能町みね子にダウナーに癒される作品おすすめ5選

更新:2021.12.6

ハイテンションや笑顔に疲れたら能町みね子のひっそりとした語りで息抜きしましょう。今日は頑張りのスイッチをオフしてみませんか?

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「自称漫画家」能町みね子

能町みね子は1979年北海道生まれ、茨城県出身のイラストレーター、ライター、漫画家です。2005年にブログ「オカマだけどOLやってます」を開始し、2006年に同タイトルのエッセイでデビューしました。その後2007年に1月に性別適合手術を受け、その様子を『たのしいせいてんかんツアー』に執筆、同年8月にはブログ名を「オカマじゃなくなりました」に変更、10月に更新を終えました。

他著書には2007年『くすぶれ!モテない系』や2010年『うっかり鉄道おんなふたり、ローカル線めぐり旅』、2013年『雑誌の人格』などがあり、独特な着眼点とテーマが人気です。テレビやラジオで飄々とした様子を見たことがある方もいるかと思います。本ではそのうすぐらーい、でも不思議と落ち着く世界が凝縮して楽しめます。

自分のままに生きてみたら?

能町みね子の処女作であり、セクシャルマイノリティの彼女がまだ性別が変わっていない頃に「女性として」働いた時の日記です。タイトルからも感じられるように、セクシャルマイノリティの苦悩に焦点を当てたものではなく、ちょっと困った状況にいる人のふっと面白い日記、という肩の力が抜けたおもむきです。もちろんマイノリティならではの悩みも描かれてはいるのですが、それよりも能町みね子の人柄が独特で面白い作品となっています。
 

著者
能町 みね子
出版日
2009-08-04


女性に迫られて泣いてしまったり、生理の隠語に気づけずあせったりする様子など、性に対して偏見を持たずに向き合っているひとりの人間の姿があります。戸惑いや譲れないものを社会の常識ではなく、ひとつひとつ自分で考えている姿は愛らしく、なんだか応援したくなります。面白そうなタイトルの通り、笑えるエピソードが多いですが、日常の出来事にちょっと勇敢に生きている彼女の姿に励まされるエッセイです。

明日から満員電車も楽しくなる?

喫茶店や電車内でなにやら熱心にメモをとってる人がいたら……それは能町みね子かもしれません。

この本は「家政婦は見た」のようにひっそりと街の人々を描いた人間図鑑です。能町みね子は人間観察と妄想が大好きで、いつもセンサーを張り巡らせ、面白い言葉や会話を逃しません。ある時は小学生の哲学的な疑問を、ある時は「親にやらされたゴルゴ」?について、ツッコミつつ、いじりつつ、その目線はどこか優しいです。それは能町みね子が対象を否定をしないからでしょう。彼女の目を通すと都会の街の人々も捨てたもんじゃないと思えます。
 

著者
能町みね子
出版日
2012-05-31


明日からは満員電車も物語に出くわす場所になるかもしれません。愛を持って観察すると、窮屈で嫌な存在からその人自身が立ち上がってきて、いじりたくなる存在になるかもしれません。その時はどうぞ心の中で留めるのをお忘れなく。

能町みね子の丁寧でさびしい語り口調

能町みね子が定職につかずふらりとしていた時代の日記を加筆修正したものです。なので内容はごく個人的なもの。「大事にしたい無駄な時間」を過ごした古いけれど綺麗な家と能町みね子の蜜月が覗けます。

木造築40年(自称)、審査無し、牛込家賃4万円の家は、古いけれどとても綺麗です。年期の入ったドアノブや木製のトイレのタンク、家主の加寿子さんが毎日磨く木の廊下など、細かい描写に加寿子荘への愛を感じます。
 

著者
能町 みね子
出版日
2015-08-04


大好きな家に住み、自由のきく仕事をしながら、デザイナーのお師匠と飲んだくれ。そんな状況でもどこか生き急いでいて苦しさを感じる能町みね子。『オカマだけどOLやってます』のほろ苦バージョンとなっています。タワマンやヒルズ、六本木、西麻布などの都会要素に疲れたらこれを読みましょう。この本は表紙のように温かでひなびた部屋にあなたを連れて行ってくれます。

寒くて寂しくて、でもそれがくせになる

雪に覆われて人も全然いない田舎の北国の景色……。例えばそんな景色をあなたはどう感じますか?寂しいけれど、しんとした静ひつな空気。そこでは「自分自身の満たされなさと北の空気が同化」して、露散していくような感覚があります。南国の温かい空気もいいですが、北国でのこんな楽しみ方も癒しと言えるのではないでしょうか。この本は能町みね子のそんな「逃北」の旅情記です。
 

著者
能町 みね子
出版日


彼女は閉塞感のある土地に逃げて人生をやり直すことを夢想します。「何か一花咲かせるべくして全国から人が集まる」東京にも育った茨城にも馴染めず、故郷探しをする能町みね子。その目を通した北国の景色は寒いけれど優しいものです。ところどころ笑えて、読んでいると北国の冷たい風に心が少しだけ軽くなります。カラフルな癒しもいいですが、それすらしんどいときには無理をしなくてもいいぼんやりした寂しさがあなたを癒してくれます。

能町みね子の「死にそう」なデートスポット

「市販のデートスポットなんて薄っぺらで合成甘味料みたいな味で、いけすかん」と斬り捨てる能町みね子がインターネットでは手に入らない「死にそう」なデートスポットの情報を教えてくれます。おもむく場所はマイナーすぎて知らない場所ばかり。それが魅力で訪れるのですが、あだとなって今は亡き……となっているところも多々あります。
 

著者
能町 みね子
出版日
2016-03-15


デートスポットとうたってはいますが、ほぼ街歩きの風情です。大手企業のマーケティングでは絶対に狙われないような、隅の隅を突いた人や場所は、マニアにはたまらない空気感となっています。能町みね子の世界観上級編です。これが楽しめればあなたは彼女の本をほぼ全て楽しめると言っても過言ではないでしょう。珍味が好きなあなたに。

いかがでしたか?能町みね子の本は即効性の西洋医学というより、じんわりと患部に効く東洋医学のような癒しがあります。心の疲れを感じたら、今日はじっくり彼女の世界で休みましょう。

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