『わたしはあの子と絶対ちがうの』ではアラサー未婚である自身の姿を描くなど、独自のセンスを発揮して活躍している人物です。
- 著者
- とある アラ子
- 出版日
- 2017-05-11
本作の主人公・タカコは、作者の実在する友人がモデルになっているそう。人生の悲喜こもごもがつまった婚活には、美人じゃなくてもグサグサと突き刺さるものがあるはずです。
この記事では、そんな本作の魅力を紹介していきます。ネタバレを含むのでご注意ください。
主人公は、未婚でアラサーの美女・タカコ。長年続いた不倫関係が終わったばかりで燃え尽き症候群に陥り、ある日唐突に「死にたい」と思ってしまいます。
どうせ死ぬなら、その前に何かやろうと思っていたところ、偶然幸せそうな家族を見てハッとしました。「結婚したい、子供を育てたい」という本当の自分の気持ちに気づいたのです。そうして彼女は、結婚することを目指して婚活を始めることに。
ただ、これが一筋縄ではいきません。果たして彼女の婚活の行方はどうなるのでしょうか。
働く女性の不倫の実態を調べるアンケートで、「過去・現在で不倫をしたことがありますか?」という問いに対し、約6割の人が「ある」と回答しました。不倫をしている女性の割合は、意外に多いことがわかります。
彼女たちは女性としての欲求に飢えており、結婚するまでの繋ぎとして欲求を満たしたり、いけないと思いつつも相手を好きな気持ちを止めることができず、関係を続けてしまうことが多いよう。
主人公のタカコは現在32歳ですが、25歳の時から付き合ってきた相手は、みな既婚者。なかには付き合った後に「彼女がいる」と言われ、実はそれは嘘で奥さんだった、という最悪のものもありました。
一時はショックを受けて絶縁したものの、「嫁とは別れるから一緒になろう」という言葉ひとつでヨリを戻し、また泥沼の不倫劇を続けてしまっていたのです。
愛に飢えているがゆえに不倫をし、愛を満たせなくなったから「死にたい」と思う……そんな彼女が、恋愛ではなく効率的に結婚相手を探す「婚活サイト」で相手を探すのは矛盾しており、そのハードルはけっして低いものではありません。
婚活で本当の愛を見つけることができるのか、欲求を満たすことができるのか。頭のなかでぐるぐると思いを巡らせる彼女の思考の変化にもご注目ください。
いざ婚活をスタートさせたタカコですが、まずサイトのプロフィール登録をする際の項目の多さに四苦八苦。料金プランも複雑で、1週間かけてようやく完了させました。
またもや死にたくなりつつも、さっそく男性会員からメッセージが届きます。そのなかから、やりとりがスマートだったおじさんを選び、会ってみることにしたのですが……美人すぎる彼女は、相手の男性からサクラだと疑いをかけられ、なんと2分で終了してしまうのです。
そこから妙に吹っ切れたタカコは積極的に行動をはじめるのですが、やがて「やっぱり恋愛がしたい」と思うように。事務的に結婚相手を探すのではなく、心から好きになった人との結婚を望んでしまうのでした。
婚活は、そもそもスタートラインに立つまでにも気力が必要なことや、いざスタートしてみても、結婚をしたいと考えてサイトに登録したはずなのに、恋愛に気持ちが向いてしまいがちなことがわかるでしょう。
本作は、タカコの苦労を中心に描かれていきます。そのため、女性からとても共感されやすい内容となっているのですが、男性側の視点がわかるエピソードも多数登場しているのです。
たとえば、女性の育児と仕事の問題は、よく取り上げられます。女性は育児と仕事、それに加えて家事もほとんど1人でこなすことが多く、本作でもその苦労が描かれているのです。
しかし、ここでは「では、なぜ男と女はこの問題でもめ続けるのか」ということの答えになり得る内容が描かれています。それは「タカコが考える性差別サイクル」です。これは簡単に説明すると、
女は将来を思うと仕事は辞められないうえに、子育てと育児もあって苦しい→その結果、結婚相手には収入を求める→男には仕事のストレスに加え、妻からのプレッシャーがのしかかる→仕事を頑張る代わりに、家事は女に任せる→女は将来を思うと……(最初に戻る)
の堂々巡りのこと。これによって双方譲れない言い分があるため、言い争いはなくならないのです。女性はもちろん大変ですが、男性側だって気苦労が絶えません。
これに加え、婚活においては男性の方が、女性からよりシビアに「選ばれる」という問題もあります。年収、両親など、女性に比べて自力で変えるのがなかなか難しい点まで見られてしまうのです。婚活の苦労は女性視点で見られがちですが、実は男性の方がツライのかもしれません。
本作では、主人公のタカコをはじめ、各所でさまざまな登場人物たちの名言が光っています。いくつかご紹介しましょう。
はい出た……ナイナイのやつ出ればいいじゃんハラスメント……
(『美人が婚活してみたら』1巻より引用
婚活をしている、と伝えると高確率で言われる「ナイナイのやつ出ればいいんじゃん」という言葉。おもしろおかしく編集されてネットで叩かれるだけだ、とこの発言をした友人に怒るのですが、元気に怒る姿から、それまで死にたいと思っていたたタカコが婚活に対する前向きな気持ちを持っていることがわかるシーンでもあります。
結婚は好かれる力より好きになる力
(『美人が婚活してみたら』1巻より引用)
タカコは美人なので、黙っていても男性の方から近づいてきます。しかし彼女自身は、相手をよく知ったうえで好きになる性格。これまでなまじモテてきただけに深く考えていませんでしたが、自分が相手に興味を持たなければ何も始まらないと気付き、また死にたくなってしまうのです。
わたしは生活のために結婚したい!
(『美人が婚活してみたら』1巻より引用)
当初は漠然と結婚したい、なんなら恋愛もしたいと思っていたタカコ。しかし32歳という年齢が、容赦なく彼女を襲います。
トランポリンをすれば尿漏れし、またバセドウ病にかかり仕事を辞めざるをえなくなってしまいました。不安定な収入と、病気になってもひとりで暮らす寂しさから、こんな心の声が出てしまいます。
どのエピソードも妙にリアルで、共感できる内容です。
1度会ってみたものの「ない判定」をし、交際を断ったS木。婚活サイトで知り合った男性です。
彼から「諦めきれない」とラインが送られてきたため、あらためてプロフィールを確認してみると……東京大学卒、年収一千万の文字。お金に目が眩んだタカコは、再び彼と会うことにします。
- 著者
- とある アラ子
- 出版日
- 2017-05-11
久しぶりに会ったS木は相変わらずオドオドしていましたが、タカコは不思議と以前のように「ない」とは思わなくなっていました。それどころか、インドアだと思っていた彼の意外な一面を知り、彼と過ごす時間を楽しいとすら思うようになっていたのです。
あれ?もしかしてS木さんと結婚……アリ?
(『美人が婚活してみたら』1巻より引用)
何回か2人で食事をし、ついに彼からお泊りデートに誘われてしまいました。結婚を意識している彼らにとって、身体の関係は必要な道のりでしょう。デートを楽しみながらも「そのとき」を意識する緊張感漂うシーンとなっています。
そしていよいよ夜がやってきました。2人の関係はどうなるのでしょうか⁉
婚活サイトに疲れたタカコは、とあるシングルズ・バーにやってきました。そこは普通のカフェのような場所に座り、15分ごとに男性が入れ替わるというシステムの場所。
入って早々、すでに帰りたい気持ちで満々の彼女でしたが、タイプど真ん中の男性がやってきて……。
- 著者
- とあるアラ子
- 出版日
- 2018-04-11
O田という40歳の歯科医と出会って、タカコはどんどん彼に惹かれています。彼女的にはどう見ても既婚者な彼ですが、どうも会うのをやめられません。
しかし、職場でのストレスや新しく入会した結婚相談所で合わない人ばかりとの出会いに疲れたタカコは、不安のあるO田ではなく、減点するところのないS藤と付き合うことにするのでした。
ようやく普通の人と恋愛できるか、と思いきや、2巻でもなかなか良縁に恵まれません。というか、おそらく彼女の好みのタイプが単に掴みづらい、好きになると大変な人なのかもしれません。
しかし1巻で語っていたように、ラブラブで普通の幸せを手に入れた仲良しの両親のようになりたいと思う気持ちもあるので、本当に彼女の恋愛はなかなかに難しく、業が深い。そして、やっぱり2巻でも迷走していくのです。
ただ、読んでて切なくなることばかりではなく、もちろん共感できるのでついつい入り込んでしまいますし、彼女と作者の学生時代のエピソードというほっこりする内容もあるのでご安心を。先の読めないリアルなラブストーリーにさらに引き込まれていくでしょう!
O田の名前を検索し、彼が本当に歯科医だったことに安心感とトキメキを覚えるタカコ。完璧なようで隙のある彼と結婚できればなぁ、なんて考えが浮かんできます。
しかし、それに水を差すのが、アラ子。さらに上をいくネットストーキング技術で、フェイスブックを特定したのです!
そこから、O田への期待と不安の日々が続き……。
- 著者
- とある アラ子
- 出版日
- 2019-03-11
結婚したいと思いつつも、かなり疲れている様子の友達や、元上司の離婚、マッチングアプリの大変さなどを目の当たりにし、疲れてくるタカコ。この気持ちは、婚活だけでなく自分のやりたいことを見つけた人になら、誰しも共感できるものではないでしょうか。
しかし、どうにか努力し続けることで、婚活仲間も手に入れた彼女は、また奮起することに。
見ていてイライラすることもあるかもしれませんが、どうにかその都度立ち直って前を向く彼女の姿に励まされる展開です。見ていると、自分ごとのように応援したくなります。
なのになぜか、彼女が幸せになれるイメージがつかないのはなぜなのでしょうか……。果たして彼女は結婚できるのでしょうか?そしてそれによって幸せになれるのでしょうか?
恋愛、結婚、年齢の問題に身体の衰え……タカコに降り注ぐさまざまな出来事にきっと共感できることでしょう。1つの話が短いので、サクサク読めるのも魅力です。